香港の自由と言論のため香港特別行政区基本法第23条による国家公安維持の立法化に反対〜! 

教育基本法の改「正」にも反対〜! 反対はこちら。文部科学省の中教審答申はこちら。ちなみに文部科学省サイトには教育基本法の原文すらないのが事実。
文部科学省は他にも「英語が使える日本人」の育成のための行動計画……だって、ダサ〜!、英語が使えれば日本人でもアイヌ人でも朝鮮人でも何人でもよし。
        

2000 年11月24日からおそらくあなたは 番目の閲覧者です。


新しきURLは www.fookpaktsuen.com  既存の新聞に満足できないなら日刊ベリタを読みませふ。富柏村の記事もあり。

七月三十一日(木)快晴。夕方、Happy Valeey見下ろすBroadwood Rdを自動車で降りるに歩道に多くの若者の行列。難民の如し。碧咸(ベツカム)なる選手ら有する皇家馬徳里なる蹴球チイム来週香港にて賽事ありその入場券求むとか。列は遙々香港大球場よりにて球状を二周しCaroline Hill Rd越え日本人多く居住せしこの高台にまで至る(地図)皇家馬徳里今日は北京に滞在にて宿泊の北京飯店周辺には碧咸ら一目拝まんと欲す群集溢れ感激に咽ぶ少女らの姿。黄昏にA氏に相伴し銅羅湾のInside Outにてステラアルトワ一飲。帰宅してカレーライス。睡魔に襲われ新聞うつらうつら読んだのみにて23時のRTHKのニュース聞きつつ就寝。
本日剰本年一月十六日の条につき久が原の畏友T兄より贅言いただく。
歌御会始(明治期まではこれが正称)の詠歌は本人自筆の筆跡本紙をそのまま叡覧に供するならいにて、「半紙を横長に使い」は古伝の歌懐紙の書法。姓名等(以前は位階勲位も。すなわち「大勲位中曽根康弘」など)明記するは、宮内庁の管理体制ならで、歌会の古風に準ずるが為。自筆自署の当紙を聖上の手元にそのまま上げ、陛下自身一枚一枚詠進者本人に対面遊ばす御心にて万余の墨跡すべてに目を通さるるがゆえ、あえて懐紙式正の書式にこだわるが真相。詠進歌は都道府県別に冊子となり、御所内御書斎宝座々右に長く留め置かる。「指定の葉書に気軽に歌を書いて宮内庁まで送ってください」と言えぬは以上が理由なり。ただし、「海外からの場合、用紙は自由で毛筆以外でも可」とは、胡狄蛮夷は歌道美風の限りにあらずといふことか(笑)
余の浅学恥じつつも畏友に余の駄文遡って読んでいただきこそばゆし。

七月三十日(水)晴。夕方に湾仔の地下鉄站より陸橋渡ると五四運動の梁国雄君、立法会議員Emily Lau女史らによる民主派団体の董建華辞任要求署名及び募金活動あり。この時間にこの場所選ぶは香港の夏の風物詩でもある書展(香港ブックフェア)湾仔の展覧会議中心にて開催されており、学生を主に毎日数万人の入場者あり、その群れ湾仔站に戻る道すがらにて、さらに政府公務員の退勤もこの場所多し。署名に応じる者少なくなし。されど7月1日のあの興奮思えば(ちょうど余もこの陸橋より写真を撮る)反応鈍し。この1ヶ月にて23条立法の審議延長され葉ゲシュタボ局長と梁財務司の辞任ありひとまず北京中央の信任得た董建華が形なりにも対話姿勢と世論重視を表明し本日も港珠大橋建設といふ空港建設以来の大型プロジェクトの具体的検討を表明、また71デモについても政府はこの市民運動から社会が受け入れられぬ製作は推行せぬといふ方向性を得、政府のこれまでの施政に誤りがあったことを認め(ただし陳謝はせず)、このような状況において董建華がもはや能なしであることは明白ながら早急なる辞任求めることが社会的混乱に結びつくなら董建華も多少の反省して民意汲むのであればとりあえず行政長官に据えておくことは問題なし、といふのが世論でなかろうか。香港大学の法学部教授陳弘毅氏の主張(廿一日の日剰参照のこと)の通りであろう。そう思うと、民主派がここぞとばかりに董建華辞任ばかり叫ぶのはけして良策に非ず。同じ民主派のMargaret Ng議員が今日のSCMP紙にて国家保安法は確かに多くの国がもっているが民意に基づく法治が前提であり民主主義と法治の手続きを無視した今回の政府の立法化の課程にこそ問題があったのであり、香港が反映維持するためには法治が重要であるからこの立法化もそれに従うべき、と正論述べる。御意。早晩にジムにて一時間鍛錬。帰宅して『神聖喜劇』第2巻読む。

七月廿九日(火)快晴。この季節目立つものにバナナあり。夏休み利用し米国などより帰国する華人子女にて英語でも殊に耳障りな「くちゃくちゃした」加州米語ばかり目立ちたる。畏友S指摘するに彼ら独特の切れ長なる目なるは如何にか、それがシナの華北でるとか華南の地域的な顔立ちに非ず確かにバナナに多き特徴にて、吉田秋生が『バナナフィッシュ』などにて描く米国の支那系の若者の表情それをよくとらえたり。彼らのその米語の会話を耳にするにつけ何処か「これ見よがし」に思えてならず。黄昏にジムにて筋力鍛錬。お師匠さんがCDを「この新しきCD機はデジタルになってCD読み込み遅し」と宣ひたるがCD機は20年前の登場時よりデジタルにてアナログ機に非ずとも指摘控える。晩にZ嬢の買い物つきあい銅羅湾のThe Lee GardenのCovaにて伊太利亜料理。Amexより誕生祝とCovaでの葡萄酒半瓶無料劵頂くがCovaにて半瓶どころか I Molini 00年を一瓶供され「半分までなら無料ながら残り半分に手を出すと数千ドルか」とそれじゃ総武線常磐線沿線の暴力バー(笑)、なかなか美味なる赤を頂き感謝感謝。蟹肉のパスタ。Z嬢のパスタもそうだが味付けがXO醤用いたが如き濃厚さ。Covaといへば一流の料理屋ながら何が驚くかといへば飲み水をいきなりドボドボと、しかもWatson Waterのペットボトルより注ぐことにて、たかだか水に数十ドルといふインチキな店も困ったものだが、せめて蒸留水を玻璃瓶にでも移し変えて供すべき。といふのも店の内装もかなり重厚ながらWatson Waterのペットボトル(写真)が何本もワインクーラーに突っ込まれ客席の隅に放置され、せっかくの統一されたしっくりとした内装の色にこのボトルの異様なる黄緑色が全く合わず。ところでデザートに“Diplomatico al Cioccolato e Ananas”なる一品ありチョコレートとパイナップルがdiplomaticoつまり突出する(外交は国から外に出る事)デザート。英語はもっと過激にて“Sensational Chocolate & Pineapple Delight with Caramelized Cocoa”は読んだだけで胸焼け。デザートワインのVinsantoも美味。
▼広東省よりの香港個人旅行昨日より自由化。個人にて公安にて許可得れば自由に個人で来港可能であり、これに戦々恐々と怯える香港男性諸君少なからず。といふのもこれまで香港から彼ら遊びにゆく一方通行ゆえに好き勝手し放題、カラオケのお姐さんに何かせがまれても都合悪ければ知らぬ存ぜぬで通せたものが、下手すれば香港に来られてしまふ危険性あり。自由化に様々な事象あり

七月廿八日(月)快晴。昼に湾仔の蜀家菜にて四川料理。夫婦肺、四川涼瓜に坦坦麺と紅油抄手。かつて満席が今日は昼の繁忙の時間であるはずなのに客は数組。同じ雑居ビルの他の料理屋はかなりの混雑。数年前までなら香港の四川料理の水準低く南北樓と四川樓が米国人、日本人好みのピリカラで評判であったところに山椒きかせた本格的な蜀家菜の登場かなり衝撃的であったがここ数年かなり四川料理屋も増え水準あがり蜀家菜が目立たなくなったのも事実。またやはり昼に四川というのは香港ではあまり馴染まず、か。黄昏にジム。帰宅してチゲ。Z嬢考案の低カロリー、減塩、野菜たっぷりのヘルシーチゲにて相撲部屋のちゃんこ鍋の如く最近は月イチでこのチゲ鍋。日刊ベリタの記事初めて書く。昨晩『神聖喜劇』の第2巻半分近くの二百余頁読むが「十一月の夜の媾曳」の項この物語にてかなり重要な濡場なのだがかなり飛ばし読み。今宵も続けて読む。
▼董建華、民主派立法会議員と面談。歩み寄りの姿勢見せる。いぜん表面上の柔軟な姿勢に民主派も諸手上げて歓迎もできず。Margaret Ng議員「先週よりはまだマシ」と。

七月廿七日(日)快晴。昼すぎまで浜辺にて週刊読書人など読む。光文社より江戸川乱歩全集全三十巻八月より文庫にて刊行と知る。吉報なり。午後ジムにて筋力、拳闘の鍛錬各々一時間。今宵の夕暮れ美しければ惚れるほど(写真)晩に土用の丑と鰻丼。『神聖喜劇』ようやく第一巻読了。遅読もあるが一行一行深重にて文字を追いつつ意味噛みしめつ気がつけば目は文字追うを止め何か考えていたり思考停止に陥ったりの連続。昭和といふ時代にこれほどの小説が出ていたことに驚愕するばかり。
▼25日に親中派の御用団体・工聯会主催せし保安局長葉劉淑儀の送別いわば支援大会にて葉の宣ふに23条立法にといては何度か自らの態度に欠佳ありとて何れにせよ自らは中国人にて「愛国是天性天生」と。浅学。君子とて愛国の念天性に非ず。愛国とは後天性の政治機構と権力に対しての観念にていくらその政治権力愛しむ葉といへ生まれたばかりの赤ん坊の頃はあんな憎たらしくもあるまひに。人は育つなかで政治性思い知らされそれを恨むかこよなく執着するもの。葉はあきらかに自らその渦中に入り権力弄ぶことに興奮感じたる人。その権力との自慰に巻き込まれるは我々にとつて迷惑千万。

七月廿六日(土)台風過ぎて不安定な天候続く。朝曇りにてこれ幸いと裏山を登り走り始めれば空は晴れ暑さ極まり心拍数は普段なら二三十分も走れば安定するものが155まで高まるばかりにてこれは身体に悪しと6kmほどで早々に切り上げる。マンションのプールにて一泳。水泳の世界選手権にて北島が平泳ぎにて世界新記録にて二冠制すが昨晩のNHKのNews10にて北島君の泳ぎを分析、平泳ぎの場合、足を縮めている時が水の抵抗受け進み遅くなるそうでストロークを少なくし水の抵抗を抑えスピード上げたと説明しており、それを実践してみるが身体伸び切ったままでちっとも前に進まず浮いているばかり(笑)。オリンピックだの世界選手権だのの後はそれに影響受ける素人少なからずプールでもどう見ても一流選手風のダイナミックな泳ぎを勝手に想像し実践してみるトウシロウの可笑しさ。午後ジムにて一時間鍛錬。中環の香港図書。2004年版のFilofaxすでに出まわる。香港大学の図書館。中環に戻りFCC(外国人記者倶楽部)に立寄り。晩に銅鑼灣はExcelsior HotelにてZ嬢と待合せ伊太利亜料理のCamminoに食す。ホテルは外来の人多くかなりの人出、SARSからの復活に驚き、この香港なる街の強さ感じ入る。Pomino Biancoの00年は杯がすすむがBarbera OutinのAbrate01年なる赤はいただけず。このCammino、小さい料理屋にてそこそこ評判であるが一度も訪れる機会なく今回初めて。確かにホテルの伊太利亜料理屋にしては気さく、味もまぁまぁ、客もよく入り盛況。ただし酒水の値段は一流にて前述のPominoを一瓶HK$298、Barbera Outinが一杯HK$70、それに珈琲HK$35と確かに美味いエスプレッソがdoppioにてHK$55にて税込みではHK$500越えてはSabatiniより高し。仙台にて夜半より今朝に二度震度6の地震あり。久が原に住まふ畏友T君に余のサイトお目にかかりT君かなり熱心にご覧になっているようでこそばゆひ思ひ。T君より非公開なる彼の日剰を二日分ほど拝見するがその素養溢れる内容に余は拙文公開することに恥じ入るばかり。T君より余がいつぞや五代目歌右衛門最後の舞台を国性爺錦祥女と綴りしこと誤りで桐一葉黒書院の淀君と指摘あり。T君の電文に「マッカラン独酌の酔いに」とあり同じ頃に余もマッカラン独酌しており、この友情に破顔一笑。
▼イラクへの自衛隊派遣となるイラク復興支援法案参院外交防衛委員会にて与党審議打ち切りの暴挙で強行採決し可決、続く参院本会議に緊急上程され可決。野党は小泉内閣不信任案を共同提出し民主党菅君気勢上げど数の論理には逆らえず自民党過半数の議会において公明党に突然の反旗翻すを期待でもせぬかぎり自民党の勢い止めることできず。総じて、国民が自民党選んだ結果のこの過半数にて、公明党支持する諸君も結局は対抗勢力にならず自民党の強権支える役割ばかり、ここまで安定せし政権にてなら何でもやりたい放題、それを許すは国民の選択の結果。イラク法案での自衛隊派遣に反対の国民過半数を圧倒的に超えるそうだが、結局、自民党に投票したことは自衛隊派遣することで、この大きな矛盾。それではほかに自民党に投票すべき理由でもあるのかといえば景気回復もできず、つまりは「小泉さんなら」の如き思慮浅き愚考にて国民の過半数は何も考えておらぬ、ということ。それを阻止できるだけの野党もなく、ほぼ一党独裁。しかも中国共産党であるとかシンガポールの官僚制といった優秀なるテクノクラート集団に非ず、この日本の一党独裁においては優秀なるテクノクラートは自民党にて少数にて、その多くは所詮、国政など理解できぬ田舎漢の利権屋か「家業」継いだだけの凡々息子ら、彼らが数あれば基地外に刃物、「我々の世代が日本を変える」だのと気勢上げやりたい放題。最低。
▼岩波の『世界』にて「韓国からの通信」長く連載した「T・K生」は匿名にて、文芸春秋『諸君』だのはこの韓国人が実は存在せず『世界』が韓国独裁を非難(=北朝鮮評価)するための「でっち上げ」でTK生は実は『世界』の安江編集長ぢゃないかなどと憶測されもしたが(でっち上げといへば山本七平のイザヤ=ベンダサンも懐かしいかぎり)日本に長く滞在した韓国人神父がこのTK生であると名乗り上げ日の目を見る。朝日ばかりか日経もこのニュース取り上げるがいったい何のことかわからぬ読者も多かろう。『世界』がマスコミに取り上げられるなど珍しいこと、次は『世界』廃刊か、とふと想像。

