教育基本法

昭和廿二年三月卅一日 法律廿五號  

われらは、さきに、日本國憲法を確定し、民主的で文化的な國家を建設して、世界の平和と人類の福祉に貢獻しやうとする決意を示した。この理想の實現は、根 本において教育の力にまつべきものである。
 われらは、個人の尊嚴を重んじ、眞理と平和を希求する人間の育成を期するとゝもに、普遍的にしてしかも個性ゆたかな文化の創造をめざす教育を普及徹底し なければならない。
 こゝに、日本國憲法の精神に則り、教育の目的を明示して、新しい日本の教育の基本を確立するため、この法律を制定する。
(教育の目的)
第1條 教育は、人格の完成をめざし、平和的な國家及び社會の形成者として、眞理と正義を愛し、個人の價値をたつとび、勤勞と責任を重んじ、自主的精神に 充ちた心身ともに健康な國民の育成を期して行はれなければならない。
(教育の方針)
第2條 教育の目的は、あらゆる機會に、あらゆる場所において實現されなければならない。この目的を逹成するためには、學問の自由を尊重し、實際生活に即 し、自發的精神を養ひ、自他の敬愛と協力によつて、文化の創造と發展に貢獻するやうに努めなければならない。
(教育の機會均等)
第3條 すべて國民は、ひとしく、その能力に應ずる教育を受ける機會を與へられなければならないものであつて、人種、信條、性別、社會的身分、經濟的地位 又は門地によつて、教育上差別されない。
2 國及び地方公共團體は、能力があるにもかゝはらず、經濟的理由によつて修學困難な者に對して、奬學の方法を講じなければならない。
(義務教育)
第4條 國民は、その保護する子女に、9年の普通教育を受けさせる義務を負ふ。
2 國又は地方公共團體の設置する學校における義務教育については、授業料は、これを徴收しない。
(男女共學)
第5條 男女は、互いに敬重し、協力しあはなければならないものであつて、教育上男女の共學は、認められなければならない。
(學校教育)
第6條 法律に定める學校は、公の性質をもつものであつて、國又は地方公共團體の外、法律に定める法人のみが、これを設置することができる。
2 法律に定める學校の教員は、全體の奉仕者であつて、自己の使命を自覺し、その職責の遂行に努めなければならない。このためには、教員の身分は、尊重さ れ、その待遇の適正が、期せられなければならない。
(社會教育)
第7條 家庭教育及び勤勞の場所その他社會において行はれる教育は、國及び地方公共團體によつて奬勵されなければならない。
2 國及び地方公共團體は、圖書館、博物館、公民館等の施設の設置、學校の施設の利用その他適當な方法によつて教育の目的の實現に努めなければならない。
(政治教育)
第8條 良識ある公民たるに必要な政治的教養は、教育上これを尊重しなければならない。
2 法律に定める學校は、特定の政黨を支持し、又はこれに反對するための政治教育その他政治的活動をしてはならない。
(宗教教育)
第9條 宗教に關する寛容の態度及び宗教の社會生活における地位は、教育上これを尊重しなければならない。
2 國及び地方公共團體が設置する學校は、特定の宗教のための宗教教育その他宗教的活動をしてはならない。
(教育行政)
第10條 教育は、不當な支配に服することなく、國民全體に對し直接に責任を負つて行はれるべきものである。
2 教育行政は、この自覺のもとに、教育の目的を遂行するに必要な諸條件の整備確立を目標として行はれなければならない。
(補則)
第11條 この法律に掲げる諸條項を實施するために必要がある場合には、適當な法令が制定されなければならない。