乾 坤容我静 名利任人忙
(旧)教育基本法(1947〜2006) 改正に反対した文化人129 名の声明 憲法改正反対(九 条の会こちら

また眞理を知らん、而して眞理は汝らに自由を得さすべし。ヨ ハネによる福音書8章32節)

メ ディアはコミュニケーションの道具という素朴なイメージがあるが、もっともこの言葉は「中間」という意味であり、二つのものの間を取り次ぐという意味で はコミュニケーションの道具となるが、同時に最初は一つであったものを二つに分けるという効果ももたらす。メディアは、それがもたらす情報を共有し仲間意 識を持つグループと、そうしたものに無関心、あるいは反発するグループとの分裂をもたらす。メディアが発達すればするほどこの分化は進む。だから、メディ アの発達がコミュニケーションを豊かにするというのは幻想にすぎない。(佐藤卓己)

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■ 「はてな」の富柏村日剰・香港日記(テキストのみ)はこ ちらを ご覧 ください。

■最近のブログ化のご時世に敢へてブログ化せぬ日記を。の 心づもりでをります。敢へて全て讀むこと強ゐる日剩あつてもいゝのでは?と。
讀みにくいこと間違ひなきサイト乍ら今後とも御贔屓の程宜しくお願ひ申し上げます。
■香港の高級紙「蘋果日報」からの紙面、寫眞の無斷借用多し。同紙社主・黎智英氏自ら同紙の無斷借用轉用大歡迎と公言ゆゑ、それに甘えてをります。
2000 年11月24日からおそらくあなたは番目の閲覧者です。

六月卅日(月)雨もひどいが涼しい日続き今朝も気温は摂氏25度なのだが地面と建物が雨で地温が上がらないからか寝てゐてもずつと冷房もつけず夏物のパ ジャマでタオルケット掛けてゐてちやうどいいくらゐ。午後に天后を通りかかり華 姐清湯腩で好物の牛腩河粉を食さうと したが間違つて肥腩で供される。脂身も上質だと甘みが格別。早晩にFCCのラウンジでドライマティーニと豪州のBimbadgen Estate産のBimbadgen Ridge、Shiraz Cab Sau Merlotつて「かなり」の05年はアタシにはちよつと甘すぎ、を一杯。ここ数年、中環の繁華街に異様な物乞ひ女性あり。スーパーの買物袋を幾重にも丸 めて造つた異様な頭巾?で顔を覆ひ路上に寝ころんで、の物乞ひ。余りの異様さに誰も物怖ぢして近づかず。冬場になると毛布だのかけて路上に寝込んだやうな 姿。安部公房のやうな世界。交差点の信号待ちで腰の位置から携帯で咄嗟に一枚撮らせていただく。Z嬢とExchange Squareの「札幌」にらーめん食す。香港の家賃高の話となり、Z嬢曰く、いい材料やサービスにコストがかかるのなら客にもメリットあるが地代ぢや全く 客に還元なし、が馬鹿馬鹿しい、と。確かにね。それにしても雲呑麺ならHK$15感覚の香港の食客が日本のラーメンとなるとHK$60を費やすのが、ちよ つと不思議。といひつつアタシも時々かうして香港の1,000円ラーメンを食べてゐるのだが。先週末から頻繁に市大会堂。今晩は本来はTruls Mørkはんによるチェロソナタ三昧で(ピア ノはKathryn Stottによる)べートーヴェンOp.5ヘ長調、ショパンOp.65ト短調、ドビッシーイ短調、ブラームスOp.99ヘ長調で「これは面白さう」と期待 したがMørk先生が怪我だかで欧州でも全ての公演取り消し。でColin Carrといふ英国のチェロ奏 者が代演。バッハの無伴奏から第3番ハ長調、パルティータ第2番ニ短調、で中入後は無伴奏の第6番。3番はサラバンドも良かつたがブーレがジャーマンダン スらしさで殊更良く、本来ヴァイオリン曲であるパルティータのシャコンヌを聴いて今晩のこの代演で稀な機会に遭遇と感激す。アンコールで無伴奏第5番のサ ラバンドは崇高。Karr氏も香港の観衆相手に気が乗つたやうでピアッティの(たぶん)無伴奏チェロのための奇想曲からの一曲。これが絶妙。良い演奏会と なる。
▼藤原新也氏の語る秋葉原事件(朝日30日衛星版Opinion欄)
情を分かち合う人とのつながりは社会に出てからもあるわけだが、終 身雇用、年功序列という日本型の企業形態がアメリカ型の成果主義に変わり、正社員でさえ就労環境が非常に冷たいものになってきている。同じくそのアメリカ が日本に企業進出る際に、若者の労働を「資源」と見なし、圧力をかけ、派遣社員制度の端緒をつくったわけだ。人をモノのように扱う戦前の「人買い」のよう な制度がのうのうとこの民主主義の時代に闊歩してゐる不思議を、僕は何年も前から言及してきた。(略)若者の犠牲と不幸の上に立って国内総生産を維持する 国というのは一体何か。アメリカモデルからの脱却という根本的な指針を、行政にあずかる者はそろそろ持つべき時代に来ている。
……と尤もらしい事が述べられてゐるが日本の社会問題を米国の所為にするのは短絡的すぎぬか。成果主義は別にアメリカ型ぢやないし、そもそも日本の戦後の 民主主義「らしきもの」じたい米国のご提供。アメリカモデルから脱却していつたい何があるのかしら。終身雇用と年功序列なら問題が解決つてなワケぢやな い。日本といふ国じたいに「国のかたち」がないこと=革命を興してまでの建国を経験をしてをらぬゆゑの理念の欠如じたいが問題なのだが。
▼中国貴州で少女強姦の犯人釈放に数万人が抗議。中国の管制報道は何でもさうだが「……に不満をもつ人の一部が真相のわからない大衆を煽動し少数の不法分 子が……」といふもの。これに倣へば中国の共産主義革命とて「中国の旧来の体制に不満をもつ人の一部が真相のわからない大衆を煽動し少数の不法分子が共産 主義革命運動を起こし」となつてしまふはずだが。
▼マレーシアで政治活動再開のアンワル元副首相、23歳の男性秘書にアンワル氏による通姦を警察に通報されアンワル氏はこれを10年前と同じ政治的陰謀と して鶏姦罪容疑での拘留、禁固処分を避けるためKL市内のトルコ大使館に庇護求める。何処まで策略なのかアンワル氏の何処が脇が甘いのか不明だが築地のH 君(この日剰に久々に登場)曰く同じイスラム圏でも世俗的なトルコ大使館に逃げ込んだのが興味深く、これがイラン大使館なら「同性愛者がイランに助け求め るはずねぇだろうがつ!」で終はつてしまふ、と。御意。
▼左丁山氏が蘋果日報の連載でホテル業界の知人の話として六月下旬からの北京のホテルの空室率高し、と。反テロ対策でのヴィザ供給制限などマイナス要因あ り旅行者の間で寧ろ五輪を避ける空気あり北京五輪で濡手に粟のはずの北京のホテル業界は早くも料金値下げで客足確保も始まつた、と。期望愈高、失望愈大。

六月廿九日(日)雨。今月の雨量昨夕迄に1,245mmに及び1889年 5月の記録超え香港開闢以来の雨月となる。午後まで陋宅書室にて机に凭り書きもの、書類整理。午後、Z 嬢と油麻地。上海街視藝空間(Shanghai St Artspace)なる空間。先頃『香港老店』なる老舗(た だ歴史があるだけぢやなくて建物も品揃へも昔のまま、のやうな)ばかり撮つた写真集出した呉文正のその老舗写真と蘇俊怡なるイラストレーターによる老舗観 察のイラスト。『香港老店』はこの空間に入るなり写真集の半切と同じ大きさのプリントでがつかりしたが実は全写真を二巻の巻物に仕上げ而もプリントは左右 の写真が一切途切れぬ凝つた装丁がお見事。碧街の葫廬館なる 店で薑汁撞奶(ジンジャーミルク)。原味! 沙咀のSpace Museumの冷蔵庫の如きテアトルでドキュメンタリー映画『周恩来 外交風雲』観る。今年は周恩来生誕110周年ださうで香港で国威発揚か周恩来モノの映画上映数本。十年前の生誕百年で党中央が製作のこのドキュメンタリー はプロパガンダ色もけして強烈に非ず(せいぜい中共が戦後の米ソ冷戦のなかで第三の地位で独自のAA諸国支援の独自外交を貫いたこと=周恩来の功績、と) 貴重なフィルムの場面も多く面白く観る。カンボジアのシアヌーク皇太子家族との団欒、印度のガンジー首相逝去での号泣、アフリカ歴訪、浅沼書記長率ゐる社 会党や高崎訪中団の受け入れ……等々。1971年にパキスタンから隠密にパ政府機で北京入りするキッシンジャー博士を迎へる北京空港での多少落ち着かぬ 姿。一つ気になつたのは老いて病に犯され痩身の痛々しい姿で「自らが築き上げてきた外交は鄧小平同志に託し」と北京空港で鄧小平を見送る周恩来の姿。鄧小 平が華盛頓でカーター大統領と並ぶ姿がフィルムに映るのだが、ふと思へばこの訪米は79年のはずで北京空港で鄧小平を見送る周恩来はどう考へても75年以 前のもの。アタシの見間違へかしら。周恩来外交は特筆に値するのは当然だが、アタシは寧ろ『周恩来内政風雲』こそ実は知りたい。映画跳ね尖沙咀で韓国料理 を食さうとHumphreys Rdの錦城、Kimberley Rdの清渓川、荘園、Austin街の豐園と巡るが何処も満席でChatham Circleの韓国宮に辿り着き白菜(実際には青菜)のチゲと辛さ手強き冷麺。真露はほんと昔に比べ味がマイルドすぎ。
▼東京で二度目の五輪開催の賛否(朝日新聞29日衛星版文化面)。
是枝裕和監督……国威発揚をオリンピックの目的と口にするような時 代錯誤の知事が旗振り役をしている一点において支持する気など100%失せる。
評論家・呉智英氏……私は、見るスポーツで帰属意識を刺激するス ポーツは大嫌いである。自分がやるわけでもないのに選手と同じ帰属意識を持って一喜一憂できる人の気持ちがわからない。やりたきゃやれ、である。