七月廿五日(金)台風海南島のほうへと去り余波にて驟雨幾度かあり。日刊ベリタより電文拝領。今後記事送稿。『世界』八月号でこの新聞を知りサイードとチョムスキーの言葉をそこに見て、その紙面一読してその報道姿勢に共鳴し記事の送稿謹んで引受ける。いつものことだが「まずは道具」と(笑)時事ネタを追おうと思えばやはりラジオは必要、と言い訳、帰宅途中に銅鑼灣のSony StyleにてICF-SW100なる高性能ラジオ購ふ。ラジオである、ラジオ。インターネットの時代、インターネットでラジオ放送が聞ける時代に今どきラジオ、しかも日本での定価54,000円のラジオはもはや基地外アイテム。Sonyの製品でこれは汎用では最高機種SW77に続く小型高性能。誰も理解できまひ。だが小学生の頃にBCLの虜となりドイチェベレからアンデスの声、そしてアジアは平壌放送にて偉大なる領袖の主体思想に拝し北京放送から文化大革命のプロパガンダを得た少年は老いてもラジオ愛す。帰宅して鯛のあら煮食す。日刊ベリタにアンテナ記事二本書き送る。いくつかたまった雑事片付け四更に至る。Bowmore一飲。シングルモルトのヰイスキーに一時凝り個性豊かな味も当然美味く面白いがシングルモルト楽しむことはいわばスポヲツの楽しみに似て厳しい事の向ふに快楽あり。つまり心と肉体を癒すにはシングルモルトは合わずブレンドヰイスキーこそ疲れ癒し安眠を誘ふと悟る今日この頃。
▼本日の新聞に昨日退任せし保安局長葉劉淑儀の退任に際しての返礼広告あり。いくら御用団体及び個人より退任で厚遇を受けたとはいえ一公務員が一身上の都合で退任する場合に個人広告を新聞に載せるだろうか。やはり尋常でなし。
▼沖縄より香港訪れしモヒカン髪も精悍なるモックン似の凛々しい19歳の青年、21日の新聞にホテルより失踪と記事になったが、実は香港島にて壮絶なるサバイバル4日続けホテルにたどり着く、とSCMP紙の1面に記事あり(通常の余の判断ではこのテの被害者?のお写真など余は掲載せぬがご本人がキメた顔で写真にまで写るほどの度胸にて敢えて多少ボカして掲載した次第)。この青年、先週末に赤柱(Stanley)観光せば地場の青年にわずかHK$80の現金を鞄ごと引っ手繰られ一文なしに。彼の職業は海外の日本人相手にワックス掃除用品売るセールスにてこれまでにシンガポールだの台湾にも渡航経験あり。だが助け求めようにも中国語は当然英語が全く話せずどうすることもできず。人に近づけば柄の悪い青年に近づかれたかと勘違いされ物乞いだと思われ避けられ、とにかく中環まで歩こうとバス路線に沿って歩き出したが疲労と空腹に襲われ、さすがに何人か助け求めても相手にされず警邏中の警官も言葉わからねば紙に書けと言われ書いても警官それを解さず去る始末。4日かけて!中環へと着き(余でも走って3時間あれば到着しよう)次なる関門はビクトリアハーバー(笑)。ホテルに戻るにはフェリーに乗らねばならず。そこで青年、小銭拾いに精を出し目標額はHK$2.20のスターフェリー運賃。3日かけてHK$2.20を集め!念願のフェリーにて九龍に渡り(実はフェリーは二等ならHK$1.70で乗船可、とSCMP紙も揶揄……笑)ホテルにたどり着いた次第。何故に助けの一つ求められなかったのか不思議だが、台湾でもすでに二度引っ手繰りの類の被害受けており、その際も誰も助けてくれず、それがトラウマとなり今度もサバイバルに徹したそうな。10数年前に空港にて「ツアー同行者とはぐれ絶望し」空港近くを徘徊、工事現場にあった可燃性の石油だかかぶり焼身自殺図り助けられた事件あり。それに比べれば九龍のホテルまで生還の心意気だけでも立派と誉めるべきか(笑)

七月廿四日(木)朝目覚めれば風雨強からずも台風警報八号発令されしまま。朝寝貪れば八時十五分に八号警報解除されすわ出勤となり交通機関の混雑は想像に易し。公共機関、銀行など八号警報解除から二時間後をメドに再開が通例にてそれに応じての出勤の様いざ召集あらば鎌倉に急ぎ馳せ参じたる御家人の如き忠勤ぶり。『デイヴィッド・コパフィールド』読了。主人公が作家となり高名を得てからの記述にはさして興味もなし。銀行再開確認して旅行用にT/C準備。最近の銀行「お得意」と平客の扱いの差に凄まじきものあり隣客との間仕切あるboothにて椅子に坐らされ懇切丁寧なる対応。金鐘の運輸署免許中心にて国際免許更新。手続きに僅か10分要すのみ。郵便での申請も可。天候は八号警報解除されたが雨風寧ろ強まり連日ジムにも行く気も失せCovaにてtiramisu購いGordonのginとMartiniのvermouthも仕入れ帰宅。早速Dry Martini飲みつつ新聞読み、煮うどん。月刊『東京人』のホテル特集読む。東京にバブルの頃にも想像できぬほどの高級ホテルラッシュが2007年まで続く。そういった再開発と商業施設の賑わいといへど結局は内需ばかりにて、それも主婦層であるとか若い女性といった申し訳ないが今後の更なる経済効果が期待できぬ層に因るもの、国内の資本だけが巡回するだけでは長期的な景気回復など期待できず。冷静に世界中からどれだけの商務、観光の客が今後東京訪れるかを考えるべき。依然規制多く外国企業が入り込めず諸物価人件費高い割に言葉通じず諸作業丁寧確実通り越して時間と手間ばかり要し商いの機会は他の亜州諸国へと流れる現実。その空虚なる中心にホテルだの六本木ヒルズだの汐留ナントカだのと開発ばかり進みいったい何を外から誘致しようといふのか。『神聖喜劇』少し読む。
▼今晩28年に及ぶ公務員生活終える保安局長ゲシュタボ葉劉淑儀女史多くの市民から温情あふれた送辞だの花束に囲まれて辞任。親中派の御用連中の仕業、虚態。葉局長、たかだか地方自治体の一局長の立場ながら昨日突然の北京訪問にて北京中央の関連部署の長に辞任の挨拶とか。香港特区政府の北京事務所もこの葉局長の突然の上京攫んでおらず。福岡県公安委員会の委員長が実質的な引責退職の際に上京し国土交通省だの総務省の大臣クラスに面会の如き非尋常なる行為。単なる辞任の挨拶どころか董建華辞任後の第三期の将来に向けての布石ではなかろうか、といふ憶測あり。今回の辞任は愛娘の進学のための北米移住だそうだが(娘も葉局長の娘といふことで香港でかなり色眼鏡で見られるのも事実)2007年には娘も大学に進学しており葉にとって香港政界復帰には時期的に適合。まさか行政長官に推挙あるまひが政務司司長の人選に挙がる可能性など否定できず。葉本人の性格などかなり歪んだものあり問題あるが、それ以上に問題は親中の左派にとって首長級の指導力ある人材乏しきこと。御用政党民建聯の曾金玉成が最有力候補であったが50万人デモでの「たわけ」ぶりにてすっかり男を落とし右往左往する言論はすでに政治的には「終わった」感あり。そうなると不快に思われるもpopularityかと思えば葉女史は左派にとって重要なる人材。かりに次期行政長官が梁振英ほどの親中人士になれば幸いだろうが仮に直接選挙が実施され中道リベラルな行政長官などになったとした場合、政務司司長として葉女史あたりが起用される可能性はなきにしもあらず。南無阿彌。

七月二十三日(水)台風接近。訪港中の英国首相ブレア君明日離港の予定が台風にて香港に足留めくらっては東亜歴訪中断して帰国すら望む世論に立ち向かえず予定切り上げ本日午後離港。短縮された日程にても英国に多く投資せし李嘉誠君へのご挨拶は避けられず大英帝国の首相たるものがたかだか一企業の本社訪れ李嘉誠君に謁見。ブレア君の帰国が半日以上早まり台風も英国世論の怒りの如し。午後台風警報1号が3号に上がる。早々に帰宅。飲み始める。晩にNHKのニュース見ていれば、イラクにて米軍狙った攻撃多く米軍兵に死傷者が増えています、と。強盗が盗みに入った家の者に反撃されるを強盗の側から災難と見るが如し。台風接近続くが雨風なき曇天、天気悪化せず、明日は台風警報8号発令とサバ読みしての深酒を後悔しつつ明日のんびり読む打算が危うくなり溜まった新聞読む。
▼香港の立法会にては夏休暇前に議会も終盤迎えているが継続審議の23条立法にて最も悲惨な光景は保安局常任秘書長(署任)の湯顯明にて、かつてゲシュタボ葉局長君臨せし折は葉の威光背に言いたい放題で過言癖あるのか「23条反対は少数」などと宣ひ天安門事件での北京政府の発言人務めた袁木に喩えられ「香港の袁木」とまで云われたが葉局長の辞任(事実上の失脚)により立法会審議などで反対する民主派の矢面に立たされ彼を守る者などおらず孤立無援とはまさにこれ。そもそも保安局代表するほどの器に非ぬ小人物にて立法会での答弁見れば表情と仕草に明らかに神経性疲労あり。本人の健康福利の為にも更迭すべし。
▼劉健威氏が信報の連載にて蘋果日報に掲載された、民主派として活躍目立つ梁家傑氏(大律師公會=法廷弁護士会前主席)非難した文章を逆に非難。その元の文章は「84年の高山大会にてアンタは何処にいた?」と、梁家傑氏がいくら民主派を気取るも香港の民主化運動の記念碑たる84年の高山大会(この集会が土瓜湾の高山劇場にて開催されたことからこの名あり)にすら出ておらぬのだから民主派を名乗るに価せず、という趣旨だそうで、それに対して劉健威氏が84年の高山大会に出ておらぬ者が民主を語る資格がないなどという発想ぢたいが権威主義にて、50万人デモあり民主だの市民パワーなどの威厳高まったと見るとすぐさまこういった陳腐なる発想の輩現れることを非難。御意。理想に燃えた共産主義者が政権奪取して異常なほどの権力者となる様は『ドクトルジバコ』だの中共幹部の失態みれば明らかなこと。
▼産経新聞読む珍重なる築地H君より。今月上旬に北京で日本人女子留学生にセクハラの結果、中国当局から国外退去処分を受けた中国人民大学の日本人教授が社民党の元幹部党員で本人の履歴書には土井たか子党首の元秘書とあり社民党の対中政策の実質的な相談役だった、と産経新聞この時ぞとばかりに社会党潰しに躍起。本来、産経の敵(=中共)追われし者は産経庇護すべき?、そもそもセクハラなどといふ概念こそ「産経的には」自由だのジェンダーフリーなど「行過ぎたフェミニズムに基づく誤った主張」なのではないですかね、とH君。御意。
▼新聞見てMont Blanc社が評価高い万年筆に留まらず皮製品だの眼鏡腕時計の類まで手広げて遂に男性化粧品まで。たかだか万年筆屋のこの暴挙。結局はコストかかるばかりで大した売上げ期待できるまひに。本来その家業に精進すべきところを色気見せその質落とすは本日DMにて届きしMandarin Oriental Hotel香港のかつては心地よき酒場Chinnery Barが同じ轍を踏み数年前より食い物供して売上げ増進図り(昔から頼めば何でも食堂より運んだがけしてそれを商売とはせず、あくまで腹空かした客への便宜にすぎず)今では名もThe Chinneryと酒場の名を払拭。ますます足遠のくばかり。
▼本日のSCMP紙に記事あり董建華の任期2007年の半ばまであるが辞任せずとも早ければ2005年末には満期退任の可能性もあり、と。何かと思えば董建華、その実力は乏しきところ休暇もとらず業務に明け暮れるは事実にて50数日ある年休のうち毎年数日しか消化せず今年夏も梁錦松と葉劉淑儀の辞任にて多忙極め年休返上の見通し。このままいくと貯まりに貯まった年休を全て消化すれば2005年末より2007年7月1日までの有給休暇となり、必然的に後任の就任が早まる、と。ここまで書かれてはもはや罵倒するにも哀れ。

