乾 坤容我静 名利任人忙
(旧)教育基本法(1947〜2006) 改正に反対した文化人129 名の声明 憲法改正反対(九 条の会こちら

また眞理を知らん、而して眞理は汝らに自由を得さすべし。ヨ ハネによる福音書8章32節)

メ ディアはコミュニケーションの道具という素朴なイメージがあるが、もっともこの言葉は「中間」という意味であり、二つのものの間を取り次ぐという意味で はコミュニケーションの道具となるが、同時に最初は一つであったものを二つに分けるという効果ももたらす。メディアは、それがもたらす情報を共有し仲間意 識を持つグループと、そうしたものに無関心、あるいは反発するグループとの分裂をもたらす。メディアが発達すればするほどこの分化は進む。だから、メディ アの発達がコミュニケーションを豊かにするというのは幻想にすぎない。(佐藤卓己)

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■ 「はてな」の富柏村日剰・香港日記(テキストのみ)はこ ちらを ご覧 ください。

■最近のブログ化のご時世に敢へてブログ化せぬ日記を。の 心づもりでをります。敢へて全て讀むこと強ゐる日剩あつてもいゝのでは?と。
讀みにくいこと間違ひなきサイト乍ら今後とも御贔屓の程宜しくお願ひ申し上げます。
■香港の高級紙「蘋果日報」からの紙面、寫眞の無斷借用多し。同紙社主・黎智英氏自ら同紙の無斷借用轉用大歡迎と公言ゆゑ、それに甘えてをります。
2000 年11月24日からおそらくあなたは番目の閲覧者です。

四月卅日(水)写真雑誌の頁ぱらぱらと捲る。田中長徳さんが凄いのは(朝日カメラ5月号)ライカM2で巴里とリスボンの「ベタな」都市風景の写真が何枚か あり「こんな写真ならアタシだって」と思ったりさせておいて次の頁を捲ると「なんでっ?」と驚くリスボンの坂の街並み。見開きにどかーんと「なぜ50mm でこれが撮れるの」と。それが凄い。それにしても写真専門雑誌が朝日カメラにせよ日本カメラにせよ「デジタルでのプリント技術」の特集が結局はレタッチだ の色の補正だったりするのが悲しい時代。そのなかで前者に今どきマニュアル露出特集があったのは立派。だがふと考えればマニュアル露出という数十年前なら 当然のことが特集になることじたい隔世の感あり。
▼昨晩のロンバール指揮のロワール管弦楽団でピアノを弾いた宋思衡は数ヶ月前の香港フィルの「のだめカンタービレ」コンサートでラフマニノフを弾いた人、 とZ嬢が思い出す。去年のこのFrench Mayはリール国立管弦楽団(指揮はJean-Claude Casadesus氏)。ベルリオーズの「夏の夜」、ラヴェルのTzigane(ツィガーヌ)や円舞曲(La Valse)であったが、やはりS席800ドルと強気で4割程度の入り。香港で知名度低いが「いかにもフランス」の楽団来港は大歓迎だがエッシェンバッハ 指揮のパリ管弦楽団でもないかぎり、この値段じゃ香港では客集めは無理。小屋を満員御礼にすることが胴元の最も大切なことだと思うのだが……フランス総領 事館はせっかくの恒例なるFrench Mayなのだから熟慮すべき。
▼昨日読んでいた信報で、名前失念の書き手曰く、中国は義和団にせよ五四運動にせよ海外列強が中国に圧力かけ中国の国力が脆弱で対抗し得ぬ時に民衆が、殊 に若者が排外主義掲げ蜂起する伝統がある、と語り始め、今回の北京五輪に向う民族主義高揚について。今回の中国国内での仏貨不買や海外での聖火擁護など運 動の主体は八〇年代生まれの若者。中国の貧困を知らぬ世代のはずで、なぜ豊かな若者が、なぜまるで中国国歌=義勇軍行進曲の「起ちあがれ! 奴隷となることを望まぬ人びとよ!」の如く盛り上がるのか。それはこの若い世代の中国人にとって、殊に大都市や海外に留学するような世代の若者にとって 「中国は経済成長甚だしくすっかり大国になった」それなのになぜ欧米諸国が19世紀のように中国に干渉するのか、それじゃ中国は依然として弱小な立場に置 かれている事に対するフラストレーションの表れ、と。御意。だがその中国の経済大国ぶりについて昨日の信報は社説で「経済環境大変「世界工廠」不保」(経 済環境の激変で「世界の工場」の地位維持も危うい)と説く。すでに中国の製造業は人件費や物価の高騰やインフラ整備の遅れ、通運の問題(とくに内地)など で製造業が中国から更に第三国に移る傾向少なからず、と。日本は少なくとも数十年間、高度経済成長謳歌できたが、それも製造業に技術開発や技術水準維持と いった背景があったから。単に人海戦術と安い賃金、では魅力は十年ちょい、なのか。