六月廿八日(土)夜明けより早朝は晴れ間も見えたが朝七時頃より大雨。午 後まで驟雨あり。昼過ぎ久々に湾仔の再興焼臘飯店に叉焼飯を食す。土曜昼ならそれほど混んでをらぬかと思ひ赴けば確かに満席だが行列までにならず 直ぐに坐す。この食肆の焼臘はタレは自分の好みでかけるのところが佳い。アタシのやうな淡味好みには叉焼など蜜汁だけで十分。米飯がびちや/\するほどタ レがかかつて供されると興醒め。千客満来に客あしらひの上手さは敬服。早晩にFCCのラウンジ。名前失念の赤葡萄酒を二杯。週末のFT紙や金曜に届いた The Economistをぱら/\捲りつつ土曜掲載のは決まつて難度高き「すどく」で遊ぶのが土曜の愉しみ。Z嬢来て軽く夕食。アイリッシュシチュー。市大会 堂。香港フィルの演奏会で今晩の目玉は五嶋みどりさんでブラームス のヴァイオリン協奏曲イ長調の演奏。指揮は(江戸出悪人さんはもう夏休みか)90年代に香港フィルの音楽監督務めたDavid Atherton氏。ストラヴィンスキーのLes cinq doigts(五本の指で)を室内楽に編曲したもの、と1919年版の火の鳥。DA氏にしてみれば自らが育てた90年代の香港フィルとはすつかり楽団員も 入れ替はり全く異なるオケだらうが、この人は楽団のレベルの範囲でそつなく曲を仕上げられる人、と見た。「火の鳥」は四月末に国立ロワール管弦楽団の演奏 を聴いてゐるが、この香港フィルといふ楽団はどうもオルガニズムが足りぬ。曲の抑揚など。昨年の薔薇の騎士の演奏はさすがに歌劇で香港フィルの演奏として はかなり楽しめたもの。この楽団にとつてはアンサンブルとしてのモーツァルトの楽曲と、そして歌劇はいい訓練になるはず。だがオペラ指揮では定評のワルト さんだが今年9月からの新シーズンも香港フィルはワーグナーの指輪はヴァルキューレ1幕のみ。数日前の信報で古典音楽評論の劉偉霖氏曰く、ワルト氏はこの ヴァルキューレのためにハープ6基の布陣で臨む。歌劇曲の演奏会の場合はフルオーケストラに出来るところが面白みで朝比奈隆は64弦にハープ6基で指輪を 演奏してみせたが、香港フィルは昨年の薔薇の騎士でもリヒャルト=シュトラウス指定の64弦のところ50弦が精一杯だつたもの。でワルトさんにとつてフル サイズで全曲演奏は香港フィルでは未だ実現はせず。閑話休題。で中入後に苾多里(Midori)登場でブラームスのこの協奏曲。ブラームスとはアタシにと つては「聴いたあとに口遊めない」のがブラームスたる「らしさ」だがブラームスの中でも殊に折り重なる主題や展開など立派だが「曲として苦手」なのがこ れ。みどりさんの演奏はそりや第一楽章のカデンツァなど惚れ/\。第二楽章の半ばオーボエ協奏曲?も香港フィルのオーボエ奏者は上手。みどりさんのヴァイ オリンは心底お見事なのだがアタシは曲が苦手なせゐか、どうも聞き終つたあとの感動に欠ける。アジアの演奏家は如何せん「鶴の恩返し」のよう、とZ嬢。御 意。帰宅してMacBook Airに(それまで使用のMacBook G4よりの乗り換へで移行不良の)egbridgeをインストール。MacはOS Xで「ことへり」の日本語環境がかなり整つたとしてエルゴソフト社も独自の日本語入力システム egbridgeの販売を中止したが「ことへり」は変換能力も低く蘊蓄多き文体には対応しきれず。再インストール済ますと幸ひなことに(登録単語辞書は当 然として)数年間馴染ませてきた日本語変換の学習機能の記憶まできちんと移行されてをり全く支障なく以前と同じ感覚で日本語入力可とはあらためて egbridgeの賢さとMacとの相性の良さに感心するばかり。販売中止のこのegbridgeは後世までかなり大切。
▼ちなみに香港フィルは年間予算HK$110Mで、そのうち実際の入場料収入は昨期はHK$24M。58Mを香港政府が援助し28Mを企業寄付に頼り大口 のスポンサーは12M援助するSwire集団。

六月廿七日(金)雨はまだ降り続く。昼まで大雨。早晩にFCCで一飲。珍 しくスクリュードライバー。独りカエサルサラダの鶏胸肉のロースト添へを食し米国加州はフォピアーノ葡萄園のリバーサイドなるシャルドネ(05年)二杯。 市大会堂。Z嬢とDaniel Yeung(楊春江)君の舞踏公演を観る。DY君ももう40代。だが童顔で小柄十代の如し。端正。29歳で本格的に舞踊を始めた彼の公演は99年 から殆ど見続けてをり、寡作ゆゑ前回は05年の“Little Prince Hamlet”で、今回はかなり気功であるとか取り入れ Chinese Body なるものが主題。北京五輪の乗馬競技香港開催記念の芸術公演の一つ、で<中国>なるものを主題に絡ませたのか、と察するが、公演の終盤は89年の天安門事 件や今春のラサ暴動の映像を背景に一糸纏はず個からの気の発散を表すやうな表現あり興味深し。帰宅してレオシュ=ヤナーチェクを聴く。Leif Ove Andsnesのピアノ曲集はCD1枚にソナタ、「霧の中 で」と「草陰の小径」が入つてしまふ。今日、中環のHMWでヤナーチェクの器楽曲のCDが二枚あり、同じ「シンフォニエッタ」がサイモン=ラトル卿指 揮のフィルハーモニアオーケストラ(EMIでこれは当然として)ともう一枚、スロヴァキア放送交響楽団(オンドレイ=レナールド指揮)のNaxos盤があ りHK$40とお買ひ得。これを聴き比べたが録音は後者が圧倒的に劣るのは当然として、あまりに楽曲として完成され過ぎた前者に比べ、後者がいかにも地元 の楽団が地元の作曲家の伝統曲を演奏してゐる緩さがたまらなく素敵。
▼張五常教授の信報連載(第4回)で汚職、贈賄の経済効果についての言及あり。張教授曰く中国の贈賄の状況はアジア諸国の中では比較的まだマシなはう、 と。「よく言ふよ、まつたく」と思つたが張教授自身が訴へられてゐる罪状は骨董品店での偽物偽造販売と脱税の罪で而も米国でのこと。中国経済の学説とは関 係ない、とすべきか。
▼在独逸の關愚謙氏がまだ信報でまだチベット問題で吠え続ける。(廿四日、信報)
チベットの文化や思想の歴史は千年余、それは中国の文化と歴史のとても重要な一部分であり(略)中国政府指導者は過去の政策を反省し先づ少数民族政策の誤 りを改め彼らの文化を肯定し人格を尊重すべきで対立関係を解消し彼らを人民の中の一員とすることである。
……と。言葉もなし。

六月廿六日(木)已然として雨空続く。朝には赤色暴雨警報すら発令あり。 今月の雨量は今朝までで已に1,000mmを超え1899年の月間降雨量1,241mmの記録を超えることも最早確実。諸事謀殺され晩遅く帰宅。秀和さん の音楽展望、1977年の続き読む。今でも朝日新聞で続く秀和翁の音楽展望。当時もまだ若かつたアタシは読んでゐたが、今になつて新刊で読んでみると、そ の一回の長さに驚くばかり。紙面での記事の大きさは当時も今も変はつてゐないはず。活字が当時はまだ小さいから記事が長い。カラヤンが60年代に続き十数 年ぶりにベートーヴェンの交響曲全集を出すらしい、なんて記述を読むと、当時、それをオンタイムで 知つてゐるアタシは懐かしいかぎり。中学の卒業式が終はり駅前のホテルの景山なる中華料理屋でJ君ら親友と親たちと昼を食し、その帰りに三光社なるレコー ト店で母が卒業記念に、と買つてくれたのがこれ。昔のことはまるで昨日のやうな鮮明な記憶。当時はこのカラヤンと、また小沢征爾&ボストンのジャケットに 数字が1だの6だのと大きく描かれた同全集が評判であつた。それとカール=ベームの維納も絶頂期。
▼香港の主要紙の一面買ひ取りでデカデカとキャセイパシフィック航空(CX)がアメックス(AE)ての提携でのクレジットカード発行の宣伝。 Citibank(Citi)のVisaカードとの提携が解消されて結局ここに落ち着いたか、といふ感じ(発行対象は現状では香港、マカオと台湾居住の Asia Milesメンバー限定)。特典内容はほぼCitiとの提携時の内容を踏襲。だがもともとAEでも上級カードならマイレージ換算は悪くないわけで、寧ろ Visaカードで換算率がいいのがCitiとの提携時代のメリット。今回のAE提携では度々遭遇する「AEは使へません」てな場合のポイントが活かされな いのが難。アタシはCitiとの提携カード時代の残存組でCXのエリートからCitiのプラチナに移行して換算条件不変の恩恵を受けてゐるので当面はAE との使ひ分けで支障なし。が原油高高騰でマイレージ換算も昔ほどお気軽にあらず。

六月廿五日(水)台風「風神」香港北東50kmだかに上陸。暴風雨。昼前 に台風警報は3に下がる。机まわりの片付けと思つたら何かと諸事に忙しい。雨は終日歇まづ。早晩に雨を眺めつつ日曜に広州で仕入れたイリヤ=カーレルの演 奏するパガニーニをしみじみと聴く。野菜豊富な夕餉でNZはSunshine BayのSau B 07年を飲む。
▼映画監督の土本典昭氏逝去。享年79歳。学生の頃に左翼系市民団体主催の六ヶ所村の核燃料再処理施設建設問題の集会にゲストとしていらつしやり惺かに公 害問題を語られてゐた。朝日の弔報で佐藤忠男氏が「水俣 患者さんとその世界」を日本のドキュメンタリー史上の傑作、としたうへで曰く
被害者と徹底的に心を許し合はないと、真の心情に到達できないとい ふ原則に立ち、客観的描写といふ旧来のドキュメンタリーの常識を覆した。生前、被害者の気持ちや痛みの「絶対値」を描くと語つてゐた。ドキュメンタリーは 報道にとどまらず、共に行動し、運動を作り出すものだといふ信念を貫いた。
テレビでも、この姿勢はかつての報道のTBSであるとか今では想像もできないが日テレのドキュメンタリー日本とかにあつたもの。先ほど最高裁がうやむやに したNHKのドキュメンタリーの政治性の問題があつたが、ドキュメンタリーが偏向してゐることはある面では必然性か。