七月廿ニ日(火)余の日剰五月ニ、三、九日に綴りたる香港映画祭にての通し劵に関する主催者及び香港電影資料館の不誠実なる対応につき香港政府廉政公署に訴えし件、廉政公署より途中経過と連絡あり主催者側この非を認め返金に応ずることも検討の余地あり、と。直接その示談に入るか更に一ヶ月待ち廉政公署の沙汰待つかの選択あり。余はこの通し劵にて小津特集見れぬは事実乍ら第一部の四月の開催期間内に十分に映画堪能せし事実あり、せめて小津映画鑑賞に費やしたる費用のみ余分の出費にてそれ還付されれば十分と判断でき半額程度の返金あれば利に適ひ次回開催以降にこの点明確なる指示あらば満足と申す。一ヶ月ほど廉政公署の調停待つ。夕方に湾仔春園街の楊来雷にて涼茶。ジムにて鍛錬。藝術中心にてLarry Clarkの“Ken Park”観る。香港映画祭にて見逃し民間での上映待ったが内容猥褻と一部削除され其観たれば見応えなし。猥褻なる箇所は少年のタオルにて首絞しめつつの自慰と射精、少年二人と少女による本番並びに口交の場面。それだけ凝視すれば猥褻なる見方もあろうが少年の自慰は精神病み閉ざされた世界にてプロテニスの女子シングルスの試合テレビ中継眺めつつその選手の放つ声と精悍さに感じ入っての興奮、少年少女の3Pも虚実ばかりの世界と親世代の政治的なる性に対しての若者の自由謳歌にて映画の主題からして削除できぬ重要なるシーンなり。この削除版上映に対して藝術中心削除なしの原版上映決定した次第。民間の上映にて猥褻と削除を公営の藝術中心が原版上映とは日本にては考えられぬこと。香港にlibertyあり。原版見てこの映画の素晴らしさ改めて認識。この作品何故に米国にて上映できぬか、核心は米国掲げたる表面上の良識に対して実は存在せしnegativeなる世界の暴露ゆえ。米国にとってイスラム原理主義のテロが表面上の敵であるならLarry Clarkの如きは内なる米国への挑戦にて許せず。二更に北角の寿司加藤。独り新聞読みつつ、螺貝をつまみ熱燗一飲。ふと近隣に住まふH兄を電話にて招飲。握り食す。H兄と談義三更に至る。英国首相ブレア君一連の東亜細亜歴訪の最後に香港に到着す。本国にてはイラク侵略での情報操作とBBC報道に絡む軍事専門家謎の自殺ありブレア首相への不信及び辞任要求の声高まり東亜歴訪どころの場合でなし。
▼連日数数多の塵芥メール受取る。英国MessageLabsの調査によれば塵芥メール出回る率このところ甚だしき高騰見せ本年一月平均4.1通につき1通の迷惑メール届きしところ四月には2.05通に1通。つまり2本に1本はわけのわからぬメール受取る事実。欧州連盟の数字に拠れば2001年に塵芥メールの徘徊ゆえに全世界にて英?64億浪費され5億四千四百万人のネット利用者にて割れば一人あたり英?12の損失と。ビジネス上メール処理に日の平均49分を費やし8時間労働ならば約1割がそれ。そこでゴミメールの処理していることの無駄。ちなみに中国のネット利用者6800万人に達す。現状にてはほぼ規制できぬ環境にて自由なる情報の流通あり表面上規制されし世界にてネット活躍。6800万人は人口比でいえば僅か5%ながら着実に知識層、ビジネス層がこれに該当。
▼いつも『信報』ばかりの引用で気が引けるが新聞紙一紙にこれだけ読むに値する記事、論文が載る事実を日本の読むに値せぬ記事多き新聞は真摯に反省を要すが先日の林行止「専欄」は環境問題を取上げ、地球の生活環境は悪くなったとばかり言われるが経済学者として見れば地球の人口は1964年を最高に現在は減少傾向にあり、それに対して穀物生産は60年を100とした場合に80年代中葉には135まで増加し現在でも115を維持し穀物(小麦)価格も50年代に比べ六分の一にまで下落。勿論これが南北格差などの問題を引き起こしていることは明白だが、それは富の分配や不均衡、政治的な問題であり、純粋な生産と価格の問題とは異なること。また環境保護で化学肥料の使用も問題になっているが50年代に先進国で使われていた化学肥料を100とすると90年代には560まで増大したが現在では460まで減少していることは無農薬への関心の高まり。動物の種の絶滅も懸念されるが20世紀後半で途絶えた動物は全種の0.7%に過ぎず貴重ではあるが自然淘汰の範囲と解される。上水道も70年代に全世帯の30%に普及していたものが80%にまで上昇、風呂とシャワー設備が家屋にある比率も22%→58%、慢性病と流行病の感染者数も70年代に10万人中450名だったのが80名にまで減少。総じていえることは工業化が地球環境破壊の主因とされるが明らかに環境改善が図られている部分もある。そして環境問題で重要なことは先進国ほどそれに声を大とするが非先進国にとっては環境問題など優先していては経済発展もあり得ず、またソ連や東歐の社会主義国家が実は環境問題については資本主義国家より深刻な状況にあったことも事実。環境問題について一つ提言できるととして林行止が挙げるのは1968年にScience誌にG. Hardinが述べた“Freedam in a Common brings ruin to all”なる概念にて「地権者が明確でなく自由放任された土地や河川は荒れる一方」であり、これが意味するところは地産管理が上手くいけば地産は有効に活用されるということ。林行止らしい徹底した経済学としての分析。だが環境破壊でも世界的な海洋の水質、大気汚染及びオゾン層破壊などの問題についてはこの数理論では問題が解決されず。

七月廿一日(月)台風の余波にて通り雨あり。
▼23條立法化に対しての、また董建華による治世の不満から政治不信高またるが保安局長葉劉淑儀と財政司司長梁錦松の辞任及び北京詣果たした董建華への北京中央の続投支持に因りひとまず政治熱下がった感あり。興味深き事はこの冷めた?落ち着いた状況の中でそれを表すが如き評論がいくつか出始めた事なり。劉健威は『信報』の連載にて「血肉模糊的中産階級」なる文章を載せ「50万人デモで中産階級はどこに?」と書き始め、デモに中産階級がいなかったとは言わぬし、人数も多く今までデモに参加などしなかった中産階級の友人たちは皆参加した、が、民主派人士であるとか民主党が彼らを代表するのかどうか、寧ろ彼らがデモに出たといふことは彼らを代表する政党がないから自らが立ち上がったのであり、最も荒謬なるは自由党で当初の立場を翻し田北俊が突然(行政会からの辞任で)この民意の最前線に降りてきて最大の英雄となった、と。「香港には文化的な中産階級もいないし政治的なそれもいないのであり、政治的なリングの上では彼らは牛頭角の下町のオバチャンと一緒なのだ」と結ぶ。政治的な泥臭さからも市民の世論からも距離置いた「一流の文化人としての」劉健威らしい立場、としか言えず。同じ『信報』の文化欄に頸翔なる筆名の隨筆もデモの民衆運動が完全直接選挙の要求など代議政制へと動いているが、それを否定せぬが他の想像だの方法はないのか、と。チェコの劇作家で大統領も務めたハベル氏の“The Power of the Powerless”にある「活得磊落(小事に拘らず高大なる意思をもって活きる)」なる言葉を引き、生活や労働条件の厳しい香港に必要なのは「尊厳をもって活きる」ことであり、政治改革も必要だがまず尊嚴のある生活なくしては政治改革も瓦解するのでは?と。この隨筆も言はむとする処は解らぬでもないが素直に政治改革も生活改善の一途であると思えばここまでシニカルにならずとも、と思えなくもなし。同じ日の紙面に載った二つの文章読み結局、いったいどうすれば彼らのお気に召すのか理解できず。それに比べると同じ日の『信報』に特区基本法委員であり香港大学の法学部教授陳弘毅氏の「民主派に投票して行政長官直接選挙を」なる分析は明解にて陳教授曰く董建華辞任要求の世論強まり確かに董建華が自願退任すれば事は成すが、それは一国二制度と香港の憲政発展に無益であり、民主と法治は等しく重要であり世論により董建華辞任を求めることは法治精神の犠牲あり、最善は2004年の立法会選挙にて民主派に投票し民主派が多数になることで基本法45条に基づき立法会で三分の二が行政長官直接選挙実施に賛成し可決され、それを行政長官が同意し全人代が批准すれば2007年の第三回行政長官選挙で直接選挙の実施が可能、と。陳教授はこの可決がされれば香港の民意尊重にて行政長官がこれに同意せず全人代がこれを批准せぬことはないであろう、と。その理由として、この、現在は行政長官選出で投票権なき市民が直接投票といっても基本法45条に則れば完全直接選挙ではなくあくまで「広汎なる代表制をもつ指名委員会が民主的手続きを踏んで指名」した被選挙人に対して選挙人=投票権のある市民全員が投票するもので、それは米国式の間接選挙とは異なり、政府にとってみれば意中になき者が候補者になるわけで受容の範疇、と。但し陳教授指摘の通り、行政長官の直接選挙は実現できても立法会ぢたいの選挙については全面直接選挙実施に60名の議員定数で三分の二の賛成が必要であることを思えば30議席の地区別直接選挙で選ばれた議員全員がに合意してもの更に11議席もの職業別選挙枠の議員の同意が必要であり職業別枠の議員にしてみたら議席失うこの全面直接選挙には同意し難く直選はかなり困難なのが事実(陳教授は地区別直接選挙枠を30名としているが24名の誤り?こちら参照)。
▼新潟県加茂市長の小池清彦氏がイラク特措法廃案の要望書を国会議員全員と閣僚に送る義挙(19日朝日「ひと」欄)。小池氏は地元神社の52代目宮司で防衛庁の元局長。それなら生っ粹の保守派だが「イラクは小規模不正規軍によるゲリラ戦場。自衛隊を送れば明確な海外派兵になり憲法9条違反」と小池氏。首相小泉三世のイラクでの国内紛争は「夜盗や強盗のたぐい」「殺されるかもしれない。相手を殺す場合もないとは言えない」といった発言に対して、小池氏は80年の米国からの防衛力増強圧力高まった折には防衛局で防衛力整備計画の1年前倒しに取り組み92年のカンボジア派遣ではPKO協力法案の立法作業に係った教育訓練局長の時には「危険を冒すな、一滴も血を流すな」と現場を指導したが防衛力増強は「あれも米国の言いなりだったが増強の意義は日本にもあった。今回はブッシュ戦争の尻拭いにすぎない。自衛隊が命をかけるのは祖国防衛だけでいい」と小池氏。現在は無所属市長3期目で「労組の支持を失ったら市長職から身をひく」と公約に掲げ市民の注文即決を心がける。この要望書受取った自民党議員より「戦争に流れる空気を変えるためお互い頑張ろう」と電話あったそうで「日本が大東亜戦争に突き進んだ時、風潮を怖れず正しいと信ずることを言うべきだった。今、そんな思いで行動している」と。世にイカサマ右翼蔓延る中、この小池氏だの後藤田氏、亀井静香チャンだの自衛隊、警察官僚であって実際に兵を動かす力もったある保守のみ事実を冷静に見てとる。小泉三世といい安倍&石破坊やといい中国を刺激するだけの麻生だ江藤だといった議員らも保守ならば小池、後藤田といった保守の真摯なる神髓を学ぶべし。
▼先週末に北京に参った董建華、Coquinteau総書記と温家寶首相に拝し北京中央の「董建華長官の率いる特区政府の指導で香港市民が目の前の困難を克服することをなお信じている」だの「香港市民が香港の根本的な大局を重視し香港の安定を維持することをなお信じている」といった発言を頂き一先ず董建華解任なき意向授かる。が、董建華の不徳については今回は解任なきことで赦しを得たがもはや背水の陣。たんに江沢民ら前指導部が董建華再任にて熱烈支持した過去あり董建華解任は江沢民の面に泥を塗ることになるゆえの表面上の続投にすぎず。結局はすでに董建華に指導力もなく50万人デモの如き大きな市民反発さえなければ二期目満了まで行政長官の椅子に坐られるだけ。次回の行政長官選挙については『大公報』だの保守派民建聯などが(現在の選挙人による代表選挙を廃し)市民による直接選挙実施を示唆しており(ちなみに直接選挙実施は今のところ行政長官だけで立法会の議員選挙は職業別枠の維持のままで全面直選は示唆しておらず)、それと23條立法の仕切り直しにより(またCoquinteau総書記と温家寶首相の中央新指導部に対する香港での高い高感度により)市民の反政府世論を抑えやふという魂胆。行政長官の直接選挙は香港の自治と民主制の上で北京政府にしてみればかなりの譲歩だが董建華だの親中左派だの支持激減の民建聯などに任せておいて市民の反発食らうよか所詮「地方自治体」ゆえに民主派の取り込みにより安定した政治体制の維持を図ろうとするもの。

七月廿日(日)曇。昨晩はM氏と飲みしはジャックダニエルと博多練酒で心地よく熟睡して目覚めればここ暫く週末もずっと快晴であったものが今朝は曇り空に通り雨あり台風の1号警報まで発令されており此レ幸ヒと昼まで溜まった新聞雑誌の類読む。昼からZ嬢と湾仔の詩藝戯院にて映画『藍色大門(台湾の原題は『藍色夏恋』)監督は易智言(2002年台湾)観る。陳柏霖と桂綸美といふ青春映画でいえば裕次郎と北原三枝の如き若いといふことだけで何も他になき世代の輝き。台湾の今の様。桂綸美は監督が台北市街にてスカウトした新人ながらかなり心理的に難しい役を上手く演じてすでに芸人である陳柏霖を凌駕した感あり。陳柏霖はココリコのTV「黄金伝説」で企画モノユニット「HC3」としてシングルデビューしてるとか。終わってジムに馳せ2時間鍛錬。途中でジムを出たZ嬢より夕方電話あり百年ぶりにPacific Placeにて落合い買い物してDan Ryan'sにてKilKennyのale一飲してGreAteにて食材購い帰宅してDry Matini飲みLouis LatourはCuvee Latoutの00年でピーマンの肉詰など食し晩餐。

七月十九日(土)快晴。 Mount Parkerの峠越えて大潭。大潭のダムの櫃水碧く(写真)爽快なる気分で大潭道まで走りおりる(写真)海へ行くのに日焼止メ購うと香港国際学校前のRedhill Plazaに寄ると曽て鳴り物入りにて開業せし此の南区の高級商業施設も辛うじてスーパー営業するのみで店子の多くは空となり悲惨な光景。海で『デイヴィッド・コパフィールド』第四巻の続き読むが日差しの強さに頁進まず朦朧。夕方帰宅して晩に日経Galleryにて余の連載の編集するM氏と同僚にて曽て『月刊香港通信』にて余の“South China Taking Host”の編集をしていたS嬢が拙宅に参られZ嬢の肴にて宴会。M氏より福岡の若竹屋酒造場の博多練酒を贈られ食後に一飲。濃厚な練乳の如き練酒に古来の酒がもった滋養強壮の凄さを納得。S嬢よりの福砂屋のカステラにZ嬢の自家製マンゴーシャーベットとデザート三昧。

