日本放送協會第1064囘經營委員會議事錄(平成20年3月11日開催)
http://www.nhk.or.jp/keiei-iinkai/giji/giji_new.html  次囘經營委員會議事錄公開前
http://www.nhk.or.jp/keiei-iinkai/giji/g1064.html   
囘經理理事會議事錄公開後

4 審議事項 よりの拔粹(勝手に正字正仮名に改めてゐます)

(2) 國際番組基準の一部變更について
(今井副會長)
放送法改正に伴ひ、國際番組基準の一部變更についてお諮りします。基本的には、放送法のなかで、國際放送を外國人向けと邦人向けとに分類することが明記さ れましたので、それに伴ふ字句の改正が中心です。この議案は3月25日 の經營委員會にあらためて議決事項として提出しますが、その間、14日に國際放送番組審議會に諮問することにしてゐます。また、改正放送法の施行に合はせ て4月1日からの實施を豫定してゐます。
主な變更は7點です。まづ、前文の中で、これまで、單に「國際放送およ び受託協會國際放送」としたところを、「外國人向けおよび邦人向け國際放送および受託協會國際放送」と明記します。また、「人類の福祉に貢獻するため」と したところを、「人類の福祉に貢獻するとともに、邦人に適切な報道および娛樂を提供するため」と變更します。次に、第1章(一般基準)第1項で、「國際連 合憲章の精神を尊重し、自由と正義とを基調とする」としたところを、「日本國憲法および國際聯合憲章の精神を尊重し、自由と民主主義とを基調とする」と變 更します。この基準ができたのが昭和34年です。昭和32年に日本が國連に加盟してをり、その時の國內の考へ方を反映したものと理解してゐます。それを今 日的に、日本國憲法と民主主義といふ言葉を使つて表現したいと思ひます。また、同第3項は、「ひろくわが國の文化、產業等の實情を紹介する」としてゐまし たが、その前に「外國人向け國際放送および受託協會國際放送にあつては」と明記します。同第4項は「海外同胞に適切な知識と慰安を與へる」としてゐました が、邦人向け放送として、「邦人に適切な情報と安らぎを與へる」として、今日的な言葉に變更します。同第5項では、國際番組の基準について、國內番組基準 の「放送番組一般の基準」を準用することとし、外國人向け放送、それから邦人向け放送について細かい區分を明記してゐます。次に、第3章第2項(インフォ メーション番組)の中で、これまで「わが國の」としたところを、新たに、「わが國や世界の」と世界といふ言葉を付け加へて表現します。
(古森委員長)
第1章第1項で、日本國憲法および國際聯合憲章の精神を尊重とありますが、國際聯合憲章はよく吟味されましたか。これには確か今でも日本などを對象とした 敵國條項が入つてゐるのではないでせうか。
(今井副會長)
はい。承知してをります。
(古森委員長)
それを尊重するといふのはどのやうに理解すればよいのでせうか。
(今井副會長)
この意味は、國際的な日本國における國際聯合を中心とした外交といふ精 神に基づいていくといふことです。
(古森委員長)
さうでしたらさう書いてはどうですか。諸國の正義と世界の平和のために といつたやうな一般的な言葉に變へるべきではないですか。
(今井副會長)
日本についての敵國條項については、日本國政府もかねてから改正の要請 を出し、そのうへで、國際聯合憲章に基づく外交を進めてゐます。
(古森委員長)
要請を出してはゐますが、敵國條項がまだ消えてゐません。
(今井副會長)
國際聯合憲章の精神を尊重するといふことです。
(古森委員長)
それよりも世界の平和と正義の實現に期待してなど、何か他に言葉があると思ひます。
(今井副會長)
では、表現についてもう一度檢討いたします。
(古森委員長)
お願ひします。それから、第3章第2項で「解說、論調は公正な批判と見 解のもとに、わが國の立場を鮮明にする」とあります。わが國の立場となると國際的な問題がいろいろあります。この場合には、日本の國益に立つといふことで すか。
(今井副會長)
國益といふ表現が必ずしも明確ではないと認識してをります。そのうへで、公正な、さまざまな見解が存在してゐることも踏まへながらわが國の立場を鮮明にす るといふことです。
(古森委員長)
この場合は政府の主張してゐる論據でよいとの解釋ですか。國內放送の時には、不偏不黨ですからそのときの政府の論調に必ずしも偏るわけではないでせう。國 際放送では政府の論調に立つといふ解釋でよろしいのですか。
(今井副會長)
國際放送については、日本國の外交の方針に基づいて、さらにそれについ てさまざまな意見が存在してゐることを示しつつわが國の立場を鮮明にお傳へするといふことです。
(古森委員長)
國內の場合は國民からあまねく受信料をいただいてゐますので、立場は不 偏不黨と放送法に書いてあります。しかし、國際放送ではそれはどうでせうか。各國とも國益を主張するなかで日本の立場を放送していくなら、國內放送のよ うに滿遍なく意見を傳へるといふ話だけでは濟みません。それだけの覺悟があるのかといふことです。
(今井副會長)
國際法上の、國際放送の中でのNHKの放送は、國內における、內外にお けると申し上げてもいいですが、さまざまな意見を反映しつつ、わが國がどういふ立場であるかを鮮明にすることです。
(古森委員長)
國際放送では日本の立場を主張するわけでせう。
(今井副會長)
NHKの放送では、日本の立場を直接主張するといふことはありません。
(古森委員長)
それでは、例へば日本と他國の間に問題が起こつたとすると、日本も正しい、その國も正しい、かうした意見があると言ふのですか。
(今井副會長)
そのとほりです。
(古森委員長)
それでよいのでせうか。利害が對立する問題については、日本は當然日 本國民の立場に立つて國益を主張すべきです。
(今井副會長)
日本の政府の、外交における日本の立場を强く傳へることはいたします。
(古森委員長)
そのときの政府、日本における對外的な公式の見解を言ふならよいと思ひ ます。ただ、どこの國の意見もいろいろありますといつた放送はないと思ひます。國際放送はただ强化するだけではなく、一步踏み出せといふことです。國際社 會で日本の意見を發信するとはさういふことであり、覺悟を決めてやらないといけません。