六月廿四日(火)晩に中環の中國会。
某社の客人ありお招き受け末席を汚す。このメンバーズクラブはケバゐ内装の趣味から料理までアタシ にとつてはJoy Luck ClubならぬJoy Lack Clubなのだ。出された葡萄酒はCostières de Nîmes(AOC)のタルデュー・ローラン05年。食後に客人が送られるはずの「3桁ナンバーの最高級レクサス」が空いてしまひ台風接近の なか銅鑼湾まで送つてもらひ会食に一緒だつた某氏と久々にバーS。Glen Grantの21年を少し。台風警報8号発令。暴風のなか二更のうちに帰宅。
▼22日の蘋果日報で陶傑さんが書いてゐたが(紀念中國文人的一個失傳行業)この蜀の国の天災で「地震文学」なるものうまれる。例へば山東省の作協副主席 なる立場の文人が「十三億人共一哭、縦做鬼、也幸福」などといふ歌の作詞をしてゐるのは「幸福」といふ言葉がまるでジョージ=オーウェルの『1984年』 の二重思考(Newspeak)のやう。かの郭沫若も毛沢東が飛行機に搭乗しただけで「窗外一個太陽、窗裏一個太陽」と毛沢東賞賛のやうに文人も国家主義 に靡く、この姿勢。また中国政府は四川大地震で究明活動に活躍の青少年をネット上で選ぶ「英雄少年」コンテストを実施(朝日)。国家にとつて自然災害もま たいかに重要な効用ありか、といふこと。

六月廿三日(月)先週金曜にお会ひした写真家のBob Davis氏にお世辞なのは確かだが余の一連の写真を“an interesting view of life”と評されこそばゆい思ひ。晩にZ嬢と将軍澳坑口のLardos Steak Houseに食す。二度目。またも豪州はRosemount MudgeeのHill of GoldなるCab Sau 03年。今晩は豪州産のMB2+なる牛肉のテンダーロインは12ozで厚さ2 inchとアタシにはかなりの量。このMB2 +なる牛肉、何かと思へば米国の穀物メジャーの一つ、カーギル社参加の牛肉生産「工場」産。いづれにせよ美味い。肉だけで満腹は幸せ。但し胃が驚 くのは必至で帰宅して太田胃散。
▼20世紀の中国報道で重要な位置にありしジャーナリストの陸鏗氏逝去。米国桑港に客死。享年89歳。戦時中から国共内線期に中国国際広播電台や南京の中 央日報で記者。1949年4月に国民党下で逮捕拘束され50から75年にかけ中共政権下で22年の拘留。78年に来港後81年に雑誌「百姓」創刊。以来、 中国政治報道積極的に続けるが85年に香港新華社社長の許家屯の仲介で当時の胡耀邦総書記に独占会見。この時の胡耀邦氏の談話が饒舌で鄧小平らの激怒を買 ひ、これが後の失脚に繋がつたといふ見方もあり。90年には許家屯氏の米国移住(謂わば亡命)援助の廉で中国政府が入境拒絶措置(07年3月まで)。記者 の言動が政治を動かした時代の最後の一人か。
▼今朝のSCMP紙のベタ記事“Cannabis smokers on a downer over Dutch tabacco ban”より。Bloomberg電の記事は
As of July 1, marijuana will be the only leaf that can be smoked in public places in the Netherands. Cannabis devotees are not celebrating.
といふ書き出し。可笑しい。ちよつとこれだけでは理解に能はず、なら
Pot smokers, who usually cut joints with tabacco, and owners of the "coffee shops" where they are allowed to light up will have to change their habits when the nation implements the indoor tabacco ban.
と。つまり和蘭では公共場所での煙草喫煙禁止で煽りをくつたのがマリファナ愛好家ら。マリファナは依然として喫煙は合法だがマリファナ草を煙草に詰めて吸 ふお手軽な「ジョイント」は公共場所では煙草として喫煙禁止、といふ話。日本は江戸時代に和蘭からあれだけたくさんの知識学んだはずが結局は科学知識だ け。少しは和蘭の爪の垢でも煎じて飲むべきか。それにしても興味深いのはこの記事。Bloombergの報道で、前提としてマリファナについての素養がな いと「意味がわからない」こと(笑)。こんな短いセンテンスの中にキャナビスだのマリファナ、ポットと様々な「呼び名」が並び、勿論この他にもハシシだの グラス、ヘンプもさうだが、吸ひ方も知らぬいけない。といふわけで、その程度はBloombergにとつて、つまりBloombergのニュースを読むビ ジネスマンたちには当たり前の常識。それがわからないだけで世界の常識=日本の非常識なのかも。

六月廿二日(日)旅先で朝寝貪るはずが昨晩三更半夜に寝ても悲しいかな空の白む朝五時には目覚める老いの身。夜明けを待ち朝の散歩。ホテルに近い五羊新 村。何でもない都市型の集合住宅地なのだが深い味はひあり。その一つの理由はここがまだ周囲が畑だつた頃に村があり、その村が合作社として集合団地化し規 模が大きくなり他所からの住人の流入があり今日の規模になつたこと。それでも築三十年くらゐであらう団地は低層で、地上階には食堂や雑貨屋が並び空中が回 路で結ばれた構造が何とも親しみ深いものあり。問題はかつて畑だつた周囲が超高層のオフィス街となり、この一角もデベロッパーが虎視眈々と開発狙ふこと。 高層マンション化で住民にはそこへの居住権ありの等価交換と言はれれば応じようもの。さすがに昨晩の四川料理で腹の調子が芳しからず百富露なる牛乳を供す 店でやきたてのパンで朝食(4元)。ホテルに戻り同行の皆さんとタクシー飛ばして白雲山(標高372m)の麓へ。入場料5元払ひ白雲山国家級風景名勝区の 坂道を上るのだが、まぁ自然保護区とは思へぬほどの人出。社交ダンスや合唱隊、バドミントン等々、遊山の輩が遊ぶのは自由だが自然保護区なのにミニゴル フ、バンジージャンプにグラススキーと施設も充実。何だかお祭り騒ぎのやうで高所から市街一望のはずが晴天だがスモッグがひどい。大気汚染かしら。まぁ驚 かぬ。大都市のなかに、この白雲山の緑地があるだけでも立派。福岡空港的に市街地にあつた旧空港を眺める。強い日差しが肌を炒る。頂上でビールで喉を潤し ロープーウェイで麓まで一気に下る。山中の鬱蒼とした森に龍仁寺なる古刹あるを空より眺める。空中のロープーウェイに乗つてゐても山道を上り下りの遊山客 の賑やかな声が響く。タクシーでホテルに戻りシャワー浴び帰り支度。正午前にチェックアウトしタクシーで天河。母米粥なる粥ベースの鍋屋に皆さんと昼食。 たかが粥と侮るなかれ。午後の香港に戻る列車まで少し時間あり中信広場まで歩き(気温は摂氏35度)地下のCD屋。相変はらずグラムフォンの本物が40 元。アルゲリッチとギドン=クレーメルのベートーヴェンのヴァイオリンソナタ6〜8番、ダヴィド=オイストラフのヴァイオリン曲集、イリヤ=カーレルの演 奏でパガニーニの24の奇想曲 Op.1とヴァイオリン協奏曲1〜2番(ポーランド国立ラジオSO)の三枚購入。午後三時すぎの列車では読書のはずが二日遊んだ疲れ(暑さ甚だし)で熟 睡。香港に入り事故か30分ほど列車が遅れたのも嬉しいほど熟睡。帰宅して素麺を食す。

農歴五月十八日。夏至。快晴。昼すぎに紅磡站。K氏、S氏と待ち合はせ正 午すぎの列車で一路、広州。北京五輪に向けてのテロ対策で数日前より中国に入る列車でも香港側で乗車前に荷物検査開始。普 通車が一等車で特等車(HK$40増し)に乗車。車内で無料配布の新聞はかつては大公報や文匯報と決まつてゐたが、それが明報になつてゐた。中国持ち込み 可のお墨付きで無料配布が売りとなるやうでは新聞としては死に体同然。広州東站での荷物検査は二度。赤外線での検査で余の手荷物から不審な四角い小箱発見 されしは東洋文庫の後藤宙外編の唾玉集。タクシーでRamada Pearl Hotelに向かひ投宿。午後遅く先に到着の数名と広州のO君らランニングクラブのメンバーとホテルロビーで待ち合はせ14名で珠江の二沙島を小一時間の ジョギング。珠江岸、二沙島はまるで巴里のシテ島の如し、と褒めてはみたが気温卅数度、炎天下ではジョギングなどする十数名はかなり異色。それにしても、 走りながらの感慨は、四半世紀も前に広州を(といふか中国に)初めて足を踏み入れた当時、まさか将来この珠江の川岸を友人らとジョギングなどすることにな らうとは……。ホテルに戻り部屋でシャワー浴びて夕食は川國演義(天河の体育東路)。この四川料理の食肆、広州で真つ当な川菜が食せると評判になつて十年 くらゐか、今では数店舗経営で繁盛続く。部屋付きの女給に勧められるままスペインのGolden Butterfly Faceといふ銘柄だつたかテンプラニーリョを飲む。食肆の出す値が108元の中国の食品問屋がオリジナルラベルで仕入れる普及酒だがテンプラニーリョが 四川料理に合ふのは事実。21名で二卓、葡萄酒は八本くらゐ飲んだのか。現在は広州在住だが初めてアタシがお会ひしたのは92年にインドネシアのバリ島で の空港からグランドハイアットに向かふマイクロバスの中、といふA氏ら懐かしい顔ぶれ数名が広州で再会。二次会は天河の裏町にある輪葉葉なる焼酎バーに数 名で。古い低層団地群の地上階にブティックだの洒落たカフェやバーなど並び、さながら原宿か代官山の同潤会アパート風情の奥まつた一角に、このバーあり。 鹿児島の大久保酒造の侍士の門なる芋焼酎。美味。三更半夜に至りホテルに戻る。
▼広州への往路車中に信報の張五常教授の連載論文読む。論文といふより回顧録。久々にコンタクトレンズ嵌めたのは良いが手許の小さい字が見えず(近眼鏡な ら外せばいいのだが……要するに老眼)紅磡站前の商場の眼鏡店にて老眼鏡購入。張教授は佃農理論など業績あるが、一言で言へば「中国の開放政策を最も近く で見続けた近代経済学者」であることが最も大切。1980年の中国が最も必要としたのは実はマルクス経済でなく近代経済なのであつた。なぜか? 経済と資 産を国家が掌握する共産主義国家が(その原則に反して!)その資産をどう民間に転用できるか?の答へを用意できるのはマル経でなく近経であつたこと。恩師 フリードマン教授の訪中の際に江沢民氏がフ教授に尋ねた質問も資産権。資産の所有権と使用権、それを張教授は米国留学当時、銀行融資を受けて自動車購入の 折に自身が註冊車主であつても銀行が法定車主となる契約で、この観念を学んだ、と書いてゐる。