七月十八日(金)快晴。黄昏にかなり久々にジムにて鍛錬。湾仔の六國ホテルの粤軒。成城にて骨董品など商いをするI夫妻来港旧情温める。香港大博物館の香港早期飲食場所のカタログをお渡しする。お礼にと『萬國新語』なる明治初期のいわば世界面白話のような草紙いただく。I氏とは暫く音信途絶えていたがI氏が香港のCitysuperの創業者I氏の逝去知り網上にて検索かけたら余のサイトに遇し音信再開したもの。冬瓜のスープ秀逸。Z嬢香港仔隧道での交通事故の渋滞に巻き込まれ遅れて来る。I夫妻と別れいったんはMTRの湾仔站に向かっったが電話もらっていたI君に返信すると週刊香港K氏と中環は蘭桂坊の花串にて打合せ?中とのこと。誘われ花串。焼酎二、三杯ご馳走になる。www.fookpaktsuen.comがすでに余で登録されたるを知り慌ててこれをURLとする。
▼4月29日のみどりの日を「昭和の日」とする祝日法改正案衆議院にて可決。国家主義の強まりに反対する声もあり、それと同時に考慮すべきは昭和を先帝の誕生の日を以て祝すのであれば近代日本の礎きずたる明治帝の天長節11月3日は昭和23年に文化の日とされたが「明治の日」に改めるべきであるし明治と昭和を祝し大正帝を忘れるは失礼、8月31日を大正の日とすべし。更に今上帝崩御されるもしもの不幸あらば「平成の日」も設けるべきにて御帝の日増えれば国民の歴々の帝、陛下と皇室に対する御尊敬と敬愛の念も深まろうかといふもの。

七月十七日(木)晴。朝の気温は28度に涼を感じる。富柏村のサイトにつながらず。ついに自由なる言論への妨害か、と思ったが(笑)たんにtripod.comのサーバー不調。他のtripodのサイトにもつながらず安堵……はせぬが事由は理解。昼すぎに復活。このサイト、香港で時事ネタあると閲覧者多いわけで保安局長とFinancial Secretaryの辞任は日本でも大きく報道され恐らくこのサイトご覧になろうとして見れなかった方も少なからず、か。晩遅く香港賽馬中心のF館長一年ぶりの来港で尖沙咀の徳功林にて精進中華。初めて訪れた店でありながら給仕の暖かい接待はさすが。
▼昨晩の保安局長保安局長葉劉淑儀の辞任のあと午後9時過ぎに財政司司長(Financial Secretary)梁錦松も辞表提出即刻辞任承認されたことを朝のニュースで知る。梁錦松は董建華の再任と問責局長制(内閣制)の実施に当り鳴物入りで政界入りした金融界の大物ながら景気対策がいまいち功を奏さずにいたのは世界的な不況の中で本人だけの所為ではなかつたが財源確保のための増税で自動車購入時の税額アップを公布直前に自らが粗忽にもToyotaのLexus購入しHK$20万を節税、さすがに董建華もそれを庇いきれず廉政公署(ICAC)の捜査入り一昨日その調書が律政司司長(Secretary for Justice)梁愛詩に提出され梁愛詩がこれを立件するかどうか決めるのだが、これまでの董建華の姿勢と梁愛詩の司法官とは思えぬ不公平なる思考からして梁を庇うのが本音だろうがそれをしたら市民の反発更に高まるのは必至、かといって立件すれば問責制そのものが問われる事態にいずれの判断も難しく、そこで梁錦松自身の辞職という結果。今月上旬の田北俊の行政会議からの辞職、昨晩の葉劉淑儀と梁錦松の辞任で董建華の二期目の柱である問責制はもはや壊滅状態、董建華は明後日土曜日に状況し北京中央にお伺いだそうな。
▼蘋果日報が芸能の一面トップ半頁の扱いでジャニーズ事務所と同社社長が『週刊文春』相手どった名誉毀損による損害賠償訴えた裁判について報道。社長の少年セクハラで対象が香港でも人気あるジャニーズの芸人が餌食になっているという関心もあろうが、蘋果日報は日本のマスコミがこの報道について低調で、扱っても社長の名を伏せたベタ記事であることを指摘。この報道することでジャニタレの記事配給が削られることを怖れて報道控えるマスコミの姿勢を非難。御意。ちなみに香港では英皇集団なる財閥の芸能プロダクションが歌謡賞絡みの贈賄の疑いで廉政公署(ICAC)の捜査あり芸人含む22名より事情聴取あり報道もこの事務所所属のタレント使えぬなどと自主規制もなく堂々の報道。

七月十六日(水)晴。恒生指数が10000を回復。昨年12月3日以来の高値。僅かながらの財テクにてファンド減りつづけたものが急な回復見せるは安堵。夕方昨日からの疲労にて早々と帰宅しようと思ったが余りの空の青さに酒場にてaleでも一飲を欲しふと思えば昨日送稿済ませた日経GalleryのM氏と打合せの要もあり電話すると時間ありとのことで太古坊のEast Endにて一飲。帰宅して鮭の炊込飯。食事の最中より瞼下がるほど睡魔に襲われしが、NHKの「ためしてガッテン」にて遺伝子組替えだの遺伝子組替食品がテーマ、具体的にどうすれば遺伝子組替えができるのか、はお得意の「サルでもわかる科学」タッチにて説明上手だが、そもそも「どうすれば」以前に「なぜ必要なのか」「どんな問題があるのか」の思考が圧倒的に欠如、遺伝子組替により糖尿病などを治す働きのある稲の栽培など取上げているが遺伝子組替えの生体的なリスクとたかだか一個人の、しかも現代の食生活だの嗜好だのを要因とすることの大きな糖尿病を治すことで、どちらが深刻なのか……などと思っていたら少し眠気も覚め、20時のニュースにて保安局長葉劉淑儀(Regina Ip)の辞任を知る。テレビ新聞でこの女史の顔見るだけで不快極まりなき日々も終わると思えば吉事。実は6月25日にすでに董建華に対して辞表出していたそうで、7月1日の50万人デモでの葉への不信任も翌週の自由党党首田北俊の行政会議よりの辞任による23條審議の延期も実は葉の辞任決意以降。余計な政局不安を招いたが結果的には葉がさっさと辞任していると政局の混乱なく葉辞任が幸いして政局ここまで不安定になっておらぬ可能性も?と思えば結果的に董建華がここまで葉の辞任受理を延ばしたことは香港にとって董建華辞任に拍車かけることになったはず。だが葉の辞任声明読むとこの人の性格だろうが「負けておらず」23條立法は香港市民が不安に思う内容に非ず後継者により立法化されることへの期待表明。いずれにせよこの強圧的な局長の言動に対して市民がかなり不快感を得たことは事実で、23條の白紙草案(White Bill)からの法制作業について「タクシー運転手だのレストランの給仕だのマクドナルド店員だの23條について何も知識もない連中とアタシが何を議論すればいい?」だの民主主義に対して「ヒトラーだって民主主義を標榜してた」といった発言だのその強権的な姿勢が23條立法への反感と相応したのが事実。つまりこの立場に立つほどの器と性格に非ず。消え去って当然。この吉報を知り睡魔に襲われ爆睡。
▼香港大世論調査センターの主任の鐘庭耀氏、三年前に董建華が香港大による行政長官の支持率調査を不快として香港大学長に調査中止の圧力をかけ副学長がその命を受けセンターに中止の提案に動いたことを鐘庭耀氏が暴露、行政長官のこの癡呆ぶりが問題になり正副学長は辞任し、鐘庭耀氏は一躍正義の人。それ以降積極的な民意調査続けるが昨日の『信報』に7月1日の50万人デモでの調査結果を発表。デモ参加の市民がどこまで本意かなどと揶揄もされたが、調査結果によると23條立法反対が非常賛成と賛成合わせ89.8%、政府の粗忽な行政ぶりに耐えられずが91.5%、政府への失望は91.9%と23條への具体的反対より政府に対する不信任が若干高し。董建華辞任を望むのが82.6%、市民の世論により辞任させるべきが83.5%なのは董建華を指示する者が政府非難者より少ない、つまり董建華に任せることへの信任のようだが、これはそれよりも董建華が辞めて誰がなったところで北京中央の指示で動く操り人形で変化期待できぬ、といふことであろう。またデモ参加者の83.1%がインターネットを毎日利用しており、購読する新聞では香港の発行部数では東方日報、蘋果日報、明報の順に多いのに対してデモ参加者では蘋果が49.5%と過半数、東方は22.4%、明報は15.7%と蘋果日報が香港にて反体制派のかなりの支持受けていることが明確。
▼中国で沿岸の無人の小島を50年間の契約で個人、企業に賃貸(実質的な分譲)を開始。中国は50平米以上の島が約6,000ありそのうち僅か6%に居住者あり。賃貸料はわずか10万元(200万円弱)から。共産主義国家にあるまじき政策、と非難もできるが、資本主義国家にては島の所有者あり、国家が土地占有する共産主義国家ゆえ、しかも土地を人民に解放した、とでも言えるだろうか。用途してはリゾート別荘、観光、動物飼育や港湾開発などが期待されるが、絶対に不法カジノ、賣春島が生まれることは間違いなし。
▼『週刊新潮』に「私は紀宮の姉よ!」と皇居に乗り込んだ「超有名女優」」といふ記事あり。記事読んでおらぬが築地のH君によると「超有名」というには若い頃の活躍に比べると萎んだ感じあるが女優のFだそうだがもし同じ女優でもKが「私は秋篠宮の母よ!」といって皇居に押しかけたら……「重の井子別れ」か、とH君。
▼1967年からの「仮面の忍者赤影」にて赤影役の坂口祐三郎氏が逝去、享年61歳。ヒーローの赤影、その若衆的な(バッドマンのロビン的な)青影と、年長でありながら道化役である白影と、その人物設定の妙。竹中半兵衛役が里見浩太朗。白影役の牧冬吉が98年にすでに物故しており(こちら)子役であった青影の金子吉延が大森一樹の『ヒポクラテスたち』に出ていたとは今日まで知らず、23歳で芸能界引退していたそうな(こちら)。

七月十五日(火)快晴猛暑。昼にハッピーバレーの日本料理慕情にて珍しい生の桜海老が静岡より入ったそうで掻揚天丼。秀逸。昼頃に市街に学校帰りの子どもつれた父母多く見受けられ昼にこうして子どもの送り迎えとはこの親たち仕事とかどうしているのか、と不思議に思ったが考えてみれば今日が小学6年の中学選抜結果の発表。義務教育の中学進学ながら学校が公立及び半公立(政府援助受ける私学)は地区毎の受入生徒数に限りがあり曾ては人気のある学校は個別に入学試験など実施していたが「受験戦争緩和のため」共通試験実施となり成績の良否により本人の第1志望から順に選抜がなされる制度が数年前に導入される。緩和といいつつ実質的には12歳で競争は白熱。何よりも公立学校が不足し半公立の学校に依存する香港の現実ゆえ。明日短いlecture請われ資料準備。夕方上環に赴き蕘陽茶荘に寄り店の名品といふ極上の龍井茶購ふ。久々に皇后大道西歩めば帝后華庭なる大型マンション聳え立ち記憶辿れば此処が嘗ての潮州巷にて安くて美味な潮州料理屋何軒も並んだ一角。97年の香港返還よか前のことだつたかこの潮州巷に在るといふ香港六記の一つ斗記を初めて訪れようとして数ヶ月前に閉業したと知り落胆。その地上げの結果がこの帝后華庭。週刊香港の連載の取材といふより現存?の確認に西環の厚生酒荘。老朽化した建物化粧直ししておりかなり驚く(写真)が店ぢたいは昔のまま。看板もそのまま。ただし店は酒屋の風情かなりなくなり新聞雑誌の類売ることは少なからず残念。この一角、酒荘の向いは老舗の焼蝋店正隹、その隣りが亀苓膏の福和堂で改めて西環の街の古さ認識。猛暑に疲れ夕方の渋滞にもかかわらず北角まで小一時間バスに乗る。中環にて立法会議事堂前で法輪功の諸君瞑想にふけり23条立法反対。この団体こそ23条立法されると一網打尽に検挙される「北京政府転覆企図」団体。帰宅すると税務署より通知あり一瞬背筋寒くなるが徴税の緑色封筒でなく浅黄色の封筒に何かと思えば税金の還付。政府のSARS打撃克服のための景気刺激対策の一環にて2001/02年度の所得税のうち最高50%まで還付となるが、還付上限額はHK$3000(余は荷風先生ほどの金融人に非ずいちいち納税額まで日剰には記さず)。鯛のあら煮。日系スーパーにて鯛刺を出しての残りの鯛のアラだそうで一匹分がHK$20。食後に8月入稿の週刊香港、日経Galleryの連載の文章。合わせて2,400字ほど。我ながら原稿の早さだけは感心。雑事済ませ深夜二時に至る。
▼ジャズのBenny Carter氏逝去、享年95歳。20年ほどまえに仙台でビッグバンドでの公演見て、その楽団にMalta氏が加わっていたと思ったが昨年8月に逝去のライオネル・ハンプトン楽団の勘違い。老境に至りJazzなど音楽の記憶もかなり朧ろに。
▼蘋果日報に政治及経済風検(risk)公司なる調査機関のアジア大洋州国家の言論と宗教に関する自由についての調査結果あり。米国、豪州が言論、宗教とも0〜1と最も自由でそれに続くのが台湾で言論が1〜2、宗教は米豪と同じく0〜1。4位が香港で言論2(23條立法など中国の統制圧力?)で宗教が1。フィリピンは言論は1〜2だが宗教が2〜3。日本はそれに続き言論が2〜3で宗教が1。言論が自由なようでいて実際には天皇制タブーであるとか教育での君が代日の丸の扱いなどみれば異論排除もありけして自由ではないことがこの数字に表れているか、と推測。続いて韓国(言論3、宗教1)、タイ(言論4、宗教2〜3)となり10位にシンガポールは宗教1に対して言論が6〜7とかなり不自由。ちなみに中国が言論、宗教とも6〜7と当然ながら不自由極まりなく14位。