四月廿九日(火)尖沙咀に渡らうと中環からスターフェリー。米国海軍のキティホーク号来港にて海軍兵が目立つ。キティホーク号は建造から41年でもうすぐ退役。41年と聞き アジアの平和のため「戦後ずつと」と思つたが数へてみれば60年代後半のベトナム戦争から、の「つい最近」の話。アタシもすつかり年をとつた。 Harbour Cityにて写真家・本城直季氏の“small planet”の写真展。本日開幕セレモニーあり招きあり。この人は大判カメラで所謂「アオリ」を利用することで鳥瞰からの現実の光景がまるでジオラマ模 型の如く映る写真で一昨年の木村伊兵衛賞を受賞。香港でもその撮影行はれ今回展示あり。朝日カメラで初めて見た時はそのジオラマ的な世界に驚いたが今日そ れを「全倍」に近い大きなサイズで至近距離から眺めると「アオリ」が目立たず普通の写真に見えることに気づく。早晩に久々にFCCのバー。数日分の新聞読 む。夕飯にサラダ頼んだがサラダでもポーション大のため半分残してお持ち帰り。尖沙咀。少し時間ありペニンスラホテルのバーに寄る。ホテルのアーケードの シャネル商店で白薔薇モチーフにした面白い首輪あり値段だけでも知りたいもの、と店内に入らうとせば入 り口の守衛がドアを遮二無二押へてアタシの入店を拒む。どうやら閉店時間の由。店内に客がまだ居るから施錠せぬのはわかるが「閉店」と掲げるなり、シャネ ルほどの店ならドアを恭しく開けて客に「申し訳ございません。本日はすでに閉店でございまして」と慇懃に言へばよからうに、それを守衛君に諭す。ペニの バー は旧正月以来久々。なぜ覚えてゐるか、といへば旧知のバーテンダーP君に「今日はだいぶ静かだね」と言ふと「旧正月の中日ですからね」と答へられた記憶あ り。でも今晩も閑か。理想的だが。ドライマティーニ二杯。有名ホテルには奇妙は常連客はつきものだが、先日も今晩も見かけたのが「酒を取りに来る客」。カ ジュアルな格好の中年の白人客、バーに現れジントニックなど注文し出来上がるとグラスを受取りバーを出てゆく。宿泊客ならルームサービスもあるのに。バー テンダーも手慣れたもので伝票にサインも求めず記録するのみ。かなりの常連。居住者かしら。それにしても酒代だけでも馬鹿になるまい。香港文化中心。Z嬢 と五月恒例の“Le France May”で 仏蘭西の国立ロワール管弦楽団の演奏会。客は六分の入りの悪さは中国全土席巻の反仏感の煽りか(笑)。Alain Lombardの指揮。ビゼーの「アルルの女」序曲。いきなり「オーケストラがやつて来た」の公開録画のようだがロンバールの指揮するこのロワール管弦楽 団が「オケとしてのチューニングが合つてゐる」第一印象。ロンバール氏の椅子に坐つたままの指揮者として最小限の動きは怠慢でなく「これだけでオケが響 く」凄さ(歌劇の演奏指揮が長いこともこの指揮法に関係あらうが)。ロワールの楽団は「どこか突出して凄い」わけぢやないがフランスのオケらしひ「滑ら か」さ。ビゼーに続き陳怡なる中国の作曲家の「多耶」なる小曲。ショスタコーヴィッチ以降の現代音楽が武満すら理解できない私。続いてドビュッシーの 「海」。いつ聴いても、これが北斎の冨嶽三十六景「神奈川沖浪裏」ぢやないのは確かにしても、この曲のどこか「海」なのか、波の折り合ひといへばさう聴こ えるが、いかにもフランスの印象派つぽい作品といふ以外、アタシの乏しい想像力では無理。中入後、宋思衡といふピアニストでラヴェルのピアノ協奏曲ト長 調。演奏前にZ嬢に第三楽章つて……と尋ねるとZ嬢曰く「ほら、ゴジラ、ゴジラ、ゴジラとメカゴジラ、つてフレーズの曲」と歌詞つけて歌つてくれる。あり がたいといふか、何といふか。ワーグナーの「大地の歌」が李白の世界なら、まるで中華拉麺の絵柄のやうな印象の第1楽章、第2楽章はもしこの私のほか誰も ゐないペニンスラホテルのバーでこの楽章の最初のピアノソロの部分流れてゐたら……どうしよう。おカネを出して借り切つてツィメルマンを招いて演奏しても らへたら。で、そしてほんとに「ゴジラ、ゴジラ、ゴジラとメカゴジラ」が耳に馴染んでしまつて笑ひ堪へるのが辛い第3楽章。……が全般を通じ今晩のピアノ 奏者の宋思衡はこのオケに応へてをらず。踊りきれてゐない、といふか。で最後はストラヴィンスキの「火の鳥」組曲版。曲を聴いててふと思ひ出したが「火の 鳥」を最初に聴いたのは冨田勲のシンセサイザーなのだ。ついでに言へば「ダフニスとクロエ」も。ずつと坐つて指揮してゐたロンバール氏がだんだん高揚し指 揮も大袈裟になり顔も高揚し……最後にタキシードの糸を一本引き抜くと深紅のタキシード に大変身か、と思つたのは火の鳥といふとアタシは2年前だかにベジャールのバレエ團の香港公演で那須野圭右なる踊り手の火の鳥を見た のが最後。溌剌とした踊りであつた。予想以上に素敵なロンバール指揮のロワールの楽団。でもS席800ドルは香港では高い。私らも不確定要素多すぎ安い周 辺席にしたがロンバールの指揮を斜めから眺められたのは儲けもの。ちなみにアンコール曲はカルメンと「アルルの女」序曲のアンコール仕立て、に曲目不明の ブラームス?(とZ嬢)、アタシはメンデルスゾーンか、と思ふ弦のソナタを静かに1曲。
▼日本でガソリン値上げで160円。香港はHK$16.4(214円)と比べれば、まだ安からう。米国だの豪州の田舎ならまだしも、あんな狭い島国での自 動車社会ぶり、あらためて考へ直しては如何。
▼中国山東省の鉄道事故は結局、人災。高速列車に対する時速制限措置を地元鉄道管理当局が徹底してをらず。省の鉄道局の幹部更迭は当然として同局党委書記 も更迭といふのがお国柄か。
▼新銀行石原に1,400億円の公金投入。都知事選での石原氏への投票が300万票なら石原慎太郎に投票した都民1人あたり46,670円。
▼信報の今日の連載で劉健威兄が料理店情報誌Zagat香港版の近々の出版について書いてをられるが、その中で米国のTimes誌が香港の或る老舗洋食屋 をbest of Asiaと評してゐるのを嗤つたが、健威兄はその食肆の名前こそ明らかにしてをらぬが隣のコラムで唯靈兄が自らを肉食獣と称し好物のSteak and Kidney Puddingを讃めてゐたのがjimmy's Kitchenで何たる偶然。唯靈氏はJKが大のお気に入りだが劉健威兄は「今更あの肆が何なのか……」といふところ。アタシ的には本来であれば小川軒、 たいめい軒レベルで残れる肆だが中環の肆のサービスの横柄さに呆れ「まだマシ」であつた尖沙咀店も緊張感に欠けるきらひあり、と思へてならず。偶然で並ん だ、といへば商務印書館の中環の店をちよいと覗いたら平積みの書籍で黎智英氏の人生論語る本と李小鵬のビジネス成功本が並んでゐて大いに嗤ふ。偶然なのか 意図的なのか……。黎智英といへば反中国独裁、反権力の蘋果日報社主だが、天安門事件で時の首相・李鵬を「バカ」と罵つたのがつとに有名。その電力皇帝・ 李鵬の娘が李小鵬なのだから。

