教育基本法の改「正」に 反 対! 反対はこちら。 文部科学省の基本法関連サイトはこち ら。憲法改正も反対(九条の会こちら

乾坤容我静 名利任人忙 乾坤は和訳に難き言葉なれど天地、陰陽、つまりは宇宙の理か。

わかりやすい言葉が跋扈すると、みんな目をきらきらさせて連帯を始め、ボランティア精神が賞賛され、強要される。そしていつか来た道になる。

■ 富柏村日剰サイト内の検索はこち ら
■既存の新聞に満足できないなら日刊ベリタを 読みませふ。富柏村の記事も「稀に」あり。
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■最近のブログ化のご時世に敢へてブログ化せぬ日剩を。の 心づもりでをります。敢へて全て讀むこと強ゐる日剩あつてもいゝのでは?と。
讀みにくいこと間違ひなきサイト乍ら今後とも御贔屓の程宜しくお願ひ申し上げます。

2000 年11月24日からおそらくあなたは番目の閲覧者です。

三月三十一日(金)六世中村歌右衛門命日。五年前のこの日までフィリピンに遊び四月朔日に新聞の弔報に成駒屋他界を知る。日剰捲れば偶然にフィリピンに渡 る直前に渡辺保『歌右衛門伝説』読み89年末の京都南座の顔見世のことなど綴ってあり。五年前のこの日、櫻花開くなかに春雪、夜半に雪雲割れ月が出で、ま さに雪月花であったとか。本日、曇。民主党前原某党代表辞任。どうせなら党を出で小泉三世と新党結成を。北京では胡錦涛君、橋本龍太郎君率いる対中友好諸 団体と会談し靖国について「政府の代表者が行くのは政府の意志を表わしていると考える。指導者個人の気持ちはわかるが、被害国の国民の気持ちも尊重してほ しい」と述べる。「指導者個人の気持ちはわかる」と小泉三世の「個人の心の問題」にまで理解示す、のこの発言の寛容。だが橋本君も「多くの日本人の心の中 にある靖国神社は身近な人の姿」などと反論し我が国の社会通念?以上の靖国評価の轍を踏む。本日、早晩にFCCのバーに参ればかなりの賑わいに何事かと驚 けばRugby Sevens開幕にてテレビ中継眺め豪飲の客多し。困ったなぁと思う間もなく客がさっと退き何事かと思えば、どうやらイングランドならイングランド、蘇格 蘭なら蘇格蘭とお目当ての国チームの応援で、試合(確か十数分?)終わればさっさと近隣のオフィスに仕事に戻る様子。新聞に目を通しハイボール二杯飲んだ ところに知己の編集者S嬢とZ嬢現れ軽く夕食済ます。S嬢かつて『香港通信』誌に余がSouth China Talking Hostなる連載で最後の担当者。三人でシティーホールに参りCCDC (城市当代舞踏団)のダンス公演「剛柔流(Iron and Silk)」参観。前半はCCDCの若手による中国の詩人・北島(曹長青による評論(邦訳)こちら) の詩からのinspirationという「某些動作與陰影」。未だ習作の域を出ておらず。後半は一軍による「暴光(Lights Up)」なるアップビートなダンス。照明仕組んだ道具の使い方にかなり疑問あり。道具が拘りすぎ、で舞者、踊りに専念できず道具係の如し。会場に四月末に 久々に踊るDaniel楊春江君の姿あり。シティーホールでは本晩、Freddy Kemphなるピアニストの演奏会もあり。Kemphという名の通り巨匠ケンプの遠縁とか。三人で銅鑼湾のバーS。鼎談に物語り尽きず深更に至る。
▼昨日、陳日君枢機卿に就任し香港で初のミサに熱心な天主教徒たる自称政治家Sir Donaldも参り枢機卿の指輪に接吻。中国政府にしみてれば、この地方自治体首長につき困るのが江沢民にサイン強請るが如き小市民性と、そしてこの宗教 心。而も中共にとっては反革命勢力たる天主教。信報の記事によれば阿片の如き宗教は内地にて宗教信者は人口の二億人突破し、内4,500万人が天主教。毎 年300万人単位での増加。伝統的に辺鄙なる山岳地帯など少数民族に天主教の信者多く最近は社会不安などで都市部に信者増加も目立ち政府の懸念は天主教徒 がひとつの社会勢力となること。それ考慮せば弾圧などよかバチカンとの関係修復も必須か。
▼信報の林行止専欄がフランスの学生デモに端を発した全国規模のストライキについて語る。どうもこのストライキにいたる経緯、余もピンとこなかったが、要 はフランス国民にとっての大事は「言うことをきかない」姿を国民が政府に見せつけること。ノンと発言する主張、運動が起こせることの再確認。

三月三十日(木)ふと一日空いての快晴、Z嬢とそれぢゃ香港鼠楽園でも行きましょうか、と嘘、おそらく七、八年ぶりで海洋公園へ。午前中Z嬢の旅券更新に 総領事館の領事部に寄る。かなり昔に提出の「在留届」の書き換えも済ます。この在留届なるもの「世帯」毎。日本の世帯主中心の住民票に倣う。ふと思えば香 港に、強いていえば学校に通う子どもの親について「家長」という役柄こそあれ「世帯」で提出の書類など存在せず。例えば主婦が世帯主でもいいような気もす るが「主として世帯の生計を維持する者であって、その世帯を代表する者として社会通念上妥当とみとめられる者」らしい。だが「主として世帯の生計を維持す る者」というのは明確なようだが夫婦で収入が同等の場合はどうなるのか、ましてや「社会通念上妥当とみとめられる者」と言う。金鐘からバスで昼過ぎに海洋 公園。夕方まで遊ぶ。そ れにしもてパンダなど平日は客も少ないとはいえ年がら年中眼差し浴び続け難儀なもの。同じ熊でも模様が黒白であそこまでデザイン整わなければ、また黒白の デザインでもあそこまで愛嬌なければ単に「熊」でいられたものが、あのデザインで愛嬌あっては愛玩も致し方あるまいか。帰宅。奈良からK君来港中。知己の U嬢誘いZ嬢と四人で晩にHappy Valleyの益新に 食す。酒肴佳し。

農暦三月初一。晴。裏山の自然公園を10kmほど走る。よくよく思えば手の入ったいわゆる里山。市街に近きこの場所で栗鼠などもいる。走り終わり Mount Parker Rd下る。Taikoo PlaceのEast Endに寄りエール正味二杯。帰宅。ピアノの練習など少しして晩の競馬予想。テレビで競馬中継眺める。ダービー直後の週日の沙田で而も最終 レース除きダートという丸っきり地味。第1レースに畏友A君の持ち馬「新聖(Natural Model)」参戦。15戦未入賞でクラス5に甘んじレーティングも30とどん底状態ながら前レースのダート1200mで二着に入り調教の時計もかなり良 く初優勝も夢ぢゃない、と思え昨晩A君に尋ねるとA君“Fingers crossed”なんてカッコいいこと言う。パドックでもかなり色艶もよく期待したが残念な結果。A君家族の持ち馬は今晩は「新英(Natural Echo)」も出たが三歳の頃に三勝し三年過ぎてまったく元気なし。C氏のDashing Championも八歳、クラス3でまだ12月にはダートで優勝し三月の前レースも二着と頑張ったが今晩は着外に終わる。柳浪の『今戸心中』読了。筆致冴 え渡り花街舞台にした小説という点では荷風の「腕くらべ」も柳浪には比べ物にならず。夜通しの吉原から眺める朝も白む風景描写など名文の極み。柳浪では 『河内屋』や『黒蜥蜴』もそりゃいいが『今戸』の花魁吉里の複雑な心情の描写の見事さ。続いて昨年の八月に久が原のT君通して浄瑠璃本研究するK君からい ただいたDVDで六代目歌右衛門の『瀧の白糸』を観る。昭和31年8月の明治座、新派莟会合同公演(こちら)。六代目の生前に NHKが昭和30年代の歌右衛門の舞台特集した時の録画。我が歌舞伎を見始めた頃には成駒屋すでに足を庇っていたため、白糸役で新派の舞台であるからまさ に動きまわる成駒屋というのはまったくもって初めてみるもの。新派でいえばやはり先代の八重子の白糸・水島友なのだろうが、四十路になるかならぬかの若さ で成駒屋がしっかり泉鏡花の芝居を「歌舞伎の女形がやればこうなるんですよ」と演じきって見せたところに凄さあり。書生の村越欣也に白糸があそこまで惚れ るのが今ひとつピンとこないのだが「一目惚れ」はいちいち他人の邪推は要らないのですよ、と泉鏡花なら言われるかも。
▼三月七日晩のNHKでニュースにて天皇皇后両陛下三宅島訪問に明るい島民両陛下が「こちらに来るとは思ってみませんでした」と語ったのを字幕には「こち らに来られるとは思ってみませんでした」と敬語使わねば敬意ないわけぢゃなし寧ろこの島民の場合かなり親しみある言いっぷりを故意に敬語にした件。NHK に問い合わせばご丁寧に手紙いただく。季節の挨拶に始まりNHK一連の不祥事に関するお詫びに続き
お問い合わせいただきました、三宅島にお住まいの女性の方が「天皇 皇后両陛下が来ると言っていたのに、来られるとの字幕をつけた」ことについて、私どもの考え方をご説明させていただきます。
NHKは、皇室については、国民感情にも配慮し、過度にならない範 囲で敬語を使うことにしています。
三宅島の女性は「こちらに来るとは思ってみませんでした」と話され てましたが、今回は、画面の文字を発言どおりにすると(富柏村)様のように「素直な親しみが語る言葉」と感じられる方がおいでになる一方で、皇室に対する 表現としては語感がきついなどと指摘する方もいらっしゃると思われるため、画面上の文字には「られる」を末尾につけ、敬意を高める表現にしたものです。
ご理解いただければ幸いです。
と。結局、NHKにとって何が怖いかといえば「右からの」「皇室への不敬」に関する非難への過剰なる神経過敏。画面ではとても自然な三宅島民の言葉ながら 必要以上に「右の配慮することで」(皇室に対する配慮に非ず)の自己防御。NHKが公正であるか中立であるかよか寧ろ不憫。
▼社長の息子(35)自称テレビのフリーディレクターが大麻所持で逮捕され(それぢたいは大麻くらいでどうでもいいが)この逮捕の事実は社内でもかなり極 秘扱いで而もお薬関係で有罪&執行猶予中の前科まで今になって暴露され「やはり内部の体質はかなりヤヴァい」と露見の朝日新聞、今日の衛星版オピニオン欄 に「海外メディア深読み」なる論説文でタイの政治危機取り上げるが長岡昇論説委員もインドネシアの週刊誌「テンポ」の記事引用し「問題が起きる度に、いつ も国王に頼るわけにもいくまい。タイの民主主義が成熟するためには、憲法がきちんと守られているか油断なく目を凝らす市民層が育つことが必要だ」と。先日 日剰に綴った通りタイでの国王の政治介入は極めて合憲であること。現行憲法では政治危機にある時に国王が黙って何もせずにいたら寧ろ国王は国民から叱責を 受ける。「タイの民主主義が成熟するためには、憲法がきちんと守られているか油断なく目を凝らす市民層が育つことが必要」なのは確かにその通りだが、現行 憲法下では寧ろ「問題が起きた時に国王に頼れること」は「憲法がきちんと守られている証左」とも言える。

三月廿八日(火)かなり久々の快晴。岩波の『世界』をOCSで定期購読していたが日本円にすれば780円の雑誌にHK$92も払っているわけで日系の本屋 での定期購読に変えようかと余は「品揃えにかなり生理的嫌悪感じる」某書店に参り『世界』の購読尋ねれば通常、入荷しておらぬ雑誌のため単品での注文とな り受け取りは毎回2カ月くらい経ってから、と。呆れて断念。かつてこの書店で『世界』定期購読しておったが、その時は店頭にも『世界』が一冊だけ置かれて いたが(恐らく余の注文に合わせ店頭用に一冊か)。月刊『文藝春秋』平積み、『正論』もきちんと入荷するのだが。昼に北角の回味古法清湯南にて牛南河粉食す。早晩に銅鑼湾に今月開店のバーBに一飲。競馬場からHappy Valley、ニコルソン山まで見渡せる。晩に香港歴史博物館の某館の副館長勤めるW君と食事の予定がW君遅れたのを幸いに一飲むのはずが竹鶴のハイボー ル三杯。W君と会い炉端焼・一番に食す。W君は戦後日本映 画、テレビドラマにかなり造形深く竹脇無我と十朱幸代のドラマで……と言われてもこちらが珍紛漢紛。歴史観の話となり日本の歴史認識にも甘いところあるの は事実だがW君はそれぢゃ中国が日本非難できる程に真っ当か、と。中国政府のウイグルやチベット併合でどういった認識もっているのか、と指摘厳しいが、そ れは事実にせよ日本からこの論法となると余りに文春、正論的でお下品となる。W君と別れ独りバーS。いつものように飲んでパイプ吹かせば帰りがけにカウンターに Noilly Pratというベルモットありグラスに少し賞味。フランス産の香りよき酒。物の本にモーム愛飲、とあり。タクシーに乗る道すがらバーYに寄りワイルドターキー1杯飲み帰宅。
▼知己のG氏よりスタニスラフ=レム逝去、とメールで知らされる。享年84歳。『ソラリスの陽のもとに』を映画『惑星ソラリス』見た後に読んだだけなのだ が。当時のポーランドでソラリスに空想をば広げたレムの世界。「また巨星が逝きました。」というG氏の言葉に、ふと思えばアーサーCクラーク先生がまだご 存命。さすがスリランカで少年の……否、まぁクラーク先生もさすがに九旬では、と思いつつダイビングに悪戯癖に、と現役だろうか。
▼陳日君が枢機卿となり昨日、ローマ法王香港からの観礼団と接見。陳枢機卿が民主党のマーチン李柱銘、蘋果日報社主のビリー黎智英などを法皇に紹介。マー チン李氏について陳枢機卿は「正義、人権、民主得られる日が来るために私と一緒に働いております」と紹介せば法皇は「これからも続けて努めるように」と声 をかける。カソリックもそうなら法輪功にせよ宗教弾圧となると毅然と、時として必要以上になんと政治的。ところで陳枢機卿、これまでもBishop Zenと英語表記されているが陳さんがZenなのは上海語から引音のため(実際にはZunのほうがより上海訛りに近いらしい)。