(3) 國際放送(テレビジョン・ラジオ)の放送番組編集規程の一部變更について
(今井副會長)
國際放送の放送番組編集規程の一部變更についてご審議願ひます。これ は、次囘の經營委員會であらためて議決事項として提示させていただきます。これも基本的には外國人向けおよび邦人向けといふ2つの國際放送に分けた放送法 改正に伴ふものです。
(多賀谷代行)
委員長のさきほどのお話は、放送法第33條第1項の、國際放送の實施の 要請等に關はるところがあります。そこには、總務大臣は、「國の重要な政策に係る事項」を指定して國際放送を行ふことを要請することができると書いてあり ます。
(今井副會長)
第33條には基本的なNHKの放送の役割が規定してありますが、それを ベースに考へます。
(古森委員長)
第33條第1項は國際放送の內容を規定したものではなく、國が大事だと 思ふ事項については要請ができるといふ條項です。規定したものがあるとすれば「國の重要な政策に係る事項」といつた程度しかないですね。
(今井副會長)
それと同時に、第33條第2項に、編集の自由といふことがあります。
(多賀谷代行)
編集の自由には配慮しなければなりませんが、第33條第3項に、「協會 は、總務大臣から要請があつたときは、これに應じるやう努めるものとする」とあります。編集の自由と要請放送に從ふやう努める義務はそこでバランスになる といふことです。
(今井副會長)
基本的には、編集の自由といふことを大事にさせていただき、NHKの國 際放送で報道することが一方的なものになることのないやうに擔保したいといふのが私どもの考へです。
(古森委員長)
私どもも海外のビジネスをずいぶんしてきましたが、だれも相手のことを 最初から考へて話すことはしません。まづは、我々の立場で話をします。外交でも同じことだと思ひます。日本は日本の立場、相手には相手の立場がある。 どこで折り合ひをつけるかといふ話が外交でありビジネスです。國內放送では放送法に「意見が對立してゐる問題については、できるだけ多くの角度から論點を 明らかにする」とありますのでさうします。しかし、國際放送の場合、いろいろな考へ方があることを日本の公共放送として發信するのか、はつきり腹を決めな いといけないと思ひます。さきほどの話では、そのとき國を代表する政府の外交方針に從つてオピニオンを述べるとのことですが、國際放送の場合には立場とゐ うものが必要です。
(多賀谷代行)
この場合に、日本政府の立場だけをもつぱら出すのでは、國營放送になつ てしまひますので、そこまではいかないのがここのおそらくバランスなのだと思ひます。國營放送ではない、しかし、日本政府が重要な政策を提示したら日本政 府の立場をきちんと外國に對して示すといふことだと思ひます。ただし、國の要請は受けるが番組自體はNHKが作るといふことです。
(今井副會長)
はい。
(福地會長)
要請放送の中に國の重要な施策が入つてゐますので、實際問題、それほど 矛盾しないと思ひます。われはれは編集權の自律を貫くときちんと言ひますが、誰であれ國の重要施策の認識にはさうは差がないと思ひます。
(古森委員長)
國際放送について少しお話ししましたが、決して私はそれを强制してゐる わけではありません。國際放送の場合は立場をいつも考へないと大變なことがいろいろあります。NHKは何をやつてゐるのかといふ話が逆に出てくるかもしれ ません。諸外國から反對があつたときにどうするのかといつた問題もあります。國內放送のやうにいろんな意見がありますと全部竝べるだけで濟むわけにもいき ません。そこが難しいと申し上げてゐるのです。

(以下略)