六月二十日(金)朝からぎら/\と照りつける太陽。つひに雨傘で灼る陽光 午後遅くGarden Rdの歩道橋の上で立派なデジイチなど使ふ子供らに「オートだの風景モードなどばかりに頼らずに」とプログラムモードでホワイトバランスや露出補正の面白 さなど講釈垂れてゐたら通りがかりの初老の翁に「それはIII gかひ?」とアタシが提げたバルナックライカに興味示され「III cなんですがね」と立ち話。用事済ませ涼をとりに、と寄つたFCCのバーで、またこの御仁に再会。少し写真談義するが「レンズ はヘクトールかひ?」と尋ねられる。M型ライカに比べられば値段は多少お手頃なバルナックとはいへIII gにヘクトール28mm装着してゐたら「28万円くらゐでげすよ、旦那」と思はず言ひたくなる。安いエルマーの35mmだけど、けつこうよく写りますよ、 と思はず今朝届いた、ですでに昼までに簡単に音楽のほかアタシの拙い写真も二千枚余の装填されたi Pod Touch手許にあつたので「ほら、ね」とスナップ写真などお見せして暫し写真談義。すると名刺をくれて「実はフォトグラファーでね」と。おい/\。名刺 の名前だけではピンと来なかつたが名刺のURLから氏のサイト訪ねれば「あらゝ、この人相手に」と穴があつたら入りたい、香港では反英暴動の頃からの、開 発に入らうとする70年代の白黒写真がつとに有名なBob Daivs氏がこの御仁。アタシの印象に最も残る氏の写真はセントラルのCharter Gardenでクリケットに興じる当然、英国人であらう父と幼い娘、で背後にそびえる中国銀行大廈に「毛主席万歳」のスローガン。一枚の写真で当時の香港 の政治的環境をそのものズバリ。ライカ一台あるだけでかうした知遇を得るのだから愉快つたらありやしない(とチヨートク先生的愉快)。それにしても侮れな ぬのはi Pod Touchである。電話機能がないだけがi Phoneとの差異で、なるほどだからi Phoneが出ての在庫処分で「Macを買へばi Podが無料」なのかしら。ほとんど設定らしい設定もせずFCCでもさつとWi-Hiに繋がつてしまふ。アタシはこれまで「せめて外出先ではメールは見な い」ことを美徳としてきたのに……まぁ見なければいいのだが。本日、健康診断の結果受領。体重は二年前より5kgほど軽減したが未だほんの少し肥満気味。 問題は中性脂肪過多。食生活はかなり理想的。外食でも暴飲過食は全くなし。西洋料理など二人でシャアでやうやく一人前。自宅での食事は野菜が主で少肉、穀 物は朝以外殆ど採らず。運動も最近はだいぶ減つたが運動不足ではない。……となると問題は飲酒か。だが夕食前の数杯と食事酒程度で食後から深夜の痛飲など 皆無なのだが。二更に夜宵の散歩に出れば昨晩が満月だが月の出は今晩遅く月はまだ山かげ。だがネオンに明るい香港の空も星がだいぶ輝く。
▼香港政府が現在も数年ぶりにH5N1型ウイルスで市場封鎖中の活鶏市場につき営業停止命令など従業者ら死活問題。政府は今後もあり得る疫禍見越してイッ ソのことHK$10億拠出し家禽業に謂はば廃業保証金で活鶏市場永久閉鎖まで検討。鶏は活きてゐるのを潰すのが当然、ももはや昔の話か。
▼秋葉原の殺人事件で相変はらず「警察は犯行に至つた経緯や動機などを徹底的に解明」とテレビでキャスターが語る。猟奇的殺人事件など江戸の昔からあり。 神田にとつてもきつと初めてのころにあらず。「殺し」の筋の歌舞伎芝居の多くがさういつた事件を題材にしたもの。それを芸術として眺め一方では犯行に至つ た経緯や動機など解明と言ふ。


六月十九日(木)朝やうやく晴れる。
▼一昨日の信報にシカゴ派経済学の奇才・張五常教授が「中国経済制度」といふ12回連続で論文掲載を始める(週二回の掲載)。紙面半頁の初回論文「思想の 衝撃」すら忙しく読む時間ないが何に驚かされたかといへば張教授が七月中旬にシカゴ大学で挙行される2008 Chicago Conference on China's Economic Transformation Programに参加で、これ はその提出論文の由。張教授といへば香港大学経済学院長を勤めノーベル経済学賞で初の中国人学者になるかとすら噂されてゐながら米国シアトルでの中国骨董 商の経営で脱税行為ありとして米国連邦警察から国際刑事機構に捜査託され香港離れ現在は中国で隠遁生活中の身。その人が米国に一旦入境せばグアムでの三浦 和義さんと同じくお縄は確実。それがどうして古巣のシカゴでの研究会参加。しかもプログラム見たら冒頭発表の栄誉。背景が気になるところ。

六月十八日(水)今日も当たり前のやうに雨。先週末よりずつと続いた MacBookの移行がまだ些細な問題は未解決ながらどうにか終はる。悪天候続きのせゐか、どうも気分が晴れず。晩に寝室で臥せてまで新聞読み。ふと、幼い 頃に読んだ『ブロンディ』の漫画で主人公のダグウッド氏が夜中に寝室で隣に妻のブロンディが寝入つてゐるのに眠さうな表情で新聞を読んでゐる場面で、なぜ 朝のうちに読むべき新聞を夜中に読んでゐるのだらう、と不思議に思つたこと思ひ出す。新聞も読む暇なく夜になること、ではなく新聞には速報ニュースばかり ぢやなくてぢつくり読む記事があることが幼い子どもにはわからなかつたか。
▼信報で丁望氏が中国の度重なる自然災害について生態環境悪化による人災的要素について語つてゐる。中国の経済発展、工業化で資源と生態系の「透支」あ り。「透支」は支出過剰の意。広東社会科学院の人口と資源に関する研究報告に拠れば中国のGDP増長で、この資源と環境の透支は18%の過剰。これが生態 系の均衡を崩し森林の保水力など落ちて自然災害に繋がるもの。指摘は納得した上で勉強になつたのは中国の森林覆蓋率は18%と低いが、それでも1981年 の12%よりは森林が増えてゐる事実(ちなみに日本は64%、こちら参照)。豪州が20%なのだ から中国がいかに乾いた国土か(英国の11.6%は更に驚きだが英国の場合、森林伐採=放牧地開拓といつた歴史もあり)。それだけ乾いた国土で億に至る人 口が養はれてきたことは古くからの灌漑など文明の力そのもの、とあらためて中国の凄さ感じ入る。
▼ファッション評論家の川本恵子さん逝去。享年五十七歳。センスの良い書き手であつた。ご主人は評論家の川本三郎氏。三郎氏の書くものを読むのも辛くなり さう。

六月十七日(火)深更より稲光轟き落雷陣雨。雨が歇まづ。先々週末より 「どうしちやつたのよ」といふくらゐの降雨。今日も休みなき本降り。豪雨の被害は華南九省に至る。何処に寄る気もせぬ雨空で日暮れ前に帰宅してドライシェ リー一飲。残り物のテーブルワイン(白)でピーマンの肉詰め。晩に吉田秀和『音楽展望』1977年を少し読む。同年6月21日の記述にカセットテープ録音 の普及について。コピーによる著作権や版権の問題なるある、としながらも例へば自然科学の分野で研究が一個人によるものでなく研究組織や企業などの投資に よる成果だとすれば研究成果が共有されることは「より多くの人間がより研究しやすくなるとしたら社会の立場からは一概にこれを却けてよいとばかりはいえな い」とインターネット開発の初期の目標であつた学術的成果の共有を予感するやうな記述あり(インターネットが実は軍事的リスク分散といふ開発目的があつた ことは此処では問はぬ)。先生が「科学技術の進歩が考え方の再検討を私たちにうながす」と仰つてから30年後、我々は此処までネットに支配された21世紀 に在る。吉田秀和がその時代にまだ健筆を揮はれてゐる。
▼NHKにてブータン初の国会選挙のドキュメンタリ観る。司法長官から国会議員候補者ばかりか首都の街中にてテレビ取材に答へる若い娘らまでかなり流暢に 英語で話す。英語が話せれば良いとは云はぬし明治期の日本のやうに外語会得こそ文明化といふ見方もあり。だがブータンのやうに鎖国だの非近代化と思はれる ヒマラヤの小さな山国で実は英語くらゐ話せて当然の市民が少なからずゐる現実。「英語でしやべらナイト」の経済大国日本は如何に。
▼香港政府立法会が政府の副局長、政務アシスタント職新設に関して行政長官弁公室の陳徳霖につき不信任動議(昨日)。法的強制力はないが副局長8名、アシ スタント9名のうち7名が陳徳霖嫡系。香港証券取引所の役員辞任したDavid Webb氏がブログにて政府系シンクタンク智經研究中心(Bauhinia Foundation Research Centre)につき公共信託組織でありながら資金源すら明らかにしてをらず、この06年3月の設立から大きく関はつたのが陳徳霖……云々と興味深き記述あ り。

▼今日のFT紙によればLe Monde紙の経営危機(月に€2mの赤字で01年からの損益が€167m)と大規模なリストラ。ネットとフリーペーパーの普及で発行部数の落ち込み、広 告収入の減益はLe Monde紙に限つたことに非ず。問題は、1944年にド=ゴール将軍の構想で生まれた世界有数の中道左派のインテリ紙が存続の危機にあること。フランス 語を解せぬと読めないところが日本では朝日新聞がもう絶対にこれ以上の隆盛なきことと同じ。英語であつただけFT紙やヘラトリ紙がどうにか生き残れるのと 対照的だが、Le Monde紙や朝日新聞はもはやニュース速報的な報道からはこのさい手を引いて論評や解説記事専門の知的情報紙として生き残るしかないのでは? だが更に 問題なのはキョービのネット社会でもはや前近代的な知識や教養は求められてをらぬこと。いつまで新聞が紙媒体で残るのかしら。せめてアタシや新聞購読量で はアタシの上をいくであらうS従兄の死後になりますやう。