三月廿七日(月)土曜日晩のドバイのワールドカップレースにつき斎藤さんや月本さんの日記読んでから映像で観て「なるほど」だったが今日のSCMP紙は贅 沢にも見開き二面でドバイと香港ダービーの記事豊富。香港の華字紙はどれも配当中心で「Soumillonの計3勝に単勝で3x7で跨いで賭けていれば配 当は何万ドル」といった「たられば」ばかり。それに対してSCMP紙は英国的なのだろうか、前日のレースについてレース展開など詳しく物語る。これをじっ くりと読む幸せ。Electrocutionistに騎乗してドバイ制した天才Dettori騎手に“I do not think I could win until I was 30 metres out”と言わしめる。それほどのレース。Dettori騎手のコメントがこれがまた良い。
I didn't breathe for two minutes. I was not travelling as well as Yutaka in front. I found a gap at the 5/8 pole(1,000m)and took it with both hands. I then had to switch him and lost some energy and ground. It was a great performance and is great for Godolphin and the whole team. I did not think I could win until I was 30 metres out as I could not shake off Brass Hat.
と続くのである。武豊騎手カネヒキリを追いながら「2分間呼吸していなかった」というDettori騎手の緊張感。5/8ポールで勝負に出てブラスハット 蹴散らすところまでの緊張感。グレンフィディックをロックで飲みながらこういう記事を読んでいる時の心地よさったらありゃしない。それでいてヘラトリ紙に は紐育タイムスの記事でPage Twoに“Migrants' dreams dry up in Dubai desert”という記事もあり。偶然だろうか。建築ラッシュ続くドバイで印度系の工事現場への出稼ぎ労働者取材した記事。世界各地から出稼ぎの集まるド バイでは仕事にありつくためにエージェントに数千USドルの紹介手数料払い、ようやく得た仕事は月給米150ドル、うち半分は故郷に仕送りでは物価高のド バイでは生活もままならず死活ギリギリの生活が現実。その彼らが建てた建物に世界中の資本や娯楽が集まる、と。いろいろ考えながら、結局は酒を飲んでいる のだが。

三月廿六日(日)朝八時迄朝寝貪る。レーシングポストにてDubai World Cup順当にElectrocutionist(Dettori騎手)勝利を知る。久が原のT君よりメールあり昨晩綴った漢方生薬の「桑寄生」。四谷様の 芝居にて民谷家に伝わる家伝の刀創の妙薬がこれ、と教えられる。お岩との不義の汚名で伊右衛門に殺されお岩ともども亡骸を戸板に載せて流される小仏小平が 民谷家から盗み出すのがこの薬。もっとも、「刀創の妙薬」といふ設定なのですがね。健康デザートにされては小平も浮かばぬ、とT君。新聞一通り目を通す。 昨晩のドバイに続き本日、香港ダービー。T君誘い験を担いでKCRの一等車にて颯爽と沙田競馬場へ(いつも帰りは二等か)。昨晩ドバイの中継でCruz厩 舎の香港馬に騎乗のSoumillon騎手もちゃんと今日の第1レースから香港で騎乗とは。Cruz調教師ももちろん今日の晴れ舞台に戻っており、皆さん 10時間でどうやって帰港したのか。香港ジョッキークラブのチャーター機だろうか、きっと。というわけで第3レース(第1、2レースはドバイからの中継 分、これが実質的な第1レース)でいきなりSoumillon騎手、遠征の疲れも見せず勝利。第9レースにChairman's Sprint盃ありSilent Witnessの復活も期待されたが三着でSoumillon騎手が25倍の大穴でBillet Expressで本日二勝目。で香港ダービー。パドックでどう見てもマカオのカジノ王Stanley Ho氏の持ち馬「爆冷」(Viva Pataca、Patacaはマカオ通貨)が1.9倍の一番人気も納得の勇姿。巨億の富、四人の妻、全ての権力を手中にするStanley Ho氏にとって人生で唯一ゲットしておらぬのがダービー馬で、今日がその晴れの日になることは疑いなし。だが我は知人の馬主W氏のSunny Sing(新力升)が今季3勝でダービーにまで参戦で、これを応援。三番人気でW氏も「行くぞ」と力が入る。当然、Sunny Sing中心に賭けたが、三連単だけはSunny Singが三位に入れば、で保険かける。結果、Viva Pataca王道を行き期待のSunny Singは惜しくも4着。これも騎手はSoumillon君。さすが。結果、2着に9番人気76倍のHail The Stormなる馬が入ってしまい、よくある話だが「これさえ来なければ」三連単もとれていたものを……。まぁこれも人生か。でT君と競馬場をあとにして昏 時、FCCのバーで反省会で気持ちよく大いに飲む。帰宅して鯵を焼いたりして晩飯。ダービー直後のレースは馬券だけ買っていたが1〜3着確実に押えていた 結果知りSunny Singに託した分の資金しっかり回収出来お釣りまで来ていたこと知る。

三月廿五日(土)連日の不愉快なる空模様に出かけるも鬱陶しく昼前に太古に住はれるN氏自宅にお邪魔し一つ頼まれ事住ませ昼に郵便局、銀行に用事住ませ帰 宅。午後遅くまで新聞に目を通し香を焚き机まわり片づけせめて宅内だけでも気分よく過さむがため努める。不図気になりタイ王国憲法調べる。やはり。
昨日はつい朝日新聞の煽動でwタイ王国の政治が「国王に頼る切なさ」という社説の論調に「確かに」などと口走ってしまふ。反省。本日ふと気になり佛暦 2521年制定のタイ王国憲法読めば、やはり。結論先に言えば「タイはブッダの加護の下、憲法に則り国王を元首する立憲君主制で真っ当に成立したり」とい うこと。先ずはど何処が国の憲法でもやはり大切は前文。
プラバート・ソムデット・プラチャーゥ・ユーフゥア・プーミポン・ アドゥンヤデート・マハーラート國王(現國王、ラーマ9世)斯くの如く布告す。
國家立法議會の上奏に言ふ、プラチャーテイポク國王(ラーマ7世、 在位1925〜34年、チュラロンコーン王(ラーマ5世)の子で現國王の叔父)佛暦2475年タイ王國憲法下腸以來憲法の改正、幾多の憲法公布あり、と。 亦た時として國家其の状況變化により恒久憲法起草公布迄に臨時國會統治憲章公布せねばならぬ事ありき。是れ迄の悉くの憲法及び臨時國會統治憲章其の何れも 「國王が國會通じ立法權、内閣を通じ行政權、裁判所通じ司法權其々行使せむといふ國王をば元首にいたゞく民主主義體制の統治堅持にあつては同一なり。歴代 憲法間の重要な相違點其時々の變化せる國家状況に適合せしむが爲國會の地位及び立法權、行政權との關係の變化にすぎず。此等國王を元首といたゞく民主主義 體制統治へのタイ國民の信望示すものなり。亦た是れはタイ國民に國家統治權を下腸せしプラチャーテイポック國王の意嚮に合致せるものなり。 國王を元首にいたゞく民主主義體制の統治の堅持是れ今日に至る迄繼承されたり。(以下、略)
……と。「国王を元首とする民主主義体制を国家統治の方法として堅持すること」は国民の総意とされ憲法は
國王の意嚮の如く民主主義並びに王國内のタイ國民の主權とを維持し 國王の統治に服せし人民に幸福と繁榮とをもたらさむが爲タイ國民其の心ひとつにし此のタイ王國憲法守り維持せむ事を誓ふ。
と結ぶ(文語調は富柏村の勝手、ご容赦)。この前文を読めば一目瞭然、で、一体不可分のタイ王国(憲法第1条)は国王を元首とする民主主義体制の統治政体 をもつ(第2条)とされ、大切なのは「主権はタイ国民に由来する」そのうえで「元首である国王は本憲法の規定に従い国会、内閣、裁判所を通じてこの主権を 行使する」こと(第3条)。もうこれで充分だろうが、つまり国王が国の大事にクーデター阻止や首相更迭することは合憲であること。それを勝手に第三国の新 聞が「国王に頼る切なさ」などと「民主主義ぶる」ことの不敬。首相などというのはタイでは国民に由来し国王が司る主権に対して実に小さな存在で、ちなみに タイ王国憲法で総理大臣について謳われるのは、なんと146条とは。
昏時Z嬢と突然「ラーメンと餃子」食そうということで彼処は昔は美味だったが店主が替わりあゝだし此処は頑張ってはいるが日式の域を出ず、と。そういえば 天后のOは行ったことなし、とそれぢゃ試しに、と伺えばシャッター降りて不動産屋の看板かかる。閉業。どうもWhitfield Rdは利休以外は流行らず。というかこの辺鄙な場所で利休賑わうことのほうが稀。利休の隣の金元海鮮小館という地道な粤菜供す古い料理屋も閉業と知る。興 發街の巴巴Laksaなる昼にはいつも行列できる程の小店も 週末の晩では辺鄙さで空いておりラクサ食す。電気道の晶晶甜品に 寄り首烏桑寄生蓮子蛋を食す。首烏(しゅう)、桑寄生(そうきせい)ともに漢方生薬、それを煎じた甘味の茶の如きものに蓮の実となぜか茹で鶏卵が浮く…… と書くと不気味だが健康デザート。晶晶甜品の隣に随ni鐘意「アナタのお好きなまま」といふ刺身(ほとんどサーモン)専門店あり外に客溢れる繁盛。理解で きず。帰宅して柳浪の「今戸心中」読む。晩遅くドバイから競馬のテレビ中継あり。ドバイ滞在中のS氏の日記に詳細(こちら)。テレビ中継はDubai Sheema ClassicとDubai Duty Free Cupのみで香港でも馬券購入可。肝心なDubai World Cupは中継もなし。而もこのレース、 World Racing Championshipから外れてしまい、やはりこのドバイのレースが例年のWorld Racing Championshipの緒戦であってほしいところ。で、シーマクラシックも免税盃も新聞見ても出走馬表くらいしか香港でデータなく英国レーシングポストなどネットで眺め情報収集。シーマクラシックには ジャパンカップは5着?だったが香港ヴァースで優勝のOuija Board(騎手はFallon、ヴァースでは日本のシックスセンスが2着)、日本からはジャパンカップ2着、有馬記念でディープインパクト破ったハーツ クライ(Lemaire騎手)が参戦。ドバイ免税盃には日本からアサクサデンエン(武豊騎乗)、香港からBullish LuckとRussian Pearlが参戦。野球も日本優勝でなんかまた日本馬「買わぬと来そう」でシーマクラシックはハーツクライにしたいところだがレーシングポストの記事で やっぱりOuija Boardだろうか、だが英国の競馬紙であるからOuija Board贔屓なのでありハーツクライが国際レーティングで122とこのシーマクラシックの出走馬のなかで最も高いことに驚いてハーツクライの単勝。免税 盃は荷風散人にあやかり?アサクサデンエンと好きなMarwing騎乗のIrridescenceの連複一点買い。風呂に入り珍しく麦酒など飲みながらド バイの競馬中継。ハーツクライいきなりハナをとり2400mまさかこのまま?と思ったら駆け引きもないままライバル不在?三馬身差くらいで快勝。ファーム の関係者ら大喜び。橋口調教師本日2勝目、と馬場のインタビュアーが橋口氏に話しかけ、えっ?と思えばすでにゴドルフィンマイルで武豊騎乗のユートピア一 着。でハーツクライで2勝目。免税盃はこれも最後後塵追い払って、やっぱりレーティング123とかなり格差あり優位なDavid Juniorが実力なのでしょう、の一着。このあとDubai World Cupは中継もなく「今戸心中」少し読み臥寝。
▼ウオトカのABSOLUTのCMに我も好む米国の芸人レニー=クラヰ″ツの音曲(こちら)。
▼この週末、台湾の「F4」なる芸人の香港興行あり。香港では人気も陰り今回の舞台も「歌舞音曲に技巧なし」と新聞芸能面に揶揄あり。だがこれに大挙して 訪れしは日本からの婦女隊にてCD量販店HMVから信和中心の芸人グッズ店、甘味の「糖朝」から翡翠酒家、飲茶の映月樓まで日本人女性相手にとんだF4景 気に涌く。尖沙咀スターフェリー波止場前の新聞売店など通りがかりが日本人女性と見れば蘋果日報、東方日報の芸能面開き「F4、F4」と新聞売り、とZ嬢 の話に聴く。