四月廿八日(月)なんだか涼しい日が続く。例年、この四月のQE II Cupの時はもう汗だくで競馬観戦してると日焼けしちまふくらいなのが昨日もずつとジャケット着たままでも肌寒いくらゐ。さすがにここ数日ヘヴィな飲食続 き今晩くらゐ胃を休ませようか、と思つたが蛤を「ためしてガッテン」レシピで焼いて食べることとなり、つい少しだけ菊正宗。蘇曼殊の『断鴻零雁記』続き読 む。
▼中国山東省での鉄道列車事故。香港のニュースが大きく取り上げるので、ふと中央電視台の午後7時のニュース眺めると、冒頭は中共中央政治局会議で政治改 革が焦点に、といふニュースから始まり杭州湾にかかる自動車専用大橋の開通、平壌での友好的な!聖火リレー等々「明るい」ニュース続き、この鉄道事故の ニュースはなんとニュース開始から16分後。しかも「山東省で発生の鉄道事故対して胡錦涛国家主席は迅速で重要な指示を出し、それに呼応して関係機関が対 処、と政府の対応の良さをさんざん讃めたあと、やうやく「今回の事故の死傷者は……」と事故の内容に触れる。さすが……呆れて言葉もなし。ついでなので珍 しく一党独裁国家の晩7時のテレビニュース眺めれば、ラサでの暴動についての続報もあり。参加したチベット系住民が涙ながらに「自分たちはつい悪い連中に 煽動され国家や社会に重大な破損を与へる暴動に参加してしまつた。心から反省してゐる。もし政府が自分にもう一度立ち直る機会を与へてくれるなら……」と 政府の寛容な措置を求める。それに温かく応じる政府……嗚呼、なんて美しい世界かしら。
▼五月二日の北京五輪聖火リレーで沙田の経路付近では団地で当日は洗濯物を目立つところに干さぬやうに、だの路上の清涼飲料の自動販売機撤去求められるだ の当局の動き活発。尖沙咀の重慶マンションでは昨晩、警察により出入りの者の身元確認実施されチベット独立など訴へ聖火リレー撹乱の怖れある者の取締り実 施。結果、居留ビザ失効や不法入境、窃盗犯容疑者や麻薬保持者など「とばつちり」で警察のお縄にかかる。
▼昨日の競馬関連の忘備録。チャンピョンマイルの覇者、Good Ba Baは安田記念と米国ブリーダーズカップ参戦に意欲見せ、同レース二着のArmadaもSize調教師が安田記念に言及なら、その二頭は当然として、と Bullish Luckも9歳の老馬ながら三着と健闘し先月のドバイDuty Freeで13着の汚名返上、さすが05年〜06年と同レース二連覇で昨年のドバイワールドカップ三着の駿馬と思ひ起こさせてくれたが、その Bullish Luckも安田記念に呼んでくれないかね、と。QE II Cup優勝のArchipenkoはde Kock調教師が「つぎはRoyal Ascotだ」と気勢あげる。ちなみに馬主のシェイク・モハンマド・ビン・カリファ・アル・マクトゥーム様はドバイ首長のシェイク・マクトゥーム・アー ル・マクトゥームの筆頭従弟の由。de Kock調教師は05年にGreys Innで同レース二着(優勝は香港のVengeance of Rain)で、いつだつたか南アフリカ国家聞いた記憶が、と思へば翌年の同レースではWeichong Marwing騎手のIrridescenceで優勝、と常連でした。お見逸れ。同レースで奮はず、のアタシの押したHelene Mascotはレース後故障発覚の由、このまま引退かしら。