七月十四日(月)快晴。快晴といふと聞こえがいいが連日朝から30度、昼は33度まであがり「熱」警報。南洋の香港で猛暑は珍しくないが連日温度が下がらぬ異常気象。紫外線指数(UV Index)も先週から連日14と99年にこの指数登場以来2001年の夏に記録した13.9を越える。ちなみに南極上空のオゾン層破壊著しい南半球で豪州はPerthで20を記録しているが豪州では直射日光に当たること即ち危険。真剣に夏の外出は危険。猛暑ではあっても太陽のない月見、蛍かりだけが無難か。子どもの頃に夏は日焼けが健康的、プールでの甲羅干しが盛んだった頃を懐かしむばかり。
▼『世界』8月号に「教育基本法「改正」見送りの舞台裏」なる記事あり、与党内で公明党がこの改正に渋ったのは(余も見た記憶あるが)2001年5月23日に創価学会名誉会長池田大作君より朝日新聞に「教育基本法は見直すより大いに生かせ」なる投稿あり「憲法に準じる」基本法は改正の「拙速は慎むべき」で愛国心など念頭に「教育勅語に盛られたような具体的な徳目は基本法の性格になじまない」と。この記事で注目に値するのは本年5月12日の与党協議会にての自民党と公明党の対立。
北側(公明党政調会長)「国民の関心はいじめ、不登校、学級崩壊、学力低下などの具体的な問題だ。まず、こうした問題がなぜ起きたのかを議論すべきだ」
中曽根(大勲位の息子)元文相「ここでは教育基本法を中心にすべきで、枝葉ではなく、教育の根や幹に関わる部分の再生に力を集中すべきだ」
太田(公明党幹事長代行)「いじめなどの諸問題の原因は教育基本法なのか。社会の様々な問題も視野に入れた広汎な議論をすべきだ」
北側「この場所に、不登校などを枝葉と認識している人がいるとは驚いた」
中曽根「枝葉などとは言っていない。それらの根源をたどれば教育基本法にたどり着くという認識を示しただけだ」
鈴木恒夫(自民党、元文部政務次官)「これだけ教育が問題を抱えているのに、会議の進め方さえ決められないのでは、国民に顔むけできない」
浜四津(公明党代表代行)「協議会はいじめなどの深刻な問題に、与党の責任者が真剣に取り組んでいるという姿勢を表に出す場だ。改正論議ありきではなく、前段階の問題と向かい合うべきだ」
中曽根「今回集まったのは、教育基本法をどうするかを議論するためだ」
結局、自民党は改憲、教育基本法の党是ばかり。改正に何も期待できず。最終的にはこの党に国を委ねた国民に全てのリスクと責任が舞い降りてくる、というもの。
▼同じ『世界』に「都立高校改革?誰のため?何のため?」なる記事。東京都にて公立学校の国旗国歌は100%の徹底(こちら)。数字ではそうだが卒業生と在校生が対面式の卒業式は壇上の国旗に向かう式に改善がなされ校長が退職をひかえ最後の式くらい自主的にと教委の指導に従わぬ恐れがある場合は都教委の職員が遣られ保護者に一旦ご着席としてしまうと国歌斉唱にて立たぬ者が出るから保護者立ちっ放し、歌う声が余りに小さくたまりかねた教頭がマイク握って独唱となり笑い声だの、誰も歌わず校長、教頭、事務長三人が斉唱だの、と現実は改憲、教育基本法改正と同じく実質的な中身なくただただ実施のお題目だけでの徹底。
▼そのようなひどい現実の中でメディアもテイタラク甚だしいが日刊ベリタ、高校生が記者する『エコろじー』や子ども通信社ボイスの優秀な記者たちによる『世界』での座談会など読むにつけ、このような人たちがとんでもない現実のなかで奮闘と知る。

七月十三日(日)快晴。久々に自転車乗り島南に参ろうとついつい車両通行禁止の自然公園内にあるMt Parker Rdを自転車漕いていたら営林署の職員の検問に引っ掛り書類送検され8月末の略式裁判への出頭命じられる。まず調書をとることを本人に認めさせ、この検挙があくまで営林署のもので警察など他部署には一切その内容が漏れないことを余に説明し、略式裁判も仰々しいがこれも被検挙者にも弁明の余地与えるもの。山を下りShau Kei Wanより大譚道を上る手前で丁度サイクリングクラブの一行おり大譚道の険しき峠まで登らずとも引水路添いに小径あり、そこが自然公園だと再検挙だがどうやらそこは公園外らしくCDでSimon & Garfunkelの紐育中央公園実況盤を聞きつつ快調に走り抜け大譚のダム。海岸にて『デイヴィッド・コパフィールド』第四巻を三分の一ほど読む。往路と同じ道程を走る。Shau Kei Wanの市街に下りず亜公岩道の明華大厦あたり。この明華大厦は所謂「難民アパート」と公共団地政策の丁度谷間に出来たかなり大規模な団地で老朽化著しい13棟が亜公岩道に並ぶ。日本軍が九龍より香港島の上陸した地点の海防博物館横から海岸沿いに出てAldrich Bay。帰宅するつもりが太古坊のEast Endにてale一飲。アルコールが入ると自転車を漕ぐもかなり億劫。帰宅してDry Matini飲みながら一浴。Z嬢枝豆茹でて晩飯はチゲ鍋だがかなり量もあり近所のSARSの家族疎開中で俄独身で一昨日に蛍の下見に同行願ったO君に電話するとさっそく花の舞なる冷酒持って参られチゲ鍋。歓談。三更に入る頃帰宅するO君を送りマンションの外に出るとPaker山の空に見事な満月、しばし月に嘆む。

七月十二日(土)晴。午前雑事済ませ昼に銅鑼灣。火曜日の献血の際に珍しく注射針で痛み感じ数日すると腕伸ばすと神経痙攣するような痛みあり献血センタ。看護婦に症状述べると数少ないがその症状ある場合があり採血針が筋肉を傷めたか何かしたのだろうがあと数日様子見てそれでも痛みあれば赤十字で診断を手配する、と。HMWでレッドツェッペリンの72年のカリフォルニア実況録音盤など買い漁る。昼すぎビクトリア公園のプール。心理療養士であり生体だの太極拳だのする旧知のL師と邂逅。日本人の子ども相手に生体を取り入れた水泳指導とか。香港大の図書館。夕方一旦帰宅してA氏らに請われ昨日下見済ませた康柏遊歩道の沢を巡り蛍かり。寶馬山方面から来たA氏らとSir Secil RideとMt. Parker Rdの合流地点で待ち合わせたのが19時、まだ陽も明るく康柏径をパーカー山の奥深くまで入るとようやく日暮れて蛍あらわれ昨日にもましてきれい。感嘆。明日が満月で月も愛し。Mt Paker Rdを下り市街に出て西湾河の大安商場にあるニ記にて海鮮。黄油蟹。

七月十一日(金)快晴ナレド驟雨屡バ有。近隣に住まふO君に同行を請い日暮れてParker山の澤多き小径に入り、先週土曜日の蛍かりよか群集はしておらぬが澤がいくつもあり山径歩きつつあちこちに生息せし蛍を楽しむ。月は十三夜、薄曇のおぼろ月ながら月明かり懐中電灯もなく歩むも可。眼下には太古城のマンション群の灯、海峡の向こうに九龍の街明り、市街より半時間山に分け入っただけで十三夜の月、澤に蛍。Z嬢とKing's Rdの星巴珈琲前で待ち合わせ三人で近くの函館なるラーメン屋。中環のあげ半と同じ経営の札幌の姉妹店にてそれほど期待もせずであったがラーメンは秀逸。10年以上前から油麻地の横綱が香港でラーメン代表していたがDomonが彗星の如く表れ札幌の登場を見ているが横綱は別格としてDomonは最近は評価できずこの函館のラーメンは札幌よか寧ろ美味。これだけ熱いスープでコシのあるラーメンは香港では稀少。生ビールに餃子、薄味にとお願いした味噌ラーメン、最後は菊正宗の冷酒。

七月十日(木)晴。今朝六時半頃に九龍半島の付け根をTsuen Wanより屯門へと抜ける屯門公路の高速道路から貨物車の暴走に絡まれた九龍巴士の二階建大型バスが35mの崖を転落(写真)、死者廿数名、重軽傷者同じく廿数名の惨事。海岸線走る青山道の旧道から仰ぎ見るこの高速道、実は路肩わずか5mほどで急崖に僅か1m余のガードレール備えただけにて惨事あらば大型バスでなくとも崖下に落ちるは必至の危険な構造。そこを大型車もキョービ性能良く時速100kmにて暴走。バスとて80kmの高性能で車高4.4mがこの曲線多き道を爆走。惨事起こらぬほうが不思議。大型バスの必要以上の高性能は大気汚染の厳重なる要因でもあり、何故にここまで大型かされねばならぬのか疑問。大型バスも貨物車もこの高速での走行はもはや一運転手制御可能なる機能に非ず、高速道の安全対策も必須だが市街地とて暴走するバスに毎朝大量の排気ガス浴びせられ困惑も甚だしく大幅な速度規制は急務。
▼昨日の立法会議堂を取り囲みし市民集会に対して23條立法支持する議員らがバスにて退出を余儀なくされた折に親北京の中華総会選出の立法会議員黄宣弘がバスの車窓より嘲笑の如き表情にて中指立てて Fuck! を示し(写真)それをテレビカメラが写し放映され市民の大きな反感買い本日その粗悪なる行為を本人市民に対して陳謝表明するも表情からして誠意なく陳謝後の議会にてもダラシナイ居眠り続ける。このような野蛮なる輩が立法議員にて23條立法支持。
▼昨晩のNHKニュース10など眺めておれあば、米国の襲撃受けたイラクにて米国による制壓の後バクダッドなど治安悪化甚だし。攻撃中は進駐後の治安維持、改革など1945年の日本を例に平和裡なる東京モデルを踏襲などと嘯いていたが現実はさに非ず。この誤謬は、メソポタミアの貴重なる遺産が博物館から、そして軍部より武器弾薬の類が略奪されし光景見て、それと対照的に半世紀以上前の日本の皇民が帝国陸軍の武器弾薬も奈良正倉院の財物も掠わず桂離宮に勝手に住み着く輩もなきことを以て大和民族が民度高く誠実にて、バクダッドの市民が野蛮ゆえの結果とは言へまひ。日本にては共和制なり共産主義標榜する市民革命起きずとも寧ろ米国進駐あっても国体の象徴としての天皇陛下を頂き賜り続けることにて実質的には戦前と何等変わることなき現実ながら敗戦にてさも禊ぎ済ませ「新しい時代がやってきた」と晴々れと戦後の復興期待せしわが国と、言いがかりにて国土襲撃され悪しき点もあれどイラク統治の中枢であるフセイン政権打倒され謂わば国体失って無政府状態に放たれたイラク市民との状況の差異。かりに米国が東京モデルを用いるならばフセインをイラク国民の象徴としての実質的権力なき神格に仰ぎ、その下にて立憲君主制にでも移行することこそ東京モデルの踏襲ではなかっただろうか。無理だが。米国が侵略すれば結果がこうなることは明白。大量破壊兵器も核資源も見つからぬこの世紀的愚挙は米英は元よりそれ支持せし日本など奴隷国家の責任は如何に。新聞に載ったバクダッドの僅か9歳の浮浪児が喫煙し傍らの子が興奮剤を吸入する光景(写真)豊かさと平和(そうな)世界に在るこちら側から見れば画像としてはイタリアのneorealisomo映画の如き一光景なれど)は、戦後のあの上野の山の浮浪児を彷彿せざるを得ず。ただ半世紀前の上野とバクダッドの大きな違いは当時は少なくともあの貧困の将来には20世紀の経済成長と豊かさが待ち受けていたのに対しキョービの高度に発展し尽くした資本主義においてはすでに豊かさなるものは陣取り済み後進に甘んじたる地には搾取されし貧困しか将来になきことなり。
▼米国といへば一連の対米テロへの国防強化のため米国への入境者に対しての管理強化(こちら)。「機械読み取り式でない旅券」所持者には米国短期滞在目的に当たり従来どおり査証免除の扱いを授けるものの旧来の旅券保持者の場合はビザ取得を科し、これまで実質的には形式的であった旅券確認を集中管理。そればかりか2004年1月1日以降は米国査証保持者の入境にて指紋及び顔写真を採取。更に2004年10月26日以降からは「電子化された生体情報(顔画像)が搭載されていない旅券を所持している外国人の入国」に当たっては機械読取り式旅券であっても査証取得が必要。わが国は旅券こそ機械読取り式であるもののデジタル化された生体情報搭載した旅券の発給は極めて難しく現行にては「米国政府が同方針を予定どおり運用するか否かは明らかではありませんが(準備に一層の時間を要する可能性等もあり)米国政府の今後の対応如何では今回新たに「機械読み取り式旅券」に切り替えた方についても2004年10月26日以降は査証を求められることもありますので予めご了解願います」と。それにしてもこの外務省の物言い、米国の出入境管理について「この点宜しくご理解頂きますようお願い申し上げます」だの「上述の米国政府の新入国管理制度の適用対象となりますのでご注意願います」だの「予めご了解願います」だのと米国の措置を自国の国民に告げるのに何たる丁重ぶり。半世紀に渡り築きたる親米関係が真事ならば正々堂々と「日本はこの御沙汰より除かれ給われし事御願奉上候」と米国に求めるべきか。いずれにせよ、これが米国の措置だけなら米国嫌いの余も桑港、シアトル、ボストン、紐育など知己もおり愛しき街ながら「米国には今後一切足を踏み入れず」にて済むのだが更に深刻なる問題は外務省「我が国も遠くない将来、生体情報を搭載した新たな旅券を発給することを検討中であり、その場合には、新たに旅券の切替が進められることが考えられます」と。世界の自由主義の冠たるはずの米国の措置も尋常ではなきものながら、わが国も生体情報が国家により管理されるといふことは、憲法に謳う基本的人権への抵触ある大きな問題、外務省が米国情報の末尾にて「検討中」とさりげなく触れて、で済む問題ではない。で、外務省サイトにてこの生体情報入り旅劵の検討について捜すが何も情報なく電話にて旅劵課に確かめると、これについては検討といっても先般海老安サミットにても今後この生体情報入り旅劵の普及が話題になったが未だ将来的にそういう方向になるということで具体案はなく世界各国との基準検討がまだ机上でされている程度、住基台帳だの個人情報についての問題もあり、それ故この件について外務省としての具体的見解を述べるには時期尚早、と。説明は理解できるが(少なくとも境域基本法改正を提唱し準憲法に値する教育基本法の原文すら搭載せぬ文部科学省に比べ真っ当)それならばこそ、米国の査証措置の末尾でのみこうもさりげなく述べることは問題あり、と意見呈す。いずれにせよ結局のところ米国の管理強化措置を事由に「ほら、不便でしょ、米国行くのが」と他国がこの規制強化に追従し世界標準が生まれるのであろう。唯一の希望は国境すら取り払おうと挑む欧州連合にて、EUがこの規制にどう対応するか。嗚呼、我々の住まう21世紀のこの世は日々恐ろしき様に相成る。