三月廿四日(金)夜半からかなりの降雨あり。ヘラトリ紙に紐育時報の記事で中国から米国に渡る養子縁組の話あり。中国の一人っ子政策の余波にて二人目以降 の「手放し」あり。殊に女子が大部分。一人目の子が女子であった場合の手放しも少なからず。91年より海外、その大多数が米国、から中国の孤児をば養子と する正式な「やりとり」始まり92年より本格化。これまでに55,000人の中国の孤児が米国に渡る。そのうちかなりの数が広州での「引き渡し」で白天鵝 酒店(White Swan Hotel)がそれが盛んであることはこのホテルに泊れば一目瞭然。ホテルでは慣れぬ様で幼子を連れた白人夫婦が目立ちホテル周辺は育児用品売る店も少な からず。雨やまず。春雨というには気温摂氏十七度で肌寒し。かなり早晩にFCCのバーで佐藤優『国家の罠』二百頁ほど読み続け読了。日本が小泉政権となり (自民党の宏池会的な)ケインズ型公平配分政策からハイエク型傾斜配分、新自由主義に転換し、外向的には明治以来の(昭和の前半は崩れたが)地政学的な国 際強調主義から排外主義的なナショナリズムへの転換をするにあたり「時代のけじめ」として仕組まれた様々な罠の一つに鈴木宗男や著者(佐藤優)がスケープ ゴートとなったという。実際にこの「国策捜査」の幕開けや幕切れなど見れば明らかに検察がきちんと何らかの指示に基づいて動いているのも明らか。実際に著 者をば尋問し続けた担当官はこの国策捜査終了と同時にお役御免で水戸地検に栄転?。この国策捜査で一つ上手くいかなかったことは「外務省のラスプーチン」 と呼ばれた著者が国策調査に動じぬ程の「得体の知れない」人物で東京高裁で係争中。鈴木宗男も新党大地で永田町に舞い戻り。時代のけじめはそう安易につく ものに非ず。晩に自宅で山芋、オクラに天かすの「とろろ」飯など食す。岩波文庫で広津柳浪の『今戸心中』から「變目傳」読む。
▼朝日の社説で「国王に頼る切なさ」とタイのタクシン首相の傍若無人ぶりに端を発せし政局混乱につき国王のご沙汰で首相更迭含みで政局安定まで図るタイの 政治風土評して民主主義の成熟覚束ぬ、と説く。確かに。だが政治家に英知なく国王に叡知あらば国王に頼ることもプラグマティズム的。問題は在位60年にな るプミポン・アドゥンヤデート国王(ラーマ9世)にここまで頼り、つまり戦後のタイの成長そのものがラーマ9世の御世ならばタイはそれ以外を知らず。問題 はその後のことであるのも明白か。

三月廿三日(木)連日香港の春らしき曇天続きが今日は昼に降雨あり。紛いなりにも季節は雨期なのだ、少しは降ってくれないと。大潭のダムなど干上がってし まいそう。楽しみに待った小泉メールマガジンで小泉三世、首相官邸で記者にも語っていたが「日本シリーズの緊張感と高校野球のひたむきさが重なりあったす ごい試合」という表現も言い得ているようで「改革なくして成長なし」と同じで陳腐だが
日本は強豪韓国に1次リーグでは2対3と敗れ、2位で通過。2次 リーグでも1対2と敗れて再び2位。しかし、この敗戦に屈することなく、3度目の対戦となる準決勝ではチームが一丸となって力を合わせ、6対0と破って決 勝に進みました。野球発祥の地アメリカ代表チームは、2次リーグで日本に4対3と勝ちながら、同じ1勝2敗の日本とわずか0.01の失点率差で決勝トーナ メントには残れませんでした。決勝の相手キューバも、1次リーグではプエルトリコに、2次リーグではドミニカに敗れながら、準決勝でドミニカを破っての決 勝進出でした。
……と老若男女誰もが諳んじる試合結果を述べてみせる。それが、日本チームのこの完勝できずの勝ち残り、一瞬「もう終わったことに」のはずが最後は天晴れ なる優勝に自分の姿をば重ねていたことは間違いない。どうにか自民党の総裁レースに残り「?」マークのまま首相になり国民の支持は高いが今ひとつ何ができ るのかもわからぬまま長期政権となり最後は郵政民営化で沈んだか、のはずが見事な復活。……というわけで昼から雨の本日。下述の加藤周一の文章など読んで しまい気分的にはブルーノ=ワルターでワーグナーの9番を聴く。ところで先日、蔡瀾氏の随筆で台北のかなり専門的な映画関係専門店を紹介。その店の名を 「秋海棠」と言う。秋海棠、秋海棠……と思ってピンと来ずに数日過ぎしが本日不図『図説永井荷風』という本の頁捲れば川本三郎氏が荷風散人の隠棲の例とし て挙げたる大正十五年九月廿六日の断腸亭日剰に秋海棠をば知人の川尻清潭より数株もらい受け偏奇館の庭に植える記述あり。大久保余丁町の荷風の実家には秋 海棠多く植えられ初夏に小さな赤い花咲く。秋海棠の別名が断腸花。それゆゑ荷風散人みずからの書斎に断腸亭という名をば頂く。秋海棠はそれで余の記憶にあ り。
(斷腸亭日剩大正十五年九月廿六日)秋海棠植ゑ終りて水を濯ぎ、手 を洗ひ、いつぞやの松莚子(註:二代目左團次)より贈られし宇治の新茶を、朱泥の急須に煮、羊羹をきりて菓子盆にもりなどするに、早くも蟋蟀の鳴音、今方 植ゑたる秋海棠に葉かげに聞え出しぬ。かくの如き詩味ある生涯は蓋し閑居の人にあらねば知りがたきものなるべし。平成狐眠の悲なからんには清絶かくの如き 詩味もまたなし。
晩にZ嬢と北角の寿司加藤。二人で赤貝と笛吹鯛を肴に酒は男 山。それから青森は五戸の菊駒なる純米酒をいただく。美味至極。珍しく二人きりでバーS。ハイボール二杯。加藤でもバーSでも知己の方に邂逅、或いはお 名前は存じてもお会いする機会なく数年の方ご紹介いただくなどする。帰宅して『図説永井荷風』眺める。今更の既知の事多かれど荷風の養子となった永井永光 氏所蔵の散人の遺品の数々など初めて目にする。罹災した荷風に谷崎潤一郎が送った書簡だの見事。それにしても晩年のところで突然、何の説明もなく小林修氏 の写真があり「小林修 昭和23年12付き、菅野の家の購入に際し尽力した小林は、以後しばしば荷風のもとを訪れている」では好事家以外いったい小林が誰 なのかもわかるまいに。
▼朝日新聞の加藤周一「夕陽妄語」より。今年はドイツの詩人ハインリッヒ=ハイネの没後150年だそうな。加藤周一がドイツの友人から受け取った手紙には Ich hatte einst ein schönes Vaterland (むかし、僕には美しい祖国があった)というハイネの詩句書かれてあり。加藤周一は愛国心について考える。
国の場合にかぎらず、その対象が何であっても……神でも、人でも、樫の木でも菩提樹でも、すみれでも野ばらでも、「愛」は外から強制されないものであり、 計画され、訓練され、教育されるものでさえもない。
ここで氏はソロモンの雅歌
愛の自ずから起こる時まで殊更に喚起こし且つ醒ます勿れ
という文句を引き、愛国心について<権力>がそれを強いることの間違いについて語る。「愛」の概念の便宜的な軽薄な濫用。偶然に生まれただけの国が愛する に足りるかどうか、という疑問のまえに内村鑑三は確かな愛の対象として国家の上に<神>を置いた、という。祖国愛は情念であり自己批判は理性。理性的に制 御されぬ情念から生まれる自己陶酔が容易に排他的ナショナリズムとなる。祖国への愛と批判が両立することの崇高さ。それがないと御用詩人、御用学者とな る。氏は Ich hatte einst ein schönes Vaterland (むかし、僕には美しい祖国があった)というハイネの詩を何度も口ずさむ。……おそらく「国民の5%」しか読んでおらぬ話だろう。大切なことなので綴るま で。
▼香港鼠楽園、開業前から「入場券の割引は絶対にせぬ」と豪語していたものが開園数ヶ月後には香港住民相手に割引料金の提供で脆くも傲慢さに陰りでたが今 度は1度来場すればもう一度は無料という実質的半額チケットの発売開始。開園から半年余でもう末期症状か。南無阿弥。
▼最近、我が国の世論というものがわかってきた気がするが、国民の3割が新聞など読まないとして残りの7割は世論的には20%が読売、スポーツ新聞&夕刊 タブロイド紙が15%、聖教新聞が10%で朝日が5%、残り20%のうち2%が毎日で残り18%が地方紙、という感じでなかろうか。となると産経新聞は何 処に在るのか不明だが築地のH君が「えひめ丸事件のときでさえ日本人の命より米軍の事情が大事とした」産経抄のここ数日の、「野球は人命より重いのか」、 野球に関するマジギレをまとめて送ってくれる。深謝。産経抄の書き手は野球に興味があるのかないのか、「笑話」の昔は野球少年だったが今は正直野球に興味 がない、のか。「つくる会」の西尾先生風には「負け惜しみで歴史の偽造をはかるのは保守主義の伝統を踏みにじるものではないだろうか(慨嘆)」になろう が、ここ数日の産経抄を辿れば
たかが野球、されど野球である。勤め帰りのサラリーマンでにぎわう 東京・新橋の一杯飲み屋では、セ・リーグのプレーオフ導入は邪道だの、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で日本は強豪ぞろいの二次リーグを突 破できないだのと、久々に野球談議で盛り上がっている。まじめな松井選手は直前までWBCに出るかどうか、迷いに迷ったという。結局、所属するヤンキース に貢献することを優先したが、プロとしては一つの見識だろう。ただ、一ファンとしては日の丸のついたユニホーム姿を見たかった。レッドソックスで活躍する ドミニカ共和国出身のオルティスは初戦で二発の本塁打をかっ飛ばし、国旗を振って声援に応え、「世界中にいるドミニカンに見てほしい」とコメントした。愛 国心は厳しい国際社会で前向きに生きる人々の栄養源ともなる。「偽メール」騒ぎも一段落し、来年度予算案の成立も確定した国会では、教育基本法を改正して 愛国心の涵養(かんよう)を盛り込むかどうかが焦点となるのだそうだ。愛国心は自然にわきあがる感情で法律に書き込むのはなじまない、という議論もよくわ かる。だが、そうでもしなければならない事情がある。中国にちやほやされ、尖閣諸島周辺での石油ガス田共同開発を持ちかけられても抗議もしないどこかの大 臣や、天下り先ばかり考えているお役人たちがいるからだ。教育現場はむろんだが、政治家や官僚への「愛国心教育」もいますぐに必要だろう。(三月十日)
……このへんに関しては上述の加藤周一氏の記述を読めば産経抄のレベル差も歴然だが、
あまりに腹が立って、きのうは罵詈雑言書き連ねそうで、小欄に取り 上げるのは一日延ばした。いうまでもない。ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の日本対米国戦のことだ。それにしても「(王監督が)納得しなけ れば、ぼくはグラウンドに戻る気はなかった」と指揮官の猛抗議をあくまで支える姿勢をみせたイチローはさすがだ。やられたらやりかえせ、の大リーグに生き る男の強さをみた。WBCのうさんくささを察知して不参加を決めたのだとしたら、松井はもっとすごいけれど。(三月十五日)
と米国の不正には「一日おいて」不満を言ったと思えば
「たかが野球」に怒ったり、嘆いたりしているうち に、もう卒業式の 季節がやってきた。それどころか、きのうは大手流通グループのマンモス入社式があった。(三月十七日)
と今度は韓国に負ければさすがに八つ当たりもできず野球の存在ぢたいを無 視(笑)。で最後は
野球の神様ありがとう。正直いうと野球には関心がな い方だが、きの うのWBC準決勝で日本が韓国を破った瞬間、そんな言葉さえ浮かんだ。勝利に向け、これほど一丸となったチームは最近見たことがなかった。(三月廿日)
開花宣言の出たばかりの桜を愛(め)でながら勝利の美酒に酔った。 先週の小欄で、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に散々毒づいたからきまり悪いけれど、世界一となった王ジャパンの快挙をたたえたい。(三月 廿二日)
心地よい興奮の余韻が日本列島を覆っている。「王ジャパン 世界を 制覇」の祝勝気分は職場や学校にもあふれ、王監督やイチロー選手との一体感に酔った。昭和三十年代に野球少年だった小欄などは、もう夢心地だ。(三月廿三 日)
……と、まさに「臆面もなく」とはまさにこのこと。「東京裁判史観」とか騒ぎ立てる一方、中国戦線での敗北を完全に無視する態度と全く同じぢゃないかし ら。

三月廿二日(水)香港ではWBCでの日本優勝はスポーツ面のベタ記事程度であるがヘラトリ紙に紐育時報の記事でさすがに一面に王監督の胴上げカラー写真。 で記事を読めば“US baseball faces Classic problem”という見出しで“Japan's victory puts to rest the nation that the World Series is a global championship”と、つまり米国の職業野球で米国一を決める対抗試合がワールドシリーズという名であることがおかしな話ぢゃないか、と。ところ でWBCであるとどうもボクシングみたいなんで、わざわざワールド・ベースボール・クラシックと仮名書きするむきが多いが、ふとクラシックというとスポー ツではゴルフがよく用いる言葉だがクラシックは「経典」なのだ、とあらためて思う。というわけで本日、かなり久々に自宅で晩飯。パスタ。赤葡萄酒は豪州の Yellow Taleを少し。佐藤優『国家の罠』ほんの十数頁読むうちに眠りに堕ちる。
▼蘋果日報に「港大学者帯団遊日本」と記事あり何かと思えば香港大学博物館のY総館長、館長のA君に港大仏教研究センターの僧侶などの引率で日本の高野山 や奈良京都の仏寺をば周遊というもの、香港大学基金と大手旅行代理店国泰ホリデーの共同企画だそうで一般から参加者募り、A君の旅行団の場合はベネッセ アートサイト直島などに参ることになる。一昨年秋のY氏、A君らとの旅行がこういうビジネス展開みせようとは。蔡瀾氏に始まり陶傑氏のOxbridgeツ アーだの著名人と一緒のツアーが大流行り。さしずめ日本なら、辻邦生と歩く巴里魅惑の5日間、とか渡辺淳一が案内する北海道霧の摩周湖不倫旅行、とか思 いっきりNew York with 久保田利伸、となるのだろうが日本では芸能人や著名人はこういうことをすると格が落ちると思っている。が香港はふだんから著名人でもそのへんで買い物して いて食事しているから、今さら、なのだろう。
▼朝日新聞社が社内での記者らのメール送信だのウェブ閲覧などケースに応じて検閲可としたらしいが三菱東京UFJ銀行も同銀行内での本支店間のイントラ ネットならば問題ないがネット経由のメール送る時は上司もしくは自分以外の役職者をc.c.にせば送れぬようになったそうな。ファクス送信も立ち合いが必 要。ここまでして情報漏洩防いだ結果避けられる損失と、この漏洩防止にかかる手間ひまはどちらのほうが大きいか、疑問。