四月廿七日(日)午前十一時に長野から来港のI氏とI氏投宿のシェラトンホテルで落ち合ひ競馬に行く前に腹拵へ、と重慶マンションに入ればSwagatインド料理店がOpenと表示出てゐるが、中を覗くとまだ 準備中。でも入れてくれて朝から印度料理……だが印度人は朝から印度料理なのだよな。八幡屋礒五郎の七味いただく。ANAの深夜便開航でI氏は昨晩午後五 時に長野出て新幹線で東京、羽田に八時にチェックインすれば手荷物なしなら45分後で出発で、香港に深夜24:30到着。オンタイムに到着で手荷物だけな ら空港からのエアポートエクスプレスの終電(24:48)にも乗車可の由。沙田競馬場。競馬場に来たのが昨年の12月の香港国際つて長野在住のI氏と同じ(笑)。 こんな久々で勘も戻らぬまま(つて元来、勘も乏しいが)第4レースで70倍近い連複を当て、どうにか今日は地味に賭けてゐれば損はない、と思つて安堵して ゐるやうではダメ。香港競馬満漢全席の土屋さんにご挨拶。国際G1の チャンピョンマイルは昨年12月の香港マイルの覇者で敵なしの香港のGood Ba Ba(Schutz厩舎、Doleuze騎手)が余裕の勝利。一馬身差でArmada(Size厩舎、Whyte騎手)、三位はドバイ帰りの Bullish LuckでアタシはFloral Pegasusから流して、負け(6着)。QE II Cupは日本からマツリダゴッホ(昨年末の有馬記念で優勝)が参戦で人気高。これとドバイ帰りで体調イマイチのViva Pataca(ドバイではシーマクラシック二着)外すまでは出来たがHelen Mascotを軸にして8着。優勝はドバイのDuty Freeで3着のArchipenkoで、結果論だがこの単勝HK$148はおいしい。なぜArchipenkoを連複では入れてゐて単勝(せめて複勝で も)買へないのか、の馬券下手。斎藤さんはちやんと単勝押へつ。さすがドバイからの視点は違ふ。最終レース終はる頃に小雨。先日のマカオ競馬で地場G1の マカオ香港トロフィーを12番人気(単勝70倍)で優勝の内田利雄騎手をお見かけ。Iさんとお仕事終はつた斎藤さんと三人でタクシーで深井。Z嬢合流しワ インを4本仕入れ裕記大飯店。豪州のHardyのSir Jamesなる発泡酒、オイスターベイ(シャルドネ、07年)、亜爾然丁のEtchart Rio de Plata(Mendoza、04年)とWolf BlassのPresidentsセレクションだつたか(もう酔つてゐる)のShirazを飲む。裕記は日曜晩でかなりの混雑。場内放送で「鹵水鵝が売り 切れ〜」とか流れ焼鵝もいつもなら、まづ注文するが葡萄酒の順番で注文せずにゐたが「深井まで来て焼鵝が売り切れで食べれず」ぢやお客人にあまりに失礼な ので注文して、つい白葡萄酒飲み干し赤になるまで食べずにゐたら、美味しい焼鵝がすつかり冷めて油が固くなつてしまつたのは反省。上湯瀬粉誂へどうにか復 帰。かなり酔ひミニバスで爆睡のうちに佐敦。

四月廿六日(土)晴れのち曇り。朝、長野の聖火リレーをNHKの中継で眺める。東京五輪の時の「聖火を迎へる国民の笑顔」のあの時代のわかりやすい明る さ。今回の五星紅旗溢れる中の長野の態は、いかに五輪が政治的なものか、愛国心とは 何か、の怖さ正に見せつけられた思ひ。五星紅旗掲げ中国国歌謳ふ在日の中国人のうち89年に天安門にゐた者 も少なからず。政治は右も左もなく精神の高揚と何かの超克であるだけのこと。聖火リレー禁参の善光寺も聖火リレーの合はせラサ動乱での被害者追悼法会と は、これも政治的。午前中自宅にて机に凭り昼にZ嬢と湾仔。アルデンテ伊料理店にてパスタ食す。香港芸術中心に赴き地場のFabrikなる蒐集団にによるBanksyの展示会=作品即売会を観る。キース=ヘリングなど他の路上系 の作品も数点あり。Banksyの作風はアタシは好きだが「どこまでが自由だつた」のか、が気になるところ。作品がどれだけ政治的風刺や反権力の姿勢を帯 びてゐようと既に作品が数百万円で取引きされる中どれだけ、なのか……下手すると電通とか絡んでたりとかね。所用済ませ早晩に湾仔の某ホテルロビーで斎藤さんと待ち合はせ。葡萄酒仕入れてタ クシーで中環。鏞記酒家でZ嬢と三人で夕食。発泡酒 Greenpointで皮蛋と生薑漬け、海月、白切鶏を食し中入りは豆腐。それから魚香茄子煲と通菜の炒め物でCloudy BayのPinot Noir(06年)飲む。いい感じ。斎藤さんから月本さんが 生前編集されたゐたレーシングポスト紙いただく。1月の月本さんの告別式で余の弔電が読まれたことを知る。