七月九日(水)快晴。黄昏に香港大学。やけに静かなキャンパスだと思ったらすでに夏休み。大学図書館にて入館証の更新手続きし少し調べ物。キャンパスにせよ図書館にせよ聞こえてくるのは北京語で、この次期に大学にこうして残っているのは大陸からの学生ばかり。金鐘の高架道を通り過ぎに見たら立法会周囲に公園に市民結集。1日に続く本来なら今晩23条立法が強行採決されるはずであった晩だが23条立法こそ審議順延となったものの反23条だの政府不信の市民集い集会(写真)いつもタクシーをよく使うと我ながら感心するが仮に日にHK$100分タクシー使っても(実際には有り得ぬが)年ににHK$36,000であれば自動車取替えの周期を5年としてHK$18万では自動車税の高き香港ではこれで日本でなら200万円もせぬ自家用車しか買えず、これに燃料費だ駐車場だ保険だと経費積めば断然タクシーに乗り続けたほうが安いということ。帰宅してゴーヤチャンプルなど。NHKのニュース10を見ていたら長崎の幼児殺人事件。記者だの識者といふオトーサンたちが神妙な表情にて語っているが、殺人など凶悪犯罪の低年齢化は何故なのか、容疑者の少年は学力も高くまじめな性格などと神妙に語るが、犯罪が寧ろ高年齢化していくわけもなく、殺人と学力や性格など何ら関係ないわけで殺人を特殊なことと考えているようだが筒井康隆が言いそうだが最終的には日々の一秒一分が人間は常に「殺すか」「殺さぬか」の選択に立たされているわけでその比率は50-50、殺人をすることもなくその日が終わったら「ああ、今日は人を殺さずに済んだ」と安堵するくらい、実は人間といふのは狂う一歩寸前のところに佇んでいるにすぎない。12歳の少年が、と驚くが12歳でゲリラに加わり機関銃下げている少年もいる。この少年のことよりも、そういった子どもたちが通う学校が雁字搦めにて何故か広島が熱いが日の丸君が代で苦悩した校長が、民間から登用した校長が、そして教育委員会の委員長が自殺。本来教師になるべき人材がとても今日の学校教育には従事できずと教員にならず質のいい教員も今の教育現場にてはちょっとしたことで排除される。限界。

七月八日(火)昨日より肩凝り甚だしく如何ともし難くふと手帳見れば前回の献血より三月と十日ばかり過ぎ血抜かねばこの肩凝りもさもありなむと合点。黄昏に銅鑼灣の香港紅十字会輸血服務中心にて献血。香港にて23度目の献血終ればひどい肩凝りも嘘の如く失せ快適。それにしてもこの献血場所銅鑼灣の一等地にて眺めも面白かれど窓大きく仕切りもなく向いの建物ばかりかHennessy Rdの通りの向こう側より見上げることも可能にて私隠もなし。献血しつつぼんやりと眺めておれば向い之建物に余は未だ訪れもせぬ「和民」なる日本式の居酒屋あり。どうも和民なる語の響き宜しからずふと思ふはこの「わ」が訓、「たみ」が音の重箱読みなる由。「わみん」と音読みできぬこの和民なる言葉ぢたい何故かと調べれば株式会社ワタミがそもそも在り昭和62年に居酒屋「つぼ八」のフランチャイジーとして直営店舗を運営していた有限会社渡美商事より居酒屋事業を買収し営業開始。「わたみ」が渡美であれば原音は「わ」「たみ」に非ず「わた」「み」で訓読みと納得、てつきり社長の姓かとも思ったが社長が渡邉美樹にてその姓と名の一字づつ採って命名と合点。献血終り晩に二時間半ほど講釈たるるお座敷あり企つたまま話しておればさすがに昨晩四時間ほどしか寝ておらず日中の疲れと献血にて眩暈。
▼六日(日)の日経に浦田某なる編集委員による「民俗学のいま」なる連載あり柳田国男より語り始め「定住した」柳田の限界から「漂泊」に関心寄せた折口信夫へと進むが折口について谷川健一の説引用され一読してそれに疑問多し。「同性への愛や家庭の不幸などを背負った折口先生は“幸福な民俗学”をめざした柳田先生とは対照的。柳田先生が富士山なら折口先生は妙義山だ」と。この評余りにも短絡的すぎぬか。折口信夫の宅に寄宿する書生総喰ひの男色暮らしはご本人にとつては幸福の極み、「歪んだ家庭環境ゆえに同性愛者になつた」などといふも野暮、家庭の不幸とて『身毒丸』でも一読すれば不幸すら美学へと昇華させむ思想、それらを短絡的に不幸の民俗学とでも呼べようか。対照とされる柳田とて何処が幸福か。稲作をする常民に課せられた宿命的定住性に不幸もあり其故に昔語りの奇っ怪なる物語伝承されたと言えなくもなし。漁民とて柳田が八戸の鮫といふ部落語った随筆読めばその悲しさ漂い余には柳田民俗学の何処に幸福などあろうかと疑問に思ふばかり。

七月七日(月)快晴。摂氏30度超える高温警報が実に六日、計131時間続き、これは99年にこの高温警報が制定されてからの新記録。七七事変(支那事変)六十六周年。朝のニュースで昨晩自由党が23條立法について立法審議の延期要求し九日の立法会での通過では反対票を投じる決定、同時に党首の田北俊が今回の23條立法化ついて独自に上京の上北京政府が立法化に時限なく立法化は香港の内政であり中央政府はそれに介入せぬ文言を引き出し今回の政府方針に反旗を翻すことになった責任をとり田北俊が行政長官の諮問母体である行政会議のメンバーから辞任を発表と。これを受け政府は深夜零時より行政会議の緊急会議を開き本日午前二時まで審議、自由党が反対にまわることで九日の否決必至となり23條立法の審議延長を決定、同時に田北俊の行政会辞任を承認。董建華の声明は午前二時の苦渋に満ちた声明発表はこちら。一日の50万人デモにより市民の広汎な政府不支持を受けひとまず23條立法問題は最悪の事態での可決強行が避けられる。が、財界を基盤として董建華政府の強力な支持母体であるはずの自由党の今回の動きは董建華にとって打撃大きく行政会すら一枚岩ではなくなれば董建華が二期目で打ち出した局長級問責制を含め瓦解寸前。自由党といえば自由党の元主席であり現在は名誉職的に全人代の香港代表の一員となっている老獪なる李鵬飛(李鵬に非ず……)、この御仁、英国統治時代は親英派と見做されていたが97年が近づくにつれ次第に北京に歩み寄り、いつの間にか全人代入りして正に政界の鵺のような御仁。その李鵬飛曰く「田北俊の行政会議からの辞任により政府は立法会での多数派与党を維持できぬことは既に政府の管制力と威信に重大な影響あり、董建華とその構成内閣は総辞職すべき」と。つい先ごろまで董建華を支持しておいて相変わらず無責任な李鵬飛だが、この御仁の政治的臭覚の鋭さ、つねに政治的に次の主流に合流している才能(笑)からすると、つまりもはや董建華は実質的に捨て去られた存在である、ということの証左。ふと思ったが71デモ以降の政治的急変を見ていると、これでは田北俊(自由党主席)を次期行政長官に、という声が上がっても不思議でない。じつはきちんと脚本の出来上がっている政治劇かも。家柄、財力、知性、見た目、それに今回の北京訪問から董建華への謀反による民主派からの好感度といい、今香港で行政長官になる適材ということに。
▼今月に入ってからの信報、23条立法化されたら廃刊という危機感あってか、これまでにもまして内容とその論説の冴え見事。珠の如き記事と文章並び一つ一つ熟読。日本になぜ論説の充実したこういった高級紙がないのか不思議。信報の特異な点は基本的には中道左派のリベラル陣営であるが保守派も無視できぬ理論的学術的な背景と威信あること。それゆえに政府の主要公布もこの新聞とSCMPにて為されるわけで(かつては明報がそうであったが失墜)、今日の紙面にも半ページぶち抜き政府広報で
政府は市民の広範な世論を考慮し国家安全条例草案について重要な三つの修正を加えました。(略)市民の声を積極的に受け入れると同時に、特区政府が各界の皆さんに理解してもらいたいことは、基本法23条による立法は棚上げすることのできない責任ということです。一日も早く草案の立法化を遂げて、政府と社会各界が一体となって経済回復に努力しましょう
……と。これは本日未明の政府決定以前の表現でありわずか一晩で政局はかなり動いたわけだが、それにしてもこの「一日も早く草案の立法化を遂げて政府と社会各界が一体となって経済回復に努力」って何だ、この修辞、詭弁は。本当に経済回復に努力するためには「一日も早く董建華とその一味を退陣させて政府と社会各界が一体となって経済回復に努力しましょう」だろう。
▼林行止が専欄で指摘しているのだが、下の備忘に綴ってあるが23条立法草案での三つの大きな改正点、これらはこの条例の根幹をなす重要な点であり、確かにこの修正がなされれば信報は社としての憂慮は半減される、が、この立法に最も関与する律政司司長梁愛詩と保安局長葉劉淑儀の二人のオバサンが修正は絶対にないと公言していたものを董建華がこの二人の原案堅持を翻し最も争議性のある条文に修正を加え、それを法曹界や立法議員に諮ることもなく僅か三、四日で立法化してしまうという、この粗忽さ。そして条文についてこれだけ大きな譲歩をしてしまうことが容易で何故に立法化の政治日程の延長には応じられないのかという不思議。常識的に考えれば修正で安易な妥協をせぬことと上梓日程を比べたら優先されるのは安易な妥協をせぬことなのだが……。デッドラインを設けずに落とし穴(強行採決)を回避せよ、と林行止の主張は憂慮よりも死に体の董建華政府に対して余裕ある助言にすら聞こえ始める。
▼中華社会を代表するで保守派リベラル言論人の重鎮、李登輝嫌いでも有名な陸鏗氏(桑港在住)が信報に寄稿して、三日に北京中央で23条立法問題に関する政治局拡大会議ありCoquinteau総書記が主持、香港訪問を終えた温家寶や政治局常任委員が出席していることは北京中央の香港重視の顕れだが、陸鏗氏は温家寶首相が在港中に23条立法に反対する市民少なからずと記者が述べたのに対して「我々は香港が外資流入に有利な香港の安定した環境を求めている」と応えたことも北京中央が挺港不挺董(香港を支持し董建華を支持するではなし)の姿勢になりつつあることである、と。その上で香港がいま直面している状況からいえば問題は董建華だけにあるのではなく江沢民が政治に当った時代に残してしまった一連の未解決の問題であり、本来は「河水不犯井水」で一国両制が維持されるべきところ、河水が井戸の水を犯しており、もし董建華がきちんと問題を把握して対処できれば香港が一国両制の典範となるのだが、と。陸鏗氏の論評はここで終わっているが、これがこのまま続くと当然、台湾の中国統一を支持する文言となるのは必至か(笑)。
▼日頃思考上の示唆受けること多き友人S氏(といってもまだお会いしたこともないのだが)曰く「ネット上の発言の駄目なところは言葉を記すことにおいて自らを鍛えるということがないところ」と。自戒の念。これと近いことを爆笑問題・太田光氏も言っていたというがネタが出来ていても本番ギリギリまでネタの推敲続けるという太田氏ならでは。S氏続けて「古来「文は人なり」と云われますが、それは逆に云うなら、文を鍛えることにおいて人(知性)を鍛えることもできる」のだが「いかに多くの言葉を書こうとも無責任に、断片的に単語を書き散らかすばかりでそれを文として鍛えることがないなら」それは意味がなく、ネット上の「掲示板ばかりの話ではなく、個人サイトの日記でも多く該当する」わけで「単語を羅列しただけのような短いものばかりですが、どれも皆、読む価値のないものばかり」と。ますます自戒の念。「確かに短い語で何かを表現するというのはかっこよいことですが、難しいことでもあって、長文さえ満足に書けない者に短文は書けない」ことは確かに作家が無駄な文章を削りに削る呻吟(例えば石川淳)にて明らか。せめて日々の断片の記録にあたり単なる言葉並べにならぬよう鍛錬を続けるのみ。この日剰など饒舌と過剰なる文字数は読み抜かれ易い短文回避かも(笑)