三月廿一日(火)曇。日本は春分の日。さすがのスポーツ頓珍漢の我もWBCなる職業野球の世界選手権なるもの「米国で」開催され我が国は韓国に連敗で「も う終わったことにする」はずが米国が決勝に残るため組まれたはずの複雑なトーナメントルールで日本が韓国破りまさかの復活果たし決勝進出、と話題に追いつ く。日本は今日は日テレ、読売テレビ系列のテレビに釘付けのはず。香港の邦人も出勤日とはいへ日本が休日でスポーツナビなどでネット実況中継に釘付けだっ たは当然。で強豪古巴相手。日本選手ではイチローしか名前しらぬ我もついつい日本の序盤リード、古巴もゴンザレスという投手の名前しか知らぬが、さすが古 巴で1点差まで追いつき9回イチローの適打にて追い放しての、確かに見事な試合展開。台湾人の知人に何を日本人は興奮している?と尋ねられ「日本が野球の 世界選手権に優勝」と伝えると台湾がこれに参加していたことさへ知らぬ知人も一言「監督は王選手」と言えば「えっ、王貞治が監督!」と嬉しそう。子どもの 頃から日本で活躍する王選手は台湾ではヒーローであった、と。王さんにとっては本塁打世界一にも匹敵する人生最良の日か。これも本来であれば長嶋監督で あったのか。だが我が国がいつまでも長嶋茂雄という人に頼らず勝てたことの意義を考えるべきかも。王貞治という人は我も子どもの頃から将来は銀行員になり たいと思ったほど数字に強く打率すらすらりと暗算するという王選手が、読書量とかもかなりだそうで、他の粗野なる野球選手の中で今でいえば古田的に違うも の。いずれにせよ今回の世界一が誰にとって最も最良の日かといえば小泉純一郎閣下。有終の美(ホントに今秋に首相辞任するなら、の話だが)。前世紀末より 低迷続けた景気も小泉三世が「構造改革」だの「痛みある云々」と言葉こそ勇ましいが特段なにか有効な景気対策したわけでもないが景気回復し、冬季オリン ピックもメダル絶望で「なかったことにするはず」が荒川金で盛り上がり見せ、そして今回の野球世界一。明後日の小泉メールマガジンが楽しみ。この野球日本 一で、日本もなかなか捨てたものぢゃない、と思うのは悪いことでない。これがサッカーならほんとに世界の話題だが野球であるから所詮、米国に与する国々 (唯一の例外がキューバ)だけでの話なのだが。で、怖いのは「日本もなかなか捨てたものぢゃない」が現状肯定であるとか、小泉改革(どこが?)だの安倍禅 譲(安倍晋三から安倍禅譲に改名だ)に繋がり、対韓・対中への傲慢路線、教育基本法から憲法までの改悪に至らぬことを祈るばかり。だが現実は確実にそれへ の追い風になろう。安倍禅譲といえば、今日の朝日にポスト小泉に誰を選ぶ?の世論調査あり安倍47%で福田20%という数字あり。麻生、谷垣は5%下回り 安福レースに決り。安倍優位は変わらぬが福田氏の急上昇。自民党支持層では安倍支持が6割で福田15%と大差。それが国民の総意となると福田浮上。興味深 いのは安福で安倍は支持者男女で45:48と大差ないが福田は26:15と男性の支持が高く、安倍が各年齢層から満遍なく4割以上の支持なのに対して福田 は60歳以上の男性で3割余の高めの支持。都市部では安倍:福田が44:23で東京に限れば(都知事が石原なのに)43:26と福田支持が多少なりとも強 まる。福田氏支持では対中関係の重視の声高いのは当然。結果明らかなのは非都市部で女性と若者に無邪気な安倍支持が強く、都市部で60歳以上の男性という 「ものごとのわかった人たち」、後藤田正晴先生に親近感をもつような、つまり国民の識字率5%にかなり入るであろう人たちが福田支持であること。自民党総 裁選で福田氏がどこまで善戦するか(自民党の良識の問題)、首班指名となった時に民主党から共産党までが福田氏擁立に動けば政界再編成も含め面白いとこ ろ。というわけで本日……バンコクから来港のY氏と晩に銅鑼湾のいろりに 食す。食す、と言っても肴を小皿に三品、で焼酎はさらりと一本飲み干して銅鑼湾でHK$300は客単価低すぎよう。よもやま話。ラウンジ系のバーBにふと面識を得たT嬢お尋ねし一飲。そのままバーYでハイボール二杯。Y氏と別れ、帰ればいいのにバーS。午前三時の閉店まで勝手に寛ぎオールドパーのハイボール二杯。

三月廿日(月)畏友William鄧達智君が蘋果日報の随筆「自遊行」で香港国際空港のキャセイパシフィック航空ビジネスクラスラウンジの雲呑麺をば絶 賛。確かに美味だがキャセイなら台北のラウンジの南京牛肉麺のほうがずっと美味。空港のラウンジで雲呑麺が食せるだけでも確かに御の字だが。このラウン ジ、開港当時に評判となりWilliam君が何かの雑誌にラウンジ紹介を書いていたのを見たのが最初。当時は全日空が今では考えられぬが格安Cチケットを 出しており(成田便が日に2便となる迄)Z嬢と二人なら一人分Cクラスで購入して当時は全日空がキャセイなどとPassagesなるビジネス&ファースト 限定のマイレージプログラムを実施していたことで、そのマイレージで1人分をタダ券ゲットすればYクラスで2人がexcursionで購入するのと同額な ので全日空の利用を続けておりWilliam君のラウンジ紹介にかなり食指動いたが、その後キャセイを利用するようになったものの成田便は朝便ばかりでラ ウンジに行ってもヌードルバーは朝11時からだかしか麺を出しておらず(ただし朝は朝でそれなりの点心が供される)。偶然に午後便利用して遂に念願叶って ラウンジの麺にありついたが期待に勝りはせず。それに比べると台北の蒋介石空港のラウンジの南京牛肉麺のほうが格段に美味い。これは蔡瀾氏が同じ蘋果の随 筆でいぜん紹介。William君が台北のこの麺を食しておらぬはずもなくメールする。今日の読書は佐藤優『国家の罠』の続き。これだけ緻密に書かれる と、どう読んでも佐藤氏が国家の罠に陥れられたとしか思えず。

三月十九日(日)第30回Mount Butler Cross-Country Race開催され朝6時45分に同じランニングクラブのN君夫妻が車で迎えに来てくれて集合場所の黄泥涌ダムへ。数年前まで数百人の参加とこぢんまりした 15kmのクロスカントリーであったが参加者は千数百人。また途中のSir Cesil’s Ride(セシル総督の乗馬径、の意)も五、六年前は薮の中であったものがすっかり路上整備され驚くばかり。昨晩の四川料理の麻辣に胃腸痛んだが1時間 50分の相変わらずののんびりタイムでゴール。今季はミズノのハーフだったろうか、体調不良で1つレースを休んだ以外はエントリーした長距離走の全てに出 場し(これまで「エントリー」と綽名されるくらい申し込んで出ぬ大会多し)もっと本気で走れという声を他所に予告タイムにほぼ忠実にブレずに完走。いつも のようにK氏のトヨタクラウンでユニーまで送ってもらい食材購入。ジムで一浴して帰宅。一昨日の痛飲の疲れ今ごろ出て昼寝。午後遅くミニバスでミッドレベ ル。十年近く住んだあたりを散歩。中環の中央警察署(原祉)の裏手にあったヴィクトリア監獄も百数十年に及ぶ役目終え施設の一般公開に長蛇の列。香 港で最初の刑務所であるが最近は大陸からの「亡命」であるとか、フィリピン人家政婦などのビザ失効後の不法滞在など犯罪ともいえぬような者の抑留ばかり。 すでに昨秋には拘置所としては使用中止となり12月のWTO閣僚会議での「大量の」抗議者の臨時収容所に利用されることになっていたが実際に此処に運び込 まれるほど混乱もなかったはず。香港開闢期からの建物は史的にも貴重で今後この敷地が中央警察署含めどう「再開発」再利用されるのかに注目集まるところ。 FCCのバーでハイボール二杯。バーで競馬開催のテレビ中継眺めるつもりがF1中継あり。中継も見られぬまま地場G2のChairman's Trophy出走間近で今朝の新聞見れば一番人気は絶好調のジョイフルウィナーで1.8倍。そろそろコケるであろうという予感はないがアートトレーダーの 昨晩オッズが10倍は「誰もこの馬の存在に気づいていない」と強気で賭けると結果だけ携帯で確認したら見事に一着。ただし単勝が5.3倍とは、やはり気づ いた人が多かったよう。いずれにせよ単勝は得て嬉しいところだがジョイフルウィナーがコケすぎて5着で連複などは外れ。こんなものか。三聯書店に寄る。店 内にジャニス=イアンの“Will you dance?”が流れ山田太一のテレビドラマ『岸辺のアルバム』彷彿。三十年前、あのドラマで家族は崩壊していたが、少なくとも浮気であるとか明らかな要 因がなければ、あの当時はまだ家族の崩壊がなかったのだ。香港の歴史本を積極的に出版する三聯書店で香港地区史研究之一『九龍城』と研究之二『大澳』が上 梓されていたので購入。『九龍城』には畏友高添勉君が特に日本軍による啓徳空港拡張にともなう九龍城砦の破壊などについて詳しく書いている。この研究之三 が先に出版された『粉嶺』にあたる。中環のOliver'sに寄りタンカレーのジン一瓶購う。帰宅。ドライマティーニ一杯。山菜の炊き込みご飯などで夕 食。佐藤優氏の『国家の罠』読む。ウオトカのライム割り飲む。

三月十八日(土)午前中はジャスコからの食料品のうち水物などの配達待ち、というのは口実で、さすがに昨晩の、というより今朝までの深酒に朝寝貪る。今週 のたまった新聞まとめ読み。16日の蘋果日報で蔡瀾が確か二年前に香港国際映画祭で上映され香港で評判になった“The Barbarian Invasions”を面白い映画、と紹介。紹介が遅いのは許すが、随筆が徹頭徹尾、その映画の筋の紹介だけ。これのどこが随筆なのだろう。嗤われて当然 の随筆だが本人が開き直っているから。その最低な随筆の右隣に陶傑氏が「給我一個報告」という随筆を書いている。秀逸。日本でいえば日本航空のように何か とトラブル続きのKCRC(九龍広東鉄道)での上層部のクーデターを論い年収1億円を越える高官らにどれだけのマネージメント能力があるのか、と嗤う。彼 らにとって何かにつけ出来る判断といえば部下に「レポートをすぐに提出するように」の一言で、あとはトラブルについて独立調査委員会を成立させ、その結果 を待つことだけ云々と揶揄。新聞読みも昼に至り、午後も九龍の馴染の風呂屋に按摩の怠惰なる一日。晩に所属するランニングクラブで定例会あり銅鑼湾の四川 料理屋満江紅。一昨年の秋にはTrailwalkerにて 100kmを一緒にあるいたI君夫妻の送別会でもあり。四川火鍋。さすがに終わって大人しく帰宅。
▼16日の信報で曹仁超氏が連載の投資者日記に中東の株式市場に対しての懸念をば買いている。ドバイの金融市場についてこの日剰に書く必要もない気もする が、この日剰を読んでいる人にはドバイに関心高き人も少なからず。02年1月から06年1月までの四年間での平均株価の上昇はエジプトが1100%、ドバ イが630%、サウジアラビアが600%とまさにバブル。それがドバイは指数で見れば昨年11月9日の1267をピークに現時点で611まで下落、五カ月 での下落率は52%、サウジも2月25日の20634から14900まで28%の下落。2000年3月の米国のITバブル崩壊直前に米国での上場企業の株 価総額は米国のGDPの1.83倍だったそうだが昨年のサウジの同額はGDPの4倍に達しておりサウジ企業が計画している紅海またぐ大橋の建設には30億 米ドルの資金調達が必要だが、この企業のP/E(株価収益率)は44倍にまで膨れ上がっていたりもする。曹氏はサウジの株式市場では28%の下落でもまだ 足りず50%かそれ以上の下落でようやく現時点のサウジの体力に見合う、としている。
▼数日前のIHT紙にThe New York Times紙の記事“High-wattage fight over Hong Kong”という香港の電力事情の記事あり。李嘉誠の香港電力とKadoorie家の中華電力(CLP)が棲み分けする香港の電力供給に中国の電力事業寡 占する李鵬(元首相)の一族が虎視眈々と介入目指し李鵬の娘の李小琳も積極的に香港にての事業展開。揚子江の三峡ダムとて本当に治水が必要なのか李鵬一族 が電力事業するために巨額の資金動くダム建設が必要だったのかよくわからず。ダム建立の結果、中国の大地にどれだけ自然環境の変化与えたか結論は将来子孫 に大きな影響与えよう。それに比べれば香港での電力事業など小さい話か。
▼日本の新聞が立川の自衛隊官舎での反戦ビラ配布に関して、その逮捕から裁判までどれだけ熱心に報道しているか、また国民の関心がどれほどのものか、全く 期待もできないが(日本の国民の実質識字率は5%、という話が佐藤優『国家の罠』に出ているがこれについてはまた別に書こう)、SCMP紙(16日)に David McNeill記者が日本のこの危険な状況について、ほぼ紙面一頁大を使って報道。日本では反戦という、世界で普遍的な市民運動について過剰な警備がさ れ、反戦運動に積極的な市民がテロリストのように扱われ、司法もどこまで中立に市民の人権を守るのか、日本の平和なような実は異常さについて。
▼先日、日剰に天皇皇后両陛下による三宅島訪問で明るい島民が両陛下が「こちらに来るとは思ってみませんでした」と語っているのに字幕には「こちらに来ら れるとは思ってみませんでした」と言い換えられた事。NHKのご質問窓口にメールして返事もこないので忘れていたら「比較的簡易なご意見・お問い合わせ (再放送の問い合わせ・出演者や音楽の問い合わせなど)につきましては、メールにて回答していますが、それ以外の場合は、お手紙などで回答しています」だ そうで「「ニュースの字幕」について、ご意見をいただきましたが、お手紙にて回答申し上げますので、誠に恐縮ですが、(富柏村)様のご連絡先のご住所をご 連絡い ただければ幸いです」とNHK視聴者コールセンターからメールあり。さすが皆様のNHKでご意見、質問には丁寧にお答えいただけるそうな。