六月十六日(月)午後にMacBook Airが上海の集積庫より届く。最近は「つなげばつながつてゐる」環境でWi-Hiの設定に今一つ梃子摺る。途中で「このノートブックはそも/\Air Mac機能が不調なのぢやないかしら、と気になり御所よりお忍びで巷の星巴珈琲に出で繋いでみると異常なし。早晩に帰宅し自宅にはWi-Hiの AirPort Extremeの設定するが、これがまた繋がらず夕食挿み三、四時間格闘の末漸く繋がり安堵。余はまだぎり/\まだ若い内に電脳に馴染みネット環境にあつ たから良いが、このまヽ年老いて必ずや、いつの日か必ずやハイテク環境に付いていけなくなるんぢやないか、と不安。だがふと思へば嘗てのMS-DOSであ るとかネット黎明期にブラウザ「モザイク」などと格闘し「どうすりや見れるんだよ、いつたい!」とビニ本すら買へず悶々とする昔の中学生男子の如く数日徹 夜してHTML画面が見えた頃に比べれば今のトラブルシューティングなど電脳の導きに従ひ何度か問題解決してゐれば良いのだから電脳の設定など日々容易に なるのであり老後の心配もないのか、と思ふ。晩遅くだうにか初期設定終はりMigration Assistなるプログラム用ひてMacBook AirにPowerBook G4からデータ移送始め、後は機械任せにて寝入る。

六月十五日(日)雨は歇むだやうで小雨幾度かあり。昼前にジムで小一時間 走る。午睡。午後遅くZ嬢と香港大学美術館。Le French May(法國五月)未だ続きピカソのエッチング画展と1894年の香港でのペスト疫禍に因む疫病専家Alexandre Yersin(1863〜1943)に関する展示を看る。前者は19世紀末より20世紀前半の画商Ambroise Vollard(アンブロワーズ=ヴォラール)による蒐集。後者は北里博士に関する史料も少なからず。西營盤の第三街にて猫と遊び漫ろ歩き前述の1894 年の香港ペスト禍が最も蔓延の太平山界隈。当時はペスト蔓延の居住地の建物が壊され焼き放たれ防疫の由。その界隈も今では粗呆区の延長でハリウッドロード には東京なら青山か麻布の裏町の如く洒落たビストロだの少なからず。Classifiedな る食材屋にてチーズと葡萄酒購ふ。帰宅して早晩に頂ゐもののアラン=デュカスのオリジナル三鞭酒Paul Drouetを空豆を当てに飲む。生ハムと無花果、茄子のマリネなど食し南アフリカはSpringfield EstateのSau Bの05年。先ほど購入のチーズはかなりあつさりした英国LancashireのMrs Kirkham産と極めて柔らかな仏蘭西のBrie de Maeauxで、麦パンで食す。NHKスペシャルで『病人大行列』と中国の医療事情のドキュメンタリ看る。北京の同仁病院を舞台に高額な医療費でも高度な 治療求め全国各地から患者押し寄せる様、また安徽省から幼い息子の失明をどうにか防がうと治療費工面し同病院で治療受ける家族の姿。共産主義国家で人民が 高額の医療費負担せねば真つ当な医療受けられぬことも矛盾、だが人民の非難の声も高らかにならぬのが一党独裁の極み。だが現代中国の社会矛盾取り上げるを 好くNHKスペシャル。
▼衆議院議員河野太郎君の国会日記より。豪州のケビン=ラッド首相訪日について。かつて在日の豪大使がまだ無名の新人であつたケビン君来日の際に夕食にケ ビン君と太郎君を招き「将来、君たち二人が首脳会談をやることになるだらうから、今日はそのための顔合はせだ」と笑ひながら乾杯、といふ思ひ出話から始ま る。ラッド君が01年に労働党のシャドーキャビネットでの外相役時代に日本の外務省が彼を招待したが滞在中に外相も副大臣も忙しいとケビン君に会はず政務 官が面会したが開口一番「ようこそいらつしやいました、私は外交のことは何もわかりませんが」と宣つた由。多少長いが引用せば
ラッド首相は、西側先進国の現役の首脳として、たぶん初めて広島を 訪れたのではないかと思う。彼は中国語を完璧に話す(少なくとも僕にはそう聞こえる)が、対中外交は、かなりリアリストのようだ。対中戦略は二つの戦略を 常に用意しなければならない。一つ目は中国に対するComprehensive Engagement。そして二つ目はハードラインの安保政策。つまり、中国にグローバル社会にきちんと出てくることが有益であるといふことを伝えながら も、それに失敗したときのために米日豪でMilitary Preparednessを高めておく必要があるということ。第二の戦略を持っているということは、強い立場から第一の戦略を遂行でき、第一の戦略なしで 第二の戦略だけでは中国が反発するだけ。
首相就任直後に中国を訪問したが日本には来なかったと、記者クラブ での記者会見では、受けはよくなかったようだが、ラッド首相から、労働党政権発足後、半年間で外相、財相、貿易相、環境相、産業相など7大臣が日本を訪れ た。では、日本からその半年間でオーストラリアを訪問した大臣は何人いたかと質問され、「とても長い沈黙があった。だって誰もいないから。」
オーストラリアの首相が中国を訪問し、日本に来なかったからといっ て、日豪関係にひびが入るほどやわではないでしょう。それと同じように、半年間で日本に大臣が7人行って、日本からは誰も来ないからといって友好関係にひ びは入りませんよ、とラッド首相は、いいたいのだろう。
では、その半年間、日本の大臣は何をしていたかというと、国会答弁 である。特に日本の外務大臣は、衆議院、参議院の九つの委員会から出席要請があると大臣本人が、出席しなければならない!(衆議院の外務委員会、安保委員 会、沖縄北方特別委員会、国際テロ特別委員会、拉致特別委員会、参議院の外交防衛委員会、沖縄北方特別委員会、拉致特別委員会、ODA特別委員会)日本の 外務大臣は、外交ではなく内政をやらなければならないのである。
外国に出られない外務大臣に何の意味があるのだろうか。世界第二位の経済大国で、国連安保理入りを目指し、アメリカのよき同盟国といったところで、外務大 臣が外国に出張もできなければ外交なんかやりようがない。
と太郎代議士。御意。

六月十四日(土)一晩中豪雨続き未明に目覚む。先週土曜の香港開闢以来の 大雨より連日歇まづ。昼に北角街市。豆腐店徳興隆に肉饅を食 す。晩 にZ嬢とFCCのダインに晩餐。名前知らぬ三鞭酒を一飲。今 日は上質の紫貽貝ありと云ふ給仕頭の言葉信じ「呉々も塩は控へてね」とムール貝のクリームソース合へ。Monkfishは日本では鮟鱇なのださうだが明ら かに鮟鱇とは違ふ白身魚で米国加州のCalera Valleyは Viognier Mt Harlanの04年。ワインリストでVoignierと書かれてゐたのは御愛嬌。抜栓の直後は蒸れた包帯のやう独特のクセだが開栓して暫くすると蒸した 糯米のやうな香り。酒も料理も美味。チョコレートケーキを折半。

六月十三日(金)雨は歇ず。Z嬢の白いMacBook届きセッティング、 といつても「繋ぐだけ」だが、いくつかソフトをダウンロードして出来上がり。贈答でiPod Nanoも一足先に届いてをり、問題はほとんどアナログの
Z嬢がデジタルライフに進化でき るかどうか。余り物でいただいた倫敦の葡萄酒商の樽買ひのボルドーの白(Sau Seg)数本あり開栓してガブガブッと数杯。北角の行列の出来る十三座牛雑の煮込み買つてきたのでCh. D'agassacの残り数杯でこれを食す。煮たり焼いたりした野菜食しけつこうな量の葡萄酒でソファでうと/\してゐたら二更より大雨で赤色警報発令さ れる。
▼暫く前に港運城商場地下にパシフィック珈琲出来るまで珈琲不毛地帯と云はれた北角で、それも健康邨と云ふ市街地の外れの複合ビルの商場に星巴珈琲が近々 開店。嘘でも二大チェーン開業で北角で珈琲が飲めない状況脱したが、もう一つ不明は「酒場がない」こと。渣華道にFocus Barといふパブが二軒あるが、他にない。北角がなぜ珈琲や酒の嗜好品に乏しいのかしら。

六月十二日(木)一つ廿数人に迷惑をかける失態を犯し困つたが、その人た ちに事情を説明すると予想以上にさばさばと善後策ですぐ妥協していただき香港のか うしたフレキシブルさ有り難い限り。晩遅く麥奴ナルドに食むバーガー。帰宅して昨晩のCh. D'agassacを二杯。
▼NHKのドキュメンタリーで放送直前に内容改変ありと取材を受けた市民 団体がNHKを訴へた裁判。最高裁で原告が逆転敗訴。番組制作者への「期待と信 頼」を問ふ、といふ些か抽象的なもの。自民党の安倍・中川両君のNHK番組制作に対する政治的介入問題の有無も問題となつたが根本的には自民党のタカ派の 先生方にお伺ひ企てたNHKの体質こそ問題あり。だが戦争責任を問ふ、この番組の制作ディレクター自身が原告となる市民平和団体とべつたりでは鳥渡。いづ れにせよ一審が原告の訴へ退け高裁が司法の良識見せ原告逆転勝訴、で最高裁が具体的な問題への司法判断避け一般論で二審判決覆す(が被告が勝訴でもない) 司法も含め、なんだか三方一両の損のやうな大岡裁きが日本の司法。
▼先頃、香港政府の副局長&政治助理職新設につき「這是政治問題、蠢 才!」と発言して話題となつた政府の元高官、王永平氏。今日の信報に「我為什麼批評政 府」と、なんかちよつとエドワード=サイードや大江健三郎みたいな題で続きを投稿。退官後の高官は封口といふのは英国植民地時代の英国人官僚が退官後、優 雅に郵船で帰英した時代の伝統であり今の時代と環境にはそぐはぬ、とした上で王氏は一市民として、殊に一知識分子として社会と政治に対する提言は「任務」 と言ひ放ちサイードの知識分子論(邦題「知識人とは何か」)を引用されたのには驚いた。やつぱり論評の題からサイードを意識してゐたとは。で(手許に同書 がないので正確に引用できぬが)社会矛盾について言及し改革促すことは知識人の任務、と説かれる。先日の発言時に言つておきたかつたことは、これなのだ、 と