この一週間の備忘いくつか。
▼御用政党民建聯は党首曽(金玉)成が一日のデモに対して「市民は騙されいる」と発言し三日に23條立法は賛成するものの條文の緩和を提案していたが五日ついに「選挙民に対しての謝罪」を表明。このままでは秋の区議会選挙で大幅に議席を失うことが必至で今さらながらの市民への媚び売りながら既に遅し。結局、政府の単なる賛成票マシンであることだけが民建聯であることが今さらながら露呈される。
▼23條立法について政府の提出した条例(案)でいくつか修正された点は3つあり、まず中国国内で法的に禁制された組織は香港にても非合法とされ取締りの対象となる条項の取り消し(これは法輪功などが該当)、次に政府機密の非法取得並びに公開を有罪とすることについて公共の利益を事由としたマスコミの取材並びに報道については非合法とせぬ緩和(これはマスコミが中国報道する場合にそれを即非合法とせぬこと)、最後に官憲が裁判所の承認なしでも自宅捜索できる権力が与えられることの取り消し。つまりこの修正をもって香港での人権や表現の自由が保証されこの23條立法はあくまで中国の国家安全を保護するための目的であることの明確化というもの。内容は改善みられるがいずれにせよ政府が国家轉覆を企図した動きと認めれば実力行動、テロばかりか一般の政治活動まで非合法とされることには変わりなし。
▼『信報』は四日に創刊三十周年迎えたが今年は祝賀どころか23條立法による新聞界としての憂慮あり嚴肅なる評論続くなか曹仁超の筆名で“投資者日記”の健筆振ふ取締役でもある曹志明が23條立法されれば今後の報道での規制多きく、また政府の怒りかえば家宅捜索までできる状況では真っ当に報道続けられず、その場合、廃刊か新聞の売却を示唆。大手資本でなく経済学者然とした林行止による自立した報道姿勢とそれを愛読する真っ当な購読層が築き上げてきた香港の良識を代表する新聞であり、これが廃刊となればまさに月刊誌『九十年代』の廃刊に続く香港の良識あるマスコミの危機。
▼返還から六年、ざっと回顧するだけでも政務司司長Anson Chan陳方安生の在任期間中の引退、廉政公署(公務員汚職取締)署長某氏や香港電台の台長張敏儀女史の更迭など香港政府の良識ある役職者の排除続くなか今度は平等機会委員会(性別や人種による差別撤廃の活動)首席胡紅玉女史の任期更改なし。胡女史の積極的な歯に衣着せぬ言動が好まれず。次は政府申訴専員(オブズマン)戴婉瑩女史の去就が狙わそうな趨勢。結局、有能なる公務員を董建華政府の意向に沿わぬだけで排除し続け無能な従僕のみで身辺固める董建華の政治手法のバカさ加減。しかも星島日報社主Sally Auの不正を超法規的措置にて免罪とし大陸生まれの香港市民子女の香港居住権を認めぬ律政司司長梁愛詩、自動車税増税を図る中で自ら増税前に自家用車購入した財政司司長梁錦松、SARS発生後にこの感染が大規模にならぬことを強調し結果的に対策遅れてSARS蔓延し死者を増大させた衛生福利及食物局局長楊永強、低価株の上場取消しを突然提案し株式混乱に追い込んだ財経事務及庫務局局長馬時亨、そして何よりも23條立法で強引な姿勢が今回の23條立法の敗因となった保安局長ファシスト葉劉淑儀などどうすればここまで顰蹙かう無能無策、出来の悪い連中ばかり集めてしかもその失態を庇えるものか呆れるばかり。明らかにこの連中を揃えた内閣責任制など失策あっても誰一人として更迭もなく無責任制であることは明白。このような無能ぶりでは北京政府とて董建華に任せておけず。少なくとも返還からの一期目は香港を中国にシフトさせるために子飼いであり中国政府に負債をもつ奴隷・董建華の任命に意味もあったろうがニ期目に入り香港内政に様々な問題が露出する状況にては董建華では対応しきれぬのであり、しかも北京政府が董建華を任命した江沢民からCoquinteauと温家寶という新しい世代に替わったことで董建華に任せ続ける意図もたぬことも明らか。もはや董建華、死に体。早く辞任すればよし。

七月六日(日)昨日に続き天晴れな空。今日はだいぶたまった新聞雑誌抱えて海浜、お天道様下読書。『デイヴィッド・コパフィールド』第三巻読了。中野好夫の描くディケンズの世界は映画でいえば成瀬巳喜男。どうでもいいような人間関係の話なのだが同じどうでもいいような人間関係を小津が撮ると抽象化の果てに意味をもたせてしまうが成瀬の場合の滑稽に映る人間の性というもの。それにしても譬え話にジャック・ケッチなる人物が出てきた時に注釈で「ジャック・ケッチは17世紀にいた実在の有名な死刑執行人。わが首切り浅右衛門に当る」って読者のほとんど誰も「わが首切り浅右衛門」を知らず。昭和42年の初版上梓された頃でも果たして首切り浅右衛門はどの程度の認知があったのかわからぬが。成瀬巳喜男で突然思い出したが林芙美子の生誕百周年だそうで1962年に映画化された『放浪記』をまだ見ておらず。高峰秀子の林芙美子役は現代でいえば林真理子の自伝小説を松嶋奈々子が演じているようなものだが脇を固める役者がいいねぇ、岸田森まで出てる。夕方一旦帰宅してHung Homの葬儀館にS氏ご母堂の告別式。81歳の往生にて葬儀でありながら「吉」の字目立ち長寿のお祝いの形をとる。道教の道士による弔詞の文句が神道の葬儀での詞と同じく故人の半生語るのを興味深く聞く。終わってZ嬢、葬儀参列のU女史と尖沙咀。重慶マンションのSwagotにて印度料理。晩に九龍公園の体育館にて少林寺の修行僧による少林寺拳法の武演あり参観。

七月五日(土)。薄曇りにて10時前に家を出てParker山の峠まで登り大潭のダムを抜けて海岸。雲はすっかり蒸発して真っ青な快晴。クラクラと眩暈するほどの快晴。新潮文庫の中野好夫訳の『デイヴィッド・コパフィールド』第3巻の31章から読む。岩波文庫の少年語りに比べやはり中野先生の老人による若い頃の回顧潭らしい表現、それとこの小説の根底に流れる「差別」と階層社会の現実が嫌でも痛感される階層に応じた会話表現。これがあって初めてなぜコパフィールドがエミリーに恋しそうで恋せず、寧ろ高い階級にあるスティアホースがエミリーと駆け落ちしたのか、つまりコパフィールドこそ中途半端な階層にあるが故に階層社会の一員であってスティアホースのほうが実はそんな階層など気にしていないことが判る。中野好夫読んで翻訳文によりいかにその小説の面白みが違うか、ということを痛感。岩波のに比べ数十年ぶりに中野訳を読んでこの『デイヴィッド・コパフィールド』がこんなに面白かったものか、と思う。夕方一旦帰宅して日暮れ前からランニングクラブのホタルの夜企画でまたParker山道を上り大潭に降りる澤でホタルを楽しむ。香港のホタル、やはり香港の電圧が220Vと高いだけあって光具合が日本よか断然明るい。明るすぎて大味でもあるのは南国らしさ。終わってQuarry BayのGrappa'sにてクラブの定例会。
▼23条立法は財界を基盤とする与党自由党の党首田北俊氏が秘密裏に上京。北京にて政府関係者と会談し23条立法は香港内務にて北京中央は23条立法も含め内政には関与せぬ、また23条立法化についてとくに立法化の期限はない、という文言を引き出し自由党はこれまでの23条立法賛成から一転して12月までの審議延長を示唆。これにより実質的に7月中の強行採決は回避された形となる。この自由党の“超技”により失意にあるのは民建聯と葉劉保安局長で、民建聯は97年以前の英国統治でパッテン総督による民主化に対して97年後の政局安定のため保守派強化のために作られた御用政党で当然23条も立法賛成、50万人デモは市民が騙されたと吹聴していたが自由党が突然の造反。このまま賛成を維持する以外に政策などないのが民建聯だが自由党は財界が基盤であり立法会選挙も業種別区にあるため民意の反映にかかわらず議席が安定しているのに対して民建聯は民主派と議席争う地方区で今回の23条立法支持により民建聯の支持がかなり下がることは必至、自由党に裏切れて唯一の悪役を仰せつかった格好となりこのままでは秋の区議会選挙での大幅な議席流出が懸念され絶望的。結局、財界は見事な翻身を見せてその鵺の如き変り身の早さ見せつけたが保守派市民層というのがいかに権力に弄ばれるかの現実を見せつけられし思い。そしてもう一人、立場が悪いのは葉劉保安局長。そもそもこの23条立法は基本法にあるとはいえ5年も政治日程に上梓されることなく来たものを昨年の秋に突然、来年7月までの立法化が北京中央との共通認識であると述べ、それに基づき立法化が進行したのだが、自由党の田党首がそのような立法化の期限などない、と述べたことで昨年のこの葉劉の発言ぢたいがデタラメなのではないか?という疑念が生じる。このオバサン、Immigration署長から保安局長への抜擢で下手すると董建華と組んで二人の自らの業績向上のため23条立法化を推進したことまで考えられる。
▼昨日綴った築地のH君教えてくれた産経抄はこちら。それにしても香港の50万人デモを「激しい熱気」「この熱気は官製のやらせでは決して生まれぬ」「真剣な市民の気持ち」と絶賛だが、このデモがお気楽だの安易だのという指摘もあるわけで、ようは一枚の写真であれ一つの現象であれ見る方によりどうにでも解釈できるということ。それにしても香港のデモは「やらせ」ではない、でそれに対して日本の「反戦平和」「戦争反対」のデモは「面白半分だったとしか考えようがない」と揶揄するが基本的には当然のようにデモ主催者がいて市民がそれに参加するという点では同じなのだが、産経くらいレベルが低いと解釈など適当。たんに日本の市民デモなる大嫌いな対象を否定するために香港のデモなどどうにでも解釈できる、ってこと。それにしても曽野綾子のイラク攻撃における「今度の戦いで日本人の多くは事実の裏も読めず、厳しい現実にも参加せず…ただその場限りの平和を唱えることで、自分は善人であることを証明しようとした」という言葉はそのまま「その場限りのテロ対策を唱えることで、自分は正義であることを証明しようとした」と言葉を置き換えられるのだが、曽野綾子も産経もこんなコメントがたんに意味のない修辞であることもわかっておらず。ちなみにこのコラムの最後は「ただ“証明”のためのデモもあるらしい」と結ばれているのだが香港50万人デモも「証明のためのデモ」なのだが(笑)。

七月四日(金)悲しくなるほどの青空。人を殺しても罪を感じぬであろうほどの青空。夕方もまだギラギラの太陽のなかジムに参り鍛錬。帰宅して週刊香港の原稿。帰宅してからネタ決めて呻吟といいたいところだが鮪の中落丼の簡単な夕食はさんで小一時間で900字弱。原稿だけは早い。Macallan調子よく飲んでいたら気持ちよくなりずいぶん前にS嬢にもらった『ブルータス』の本屋特集いい加減に読む。
▼築地H君が愛読する産経新聞が三日「産経抄」にて香港のデモについて書いている、と報せてくれるが産経のwebから昨日の産経抄にたどり着けず。なんでも「香港のデモをネタに日本の反戦デモをくさしている」らしいがH君曰く「産経ともあろうものが中共の独裁に反対して「自由社会」を守るための論陣をはらないのか」と。だがH君の産経新聞は「まさか、国内の反戦デモの方が中共よりも重要な敵だということでしょうか」とというのは事実であろう。結局、産経の敵は共産主義じゃなく体制にたてつく市民。それにしても今日の産経抄も船の科学館に展示されている北朝鮮工作船から憲法の丸腰平和論批判、よくここまで安易に論理?が飛躍できるものと感心。
▼或る方から今回のデモについて雑感をお送りいただく。それに返事する過程で余の雑感もいくらかまとまった感あり、備忘のため綴れば以下の通り。
市民がどういった事由であれデモという形態で政治参加したことは、政治が本来政事(まつりごと)であり祝祭であることを思えば、少なくとも政治に全く疎くなり無関心であるよりもこれは評価すべき。ああして市民が意思表示をして何らかの形で香港政府も動いていく、というのは、97年以降の香港社会を想像した時に予測されうる否定的な状況のなかで、今のこの状況は寧ろ「まだ」健康体である証拠、と感じ入る。それ故この動きを評価。香港の姿は、米国に見られる米国建国の理念と覇権主義との差異であるとか日本のなるがまま、なされるがままの政治と市民との差異など見るにつけ、香港はそう悪くないはず。

七月三日(木)快晴。50万人デモあって政界の動向はといえば董建華は世間にはダンマリを決め込み連日行政会議(Executive Council)を開催。結局のところ今さら退歩もできぬがこのまま来週水曜日からの現行での継続審議続ければ世論の反発更に大きくなるのは必至、とくに23條立法断固可決であったはずの御用政党民建聯がこのままでは立法会の次回選挙にて失票甚だしきことは明白にて23條立法のうち殊に反発多きマスコミの国家安全にかかわる国家機密情報の非法入手に対する条項(独自取材の制限と言論自由の制限)など「公共の利益のため」の情報取得などは不問とするなど修正の余地ありの如きこと宣ひ始め、同じ与党自由党は地方区に立脚せぬ職種別選挙枠のため民意に敏感になる必要なきところやはり23條立法に懸念蔓延れば各業界の意見を諮る向きあり、立法会議員(金融界選出)で東亜銀行頭取の李Baby國寶も銀行各行に諮問の上態度決定とそれまでの23條立法支持から態度軟化した上にデモ参加者は保安局長葉劉淑儀が「デモ参加は余暇レジャー活動」には非ず政府は市民の意見を聞くべきであり首相温家寶も深センにてこのデモの様子は映像で見て状況を理解しているはずでデモ当日に意図的にデモ集合場所を親中団体に貸与したことは市民反発喰らい葉局長のまずい態度と表現が寧ろデモ参加者を増やしたと非難。信報社説は来週水曜の強行審議はせっかく平和裡に終わったデモでの民意を加熱させ政府不信と状況の悪化に繋がるもので現状では審議延期しか政府のとる手段なし、と。
▼朝日の広告で白水社の村上春樹『ライ麦』絶贊の広告あり。読者の声で
「こんな話だったのか」と正直鳥肌が立ちました
というのがあり爆笑。誉めているようだが中森明夫的に読めば「こんなひどい話だったのか」と唖然として鳥肌が立った、と。
▼武蔵野にて市民運動するD君の話ではD君らの主宰する反戦デモは50人だそうな。数十万人規模のデモなど日本ではもう何十年も絶えて久しく頑張っても数万人。そのデモ隊列が1車線に規制されてしまい「大通りを埋め尽くす大群衆」という事態は絶対に「見えない」と。同じ参加人数のデモでも「通りを埋め尽くす」と「細い列」ではインパクトが違うわけで日本でのデモ規制はそういった官憲側の抑制がされている、ということ。それにしても中共の支配下にある香港ですら可能な表現行為が日本という「高度に発達した資本主義国」ではありえない、とは、まさに日本の国辱!、とD君。ちなみに昨日の朝日、東京版では「50万人デモ 香港大荒れ」ではなかったそうな。
▼築地のH君よりサイード先生の『戦争とプロパガンダ』4冊目刊行と報せあり。「裏切られた民主主義」というあまりにナイーブな邦題がトロツキーのパロディ?と思うようなのもH君ならではの素養だが、そもそもこのサイード先生の文章、ガーディアンであるとかAl-Ahramといった新聞に精力的に寄稿しているもので新聞社もセコいこといわずサイトにて公開。本来、それを刊行する必要ないのだが「日本だから」翻訳され刊行されている事実。サイード先生にしみてみれば印税も入るわけでけっこうなことか。だがサイード先生のこの文章を読まなければならない者は中東でもアフリカでも中国でも(北朝鮮はどうか知らぬが)サイトで英文で読んでいるわけで、寧ろ碩学サイード先生が英語はnativeに非ず「ぎこちない」英文で書いてそれを英語圈とrest of the Worldで読まれていることが、日本語の翻訳を読んでいてはそのいちばん大切なことが理解できない。それにしてもサイード先生大全とでもいうべきすごいサイトもあり(こちら)日本の凄さ。ここで読んでいても、やはり上梓されると本を買ってしまう、という知的行動の様式もH君に言わせれば我々が最後かも、と。久が原のT君も荷風、鴎外に露伴の全集を揃え、もうそれに囲まれてあとは何も要らぬ、と。あと少しすれば単なる読書が我々でいえば先達が「漢籍の素養がある」というくらいの凄いことになてしまうかも。
▼ところでH君に50万人デモでの警察の話をしていて、そういえば香港にいる(いた)シーク教徒インド人の警官であるとかどうしたのですか?と質問受ける。このシーク警官であるとかネパール系のグルカ兵であるとか国籍とかどうなったのか?と。仕事はその多くが民間警備会社に移っているが、国籍は故郷のインドには親の代までで本人の国籍などなく中国籍を得ることもなく、つまり国籍が「ない」者も少なからず。但し香港に生まれ永住権があり旅券も英国政府が出している英国海外旅券を有せば渡航には支障ないわけで、つまり戦争にでもならぬかぎり一般生活では国籍はなくても平気なのも事実、と答えると、H君曰く日本にいるとその感覚がリアルにわからぬ、と。どうしても人権を保護する主体は国家であり、国家に属しない(=国籍をもたない)人間は人権擁護の対象になりえないというかのような考察が日本には蔓延。だから国家が必要である、という修辞がそこに成立する。だが当然の如く「国籍と人権というのは成り立ちからして直接は関係してない概念」なわけで、だが日本国憲法を「和訳」するときに「people」を「人民」でも「民衆」でも「人びと」でもなく「国民」と誤訳(もしくは巧妙な修正)したことも大きな責任があるか、とH君。まさに。日本国憲法の立法精神からいえば、日本国家の主権の及ぶ範囲内では「すべての人々」が人権保障の対象となっているはず、と。御意。それが結局、日本「国民」それどころか「国民としての義務も果たせぬ非国民」を排除して健全な愛国心有するものだけが等しく福利を享受するが如き視点になるつつあることの不気味さ。
▼中国本土での「不法」出稼ぎ労働者の動態について子女の教育でもかなり深刻なものあり。国内の移住も制限ある中国では辺境だの農村での貧困から大都市への不法出稼ぎが盛んであり、その数1.2億人(人口の1割)に昇るというが、そういった家族での子女は当地での義務教育を受ける機会がなく北京の人民大学人口研究所のDuan Cheng-rongの調査によるとそういった家庭の45万人の子女が学校に通わず100万人以上の子も教育が不十分。ここで深刻なのがその子どもらが文盲となること。中国において文盲は1949年の建国の頃に4.66億人だったのが82年に2.3億人と半減されたが近代化によりその陰で文盲の若者が増えるとは。何が社会主義なのか。