三月十七日(金)日系スーパーで食材購い一旦帰宅ののち晩に北角の寿司加藤。 週明けに帰国されるI氏との送別、と某氏に誘われる。Braemar Hillの、その某氏宅でも夫人が別の方の送別会をしており(この時期、送別会多し)そこに合流。早めに散会。数名の方をタクシーで送り、その足で銅鑼 湾。バーS。静かな晩でつい長居してサントリー角でハイボー ル三杯。ご亭主にオールドパーのハイボール勧められ一杯。オールドパーというとどうも田中角栄愛飲で目白御殿の印象強し。遅更にふらりとバーY

三月十六日(木)早晩に百年ぶりにジム。トレッドミルで小一時間走る。帰宅してボムベイサファイアでドライマティーニ。雑煮を食す。いろいろ机上の片づけ もの。書類だの資料整理。
▼明日の産経抄……が転載できるはずもなく築地のH君から「明日の産経抄(予想)」が送られてくる。いかにもありそうな内容。
アジア最強を自負していたはずの日本野球が、WBCで韓国に敗れた。▼メジャーリーガーが参加していない、審判の微妙な判定があったなどなど、いくつかの 理由は考えられるのだろうが、予選を含め2戦2敗。言い訳のできない完敗である。韓国野球にあって、日本に足りないもの、それはなんだろうか。▼テレビ観 戦していたコラム子にも、韓国選手のひたむきで必至なプレーぶりが伝わってきた。残念ながら精神力において、彼我に圧倒的な差があったといわざるをえな い。38度線をはさんでいまだ北との戦争状態が継続する韓国と、暖衣飽食をむさぼり平和ボケの夢にひたる日本。考えていた以上に社会の退廃が若者の精神を むしばんでいる。▼この屈辱を奇貨として、一刻も早くわが国の社会の再建に着手すべきである。これは一人プロ野球界の問題にとどまらない。韓国にあって、 日本に足りないもの。それは、たとえば徴兵制である、とはいえないだろうか。
▼「つくる会」元会長田中英道センセイによる小熊英二批判(こ ちら)。「この書を出した小熊氏は、『〈民主〉と〈愛国〉』などを書いた学者であるという。部厚い本なので斜め読みしかしていないが」とは、正 直。小熊先生が共産党の「民主愛国路線」
を称揚してるだの氏の党派性非難のトンチンカンぶり。

三月十五日(水)多忙極まれり。その日の新聞数紙読むも能わず。ふと朝日新聞社会面みればライブドア粉飾決算の記事。ライブドア関連記事は殆ど読まぬが 「香港舞台に原資作り」という見出しに、ライブドアで久々に闇金融都市として香港注目集めたことから、つい記事を読むが、何が朝日の記事で嗤えるかといえ ば記事の書き出しで
「アジアの金融センター」といわれる香港の中心地・香港島北岸。超 高層ビルが建ち並ぶ一角の56階建てビルの中に……
と陳腐な文章で、何より可笑しいのは「香港島北岸」。何処かしら。普通なら
アジアの金融センターといわれる香港の中心地・中環(セントラ ル)。
であろう。確かに地理的には中環は香港島北岸ではあるが、どうも響きが違う。何より中環を香港島北岸という言い方がないこと。これは日本人が年に百万単位 で来るのだから日本でも常識の範疇。何よりも書き手(記者とは言わぬ)が中環をば香港島北岸とまで言えるのは土地勘があるからで、それなら余計におかしな 表現。香港島でもリパルスベイやスタンレーなどはSouth Sideと言われ、我も日剰で「南岸」と書くが、これはサウスサイドという言葉に明るい太陽と海という、米国のウエストコーストやイーストコーストと同じ く「言葉にイメージがついている」から。倫敦のテムズ川南岸のサウスバンクと同じ。セーヌ川から「サンジェルパン・デ・プレからセーヌ川を渡ると北岸には サマリテンヌ百貨店が……」なんて書き方でお洒落っぽいのだろうし、香港でいえば象徴的なるヴィクトリアハーバーでいえば中環は寧ろハーバー南岸かもしれ ぬ。繰り返すが中環を香港島北岸なんて言い方は、ない。
▼歴史教科書の「つくる会」も教科書の全国流布をまえにすでに内紛活発。ついに西尾幹二センセイまで脱退の幸甚。まるで左翼の内ゲバの如し、と見 る向きも多いが右派もこれだけ一方的に強くなれば最早「右だから」というだけじゃ一致点を見いだせず。かたや左翼とて中核も革マルも仲良く並んで同じ集会 に出ている時代。内ゲバの余力なし、と武蔵野の市民運動家D君より。
▼ふだん余の日剰にて他人の言動は紹介せぬことを原則としながらも築地のH君からの話にかぎってはかなり紹介するのは先ずその内容が興味深きこと、亦たH 君自身が自ら話題公開する場をもたぬゆゑ、この見識をばせめて紹介できれば、と。H君の言説の他には余がかなり興味あるのが久が原のT君の日記(未公 開)。で築地のH君より神戸地裁の「さい銭2円「大切な浄財」窃盗男に実刑」という判決教えられる。
寺のさい銭箱から二円を盗んだなどとして、窃盗罪などに問われた神 戸市兵庫区、無職の被告(27)の判決公判が十四日午前、神戸地裁であり、裁判官は被告に懲役一年十月(求刑懲役三年)を言い渡した。被告はほかに乾電池 を盗んだ罪や、シンナーを所持、吸引した罪でも起訴されており、裁判官は「結果的に金額は二円にとどまったが、被害者からすれば参拝者から提供された大切 な浄財であり、被害額のみをとらえて、その違法性を軽視することはできない」と述べた。判決によると、被告は昨年十月二十四日午前六時ごろ、同市須磨区の 須磨寺大師堂のさい銭箱から二円を盗んだ。(神戸新聞記事)
と。社会面で読み過しそうな判決にすぎぬようだが、H君指摘するは、まず「被害額のみをとらえて」って裁判なのだから何よりも被害額は争点のはず。かりに 賽銭箱に2億円はいってたら懲役1年10カ月じぢゃ済まぬ話。被害額以外の要素を反映させるなら「さい銭泥棒は、ふつうの泥棒より重罪」という法律上の根 拠が要るはず。「違法性を軽視」せずとも、では賽銭以外のところから2円盗んでも同じ量刑なのかどうか。かりに2円拾って交番に届けても巡査が遺失物とし て取り扱ってくれるかどうか。この論旨でいくと「2円だけど、さい銭泥は重罪だ」と言うようなもの。賽銭だろうが財布だろうが法律上の罰は盗んだ金額や被 害実態に応じて科せられるべき。このロジックが通れば「ホリエモンが粉飾決算といったって、どうせ被害を受けた連中は欲得ずくの投資家連中なんだから、違 法性は低いでしょう」ということも可。この裁判官が「心の問題」と法律論を混同してしまっている危険性。
▼同じく築地のH君より、余はWBCと言われても何のことかわからぬほどスポーツ無知であるが、今回のその職業野球の国際大会(主催者が米国で開催地も米 国)の日米戦で米国に意図的な誤審?があり(審判の米国側)米国隊をば救済。これにかなり我が国の世論も憤然としたそうだが、H君が思い出したのは大相撲 の準場所。仙台での準場所といえば夏巡業の間、宮城県スポーツセンターで7日間の興行。主催は河北新報社で優勝者には河北から優勝旗と賞金が出る。優勝争 いは決まって青葉城と青葉山の両青葉。北の湖とか輪島に青葉城勝って当然。地元の勧進元が地元力士に勝たせるための興業で観客ももちろん知った上で郷土力 士の奮闘に大喜びの花相撲。輪島が横綱相撲したらドッチチラケ。これで考えれば米国主催の野球試合で、もさもありなむの話。ところでこの「インチキ」に我 が国の世論が怒るのは当然としても実は朝鮮日報はきわめて日本に同情的。恥知らずなアメリカのふるまいを非難。こういう場合、韓国メディアは日本を「同じ アジアの仲間」「同胞」としてくくってくれる事実。荒川静香の金メダルも新華社は「アジアの誇り」という見出しで報じたこと。これは日本人には決定的に欠 けてる視点。韓国や中国に対して「同じアジア人」という仲間意識をもってる日本人、メディアがどれだけあるか。むしろ小泉三世を見るまでもなく日米中とい う枠なら「日米−中」だし、日米韓なら「日米−韓」。右翼をなのりながら親米で反アジアは本居宣長以来の日本の伝統思想か。

三月十四日(火)多忙極まりなし。客人あり晩に尖沙咀の金島燕窩潮州酒家に 食す。
▼朝日新聞の中国も真っ青の社内ネット検閲(毎 日新聞)。「左」は結局やることが同じか、と嗤われるだろうが。

三月十三日(月)諸事に忙殺され遅晩に至る。名前失念の年代物ポートワインをグラスに一杯。湯につかりながらBusiness Traveller誌読む。
▼Business Traveller誌3月号読んでいれば新嘉坡のチャンギ空港の新ターミナル紹介されるがチェックインカウンターの余りの簡素ぶりに何かと思えば格安航空 会社専用のバ ジェットターミナルという施設。搭乗客の空港使用料はチャンギ空港の場合、通常S$21(US$12.89)だがバジェットキャリアにとっては全 てのコスト削減が徹底されるべき、と廉価航空専用にチャンギではこのターミナル開設。使用料はS$13(US$7.98)と格安。そのうちS$6は空港で の保安対策費でこれはバジェットでもセキュリティが甘くなるわけでなく同額。つまりサービス料が通常ならS$13が格安ではS$7と凡そ半額で、当然のよ うに施設にも差があり、ターミナル内にはエレベータ、エスカレータ、それに飛行機搭乗用のエアロブリッジもなし。ターミナル内の店々もバジェットキャリア の客は購買も少ないと読んだかテナント料も半額だそうな。
▼自民党政調会長中川秀直君智利訪問にて智利政府内相と会談しチリで拘束中のフジモリ元ペルー大統領について「公正な待遇を受け、適切な司法手続きを経た 上でペルー政府に引き渡すかどうかの決定を受けることが重要だ」と指摘。内相曰く「行政府は司法府の判断には中立だ。司法府は法にのっとって判断すると思 う」。中川君、日本政府としては見守るのが基本的立場としながらも「フジモリ氏が日本
国籍を有している観点から関心を持っている」と伝えたという。築地のH君曰く曾て中共政府よりの留学生会館事件裁判への「要望」に対し日本政府「我が国は 三権分立であるから、行政府が裁判の判決に関与することは不可能」とはねつけたこともあり。それに、いつから日本政府は成人の二重国籍を認めるようになっ たのか。フジモリ君といえばかねてから噂の支援者の女性と結婚とか。この女性についてはかつて日剰に述べた通り。

三月十二日(日)朝寝貪る。自宅の窓から外は一面の深い霧に何も見えず真っ白。午後百年ぶりにジムで筋力運動と有酸素運動を各一時間。昨晩の深酒の所為か 汗も出ず。ホンハムの蔡瀾美食坊の正斗にて雲呑麺。三、四軒 の飲食店が改装中。フェリーで北角に戻り帰宅。晩にT夫妻来宅。軽く食してからの甘味三昧。そもそもこの甘味三昧のきっかけは「リリーの桃缶」で、何かの 話で関西人の間では子どもの頃から馴染みのあるリリーの桃缶は、我々東国人は誰もそれを知らず。関東なら贈答品といえば果物の缶詰めは明治屋。で関西出身 のT君が一月に帰国となり関西からリリーの桃缶など送ってくれたので、この話のきっかけとなったT夫妻ともどもリリーの桃缶を食そう、となった次第。でT 夫妻もリリーの果物缶詰めは関西は著名だが関東人が知らなかったのでリリーはてっきり関西企業か、と 思っていたのだが開けてみれば東京都大田区平和島に会社あり。東京企業なのになぜ東京でリリーの缶詰めが知られていないのか不思議。だがちょっと調べてみ ると明治屋とも製造元では関係もあるようで(こちら)余計に よくわからず。でZ嬢が大橋歩さんの『アルネ』という雑誌 で缶詰めの白桃にカッテージチーズをかけて食べるのが大橋さんのお気に入り、とあったので、とカッテージチーズで食べてみる。うーん……まだ慣れない味。 ただ果物缶詰めのあの甘さが苦手な人には食べやすい鴨。ほかに鶴屋吉信の京観世だの、某所でいただいた源吉兆庵の紅白饅頭、それにリリーの缶詰めと一緒に いただいたみつ豆の缶詰めにZ嬢手製のアイスクリームと白玉、よもぎ団子に小豆までのせて……と甘いもの苦手な人にはぞっとするほどの甘味三昧。
▼一昨日、佐藤優氏の文章でルカ傳福音書の「さらばカイザルの物はカイザルに、神の物は神に納めよ」という言葉引用したが陳日君の枢機卿への任命で中国の 天主教愛国会副主席が陳日君の反共姿勢を批判し「我々の特色ある社会主義制度もいわば天主から授けられたもの」と。これを蘋果日報の論説主幹廬峯氏が中国 の天主教は「カイザルの物はカイザルに、神の物もカイザル神に納めよ」と指摘。言い得て妙なり。