六月十一日(木)近ごろ頭痛が時々あり今朝も五時過ぎに起きて鎮痛剤飲んで新聞など読んでゐたが夕方にまた頭痛。きつと飲酒が最も効力発揮しさうだが一錠 だけ鎮痛剤飲んで針仕事続けてゐたらネット音楽(www.real.com)でモーツァルトのピアノソナタ ハ長調K.330が流れる。多少なりとも頭痛には効くところがモーツァルトの凄さかしら。帰宅してオーメドックのChâteau D'agassacを開栓して一飲。何処でどう して入手かも不明の葡萄酒で品種もシャトーの紹介もラベルにはないが、おそらく100ドル台 ワインで渋めのハーフボディ(翌日確かめたらRPが87ポイントで注目ワイナリーと評価、メルロー35%とCar Sauが65%)。ここ数日、鳥インフルエンザ再来と騒がれてゐるなか鶏肉のクリーム煮のパスタ(この鶏肉は北角街市で購入のKadoorie系ので数日 前に冷凍のものだから安全だらうが)。豪州のKirrihill Estateのリーシング04年を飲むが食事には甘すぎ。テレビつけるとNHKでNW9が放送開始から15分過ぎだが「なぜ、あのやうな悲劇が つ……!」と秋葉原の事件ももう三日目で、これ。ワイドショーでカバーすべき内容。事件は残虐だが江戸でも神田で同じやうな通り魔殺人はあつただらう。個 人の起した犯罪で「なぜ、あのやうな悲劇がつ……!」は考へても実はなんの解決策もない。「数数多ある日々の出来事から報道すべき内容を厳選し、限られた 時間で厳正に的確に真実を伝へるか」が報道番組の基本だとするとNW9はどんなものか。チャンネルを変へるとアル=ジャズィーラの英語チャンネルが「これこそ 報道」と思はせる確かな報道番組なのだつた。
▼シンガポール内閣資政の李光耀国王曰く、中国と西洋との間の悲哀なる鴻溝は中国で日韓台や港星のやうに教育を受けた良好なる中産階級が育ち自らが西洋帝 国主義の被害者といつた見方を止め、完全に同じではない双方の価値観の差異を真摯に受け止め、緊張関係を解さぬ限り、中国と西洋との対峙は解消せぬ、と。 またチベット問題については、西欧ではヒマラヤ山脈を拝むチベットをまるでシャングリラか桃源郷のやうに思ひ、そこには瞑想に耽るダライラマと安静なる寺 院に日々を送る僧侶らばかり想像するが、中国からしてみればチベットは地主制度の封建社会で農奴制が敷かれ人口の9割が文盲といふ後進社会と映る。チベッ トの経済発展で多くの漢族がチベットに入り込むことはチベット人には脅威だらうが、中国がチベットを支配することでチベットは21世紀の世界に加はれるの であり、農奴制を撤廃し病院や学校、道路、鉄道などのインフラが整備されたのだ、と。ハンブルクの關愚謙先生が聞いたら「その通り!」だらう。だが高校生 の頃に呉智英の封建主義の洗礼受けたアタシは(その後の智英先生の思想的経路は知らぬが)封建制にさう懐疑的にはなれず、寧ろ光耀王的な進歩主義や20世 紀的な経済発展がいつたいどれほどのものなのか、チベットの地にあつて漢族が美味しいところ独占で、共産党一党独裁で経済的にも下層階級に追ひやられた生 活つて三重苦ぢやないの?と思へてしまふのだが。

六月十日(火)三年前の春から愛用のPowerBook G4が先月からHDのモーター部分がウーンウーンとかなり唸るようになり熱の放出も芳しからず。立ち上げの際に愚図ってばかりで、一年三百六十五日酷使さ れては三年でそろそろ寿命の予感。で銅鑼灣はWindsor Houseの馴染のMac屋に買い替え打診すると「今ならApple社のサイトのショップで買ったほうが割引もあるしiPodが無料で貰えるしお得です よ」と、有り難い情報と云うか商売っ気がないと云うか。でサイトショップでMacBook Air注文。香港でHK$13,900の同品が日本の同サイトでは229,800円、香港はまだ買物天国か、8GBのiPod Touch(HK$2,400)がオマケ。かつて倍以上の値段でネットになる以前のPowerMac とか購入していた頃を思いだすと、嘘のようにお買い得なんだが。Z嬢は余のお下がりでPowerBook G3を愛用。昔の黒いスタイリングのそれは美しいがOS 9でネット閲覧も不都合多し。でZ嬢はMacBookお買い上げ。ウォークマンの頃から耳栓嫌いのZ嬢もついにiPod Nanoをゲット。折から本日は桑港でスティーブ=ジョブ師がiPhone 3G発表の由。
▼香港政府で自称政治家「文革曽」行政長官が政府の問責官僚制強化のため、と打ち出した副局長、政治アシスタント制度。その人選で国籍問題や厚遇などさん ざん罵倒され制度発足から無用扱い。で本日ようやく文革曽が副局長、政治アシスタントらと一堂に会す。で華々しい発足会見のはずが文革曽が採用決定にあた り不手際あったと謝罪から。副局長級で月収20万ドル(約300万円以上)。大卒で数年の就労経験しかない青二才のアシスタントで月収10数万ドルは、英 国の蔵相よりも厚遇と嗤われる始末。政府の元官僚や保守党議員からもこれには非難轟々で、文革曽もついに前任の董建華の轍を踏んだか。それにしても政府の 下級公務員から行政長官まで「棚から牡丹餅とはいえ」昇り詰めた官僚中の官僚であるはずの文革曽が、公務員の士気すら剥ぐ、この問責制充実で周囲を子飼い の部外者で固めるとは意外なようだが、この人は小役人風情だが実は本人の傲慢さだけは、さすが自称政治家だけのことはあり、と今更ながら納得。この人事、 行政長官弁公室主任の陳徳霖君による人選で「陳徳霖厩舎」とすら嗤われる始末なり。

六月九日(月)端午節振替休日。午前中の高座済ませ晝過ぎにFCCに着くなりドライシェリー一飲。広州から来港中のO君とFCCのメインバーで昼食。豪州 のリースリングの葡萄酒が飲みたくてキリカヌーンモー ツブロックウォーターヴェールリースリングの07年。そのリースリングに合せてカエサルサラダ、鳥肉のクリームパイとカルボナーラのパスタをO君 と半分づつ(それでもちよつと多すぎ)。O君と別れ半醒半酔で午後遅く按摩して昏時に帰宅。石硤尾の嘉湖の粽(鮮肉粽、腩肉粽と紅豆粽)を蒸して食す。美 味。晩にWindows on the World Complete Wine Courseを少し読む。
▼O君に聞いたちよつと良い話。O君のお嬢さんは「紙切り」が好きで日本でお祖母ちやんに買つてもらつたハサミが大のお気に入り。それをついリュックに入 れて飛行機に搭乗。往路の香港ではノーチェックだつたが(これも問題か?)旅行先からの復路の便で荷物検査に引つ掛かりハサミは没収で危険物のゴミ箱にポ イされる。で大事なハサミを没収の上、捨てられて大泣きのお嬢さん。検査官も不憫に思つたか、O君が検査官にどうにかならぬものか、料金を払ふからDHL か何かで別送できないか、と求めたが検査官は「監視カメラが回つてゐるから現金は出さないでくれ」と。O君は広州の住所を残してきたら数週間後に郵送でそ の大切なハサミと、もう一つ子どもが好きさうな絵柄のハサミが二丁、郵便で届いたさうな。検査官が職務として個別ケースに過剰対応かもしれず、個人的なこ の対応は「好意」でなく規律違反で解雇処分になつてしまふといけないので、敢へて、その親切な検査官の国名は茲に明かさず……つて此方がそんなに神経質に なることで国名を明かしてゐるやうなものか(笑)。
▼今度は秋葉原。日本で続く誰でもいひから人を殺したかつた、の無差別殺人。これらの犯人を香港では「厭世男」と呼ぶ。これを防ぐのに出来ることといへば 防犯カメラの設置や学校での道徳教育の充実ではどうしやうもなし。思ひやりだの謙虚さだの「日本の」美徳は何処へ、社会に他所から他者を招かぬことで保た られゐた(それが誤謬なのだが)安全は? むしやくしやする、社会に対して不満があれば、他人を殺すのではなく、どうか社会変革に尽力か革命を。
▼次の米国総統選挙、共和・民主両党の候補者選び始まる前は圧倒的民主党有利の下馬評だつたが共和党のマケイン候補がかなり善戦なんぢやないか、と思へて きた。例へばThe Economist(6月7日号)の巻頭記事“America at its best”で
America is already a pretty deregulated place, and many voters feel that globalisation has brought them much less than was promised (and bankers a lot more).
とグローバリゼーションの市場開放が自国利益に有利に働かない懸念は民主党への冷や水となるし
Although most Americans now think the war was a mistake, polls suggest that Mr McCain's determination to see it through may stand him in better stead with voters than Mr Obama's determination to pull out whatever the consequences, especially since the tide of war seems at last to have shifted firmly in America's favour. In general, Mr McCain will offer a much more robust approach to security issues than Mr Obama—and that may help him.
とイラク介入の終結も実は共和党のマケイン候補のはうが小浜候補よりずつと現実的に対処できるとしたら、どつちを選ぶ?
▼蘋果日報が米国大統領選で民主党候補者選びから退出のクリントン夫人の週末の演説を中文訳もつけて全文掲載(こ ちら)。蘋果日報の読者がこれを読んでゐるだけでも香港の民度の高さだらう。

農暦五月初五。端午節。晝にRTHKのChannel-4でJonathan Douglas氏の北京音楽探訪の番組がありそれを聴く。JD氏は月〜金の朝にMorning Callなる番組を担当するが今年はオリンピックに涌く北京に中国各地のオケや様々な演奏団体が目白押し、でその紹介。番組で演奏も興味深いが、北京の音 楽関係者の話として、なにせ北 京のバブルで増えた成金がクラシック音楽が「高級」で入場料の高い演奏会にわんさと鳩まるが何せ音楽の知識の基礎もなければ演奏会でのマナーも知らず演奏 中の雑談や出入り、当然?楽章間での拍手だの指揮者が注意するほど、と。さもありなむ、と想像に易い。晝すぎZ嬢とMTRで坑口。坑口の新興住宅地を抜け 暫く歩くと坑口村あり。低層住宅の並ぶ郊外のこの村に食肆や食材店がいくつか並ぶのは、山の向かうが清水湾の高級住宅地で、その住人らが自家用車を泊めて 買物には便利な地理条件ゆゑ。そこで豪州の食材売る店の主人が始めたLardos Stake Houseが評判と聞き訪れてステーキを食す。Z嬢が注文のハンバーグステーキも極めて美味。Rosemount EstateのHill of Goldと名づけられた03年のCab Sauを飲む。充分に満腹で心地よく、この日、夕食を摂らず。隣駅の将軍澳に向ひ将軍澳中心なるショッピングセンターで明日まで開催の写真展を見る。呂厚 民氏は50〜60年代にかけて中南海の御用写真家で毛沢東ら要人の写真多く残し、見ると公式の行事や訪問の中でちよつと緊張感から解放された表情の毛沢東 などの写真が並ぶ。これは中国の何人かの撮影家の写真集めた展示なのだが、なぜかその中に荒木経惟氏の「少女世界」から二枚出展あり。なぜアラーキーが此 処に、なのかが不思議なやうで写真の居住まひが良いから、さすがアラーキーと感服するしかない。夕方帰宅して午睡。晩にVincent Gasnier著“How to choose wine”を読む。
▼安田記念。北京のO氏に頼まれた馬券がキネラで香港馬アルマーダを軸にウォッカ、グッドババ、スズカフェニックスに流すもの。サイズ厩舎でホワイトが騎 乗のアルマーダを軸にして1番人気のスーパーホーネットは外して女王ウォッカ、で遠征のご祝儀でグッドババと武豊騎乗のスズフェ……馬券として品が良い、 と感心したが、ちやんとウォッカ、アルマーダと入りお見事。他人の馬券に惚れ惚れしてゐてどうする。