七月二日(水)快晴。新聞には50万人デモと大きな活字と写真が並ぶ壮観。いつも新聞買うスタンドにて北京御用紙の『大公報』と『文匸報』眺めると笑顔の温家寶首相の写真あり新聞スタンドの主人も呆れた表情。朝日新聞は1面の写真に「50万人デモ 香港大荒れ」って(唖)、やっぱりこの新聞は偏向している。思想的に、じゃなくてどこかヘン(笑)。朝日にしてみれば民意と政府との対立状況が「大荒れ」ということだろうか、それにしても大荒れというのは暴動が起きているとか軍が鎮圧に乗り出した、という状況であって50万人の規模は大きいが平和裡にデモがあったことは「大荒れ」ではない。これが東スポなら「香港で100万人デモ 大荒れで人民解放軍出動?」とか冗談で笑って見ていられるが、朝日の場合、マジで書いている(香港の特派員じゃなくてデスクなのだが)と思うと怖いのだ。50万人デモから一夜明けた今日の政府関係者(“要”人とはとても呼べず)の表情などテレビニュースで眺める。結局、いまのこの時代というのは民意は民意であり、国策というのは民意から乖離した別物となってしまっていること。米国のイラク攻撃然り、米国民に米国政府の覇権主義を嫌う者少なくからずとも政府は中東介入を続け覇権を得ようとする。香港は民意は民意で理解するが23条立法は国家の要請でありそれを民意を事由に廃案とすることはできぬ、という。国家の治安維持のための法律はどこの国にもあり香港が特別行政区である以上は香港の自治を維持するために国家(中国)とは別にこの国家安全のための法律の制定が必要である、という。確かにその通りかも知れぬ。だが問題は、その守る対象が政権移譲も政体の変容もある包括的な意味での国家であればいいのだが、中国の場合の問題はその国家=共産党であり、この一党独裁を維持することと国家安全が実質的に同義であること。温家寶がいくら誠実であり彼が「この立法で香港の自由は損なわれない」と言ったところで、共産党に異見申して行動起こせば「はい、有罪」で誰が何を信じようか。そもそも法の遵守など言われても、その中共ぢたいが憲法に「無産階級の連合を基礎にした人民民主専制の社会主義国家」と謳いながら、人民民主専制もなければ社会主義どころか資本主義専制を専ら実行しているのが自分たちであり、つまり中国共産党ぢたいがすでに憲法すら蔑ろに存在している事実。そしてこれまで億という数字の人々が建国以降に共産党政府の意向により反革命ということで断罪されてきた事実。それらを考慮すれば、結局、唯一の“国体”が中国共産党であり、ただただそれを畏れ多く汚さずに維持することが大切というだけの陳腐な発想。23条はそういった「たかだか一政党の独裁」を維持するためだけに立法化されると思うと、これは法が本来の万民の公共の福利(Common Wealth)のためにあるべき原則からすら逸脱している。唯一それを庇う修辞は「確かに中国共産党の独裁は正常な事態ではないが中国という国家の維持と存続のためには現状ではこの体制が専ら有効であり、つまり共産党独裁の維持は即ち国家安寧の礎となっている」という、かなり無理矢理だが(だが小泉三世の「大量破壊兵器がなかったからと言ってフセイン大統領がいなかったと言えるんですか」という粗忽なレトリックよかよっぽど説得力あり)この理屈は、おそらく共産党の偉い方たちは自分たちが実は一番よく理解していることだろう。であるから香港も繁栄を維持したければ現状の共産党が主導する中国の国家安全を危なくしないこと、と、ここが23条立法の核心だとしたら、下手に23条立法反対を唱えることは実は全く何もわかってないのではないか、と。これに反論はかなり難しい。だが国家の維持よか残念ながら人権擁護を優先させていただく、という前提で思想信条から表現の自由に介入するこの法律には反対、というのが結論となる。少なくともこの日剰とて思想信条、表現の自由あるからこそこうして書けているのであるし。下弦の月が美しき晩。

七月一日(火)薄曇。拙宅の壁塗装に使った油性塗料は昨年の引っ越し前の改修の際の大工が残ったのを置いていってくれたものでもう1年もたっては密封していても劣化間近で残りも少なく「ついで」で玄関の扉とその外のかなり老朽化していた鉄扉の塗装を朝からなす。薄いクリーム色ながら白に近く内壁は更に白いのでちょうど扉を開けて塗装していたら隣の麻雀キチガイの家のキーキーと叫ぶのが五月蝿い子どもが出てきて拙家を覗きこみ祖父に「この家、色がすごく白い」と述べられ確かにこの白さはパナウェーブに近いものと納得。結局この作業は昼に至りさて何しようかと思い久々に山を走るかジムで鍛錬か他の選択は本日午後予定されている23条立法反対の抗議デモにて昼すぎ微睡んだ結果、デモ。武蔵野に住む市民運動に熱心なD君は頻繁に市民デモに参加するが集団行動嫌いの余にとって初めてのこと。午後2時すぎ地下鉄の駅に向かうと心なしか黒色の服着た市民多し。ホームに立って家族連れなどで黒色にシャツばかりで明らかにデモ参加者と判る。列車着て乗り込めば黒シャツが半数近く北角のホームに入ろうとすると乗客から「華〜wah!」という歓声あがり何事かと思えば将軍澳線からの乗換え客がホームに溢れており黒、黒、黒。日曜日の午後2時すぎに超満員の電車で天后。エスカレータは客運びきれず階段で上がるが階段も渋滞。改札抜けるまでに10分。地上は人、人、人。集合地点のビクトリア公園には入れず。公園はこのデモの集合場所であると同時に親中系の政党や御用組合などが香港回帰記念祝賀行事などのため公園の広場と祝賀サッカー大会(笑)のため運動場も占拠、そのためデモ参加者が公園に入るのに迂回を強いられ多少の混乱。快晴。余は電車通りより香港中央図書館へ。かなり紆余曲折を経て図書館に入る。この図書館、全く利用価値のないバブルの塔にて開館当時に一度参観して呆れてそれ以降全く訪れてもいなかったが内部はデモ参加者が行進までの避暑でかなりの混雜。公園の全貌眺めるが同じ目的の入館者多く窓際で勉強する学生らの迷惑になっており退散。電車通りに出るとデモ始まるが(写真)殆ど先に進まずデモの縦列を抜けて横道を銅羅湾に進むとそごうの前では普段でも人通りがひどいのに工事で道幅狭くなっておりデモ参加者があふれ(写真)専用線の路面電車こそ動いているが反対方向へのバスまで完全に動けず。親中団体の祝賀行事に参加した老人が「デモ参加じゃないっ!」と怒って人ごみを当たり散らしながら歩いてゆく。思った以上に23條反対ばかりか董建華に辞任要求多し。この祝賀行事に参加した老人たち、各地からバスで来場したが帰路のバスもデモに囲まれて出発できず。祝賀行事のあとの祝賀宴会は当然無料でそれに誘われたそうな。鳥瞰写真撮らせてもらおうと上がったとまと書店。夢野久作の『ドグラマグナ』の下巻のみあって購買。デモを眺めていた子どもに「何をしてるの?」と尋ねられた広東語と日本語がちゃんぽんの母親、大声で「みんなバカ」と宣い余も思わず母親の顔見たら「余計なことを大声で言った」と思ったのかこの母子は早々に退散。余に睨まれて身の危険を感じたか。Nokiaに携帯の修理受取りに行くと普段は混雜する修理服務中心はほとんど客もおらず開店休業はデモの余波。湾仔のジムに行こうかと思ったが路上の交通機関は麻痺、地下鉄も乗るまでが大変でデモに加わる。それまで片側3車線であったデモは電車線路も電車動いておらぬためデモが歩き、ついに反対車線も渋滞していたバスを海岸のほうに警察が逃がした段階でデモ参加者が入りこみ、ついにHennessy Rdは車両通行不能。とくに湾仔の北京政府御用紙『大公報』新聞社前ではデモ隊の歓声大きくなる。湾仔でデモを抜けジムに行くとジムもいつもの日曜日の午後よか閑散。鍛錬済ませ18時前に電車通りに出るとまだデモ行進中。すでにデモ始まり3時間、デモは寧ろ参加者が増えている(写真)主催者団体のボランティアが「反対23條、還政於民」のスローガンを叫ぶとデモに参加した市民がそれをくり返す。「午後4時の段階で香港電台がデモ参加者40万人と報道!」という声にまた「うぉーっ!」と共鳴。当初10万人と言われていたデモは余は見ておらぬが89年の天安門事件での100万人デモに次ぐ規模になっているのは確か。デモが大河のように広い通りを流れてゆく。がこのデモで最も称賛されれるべきは香港市民の民度の高さと自由欲す希望だが、それに次いで評価されるべきは警察の警官諸君の対応。これだけの規模のデモが平和裡に続いているのは奇跡に近し。デモというもの官憲側が威圧的に対応すると参加者との小競り合いなど生ずるのは日本だの韓国でのあまりに制限多き措置ゆえ。それに比べ香港警察はデモを流すためにバスを逃して大通りを全面開放するなど緩急措置をとり機動隊など出動させず警官が立っているだけ。しかもバスなど渋滞に巻き込まれた車両なくなったあとは街頭の市民と雜談しながらデモを眺めている。大したもの。ここでまたデモに参加すると目的地である中環の政府庁舎から帰路の交通手段の混雜が深刻。Thomson Rdの潮州麺家・順發にてこの店の有名な牛什(牛の内臓のあっさりとした煮込み)を晩餐にと購う。ちょうど六時半のニュースでデモの報道あり見ていたがテイクアウトできて去ろうとすると店の者が「ニュースなら坐って見ていってよ」と茶を出せれ、そういえば渋滞するバスの乗客もデモに手をふり大通りに面したビルの窓からも手をふる従業員ら多く、もはや市街がこのデモ支持のコミューン状態。これが赤葡萄酒といい相性。テレビのニュースはデモがまだ銅羅湾が最終尾と伝える。デモがこの終尾が政府本庁に着いたのは午後9時すぎ。じつに6時間余。今日の午前中に香港を去った温家寶は香港を称賛し、この23條立法は国家の保安が目的であり市民の自由を拘束することなど絶対にない、と言い残す。董建華が晩に声明発表する。多くの市民がデモ参加したこととその要求を真摯に受け止める。しかし国家安全条例の立法化は香港政府にとって香港基本法での憲政上の責任であると。つまり50万人がデモに参加してもこの立法化は行われる、というもの。確かに基本法で定められているが、今回の問題は政府のこの立法化での民意無視した姿勢であり、このデモは23條立法反対とともに董建華に退場を求めるもので、それについてこの無能無策の行政長官はどの厚い顔の面で受答えするつもりだろうか。呆れるばかり。常識的な頭脳と感性であれば50万人の抗議デモ受けても行政長官職に留まれることが異常。それにしてもこの香港市民の民度の高さにはあらためて頭下がる思い。日本でならデモ参加など「一部の思想的な市民」という偏見すらあり、東京の銀座で石原慎太郎により防災訓練の名の下に派手な自衛隊だのの活躍ぶりをぼさーっと見ていても反感や抗議の念すら起きぬ都民にとって東京都でいえば100万人デモに相当するこのデモ活動は理解難しいかもしれず。

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