三月十一日(土)朝寝貪るつもりが七時には起きてしまい机まわりの諸事片づけ。浴室の電気関係の修理、冷蔵庫の配達あり昼すぎまで在宅。午後少し今週残っ た仕事片づけ。九龍の風呂屋で按摩。ペニンスラホテルのバーに ハイボール二杯。石原千秋『国語教科書の思想』新書なのでさっと読了。Y女史の帰国間近でZ嬢と三人で「尖沙咀の」Jimmy's Kitchenに晩餐。ドライマティー ニ、白のハウスワイン一瓶、それに赤ワインをグラスに一杯。タクシーで銅鑼湾。バーSもY女史は今晩が最後か、と訪れる。ハイボール一杯。マッカラン の時代物一杯賞味。Y女史のところにN氏より電話入りN氏宅でも送別会の最中だそうで、私らも連れられ其処に合流。睡魔に襲われ意識失いそうになり帰宅。
▼石原千秋『国語教科書の思想』ちくま新書。タイトルからすると右傾化する教科書をば批判する内容のようだが著者はそういう意図で作られている教科書を 「そう作られているものをそう作られていると批判しているだけ」では批評にならない、と明言。むしろ教科書をテクストとしてそこに隠された意図を読み取る ことが大切。というわけで国語教科書の問題は、道徳のように、教材の内容を「正しい」こととして子どもたちに擦り込むもので、与えられた教材を「批評的に 読む」ことは許されない。何気ないほのぼのとした話で
きいちゃんは、とても明るい女の子になりました。これが、本当のきいちゃんの姿だったのだと思います。
と終わる小学六年の国語の題材で、「暗い子ども」はいけないのだろうか、と著者は考える。暗い子どももいることを忘れてはいけない、のだが、学校では皆 「明るい子ども」でいなくてはいけない。学校ではこうして「正しさ」が教えられてゆく。学校といえば、芸人アン=ルイスの出たアメリカンスクールが昔は軍 隊の施設で、それが病院となり、学校になったそうな。確かにフーコーが聞いたら膝を叩いて喜びそうな話。道徳用副読本『心のノート』のレトリックも興味深 い。小学五・六年生用に「権利と義務ってなんだろう?」という文章がある。
たとえば、やるべきことをやらずに自分の権利だけを主張する人がい たとしたら、あなたはどう感じるだろうか。あるいは、他人の権利は認めないのに、自分の権利を押し通そうとする人がいたら、あなたは、なんと言うだろう か。このとき、あなたが感じたこと、言おうといたことに「権利と義務」について考えるヒントがあるようだ。
これは「権利が確立してはじめてそれを護るために義務が生じるのであり、自由が保障されてはじめてその自由にたいする責任が生じる」(入江曜子)のだが石 原千秋はこのレトリックの杜撰さを述べる。なぜ、こんな「厭な奴」を例に出して「権利」について考えなければならないおうだろうか。権利がダメなのではな く、こいつがダメはだけの話、という著者の指摘はまったくその通りであるし、この文章のあとに
たとえば、やるべきことをきちんとやったうえで自分の権利を主張す る人がいたとしたら、あなたはどう感じるだろうか。あるいは、他人の権利も認めたうえで、自分の権利も主張しようとする人がいたら、あなたは、なんと言う だろうか。このとき、あなたが感じたこと、言おうといたことに「権利と義務」について考えるヒントがあるようだ。
という文章が続いていたとしたら、「あなた」の答えは同じだろうか、と言う。さらに
たとえば、やるべきことをやらずに他人の義務だけを主張する人がい たとしたら、あなたはどう感じるだろうか。あるいは、自分の義務は認めないのに、他人の義務を押し通そうとする人がいたら、あなたは、なんと言うだろう か。このとき、あなたが感じたこと、言おうといたことに「権利と義務」について考えるヒントがあるようだ。
と書かないと公平ではない、と。御意。個人に義務だけを押しつける「わたしたち」を内面化した「一人一人」というレトリックがいかに危うい思想になり得る か、ということ。

三月十日(金)薄曇。一つ大きなご公務もどうにか山場を越え一つ大きな行事にも参加して一段落。早晩にふと時間が空きバーYにハイボール二杯。薮用済ませ帰宅。常温の菊正宗を、海苔と麩の 汁物、胡瓜一夜漬け、それに親子丼の具、を肴に飲む。蕎麦屋での天ぷら蕎麦の「ぬき」はあれのどこがいいのかわからぬが(高橋義孝先生が何故にあのような もので酒が飲めたのかが不思議)出来立ての熱々の親子丼で鳥肉のあの卵とじで酒を飲み、具の汁のしみたご飯だけをさっと最後に〆で食すのもなかなか。カツ 丼でこれもいいかも。食 後、ふと白百合を葉書に描く。絵筆などとったの何十年ぶりか。岩波『世界』四月号読む。
▼『世界』四月号で、起訴休職外務事務官の佐藤優氏の「民族の罠」なる我にはいささか難読な連載終了。最終回は圧巻。四年前の宗男議員と佐藤氏の逮捕が、 小泉政権がポピュリズムをば権力基盤とするため地方や社会的弱者に泣いてもらうと公言できぬため、政治権力をカネに換える汚職政治家(宗男)という表象が 必要となり宗男議員をば放逐することで中央財源の地方への分配が削減されたのが、この逮捕が国策捜査れあったとすれば、今回のホリエモンの逮捕も新自由主 義の行き過ぎが勝ち組と負け組の格差拡大で硬直化し流動性がなくなる=経済の停滞があるための行き過ぎ抑制のための意図的な逮捕、と。佐藤氏は山川均の ファシズム論を引用し、現状では新自由主義的な小泉自民党と前原民主党が一つの巨大ファッショ政党となることで、むしろこれに与せぬ小さな政治的諸派が国 会や地方、学界や企業、農家にまで生まれ、それが連帯することで対抗勢力になることに期待する。さらに愛国心が近代以降の社会の産業化の中で生じた現象で あり、その愛国心の前提として人間は近代においては民族となるエトノスをば生み出す連係、関数を有しており、日本人を含め人々はその関数態としての民族と いうウイルスに感染し、イスラム原理主義やアナーキズムも民族主義と同じく普遍的理念を追求する別のウイルスであるとする。そこで重要なことは「自民族が もつウイルスが周囲に危害を与えることを避けることを真剣に考えるべきこと」と。そして国家については国家は産業社会においては必要悪であるが「小さな政 府」こそ警戒すべきで、それは小さな政府こそ政府の機能が警察、軍事、外交など国家の暴力的側面に集約されるため。総じて、産業化、ナショナリズム、近代 国家、資本主義が京成する一つのシステムの中で大切なことは、国家や貨幣といった悪と距離を置きながらそこそこの付き合いをすることの大切さ、としてルカ による福音書(第20章20〜26節)を引くのだ。(あえて文語訳をここでは用いる)
かくて彼ら機を窺ひイエスを司の支配と權威との下に付さんとて、そ の言を捉ふるために、義人の樣したる問謀どもを遣はしたれば、其の者どもイエスに問ひて言ふ『師よ、我らは汝の正しく語り、かつ教へ、外貌を取らず、眞を もて神の道を教へ給ふを知る。われら貢をカイザルに納むるは、善きか、惡しきか』イエスその惡巧を知りて言ひ給ふ、『デナリ(デナリオン銀貨)を我に見せ よ。これは誰の像、たれの號なるか』『カイザルのなり』と答ふ。イエス言ひ給ふ『さらばカイザルの物はカイザルに、神の物は神に納めよ』かれら民の前にて 其の言をとらへ得ず、且その答を怪しみて默したり。
で筆者は敢えて最後に日本国憲法の擁護から北畠親房の神皇正統記まで話が進むのだから、すごいこった。

三月九日(木)曇。諸事に忙殺され疲憊帰宅の途、何を考えたかといえば冷蔵庫壊れ「氷がない」こと。さすがに氷なしのドライマティーニを飲む気もなく、ふ と冷蔵庫に入れっ放しで今は室温になっている缶入り炭酸水ありと思い出す。自宅では珍しくこれでサントリー角でハイボール飲む。ハイボールはもともと、氷 など気安く入手できぬ時代にウィスキーをソーダで割って飲み始めたもの。つまり余の好む「ハイボールの氷なし」で而もソーダ水は常温でよい。文藝春秋四月 号読む。皇太子夫妻を「苦悩の決断」と総力特集。一読すれば「苦悩の決断」など特段何も書かれておらず。そっとしておいてあげることこそ敬意。それをまぁ ネタにして不敬甚だし。林真理子だの櫻井よし子だのもう見飽きた御託並べうんざり。そのなかで特集とは別に阿川弘之の巻頭随筆が阿川先生女帝と女系の区別 もつかぬと断りながら三笠宮の殿下や櫻井よし子の言葉に神武天皇をば実在と見てからる皇国史観に首をかしげながら神武=イワレビコから遡れば曽祖父のニニ ギノミコトも実在で、ニニギが天孫と呼ばれるのは天照大神の孫だから、ならアマテラスが女神なら神代の皇統譜は(しいては万世一系の皇室も?)みんな女系 じゃないか、と。この文春四月号、「日本一のイエスマン」武部勤(ブブキン)の正体、が面白い。武部某がなんと三木武夫先生の書生だったとは驚き。北海道 の斜里のラーメン屋の息子が早大出て地元実業家のコネで三木先生の政策研究所で「ぱしり」役。まったく使い物にならず、が中川一郎との出会いで宗男秘書が ついて道議に当選。が国政への進出では三木派からの出馬と寝返り、実際には渡辺ミッチーの軍門に降る。で加藤の乱の頃には山崎派の幹部として小泉攻撃の急 先鋒。それが今度は小泉に靡き、と確かにここまで節操ないと立派と感心するばかり。
▼外相麻生某復た台湾を国家と発言。台湾が実体として国家であることなど中共とて実は理解。ただ「国とは扱わない」が大人の約束。それを敢えて台湾が国家 であると公言することなど怒られるの承知で子供が障子に穴あけるようなもの。幼稚。

三月八日(水)先学命日。掃墓もかなわず。昨晩、自宅にまだ蕾が咲きかけの白百合あり。Z嬢から父の命日に、と。一周忌法要は無事済んだが命日にまたあら ためて父のこといろいろ思い出すばかり。せめても、と毎日、父の遺影に線香をあげる日が続いたが鳩居堂の線香のかぐわしさもすっかり書斎に染みて、の一 年。帰宅すると十年酷使の冷蔵庫故障。アース関係を直した経緯もあり、これ以上修理も危険かと買い替えの要あり。「あ、ロック用の氷が……」と最初に心配 した酒飲みの性。カレーライス。少し溶けかけの氷でマッカランをロックで。連日諸事の忙殺される日が続き食後意識失うが如く就床。
▼従兄弟のS兄より高崎線、宇都宮線の普通列車に連結のグリーン車好評に気を良くしたJR東日本、来春から常磐線普通列車にもグリーン車2両連結、と知ら される。而も1月からしばらくグリーン料金を取らず。缶チューハイ片手にオジサンたちがくだを巻く常磐線特有の風物詩は消えお行儀の良い線になってしまう のか、とS兄。「赤電」といっても今の若い人にはわからぬだろうが常磐線にはどうも似合わぬ普通列車のグリーン車。あれはやはり東海道線、横須賀線で鎌 倉、藤沢への風情というもの。
▼築地のH君より東京新聞の記事に廿年前に渡部恒三氏自民党国対委員長務めた当時の自民党の布陣の紹介あり、と。竹下登首班で官房長官・小渕恵三、副長 官・小沢一郎、副総理・蔵相が宮沢喜一で外相に宇野宗佑。党側は幹事長・安部晋太郎、幹事長代理・橋本龍太郎、総務会長・伊東正義、同代理・森喜朗、政調 会長・渡辺美智雄、同代理・加藤紘一で国対副委員長に小泉純一郎、谷垣禎一、古賀誠、高村正彦、亀井静香、鈴木宗男という豪華な布陣。国対副委員長が今の 自民党などの有力者で「人材養成所」の役割。この廿年で自民党がどうだけダメになったか。
▼作家の辺見庸氏が「小泉時代とは」と語るは(朝日新聞)「一犬虚に吠ゆれば万犬実を伝う」という後漢の諺をば引用し「私の興味は「一犬」の正体や小泉純 一郎という人物の如何にあるのではなく、「万犬」すなわち群衆というものの危うい変わり身と「一犬」と「万犬」をつなぐメディアの功罪である」と述べる。 群衆の素早い変わり身、それは変身に政治的な成熟ではなく過剰に情緒的であり、メディアはそれに制動の役割を果たすどころか「感動した」だの「ぶっ壊す」 だのとエモーショナルな言葉を重ね(とても幽玄なる哲学の持ち主には見えぬが)群衆にとっては明快で小気味よく支持率8割の首相に批判的な番組づくりは不 可能に近い、と寧ろ任期に拍車をかけた現実。現在の出来事が記憶すべき過去(歴史)を塗り替え、あざとい政治劇を観る群衆は分析的思考を失い歓呼や嘲笑が 伝染する。辺見氏はさらに小泉憲法解釈の摩訶不思議として03年の自衛隊イラク派兵の閣議決定後の記者会見で小泉三世が派兵の根拠を憲法前文に求め前文を 読み上げたこと。また今年の年頭記者会見では靖国参拝の根拠をば憲法19条(精神と心の自由)に求めたが憲法20条の信教の自由と政教分離は何処にいった のか、後世の有り様を大きく左右しかねない憲法の意図的な誤用。一犬が吠えるのはいいが万犬がそれに倣うのか、「ファシズムよりましというだけで民主主義 ではない」というフランスの作家レジス=ドブリの言葉。
▼朝日新聞ばかりの引用になるが丸谷先生の「袖のボタン」について築地のH君より。昨日、余はこれを揶揄したが、H君にしてみればローティの「現在わが国 (米国)の犯している悪はわが国の本性ではない。も ともと合衆国は歴史を持っているが本性は持っていない。合衆国は試行錯誤をしながら自己形成をつづけてゆく」は「つくる会的な歴史観」への皮肉ではない か、と。丸谷先生の「ローティ教授は、潔白と思いこんでいた過去がずいぶん汚れていることに気づいたとき、それなら未来を立派なものにすればいいし、また それしか手はないと考えた。そこで本性などなくて歴史があるという発言になる。つまり歴史観が格段に深まったわけだ」という記述を解釈すれば「つくる会」 は「日本人は常に清く正しくたくましい」という本性を仮定するために過去がずいぶん汚れているという現実を直視できず、それ故に過去を直視できないから未 来を立派なものにすることができぬ。つくる会の歴史観が決定的に浅いこと、そしてそれがなぜ日本社会にとって害毒であるかが実に簡潔に論理的に示された一 文だ、とH君。生まれて初めて丸谷先生の記事を切り抜いた、と言う(笑)。