四月廿五日(金)雨。朝日新聞に『マカオぴあ』なる「ぴあ」の出した マカオ観光のmook本がついて届けられた。創刊号の由。アタシの世代だ とmook本と聞くと、どうもすぐゾッキ本彷彿するが、「刻々と変化するマカオ」の最新情報満載といふがカジノ産業と世界遺産だけでは発行が隔月でも新ネ タ乏しからう。だが500円と価格表示こそあるが一見さん相手の観光ガイド雑誌と思へばマカオ観光局とのタイアップで採算は十分。それにしても、わたせせ いぞうの描くオシャレなタイパのカジノホテル界隈が実際にはいかに殺伐としたものか、香港からタイパ行きのフェリーが「コタイ・ジェットはブルーの船体が 印象的な、新しくてラグジュアリーな高速船。船内は落ち着いた、ラグジュアリーな空間となっており、船内で優雅な時間を過ごすことができる」なんて紹介も 現実にフェリーなど田舎観光客と博徒の喧騒で「なにがラグジュアリーか」と嗤ふばかり。マカオと言へば国家主席胡錦涛君の勅命にてマカオの賭場開設制限。 着工中、批准済み以外これ以上認めず。中国の田舎漢らの賭事狂ひ、どこまでが個人の遊び金か怪しい人民資産ドブに捨てるが如き態、需要上回るカジノ建設 ラッシュ沈静化……等々、理由も様々あれ共産党主導の国家で賭場は原理的にいけません。晩に銅鑼湾の某「京川滬」食肆にて宴会あり末席を汚す。京川滬つて のは美味くないものの代名詞のはずが物凄い店の盛況で香港人にとつて京川滬=ファミレスなのだ、と思ふ。
▼加藤周一氏が「随筆」について(朝日新聞)。日本の随筆は枕草子や徒然草のやうな「日本文芸の伝統において」「全巻を通じての概念の建築的構築を欠く」 「各章各節の間にほとんど関係がない」もの。周一さんが随筆の定義として挙げるものは
・随筆は原則として現実の出来事を扱ふ。出来事とそれに対する作家の反応。
・定義が可能なのは、表現の形式及び内容の特徴を組み合はせた場合である。
・「随筆」とは日本国で発達した文学的表現形式の一つ。(なぜ「日本」でなく「日本国」としたのか周一さんに尋ねたいが)
・現実の環境に関心を集中し、空想の世界に遊ばない(一種のレアリスム)。
・表現は概念的建築の全体ではなく、細部に向かふ(茶室の美学)。
・随筆の全体を貫くものが全くないわけではない。それは作者であり、文体にまであらはれる彼または彼女の個性。
等々。なるほど、と思はされるが大いに疑問なのは
昔は日本の伝統的造形美術において非構造的空間は最大の弱点だと考 えていた。文章においてさえ随筆における強烈な説得力の欠如は、その限界だと感じていた。
といふ言ひ分。この言ひ分は「だが違ふ」といふ方に論は進むのだが、この言ひ分の「考へていた」「感じていた」のは誰のことか。一般論としてなのか周一さ ん自身なのか。かういつた「日本は非構造的、非論理的」といつた概念こそ(本多勝一の「日本語は論理的ぢやない、といつた誤謬」といふ指摘の通り)身贔屓 な勝手な「日本は特異」観念の温床ぢやないかしら。いづれにせよ周一さんは、さういつた「この国の言語表現の自由も、ついに、過去をふり返るのが勇気の問 題になるところまできたのか、と思う」として良書に挙げるのが、なだいなだ著『ふり返る勇気』。これは是非読んでみたい。
▼国立民族学博物館館長の佐々木高明・元館長のチベット問題に関する「問われる「先進国の品格」」(朝日新聞・私の視点)が秀逸。佐々木さんは一般的に近 代国家なるものが18世紀以降に西欧で「一国・一民族・一言語」を標榜して建設されたもの、として、それが政治権力を握つた主要民族が他の民族を抑圧し、 優等と劣等に民族を差別するものとなつた。20世紀になり「知のあり方」が変はり観察者と観察される側の立場の見直しなどが行はれたことは民俗学や文化人 類学では周知の事実。さういつた視点から佐々木さんはチベット問題について、昨年9月に国連の「先住民族の権利に関する国連宣言」を採択した日本がは、こ の夏には北海道洞爺湖サミットでチベットなど民族問題に話題が及んだ時、サミット議長国としてどう対応するのか、と。これに対応できてこそ「先進国の品 格」ぢやないか、と言ふ。まさに御意。「品格」といふ言葉を使つたのが実にスマート。何だか国家の品格だか女性の品格と最近「嫌な使ひ方」ばかりされ変な 本がベストセラーになつてゐるが、「国家の品格」なんて感覚じたいがいかに馬鹿げたことか、と思はされる。