六月七日(土)未明に雨は更に降る量を増し雷鳴轟くなか六時だかに黒色暴雨警報。アタシは先週からの喉痛と咳から回復せず昨晩、近所のC医師の診療所でち よつと強い医薬いただいて服し、朦朧気味。大雨で朝寝貪る。昼前に天気は回 復の兆し見せる。のちの報道によれば午前八時から一時間の雨量は145.5mmに達し香港で気象観測始まつた1884年以来最高の雨量を記録。市街地でも 夜中からの雨量は300mmに達す。ランラオ島の雨量は400mmを超え空港と市街地繋ぐ高速道路は水没、ふだんでも大雨で床下浸水の被害少なからぬ上環 の永樂街など海鮮問屋街も増水は腰までに達し乾鮑や燕窩、貝柱などの高級食材が泥水に浸かり被害甚大の由。更に五年ぶりで街市で販 売の鶏よりH5N1ウイルス発見され政府は即刻、家禽類の香港での販売を三週間販売中止決定。災難が一気に押し寄せるなか早晩に湾仔よりフェリーで尖沙咀 に渡りZ嬢と待ち合はせ微雨だが「歩きたくない」気分でMarco Polo HK HotelのCucinaなる今様のオープンキッチンの食肆に食す。最近流行りのオープンキッチン、給仕のあのマニュアル通りのフレンドリーな(馴れ馴れ しい)態度、まるでマクドでチーズバーガー紹介するやうに高級食材のパスタなど勧め「セットでお飲み物は如何ですか?」でシャンペンを勧める。耳障りな軽 音楽、食事するのに寛ぎ系のソファのやう椅子と高さの合はぬ食卓。……やつぱり苦手。蟹肉とアヴォガドのオードブル、グリーンアスパラガス、雲丹とイクラ のパスタをZ嬢とシェア。Santa MargheritaのPinot Grigioをグラスで無難に。香港文化中心。エド=デ=ワルト指揮でピアノのEmanuel Axを招いた香 港フィルの演奏会を聴く。ラヴェルの「クープランの墓」に始まりEmanuel Axさん登場でショパンのピアノ協奏曲2番ヘ短調。ショパンの管弦楽曲はどうもピンとこないアタシ。それに応へるかのやうにAxさんはショパンのマズルカ を2曲アンコールで弾く。優しい、優しいショパン。中入りで後半はブラームスのピアノ四重奏曲第1番ト短調でシェーンベルクによる管弦楽とあり、アタシら はてつきりAxさんのピアノでコンチェルトのやうになるのか、と思つてゐたが中入りでピアノが片づけられる。勉強不足で、これはシェーンベルクによるピア ノなしのオケだけによるもの。所々、殊に第四楽章のロンドで原曲の弦の三重奏など活かされるが、やつぱりそれが綺麗で、この管弦版は初めて聴いたが全体が 饒舌で「これでもか、これでもか」と曲が終はると鳥渡、食傷気味。

六月六日(金)大雨。晩に西湾河。太安樓の基記水電工程店で 久々に牛什を立ち食ひ。食べ終はると牛什購ふ数人の客のなかに政府某署の D君見つけ声をかけるとD君こんな小汚い屋台での立ち食ひが気まづさう。こつちも食べ終はつたこと告げるとほツとした様子で暫し立ち話。Z嬢と待ち合はせPalki印度料理に食す。スタッフが格別愛想の良さ。電影資料館にて セルゲイ=エイゼンシュテインの映画『戦艦ポチョムキン』見る。言はずもがな1905年の第一次ロシア革命の20周年記念でポチョムキン号での反乱と市民 蜂起、その弾圧を描いたソ連映画(1925年)。全編に流れるショスタコーヴィッチの音楽はオリジナルフィルム散逸で1976年にポジプリントによる復刻 版。モンタージュ技術など後世に多大な影響与へた映画技術も凄いが革命がまだ活き活きとしてゐた時代を見せつけられた思ひ。
▼余が言論人として尊敬し続けた独逸ハンブルク在 住の關愚謙氏の今年に入つてからのチベット問題に端を発した極端な言論については何度もこの日剰で紹介してきたが關氏の論調はます/\高揚。昨日の信報で は、今年に入つての中国は春節前の雪害に始まり山東省の列車事故、チベット動乱、世界各地での聖火リレー妨害と反華感高揚、そして四川地震と困難続き、そ れをまるで中国への天罰の如く言ふムキもあるが、と語り始め、1976年に周恩来逝去、鄧小平失脚、朱徳逝去あり唐山地震、で極めつけで毛沢東逝去に至つ たが、見てみなさい、天は中国を見放さず四人組逮捕から中国の流れは変はつたでせう、と。關氏曰く2008年も後半は中国の歴史史上重大な折り返し点にな らう、と、当然のやうに話はダライラマ批判に続くのだが關先生のはうがずつと観念的預言者。自分は中国人として中国の利益を尊重して当然ぢやないか、中国 共産党の成熟、台湾との関係改善と好条件揃ひこれから中国は繁栄するのだ、と、いつたいどうしてしまつたのかしら。
▼華文言論界の長老・陳雲氏が健康考へ禁酒始め酒談義(昨日の信報)。中国の烈酒(ハードリカー)につき興味深し。中国は王朝時代から民初まで穀物生産劣 る年は醸酒を禁じ民糧を保つたさうで、なにせ烈酒は茅台酒の場合、一斤の醸造に穀物を五斤も要す由。だが中共で大躍進の数年、記録的飢餓が(人災だが)全 土襲つたが茅台酒の醸造は続き2、3千頓に達したといふ。陳雲氏曰く、中共の偉大なる発明は土製原子爆弾の他は五糧液の製造、と言ふが製造元五糧液集団の紹介では古来から、でよくわからず。

陰暦五月初二。芒種。早朝に茶を啜つてゐると新聞がどさつと届き徐ろに新聞を拾ひ読み始めるのだが「えツ」と驚くのは重大ニュースで もなく、普段読み慣れた新聞のロゴが突然変はつたりすると驚く。十数年 愛読の信報のロゴが赤色から緑色に。経済紙で赤字は忌れるから緑色か、経営が李嘉誠次男のリチャード皇子系列となりロゴからイメージチェンジか、といろい ろ考へるが今日が国際環境日ださうで、ロゴの緑色の由。
▼SCMP紙で政治論説のヴェテラン、Chiris Yeung氏が香港政府の副局長らの国籍問題につき行政長官「自称政治家」文革曽の責任問はれる中“Identity crisis”と題し、89年の天安門事件による香港市民の97年不安対策として1990年に英国政府が香港市民に選抜で英国旅券(香港で通常、市民に与 へられたBritish National Overseasに非ずホンモノの英国籍旅券)発給決定した際に香港政庁でこの旅券発給と選抜制度の詳細発表に当つたのが当時、香港政庁で Secretary for Administrationの職にあつた文革曽、と回顧。当時の新聞のコピー見ると18年前の文革曽、まだ蝶ネクタイもつけず、ほんとこの人はかういふ 「どこにでもゐさうな」小役人ぶりがニン、と思はせられる。で、ちなみにその文革曽の下で更に実務に当つたのが97年以降は中国政府の虜となる葉劉淑儀 であつたさうな。
▼北京で要所要所に「許可なく外国人立ち入り禁止」の看板ありといふ。不穏ななのは外国人ぢやない、と思ふが中国にしてみたらチベットなど国内問題に対し て北京でハエのやうに飛び回り五月蝿い外国人は駆除したい、つてところか。それにしても常識的には「許可なく立ち入り禁止」でいいのに「外国人」とするあ たりが、さすが。
▼米国大統領選挙は共和・民主両党の候補者選び始まる前は「誰が出たところでブッシュ効果で民主党圧勝」と思はれてゐたが民主党で馬楽=小浜君選ばれ 「ひょっとすると」の番狂はせあり鴨。FT紙の分析によれば選挙人数で共和党確実な州は213で民主党は183、キャチングボードに握る州の選挙人数が 270もあり民主党がこれまで有利。だが、その微妙な州もペンシルバニア(21)、オハイオ(20)、ミシガン(17)と大票田少なからず今回の小浜君立 候補で反対票がどれだけ共和党に流れるか、が微妙。更に過去2回のブッシュ当選で「大きな役割」果たした米国民主主義の象徴たるフロリダ州が27の選挙人 数。どうでげす、旦那。微妙でせう。ちなみに英国のブックメーカー(Willhill)では小浜候補が1/2(1.5倍)でマケイン候補が6/4(2.5 倍)でアタシなら後者選ぶ。