三月七日(火)曇。どんよりと雲たち込め湿気に「地滑小心」、暑くはないが湿気にじんわりと汗、シャツがすぐよれよれに、の香港らしい、春というのは陰鬱 なる春。先日W君にいただいた神戸の津 曲のプルーンパイを朝食に。幸せ。諸事に忙殺され晩に至る。Glenfiddichを少しの水で割って一飲。帰宅。タンカレーのドライマティーニ を一杯。夕飯がビビンバ、で真露を少し。そのビビンバのまえに茄子の味噌汁。その味噌汁には日本橋みかわの天かす。汁物で酒を飲むのが、池波正太郎の梅安なら浅蜊汁であ ろう、いちばんの贅沢。食後に久が原のT君にいただいた人形町水天宮の寿堂の 黄金芋で薄茶。四月の香港国際電影節の映画パンフレットながめ作品の吟味。すでに通し券購入し今年も三十本余の映画鑑賞か。映画といえば第78回アカデ ミー賞にて最優秀作品賞の有力候補といわれた“Brokeback Mountain”の李安監督が最優秀監督賞受賞。邦題は「ブロークバック・マウンテン」だがどれだけの人が意味を理解しようか。ちなみに中題はずばり 『断背山』とわかり易い。日本語なら「絶望の山なみ」だろうか(ダサい)。でこの映画「若いカウボーイの同性愛を正面から取り上げた」そうだが(朝日新 聞)、同性愛物で最優秀作品賞候補まで残れたのは、ひとえに「監督が普通の人」だったこと。これが同じ同性愛物でも『藍宇』の關錦鵬との違い。で作品賞ま で期待されたのだが、やはり「ホモの壁」か(養老先生の『バカの壁』が売れたが『ホモの壁』という新書もいい鴨)。だが、思うに、最優秀作品賞の最有力候 補といわれたのが落選は、「ホモの壁」というより、この作品が「若いカウボーイの同性愛を正面から取り上げた」ことよか「米国の(マールボーロに象徴され る)男性像のホモフォビアの内面を取り上げた」ことではないかしら。ここを見せてしまうと米国がいちおう保っているはずのもの(それがなんだかはよくわか らないけど)が崩壊してしまうこと。で「ホモじゃない監督」にホモ映画での監督賞を授けることで、いちおう解決、と。
▼日本人初の宇宙旅行者の榎本さん(朝 日)。元IT会社役員の若手投資家。ほんと10年どころか7、8年前は、まだ香港で地元在住の日本人相手にインターネットのプロバイダーしてい らっしゃったはず。地味な仕事で我がオフィスにもネットのメンテでご本人と、ある意味当時有名になったT君とで来訪もあり。その事業は「香港テレコム(当 時)や、日系ならKDDIだのソニーに食われるだろう」と言われていたのが某IT会社、ってこの時期、話題はアソコしかないが、に取り入りあっという間に IT長者。堀右衛門の香港でのマネーゲームに榎本氏も深く関わっているといった噂もあり(こちら)だが、ご本人は宇宙 へ。お見事。
▼晩のNHKでニュース眺めておれば天皇皇后両陛下が三宅島訪問。明るい島民が両陛下が「こちらに来るとは思ってみませんでした」と語っているのに字幕に は「こちらに来られるとは思ってみませんでした」となぜ故意に言い換えるのか。敬語使わねば敬意ないわけぢゃなし、寧ろこの島民の場合かなり親しみある言 いっぷりであったのに。
▼中国全人代。副首相の小泉靖国参拝批判に対し小泉三世「靖国は外交カードになりませんね!」と。この一言の潔さに「すかっ!」とする国民のどれだけ多い ことか。これに対して例えば憲法学の樋口陽一先生が、小泉三世が総裁選挙に立候補する際から靖国参拝公約に掲げ、つまりこの参拝を政治の問題として自ら敢 えて提起しながら、参拝すると今度は憲法十九条持ち出し総理大臣にも「心の自由」があるとする点を指摘、この小泉三世の論理の矛盾は「内閣総理大臣という 最高権力者にかけられている憲法の制限を取り払う根拠に、もともとは権力者を縛るはずの憲法を持ち出していること」。最高権力者が「心の自由」を持ち出 し、良心に基づき行動しようとする個人の意志(教育現場での君が代、日の丸への対応など)は蔑ろにされる。つまり今の日本では、近代が前提してきた「権力 を制限して個人の自由を守る立憲主義」と正反対にあること。また公権力を持つ人の「公の私化」を樋口先生は憂う。御意。この考えこそ正論である、と思える のだが、いまの国民には小泉三世の「靖国は外交カードになりませんね!」のほうがスカッとしてわかりやすいのだろう。
▼朝日新聞の丸谷才一の連載「袖のボタン」が「共和国と帝国」という題で米国を取り上げている。バリントンの『アメリカ思想の主な潮流』取り上げ(ところ でバリントンを1927〜30って、いくらなんでも三歳では書けない)、で丸谷先生はこの、米国はローマ共和国同様に腐敗した金権国家だが独裁国家ではな いから帝国には非ず、今でもまだ立憲民主国であるし、帝国なら暴君の暗殺しか救済なないが米国では悪い大統領は選挙民の判断でやめさせることができる、 と。00年の大統領選挙でももしラルフ=ネーターに投じられた300万票をゴアが得ていたらブッシュの当選はなかったのだ、と丸谷先生。思わず失笑。丸谷 先生も、この「たられば」に失笑する読者は多いことだろう、とわかっているようで、さらに「現在わが国(米国)の犯している悪はわが国の本性ではない。も ともと合衆国は歴史を持っているが本性は持っていない。合衆国は試行錯誤をしながら自己形成をつづけてゆく」という別の学者の言葉を引用し、米国への期待 につなげる。お気楽。問題は、その試行錯誤続ける国民の総体的な民度が「ブッシュを大統領に選べる程度」であること。選挙結果で「たられば」は厳禁。結果 が全て。不正があっても不正隠蔽されるのなら、それが結果。而も一番の問題は、その試行錯誤を世界に何の影響もない19世紀の開拓国でやっているならいい が(アメリカ原住民にはいい迷惑だが)問題はその試行錯誤が地球をぶっ壊すほどの力をもっていること。そんな試行錯誤につきあわされることなどまっぴら御 免、である。だが敢えてそれに付き合おうとする首相を選ぶ同盟国もあり。南無阿弥。

農暦二月初七。驚蟄。巷には打 小人だの供物の類い路上にて燃やす人々少なからず。諸事忙殺され遅晩に至り夕餉逸す。二更にはもう食さぬ習慣もあり食欲も失せ帰宅してウイスキー 一杯飲みながら日本から運んだ購入済みの書籍廿冊ほど整理。『銀座百店』に太田和彦氏の「銀座の酒場を歩く」という随筆あり読む。銀座サンボア紹介。サン ボアといえばハイボール。まさに氏の語る通り「さっとグラスを置き、サントリーウィスキー角瓶を一定量入れるやいなや、カウンター内側につけた栓抜きでウ イルキンソン炭酸の栓をポンと抜き、瓶を真っ逆さまにしてグラスに全部入れ、すっとレモンピール」である。サンボアは氏の紹介によれば大正七年に神戸の岡 西ミルクホールを源流とする大阪最古のバーで店名は北原白秋の「朱欒(ザボン)」に由来し果物のザボンの葡萄牙語Zamboaのはずが看板屋が切り文字の Zを裏返しにつけてしまいSamboaになった由。大阪のバーの気取らぬ雰囲気。常連の客が夕方の開店と同時に現れ持参の新聞をば広げ黒ビールをチェイ サーにシェリーなどくっと飲み、さっと帰る。「酒の話などしない」美学。御意。英国のバーの内装、スタンディングのカウンターはアームレストがあり、バー テンダーは糊のきいた真っ白なコート。ご主人の新谷氏は南サンボアとヒルトンプラザの同店に十年修業し堂島サンボアを後見人として北新地にサンボアを開 店。そして東都は銀座への進出。ウイスキーはサントリーの角にこだわる?という質問に「全然」と答える。東都でサンボアのハイボールが飲める幸福。

三月初五(日)快晴。朝六時に起きる。テレビつければフジの時事放談に中曽根さんとナベツネさん。お馬鹿な自民党執行部に日本を憂ふお二人。ホテルオーク ラは特定せぬと部屋に届く新聞は産経新聞。ホテルに対して廉価で卸しているとか。産経はあまり読む機会なき新聞でホテルに泊った時くらいいいのかも。日 剰綴り荷物つくりホテルを朝の八時にチェックアウト。素泊まりにもったいない気もするが曾ての高級ホテルも列強の進出のなかで老朽化目立つのか多少お安く もなり。ネットのホテル予約で見ればわかるが「笑ってしまうような俗なホテル」がオークラより高かったり。格式であるとか職員の丁寧さなど考えれば此処の ほうが格別。Z嬢と虎ノ門から日本橋経由で東西線の西葛西。かつて香港に在住の畏友W君のマンション訪れる。W君の最愛の奥さんS嬢が亡くなったのが昨年 の二月末。三月に先学亡くしご仏前に焼香する機会もないまま今日に至る。いろいろ昔のこと物語る。東西線にて日本橋に戻る。丸善の洋品部。丸善バーバリー のコートのボタンが割れていたので付け替えのボタン1つ購入。三百円。傘だの帽子だの見ていると欲しくなるのが怖い。日本橋高島屋。あまり時間もないの で、と向かった和装小物売り場の近くに京都の老舗福永念珠舗の 数珠づくりの実演販売。これがホントの数珠つなぎ、か。で、いつも腕にしている数珠の腕輪のゴム付け替えができないか、と思いお願いすると三十分でできま す、と余の手首の数珠を見られると「白檀ですね」と一言。数珠預け東西線で茅場町。天ぷらみかわ。此処ほどの天ぷらになると天つゆも塩もほとんど要らずに ホクホクの天ぷらを頬張れる。むしろ天つゆを少しおとした大根おろしを口直しに。一時間余の至福の時。それにしても正午の店明けにカギの字の狭いカウン ターに並んだ客が(しかも一人客多し)ご主人の天ぷら揚げる様を黙って見つめ、揚げられた天ぷらを頂く様が宗教行事の如し。あ たしらはお酒正二合でいい気分。黙々と正午からの一時間天ぷらを揚げきったご亭主がカウンターのちょっと奥に隠れショートホープに火をつけると、さっと若 衆がライターで火をつけたのが、ここまで毎日のことなのか、と感心するほど。天気よき日曜の午後、歩いて高島屋まで戻りゴム付け替え終わった数珠受け取 る。お代は結構ですから、また京都のお店にお越しください、おおきに、と。銀座線で虎ノ門に戻りホテルで荷物ピックアップしタクシーで東京駅。午後3時の 成田Expressで成田。快晴の空に墨東の街並み映える。空港着。キャセイパシフィック航空のラウンジにてきれいな夕日眺めながら麦酒数杯飲む。 CX505便。往路と同じ二階席最前列の80列席。機内食でデザートになる前にすでに熟睡で香港着。