四月廿四日(木)蘋果日報に「老董理髮店最後一剪」といふ記事あり(こ ちら)。中環はヱリントン街の上海新文華理髪店が創業四十五年で明日閉業の由。経営者の理髪師が前行政長官・董建華君の理髪を長年し続けて ゐることで記事の見出しが「老董理髮店最後一剪」。アタシもミッドレベルに住み始めた十数年前にこの理容店に通ふやうになり、構へた手が多少震へる老齢の 理髪師にお世話になること五、六年。その後、坊主頭で自分で刈るやうになり、この理容店の扉を開くこともなくなつたが昨年、また髪を伸ばし始めての再訪。 昔は五人ほどいた老理容師も三名となり洗髪師が一人。黄昏の様子。再訪も一度で終はる。今回の閉業、アタシがいつも刈つて貰つてゐた師傳が86歳の最高齢 で、1つ下と経営者が72歳と理髪師の加齢も大きいが家賃高騰凄まじく月HK$2万がHK$8万(約100万円)に。上海理髪で日曜休で25日営業として 洗髪込みHK$95の商売では家賃払ふだけで日に34人の客が要る。理容師も高齢なら客も中年以上ばかりで客の数も先細りではとても営業続けられず。記事 によれば40年前の賑はひなど一人の理容師で農歴正月前の晦日は128名の髪を刈つたこともありと言ふ。
▼李嘉誠財閥の給与。香港で最高所得のサラリーマンは李嘉誠率ゐるHutchison WhampoaのMDであるCanning Fok君で年収HK$1.5億(約20億円)也。日収がHK$40万(約520万)。日本のサラリーマンの平均年収以上を1日で稼ぐ。換算すれば時給が HK$1.7万(22万円)で1分に3640円稼ぐ。で李嘉誠先生ご自身は、と言へば給与こそ大卒程度の月給しか得てをらぬのは巨大な株式配当があるから で、昨年のその総額HK$23億(約300億円)也。日収が8千万円で時給が340万円。1秒で1000円以上稼ぐ。

四月廿三日(水)クレジットカード利用で最も重要なのはマイレージ特典。ユナイテッド航空はじめ曾て平和な時代はUS$1=1哩で香港もUS$1等価のHK$8=1哩踏襲したが マイレージ普及で今更これが客引きにもならず原油高での航空運賃値上げで当然、信販会社が航空会社から購入するマイレージの負担高となり最近はHK$12 =1哩が普通。アタシ自身はマイレージ換算ではかなり優遇のアメックス利用してきたがアメックスの高ピーさに呆れ数ヶ月前に今だにHK$8=1哩を維持す るキャセイパシフィック航空の「1ランク上の」クレジットカード(Citibankが発行元)をゲット。でマイレージ稼ごうと思ったら数週間前より 「Citibankがキャセイのカード発行中止」という噂あり。但し同カードの発行は今後せぬが既存メンバーについては「1ランク上」の者はそのまま Citibankのプラチナ(Amexならゴールド程度だが)に移行措置とる、と新聞に記事あり。マイレージ換算率がいいことで、このカードは香港で人気 だがCitibankがキャセイに払うポイント手数料が原油高もあり年間3千万ドルに達するそうでカード発行の銀行としてはカード利用客が増えるほど消費 が伸びるほど支出大。で結局、提携決裂。結果、本日、郵送でご案内が届く。Citibankのプラチナカードでマイレージ換算はHK$8=1哩を維持。移 行期間特典で(客の乖離防止で)3ヶ月はHK$6=1だそうな。安泰のようだが先行きはどうも怪し。苦渋の選択で、マイレージ換算が良いアメックスへの復 帰とする。アメックス社に電話すると前回アタシが三行半つきつけた担当者が「おかえりなさいませ」とばかりな慇懃ぶり。

四月廿二日(火)かつてTrailwalkerで100kmの山歩きなど一緒にしたI君が横浜より仕事で来港。晩に渣甸山の益新美食館でI君、K氏、Z嬢と会食。葡萄酒持込みで料理より葡萄酒の 方が高値では食肆に申し訳ないが上湯(火局)蝦、セ ロリと烏賊の炒め物で豪州はDog Pointの03年のシャルドネ、梅菜(扌口)肉と紅焼豆 腐で豪州のThe Lodge HillはJim Barryのシラーズ06年とCh.nuef du papeの03年。少しづつワインと広東料理が合せられるやうになつた。I君の通勤、自宅は横浜の東横線は菊名近くで仕事場は品川。で在来線通勤だと1時 間かかるため新横浜から品川まで新幹線通勤(笑)。新幹線の乗車時間は10分で便意など催すとトイレに入つて出てくると到着の由。食後、中環に行きFCC のジャズバーで一飲。トイレの壁にかかつた新聞で今日のFT紙のトップ記事は訪日してゐるEUの経済担当コミッショナーが日本市場の閉鎖性を指摘。The Economist誌による「ビ ジネス環境」ランキングではデンマーク、フィンランド、シンガポールに続き香港は7位。台湾が18位で智利が20位でで日本は26位といふ。経済 停滞、少子化など様々な問題をかかへ閉鎖したままでいつたいどうするのかしら。K氏曰く(ビジネス環境や閉鎖性など別にすれば)日本の経済力は身分相応で 身の丈の豊かさ。オイルマネーや金融投資といつた謂わば「虚業」が世界を跋扈するが、例へば原油価格高騰も、航空運賃でみれば運賃は多少値上がりしてゐる とはいへ25年前とほぼ変はらず、ただ燃料は高騰してゐるのだから、つまり燃料供給商以外は確実に減益。オイルマネーが肥える以外は明らかに利潤のない世 の中になつてゐるつてことか。
▼偶然に親の逝去や疾病について2つの話を聞き考へさせられる。一つは米国在住の日本人女性。米国の永住権申請中に日本で母親が亡くなつたが2年だかの申 請期間中であつたため日本に戻りたくても戻れず親の死に際に立ち合へなかつたといふ話。もう一つは香港在住の三十代の、所謂「働き盛り」の男子が豪州在住 の父親の癌が重いため父と暮すために(介護もあるが介護以上に親子として「一緒の時間を過ごすため」)仕事を辞め豪州に戻る、といふ話。自分が先考逝去の 際に何をしたか、できたか……と思ふと自省するばかり。