陰暦五月初一。雨。新暦は六月四日で天安門事件から19年目。早晩に毎年夏にはフランスのシャモニーに遊ぶアルピニストO氏(深圳福永在住)と湾仔で待ち 合はせPtororek商店で買物。O氏はトレイルランニングの靴、アタシは携帯用のヤッケ だが久しく山にも踏み入れてをらず。買物のあと愛蘭酒場Delaney'sでギネスビールを2パイントづつ飲み四方山話。O氏の話はウイスキーの語源は蘇 格蘭語のナントカで、と突然の蘊蓄が面白い。近い卓の英国老人の吸ふ紙巻き煙草が芳香。煙草は最近ちつとも吸はぬが芳香がとつても気になり尋ねると普通の ダンヒルの赤箱。結局、吸ひ方なのだよな、と感服。
▼The Economist(5月31日号)の原油高特集で巻頭特集記事“Recoil”の 指摘。
The first two oil shocks banished oil from power generation. How fitting if the third finished the job and began to free transport from oil's century-long monopoly.
原油価格は高騰し世界は霹靂としてゐるがかつての石油ショックのやうな危機感もないのが不思議。この記事の言ふやうにこれが第三の石油ショックとなつて起 爆剤となることを祈る。もう一つ興味深い記事が日本のコーポレートガヴァナンスについての“Bring it on” といふ記事。日本企業の外国資本閉め出しについて日本は「日本が日本企業を守つて何が悪いのだ」と思つてゐるがエコノミスト誌は “Foreigners may complain most loudly about the isolation of Japanese companies, but everyone, especially the Japanese public, is a victim.”と述べる。だがこの感覚が私ら日本人にはまだ解らぬ。日本企業といふが日本が世界第二位の経済体でこれだけ世界的に商売してゐて「何が今 更、日本企業」のはずなのだが。
▼チベット動乱平定後に政府側の安排でチベット訪問の外国人記者団。その記者らに涙ながらにチベット仏教界の窮境訴へた若い僧が同じ寺院で再びチベット訪 問中の香港からの記者団の前に現れ「自分はまだ若く、自分の発言の影響力がわかならかつた」と前回の訴へにつき間違ひがあつたと反省の意を述べる。二ヶ月 の「学習」「改造」の成果か。怖い、怖い。
▼米国総統選挙でオバマ(馬楽小浜)氏が民主党候補に。オバマ氏が04年の上院議員選挙でイリノイ州から立候補(当選)の際にカンパ(US$50)までし て、06年6月から暫くこの日剰で「米国の理性Barack Obama氏(民主党、上院議員)を米国総統に推しませう。」とキャンペーン張つたアタシとしては、まさかホントにオバマ氏が民主党候補にならうとは…… 驚きもあり。補足すればオバマ君を06年当時に「米国の知性」と言つたのは今でこそ珍しくないが当時、米国のイラク侵攻に懐疑的な姿勢示すのは民主党内で もまだ勇気の要ることでオバマ君が公然と疑問表明した正義に感動してのこと。04年の上院議員選挙の際の野球帽やTシヤツ、バッチなどいくつか持つてゐる のだがヤフオクとかに出してみようかしら。それにしてもオバマ君の“We are the children of future”だの“Our country owes our future”だのと言つた発言を聞くといつたい具体的には何がどうなるのかしら?と疑問もあり。米国大統領選での演説などこのテの超漠然未来志向型の演 説が受けるのだらうが……。クリントン夫人退出で寧ろ多少安堵は共和党のマケイン候補で、ク夫人なら支持した民主党内の反オバマ票への期待。これでマケイ ン候補の必勝法は選挙戦で「イラク戦争は間違ひだつた」で「ブッシュ批判」(笑)。これをすれば間違ひなく当選のマケイン候補だらう。米国といふ国は若い ので間違ひを認めて大人になることが尊ばれる。

六月三日(火)不安定なる雨空の下、早晩に渣甸山の益新美食館。 お食事でもと誘はれた六名の方に此の食肆で粤菜&葡萄酒にしませう、と逆指名。豪州のShow & Smithで開胃に上湯局蝦など頬張り二本目はCloudy Bayで中入後は赤でLos Vaocosを開栓して檸檬鶏や魚香茄子煲など食し未だ余力ありChâteauneuf-du-Papeの03年で琵琶鴨を食す。食事と葡萄 酒の組み合はせは満足。だが問題はこの食肆の給仕らの仕事の素人ぶり。W支配人は最近余りお見受けせず肆を任される副経理はこの人が昔の銅鑼灣の肆でまだ 見習ひ給仕の頃からの知己だが今ひとつ未熟な 給仕の指導力は欠け、結果、指導を受けず客の厳しい叱咤もなき環境でぼさーつとした給仕多し。酒杯の交換から酒の注ぎ方(異なる酒を混ぜるなつ!)、食後 の茶は供す前にまづ食べ終はつた食器の片づけを先に……といちいち指図せねばならず。で極めつけは食後のデザートで注文する前から紅豆の汁粉供され「まだ 注文してをらぬ」と言ふと「サービスの品だからいいでせう」と流される。呆然。かつてこの食肆が鵝頸橋や時代広場にあつた当時は老練なる黒服の経理が四、 五名をり熟客相手に貫録で応じ葡萄酒談義すらしてゐた頃が懐かしい。十数年で香港の食環境の、殊に給仕の非熟練ぶりは著しいものあり。飲食業はかなりの数 の熟練者がマカオでの厚遇で釣られてしまひ香港は真つ当な人手が不足の由。そのやうな環境の中でやはり中環の鏞記であるとか、尖沙咀の金島燕窩などが敬服 するほど立派な給仕ぶり貫くのが見事。
▼香港政府の副局長と政治秘書職新設で国籍ばかりか給与待遇まで秘匿する政府の姿勢に反発高まり実質的招集人たる行政長官弁公室主任の陳徳霖に非難の矛先 が向く。陳徳霖は香港金融管理局副総裁やStandard Chartered Bankの香港要職など務めた金融界人士で、この主任職の前任者は曽俊華=現財政司長であるやうに、謂わば官房長官。それがやりたい放題で才力不明の烏合 の衆を鳩めた「お友だちクラブ」では言葉もなし。

六月二日(月)ずつと冴えぬ天気続き気分も滅入る。日に一、二度かなりの驟雨あり。馴染の葡萄酒屋にて白をいろいろ眺めてゐたら店員に「ちよつと味見しま せん?」とPuligny-MontrachetのMeursaultを供されてしまひ「えつ、こんなに頂いていいのかしら?」といふくらゐグラスに並々 と注がれ飲んでゐるうちにだんだん気分が良くなり「ぢやぁ、これも貰つていかうかな」となる。帰宅してドライシェリー飲むが先週末よりの風邪で喉の痛み晴 れず。周囲でもかなり喉痛の人多し。夕食からは酒も飲まず、代はりに医者にもらつた咳止めシロップが効いて睡魔に襲はれ臥床。
▼FT紙の一面にデカデカと“Ozawa confident of ending LDP rule”と民主党小澤一郎君の威勢良き記事あり。自民党には小池待望論、民主党には政権奪取とFT紙のこの記事の「持つていき方」は完ぺきな Gaiatsu。日本の経済改革は、内部から自浄作用なんて期待できないから、それを求める声が外圧となる。
▼余りの馬鹿馬鹿しさに余り書かずにゐたが香港「政府」の問責制(Accountability)で局長だけでも?(疑問府)なのに加へ副局長だの政治担 当の高級アシスタントなどの主要官職を新設。副局長候補8名のうち5名が外国籍で政府高官に求められる自国籍(中国籍)に抵触せぬかどうか、二十代の高級 アシスタントに10数万ドルの厚俸が妥当かどうか……と問題視される。国籍問題では「個人のプライバシー」として政府の対応の拙く渦中の候補らは一週間だ か姿暗まし政府の状況判断待ちで就任前からかなり印象墜し、青二才の高級アシスタントらは「何が出来るか」と嗤はれる始末。今日の信報で昨年だか引退の元 政府高官(公務員事務局長)の王永平君が副局長職新設に絡み問責制について見事な言及の署名記事あり。
そもそも問責制(内閣制)は1997年以降の特区政府で新空港開港 や鳥インフルエンザ等の対応で粗忽さが目立ち、公務員の無責任の体系(無人負責)改善のために局長職を問責制としたもの。支持率のかなり低き董建華が二期 目続投でこの問責制を二期目の柱とし新制度導入に期待もあつたが(当時、この王永平は公務員事務局長でこの制定の中心人物)自動車税増税発表前に財政司 (梁錦松)が新車購入で辞職、SARS対応の拙さで衛生局長が、公安立法で葉劉淑儀が……と問責高官の辞任相次ぐ不出来。特区政府の運営を担ふ高官なので あるから責任の大きさを考へれば国籍問題など答へは明白で、それを粗忽にもプライバシーだの基本法に抵触せぬ、と躱さうとした政府と就任者にどう信用が置 けようか。1992年の米国総統選挙でクリントン候補が現職の父ブッシュに投げた一石“It's the economy, stupid”を取り上げ、今回の香港のこの問題は「這是政治問題、蠢才!」と言ひたい……
と。御意。

六月朔日(日)曇。旧暦四月も晦日近し。朝から九龍石硤尾は南山邨団地の食肆「嘉湖」に予め注文の粽を受取りに赴く。団地の風情あり写真に撮る。すつ かり舊ゐ団地の取り壊され再開発続く石硤尾邨を抜け深水埗まで散策。小 物屋が今どき「辨館」なんて名でまだ存在。軒先の煙草売場でパイプ煙草を扱ふ。昼に香港島に戻り約束の会合に顔を出す。午後遅く会合終はり金鐘道に出ると 道路交通規制始まり六四のデモが通ることを知る。支援会を筆頭に民主党、政党前綫、国民党親派、 梁國雄君らとデモは続くが今年は四川大地震被害者追悼もありデモも静か。北京中央の四川の被害地対策が積極的であつたことも影響したか、目立つた中央批判 も失せ数百人規模。政党「前綫」が僅か数名でエミリー=ラウ代表の表情にも翳りあり。来年で早いもので天安門事件廿周年。香港レコード店にてアルゲリッチ 女史のCD2枚購入。チャイコフスキーのピアノ協奏曲1番(英国ロイヤルフィルで指揮は元亭主のデュトワ)とプロコフィエフのピアノ協奏曲3番(伯林をア バド指揮)で前者が1970年、後者が1967年と20代の彼女。もう一枚はショスタコーヴィッチのピアノ協奏曲1番(トランペット奏者はセルゲイ=ナカ リアコフ、アレクサンドラ=ヴェデルニコフの指揮でOrchestra della Svizzera Italiana)など06年のルガノ音楽祭の実況録音。前者は有名なLPだつたが後者は何かの音楽雑誌で高い評価だつた朧げな記憶での衝動買ひ。黄昏時 に帰宅。無性にシャンペンが飲みたくなりDeutzのBrut Classicを冷蔵庫から出して空豆を茹でる。なぜか直感で「茹でた空豆とシャンペンは相性が良い」と思つたのだが、これが正解。空豆はシャンペンの味 を壊さず、絶対に「シャンペンを飲む時にイチゴをオーダーする田舎者」よりずつとお洒落かも。空豆を頬張りDeutzのBrut Classicを飲みながらアルゲリッチのショスタコーヴィッチのピアノ協奏曲1番を聴いて大満足。それにしても06年のライブ録音は、もうミキシングの 極み(やりすぎ)。コンサートホールではあり得ぬ音の引き出しぶりが鳥渡、非現実的。さう言へば、今日の蘋果日報だつたかに張愛玲と向田邦子が似てゐる、 と記事があつたがマルタ=アルゲリッチと中島みゆきも似てゐる鴨。日本ダービー録画で見る。ディープスカイの強さには驚いたが四位騎手が「今日の馬場はウ チがかなり荒れてゐたので」とコメントしてゐたが、あれは騎手ぢやなくて馬がそれを読んでたね、騎手ぢやない(笑)。今朝は嘉湖の粽を買つて来たが今晩は 恒例でまづは鏞記の粽(至尊燒鵝裹蒸粽)から。

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