四月廿一日(月)晩にジムで一時間の有酸素運動。蘇曼殊の『断鴻零雁記』読む。
▼マカオの賭場産業について。マカオの労働人口の14%が直接、賭場産業に従事。そのうち3.2万人が賭場でもディーラーであるとか直接、賭事に関はる仕 事。学歴は中卒でも英語か中国語(普通話)が話せればディーラーになれ、その収入は平均で月収13,266パタカ(約18.5万円)でマカオの平均賃金の 1.7倍と高収入の由。
▼中国各地でのフランス系小売店(Carrefour)での不買運動や世界各地での中国系市民の北京五輪支持運動の激化。辛亥革命か五四運動の如し。中国 政府は冷静な五輪成功支持など訴へるが、信報の社説曰く、中国の現体制下では(直接か間接か別として)官方の支持がなければ広範な民族情緒や排外運動の高 揚は能はず、と。林行止専欄も社説に続けて、世界各地での北京五輪支持運動は、その主体が各地の華人ビジネスマンや留学生、駐在の中国政府系職員らによる もので各地で「黄禍」感を生む点で将来に後遺症を残すであらう、と指摘。日本や韓国など五輪開催を契機に国際社会で確実な地位を得たが中国にとつては寧ろ 北京五輪後に多くの国家との関係改善がまづ先決で、五輪開催=とても各国と同等の資格での地位は得られぬもの。中国政府は海外の反中国勢力台頭の背景には 経済成長続ける中国への反感といふ見方があるが、中国の経済成長と巨額の外貨備蓄を可能にするのは人民の、殊に貧困な地方から都市に流入した労働者たちの 労力にあり(労働者に還元されるべき利潤が経済成長と外貨備蓄にかなり回されてゐる、といふこと)、已に高度な科学技術と資本集約型の経済体制である西側 先進諸国にとつて、その中国が警戒されるほどの地位にあるか、冷静に見るべきと言ふ。中国はチベット問題を含む内政の様々な課題の対処を一歩間違へば、今 は五輪で高揚する「愛国と統一」の勢ひが、いつ「不愛国と分裂」に転化するかも知れず、とする。

農歴三月十五。穀雨。夜半に雨歇む。昨日の雨は春雨とは言ひ難き豪雨にて穀雨どころか農作物の被害甚大の由。昨日の降水量は237.4mmで4月の1日の降水量としては過去最高、黒雨 警報発 令も4月は初。今朝は薄日もさすが香港ジョッキークラブは昨晩のうちに本日の競馬開催取り消し決定。沙田競馬場での来週の国際重賞QE II Cup開催控へ芝養育のため本日の週末競馬はハッピーバレー競馬場。後者は馬場の水はけ悪しく本日も大雨ありとの天文台の予報参考にしての判断。結果的に は天気好転にて天文台がまた嗤はれジョッキークラブの迅速な判断も徒となる。朝から机に凭り天気好転で久々に裏山に入り一時間半走る。ジムで一時間の筋力 運動。午後遅く湾仔。永華麺家で薑葱撈麺食す。メニューでは「蠔油薑葱撈麺」で蠔油=オイスターソースかかつてゐるが蠔油で折角の生薑と葱の旨味が負けて しまひ蠔油なしで注文した方が断然美味い。食肆によつては蠔油のついた料理を蠔油なしにすると嘘でも1ドルくらゐ引くが永華麺家は蠔油なしでも値段は一 緒。肆がセコゐのかアタシがセコゐのか。星巴で珈琲キメてから香港アートセンター。まだまだ地味に5月まで続く香港国際映画祭(第二部)で若松孝二監督の 『壁 の中の秘事』看る。1965年に東京郊外の団地を舞台に、悶々とする浪人生と淫蕩な主婦を主人公とし、日常に潜む狂気を描いただけでも着目に値 す。かういふ映画を看ると市井で狂気がけして昨日今日に高まつてゐるのではなく昭和40年の東京も狂気が潜み、高校生が近所の主婦を衝動的に殺害すること が「けして 2008年の社会問題ではない」と冷静になれる。さういふ意味で1965年のこの映画は大切。で1965年だから団地妻は実は旦那と浮気相手が60年安保 の同志で、革命運動も虚構の愛情も「一時の情熱によるあやまち」なんて語つたりする。だがブラック師匠曰く
この時代、若松だけでなく、渡辺護も山本晋也も精力的に映画を撮っ ていたし、黒澤明のプロデューサーだった本木荘二郎もピンク映画を撮っていたからピンク黄金時代だったのかもしれない。ただはっきり言えるのは、あっしは こんな政治色の強い映画は苦手だということだ。同じ政治色が強くても山本薩夫作品は見事なエンタテイメントになっていたんだから、若松孝二は不器用だった んだろう。
と。 それにしても、1965年の若松孝二の75分のこの映画に香港で80人くらゐの観衆が日曜夕方に鳩まることが凄い。隧道巴士で尖沙咀東。どうでもいい茶餐 庁で夕飯。羅漢齋飯を注文したのは蘇曼殊の『断鴻零雁記』をさつきから読んでゐたからかしら。科学館で先頃亡くなつた楊徳昌監督の『牯 嶺街少年殺人事件』看る。1991年のこの映画、香港首映当時と、そのあと映画祭で1度、さらにVCDでも看てゐるが今回再看は楊徳昌監督の追悼 感もあるが、アタシが看てゐるのが「3時間」作品なのに対して今回の作品が「4時間」の所謂Director's Cutだから。3時間作品に更に1時間は「長すぎ」のやうだが、今でこそ必要以上にスター然とした張震が演じる主人公「小四」の家族の物語、牯嶺街の横丁 のご近所のエピソードが語られ、小四の恋人となる小明の男友だちの変遷なども3時間作品ではかなり憶測であつたが明確に描かれ(殊に校医)、小四の悪友た ちも個性がはつきりとする。何度看ても飽きないのは、単に青春映画に非ず1960年代初頭の台湾の、殊に外省人の不安定な状態が楊徳昌といふ当事者の心情 吐露で描かれてゐるからで、今になつて思へば1991年といふ登輝4年だからこそ、かうした映画が撮られたことも歴史的(ちなみに侯孝賢監督の『非情城 市』は登輝2年=1989年)。映画撮影所が学校(全日制と夜の定時制が象徴的)、不良の少年少女が屯する小公園といふアイスパーラー(白先勇の『孽子』 は台北の新公園)と小四らの自宅と並び物語の重要な舞台となるのは楊徳昌の戦後台湾映画へのオマージュだが、小四が夜遅くの映画スタジオで盗んだ懐中電灯 が小四にとつての夜の生活に明かりを照らす重要な道具となる。長い長い物語の大詰めで小四が懐中電灯を映画スタジオに返す。その瞬間、明かりを失つた小四 が電灯の替はりに手にした刃物……とかうした「劇的」な演出はアタシ好み。楊徳昌がかなり舞台劇の演出を取り込んでゐること、また映像の天然色がかなり 「ライカ的」なこと、またいろいろこの映画で気づかされることあり。19時に見始めて映画跳ねると23時。帰宅途中に車窓から空を早く流れる黒雲の絶え間 に十五夜の月を看る。蘇曼殊の『断鴻零雁記』続き読む。

四月十九日(土)未明より雨。台風が多少香港に近づきシグナル3に騰る。多少宿酔あり昼前にジムのサウナに浴し來記にて叻沙でなく紫 菜四寶粉食す。雨強し。港安病院に入院の某氏見舞ふ。大雨は困るが着る機会の ないナイロンのレインコートやお気に入りの傘をさしたりは多少気分良し。所用済ませ無印でお買ひ物して帰宅。晩に雨強まり黒雨警報発令。昼間なら仕事も休 みの黒雨警報だが土曜晩とはまことに残念。香港電台Radio-4にて今月の毎土曜晩はカラヤン生誕百年の特番あり。今晩はワーグナーの9番。デジタル録 音とCD化に積極的に関はりしカラヤンが1982年に伯林フィルと録音の黎明期のCD盤。白先勇の『孽子』読了。様々な父子の物語がこの物語に登場する。 隠喩はまさに国民党の中華民国といふ象徴的な父性と、近代国家のもつホモフォビア、それと対峙する母性としての新公園の闇、か。「断背」を怒つた父から勘 当された<私>が父から享受できなかつた愛情を新公園に鳩る弟たちに授けること……主題はサリンジャーの『ライ麦』に通じるところ多し。

四月十八日(金)海南島に上陸の台風でシグナル発令。強風吹く。四月の台風警報発令は1949年以来初の由。本日献血。先月二十日には前回の 献血から四ヶ月経つてゐたが眩暈などフラフラでとても献血できず今日に至る。献血すると鬱血が抜けたやうに肩凝りなど失せる。散髪。鵝頸橋の和居和居にて F君とその友人2名と飲む。

四月十七日(木)アタシは自宅でカレーライス食す時はバーボンのソーダ割り、と決まつてゐる。おそらくカレーライスに合ふ酒としては最適。適度な甘味と ソーダの爽快感がカレーに合ふ。印度料理屋に行くとキングフィッシャーなど印度麦酒もあるがカレーにはアタシは麦酒が美味いと思へぬ。印度料理屋のバー コーナーにウイスキーが比較的充実してゐる。でカレーにはバーボンのソーダ割りなのだが飯がハヤシライスとなるとバーボンでは甘すぎて同じソーダ割りでも ウイスキーが良い。今日はハヤシライス食す。で我が家には貰ひ物で珍しくオールドパーがあるのでオールドパーのハイボール。バーSでハイボール注文した時 に如何です?と言はれたのがオールドパーで、これはどうも目白の田中角栄邸の水割りの印象強すぎ自分から飲まうといふウイスキーでなかつたが、なかなかキ レのいいハイボールとなる。食事の時にソーダ系を飲むなんてアタシにとつてはカレーライスとハヤシライスの時だけなのだ。寝しなに白先勇の『孽子』続き読 む。
▼国家統計局が今年第1四半期に中国のGDPは10.6%上昇、に対して消費者物価は8%増と発表。表面的には経済成長がインフレ率上回つたが昨年同期比 で経済成長は0.1%減に対してインフレ率は同比5.5%増。政治問題は敢へて二の次、三の次として党の末端幹部までの汚職、都市開発での強制立ち退きな ど民生問題に加へインフレでの生活難は中国にとつて今後の最大の問題。
▼北京五輪の聖火リレーは各地で妨害受けるが、その妨害活動が中国人の自尊心に触れシドニーでマスコミの反中報道に抗議する中国系市民のデモが1千人参加 の予想を大幅に超え5千人が参加し、各地で五星紅旗掲げ報道抗議や外国製品不買運Ô