三月初四(土)快晴。二日続けで三時間ほどの睡眠。自宅にいると何かと古い本だの父の遺品だの見始めると時間経つのも忘れ忽ち深更に至る。朝七時すぎに家 を出て妹の車に送られ母とJRの停車場。列車から通りすがり、偕楽園の梅は未だ一分咲き。昨年の先学逝去の頃に満開の梅、今年は開花遅し。「警察のご指導 をいただきながら」特別警戒中、と御上には自然に諂う思慮浅き民営のJR特急車中で昨日の日剰綴れば上野に着く。いったん母と別れ東京駅よりタクシーで虎 ノ門のホテルオークラ。荷物預け警戒超厳重なる米国大使館眺めながら虎ノ門に下りて銀座に向かう。米国大使館囲む道路の歩道は歩行できぬ規制なのだがホテ ルオークラの正門前が水道工事中で、それを避けようと大使館側に渡ると、道路の向こう側に警官いるのだから我が渡る前に「こちら側は通行禁止です」と指示 すれば宜しかろうに渡って歩き出してから目の前を通せんぼして「通行禁止です!」と。粗忽。虎ノ門にて地下鉄駅一瞬見失い「ここまで田舎者になったか」と 一瞬焦るが東都の地下鉄といえば「営団」のはずがメトロ東京となり地下鉄駅入口の意匠が「喪中のマクドナルド」の如きM字になっており遠くから見落とす。 銀座。鳩居堂にてにほひ粉など購入。歌舞伎座。母とZ嬢と芝居見物。本日は十三世仁左衛門十三回忌追善。久が原のT君に一階一列目中央の席を手配いただき 深謝。まずは曽我物。愛之助が「仁左衛門に似てきた」と母が言っていたが確かに松嶋屋らしいお顔。幕間にT君来臨。高麗屋と福助の吉野山。道行き。高麗屋 が花道のすっぽんから現れると、忠信というよりどうしても石川五右衛門だの妖術使いの如し。この人の踊りの固さも気になるし成駒屋の無表情は神谷町譲り か。どうしてもこの道行きというと、前回は勘九郎で見ているが、これはやはり沢瀉屋のあの踊りの上手さと静を恋う源九郎狐の、最後の花道でのひっこみ、観 客のやんやの喝采を思い出す。T君がわざわざ人形町志乃多寿司の 稲荷寿司と海苔巻きを「おすもじ」に、と買ってきてくれる。ここの稲荷は甘すぎず好し。これでお昼。松嶋屋の奥様(仁左衛門夫人)ロビーにいらっしゃり 仁左衛門襲名披露以来のご無沙汰でご挨拶。「あら、ちょっと何よ、ちょっと」と余が肥えた、と笑われる。で仁左衛門丈の道明寺(菅原伝授手習鑑より)。仁 左衛門が菅丞相。覚寿は病気休演明けの芝翫(神谷町)。判官代輝国に富十郎(天王寺屋)。立田の前が秀太郎、刈屋姫に孝太郎と追善らしく松嶋屋。道明寺と いえば先代(十三代目)仁左衛門の名演。戦後は東都では十一代目團十郎、先代の幸四郎(白鴎)に十三代目に続く孝夫(十五代目)の菅丞相。余は白鴎の菅丞 相を母の話では観ているらしいが本人は全く記憶もない。十三代目の歴史的なる道明寺(覚寿は梅幸)はT君らと昭和の終わり近き頃に歌舞伎座で観られたこと は一生の思い出。今回は芝翫が相変わらず感情移入のない芝居で、ただ梅幸よりずっと気配りしながら「ここぞ」とばかりに神谷町らしい熱演。それにしても仁 左衛門。正直言って病気がちの片岡孝夫がどこまで芝居が続けられるのか、と心配された時代もあり先代の十三回忌の追善にて菅丞相演じるところまで活躍する ことの嬉しさ。障子の向こうからの松嶋屋の声をば聞いただけで先代をば思い出した、とT君も咽ぶほど。現れればもはや、俗世の人にあらず、道真公と同じ神 仏の世界に達したか、の仁左衛門。この単調といえば単調な、菅丞相にはなんの表情もなきような芝居に「十三代目の名演」と言われても観ておらぬ人にはピン とこない。が、この役の難しさは普通の芝居とは異なり、崇高なるこの道真公の域、また「養女」とされる刈田姫への愛おしみでいえば別れをどう見せるか、そ の「粋」にどう達するか、ということ。当代の仁左衛門丈であるから、この崇高さと別れを精神世界にて演じきる。それにしても十三代目の再臨か、と思わせる 菅丞相での仁左衛門丈の舞台の立ち姿。姫との別れに仁左衛門丈の目から涙が零れ、姫を残し毅然と攫われてゆく姿。一列目から松嶋屋をば拝むばかり。芝居跳 ね玄関にて松嶋屋の奥様より十三回忌「偲び」と書かれた京都東山の、十三代目が生前好きだったそうな澤正の焼き菓子を頂く。T 君のお誘いで銀座七丁目 の資生堂パーラーの喫茶部さ すがエスプレッソも殊更に美味だがT君はいつもシャンペンにプリンだそうで、これがまた美しい。皆さんと資生堂前で別れ一人、まずは一丁目まで上り鞄の銀 座谷澤。お散歩用のショルダーの皮に白いクリームついてしまい店できちんとブラシで落とし茶色のクリームで表面鞣してもうう。谷澤の方のお話では皮用の汚 れとりクリームは汚れをむしろ皮に浸透させてしまう場合もあり、まずはブラシで汚れ落とし皮と同色のクリームにて汚れや異変の箇所をいい意味でごまかして ゆくような作業。続けて文具の伊東屋。ペリカンの万年筆のインクだのホルベインの水彩固形絵具だの香港では入手し難き文具など小物数点購う。続いてトラヤ 帽子店。今回もずっと日本でかぶっていたトラヤオリジナルの冬用の帽子で同じ意匠でメッシュ製の夏物出ており購入。いくつか本屋で『世界』別冊の樋口陽一 先生、井上ひさし氏監修による憲法特集号をさがすが何処にもなし。新聞広告にも出ていたが売り切れなのか。燈刻ひとり八丁目並木通りのBrickにてハイボール二杯。サントリーの角は角だがソーダ水の円や かさがこの店らしさ。復た資生堂パーラー。偶然にT君に誘われ午後にここの喫茶部でお茶したが晩は晩で資生堂パーラーの食堂を予約しておいたもの。Z嬢と母と三人で晩餐。コ ンソメスープとミートクロケット。ドライシェリーと赤葡萄酒いただく。Z嬢の残したハヤシライスも母の残した海鮮リゾットも味見。母と銀座で別れZ嬢と虎 ノ門駅から歩いてホテルオークラに戻る。このホテルもあとどれくらいこの形態にて営業するのか。余にとってこのホテル思い出深いのは郷里の親友J君の叔父 上がこのホテル常宿で一度お招きいただいたおりJ君と中学生だったろうか部屋のルームサービスのサントリーオールドを、二人で四分の一分だったのだろうか 飲んでしまい、すっかり気分よかったこと。今回はこのホテルも開業からのこの建物ももう最後の思い出かも、とオーキッドバー訪れるが紳士的なるバーの印象がすっかり宴会帰りの二次 会宴会場と化しておる。これはこれでいいのかも知れぬが。ハイボール一杯のみ。睡眠不足で朦朧としつつとりあえず荷物だけ片づけ寝入る。

三月初三(金)昨日T君にいただいた向島長命寺の桜餅。幸 せ。午前先日母に贈ったiMacにて母に網(ネット)と電郵のいろは教える。昼に母と木挽庵といふ手打ち蕎麦屋。せいろと百合根かき揚げのかけ蕎麦。昼すぎ 電脳いろは少し続けM先生のお宅に参る。M先生余の小学一年時の担任教師。疎遠なままに数十年経てどM先生昨春先学の葬儀に来ていただき父とどういうご縁 ありかと思えば母の話に拠れば先学とは高野山への数泊の参詣講中で一緒された由。一年経て葬儀に来ていただいた御礼に。晴れ空俄に曇り小雨が降り始めたか と思えば霙れとなる。車にて付近の町をまわり燈刻に至る。通りがかりの理髪店にて散髪。理髪店近くの景気悪そうなネオン街のサウナに入れば蒸し風呂に「他 のお客様のご迷惑になるような行為はご遠慮くださいませ。身体の汗を飛ばし他のお客様にかけるなどご協力をお願いいたします」とあり。まるで汗は飛ばせ、 か。晩に母と妹と名前失念の少し高級な回転寿司。中国語的に は寿司回転のほうが正しいかも。帰宅して「ヰンドウズ」ばかりずっと使いMac機に慣れぬ妹にiMacのいろは少し教える。遅くにスーパー銭湯に浴す。
▼参議院予算委員会のテレビ中継少し見る。自民党議員の質疑にて小泉三世への敬語過剰。これまでの小泉三世の首相としての功績讚え郵政民営化についても参 院自民は一度は謀反のくせに「他の誰もが民営化困難であった郵政民営化を」とは嗤わせる。昨日の小泉メールマガジンも「格差社会?」と世間で指摘される社 会問題や若者のニート化など取り上げ前向きに希望のもてる社会を、と文章明瞭だが具体的には意味不明。それにしてもライブドアにて苦境に追い込まれたはず が今ではライブドアのラの字もない「民主党偽メール事件」と転化。この運の強さ。最後くらいレームダック化嗤おうかと思っていたが。もはやお見事というし かない。昨日、築地のM君が十年前に「この四人が死んだら日本が良くなる」と思っていた四人が中曽根さん、小沢さんにナベツネさん、でもう一人が「名誉会 長」。その四人のうち三人を「この人たちが目を光らしているだけ、まだ日本が救われている」と、まさか「さんづけ」で呼ぶことになろうとは、と。唯一の期 待は残る一人の「名誉会長」が「小泉賛成有終の美を飾る」はもはや良しとして憂国の念から公明党への鶴の一声にて次期首相選出にて安倍二世などにならぬよ う「ご配慮」いただきたいこと。そうすればこの方も「池田さん」とお呼びしよう。
▼テレビドラマ演出家の久世光彦逝去。享年七十歳。「時間ですよ」「寺内貫太郎一家」の演出から、その後は作家と言われるが余は氏の文章は雑誌東京人だか で氏の饒舌なる物語文をば読んだのみ。三十年ほど前か、どのドラマだったか氏が出演の若手女優孕ませた、とスポーツ新聞に取り上げられたのはテレビドラマ の演出という目立たぬ仕事が世の注目浴びる嚆矢となったかも。朝日の弔報で小林亜星が訃報に「あまりにも頑張り過ぎたかも知れない」と答えていたが「あま りにも缶ピー吸い過ぎた」。

三月初二(木)朝六時すぎに起きて朝風呂。雨止む。朝食のあとテレビのワイドショウ眺める。民主党も日本航空も為体にせよ番組の司会者だのコメンテーター だの何を厚かましくの言いたい放題なのか唖然とするばかり。タ クシーにて鹿島臨海鉄道?の大洗駅。のんびり地方鉄道にて15分で水戸駅。スーパーひたち号 にて上野。新橋にてZ嬢と香港の銀行口座から出金せむと三菱東京UFJ銀行に行けば復た出金できず案内係の行員に聞けば郵便局のみ扱う由。海外とはいえ銀 行口座からの出金が銀行にて出来ず郵便局なら能う日本の怪。新橋郵便局の出納機でようやくカード受理されたが驚くなかれ今度はヴィザカードの融資のみにて 銀行口座は照会もされず。バンコクでもマカオでも中国国内でもわずかな手数料にて香港の銀行口座より現地通貨にて出金能うのに何故、日本は出来ぬのか。日 本だから、としか言いようがない鴨。昼より新橋烏森某所。薮用済ませ新橋の某大手旅行会社に約束なしで知己の(といってもいつもメールと電話ばかりでお会 いしたことない)S氏尋ねるが生憎、昼食で外出中とのことで挨拶の機会逸す。午後、虎ノ門の某団体訪れ高座に上がる。午後遅く虎ノ門の砂場(蕎麦)で久が原のT君と再会。温燗の純米酒に鳥さわ、白 魚の卵とじ、せいろ蕎麦一枚。物語り尽きず。昨夏のT君来港の際のお礼に、と京都宮脇賣扇庵のT君好みの注文の扇子、明日が雛祭と向島長命寺の桜餠、それ にT君がインタヴュの成田屋の記事掲載された東京文花座の雑誌数冊、堂本正樹『三島由紀夫の演劇』初版本など、あれもこれも、と頂き恐縮。更に浄瑠璃研究 家のK君から、と貴重な昔の歌舞伎のVCDまでいただき感激。T君との蕎麦屋談義で海老蔵が「今ぢゃ清原」と我が口にすると普段それほどのことには動じも せぬT君が「この話、いま此処が初めて?」と驚かれ、何かと思えば数日前に、そのK君が同じことに言及された由。K君とは何年もお会いしておらぬが素人の 身はT君だのK君といった芝居の専門家に同じ話できるだけでも嬉しき事。T君とは話題尽きぬが五時前に砂場出で営団の虎ノ門駅にて別れる。小雨。営団銀座 線で新橋。西銀座の酒場さんぼあにてハイボール一杯。それな りに長いカウンターに椅子三脚。常連の紳士三人。うち一人がバーに手をかけ斜め腕立て伏せもかなり異様かも知れぬが「さんぼあ」なら常連の勝手。銀座の バーで「おおきに」と送り出されるも不思議な気持ち。銀座通りに出て煙草菊水に寄りパイプ用のコンパニオンとパイプ入れの皮ケース購入。コンパニオンはパ イプ煙草用の道具だが香港にてすぐに錆びる安物しかなく菊水には柄が木製の上等な品あり。さすが。パイプ入れは伊太利のMastro de Paja製。銀座松屋紳士服売り場のHenry Cottonにて春物のシャツと薄手のセーター購入。荷物多くなり売り場にこれはお預け。築地のH君と松屋前にて待ち合せ。はち巻岡田に食す。万太郎、松太郎、若いほうでは山口瞳の、東都の古き よき時代。これほどの店で名物の海老の糝薯に「しんじょって何ですか?」と尋ねる客もあり、の平成の世。菊正宗がここまで美味いか。H君とも話題尽きず。 二人で「上野に繰り出しませう」と銀座線で上野。上野で飲むのなど十五年ぶりか、で一度だけ訪れたことあり、のバーJを目指すが「わかりやすい」上野界隈。上野駅にて福井県小浜市名 産の焼さば鮨(ノルヱー産)の駅弁購い晩10時すぎの列車で帰宅。飲み屋だの列車の暖房と乾燥に鼻内が乾くどころか数十年ぶりに鼻血少し。列車の暖房はど うにかならぬものだろうか。

三月朔日(水)春雨。先学一周忌。親族と先学生前に親しき方ら四拾余名お招きしての真言宗豊山派神崎寺での法要。正午から芸術館内のレストランにて斎戒の 食。この芸術館設計せし磯崎新もまさか館内のレストランが地元民の法事にて使われようとは思わなかったはず。雨止まず。地元の国立大学にて人文学部長まで 勤められた先学旧知のK名誉教授による献杯の辞。あえて手短に感情抑えられさらさらと「この雨もまた故人への贐けになろう」と。我が中学の恩師にて父とは それを縁に親しくされたK先生をご自宅まで送る。香港の銀行口座からマスターカード系のCirrusにて出勤しようと三菱東京UFJ銀行に寄れば当支店の 機械ではご出金できませんので中央郵便局をご利用ください、と。市内に旧都市銀行の支店はこの三菱東京UFJと旧富士のみずほのみ。海外カードとの提携く らいしてほしいもの。だがT/Cの両替に寄れば「ご旅行だったんですか?」と世間話されるほど呑気な田舎町ゆゑ、海外カード提携など必 要ないのかも。帰 宅。Amazonなどから半年の間に届いた注文書籍の整理。数千円以上は郵送料無料のサービスありがたいが、こちらが「一括送付にてよろし」としているの にサービスで雑誌一冊でも過剰包装の段ボールに入れての送り出しは無駄。水戸を離れて東に三里、晩に茨城の大洗海岸は鷗松亭に宿す。那珂川の河口の断崖に 建つ。露天風呂にて遠くの灯台の灯など眺め浪の音など聞きながらの一浴。殊更風情あり。
▼畏兄N医師からのメールに余の「ゑぶ」など「ヱブ」なる旧字表記がいい、と讃められる。N兄になると「ヰンドウズ」だの若い芸人もウエンツが「ヱ”ン ツ」となる。おそらく余が幼き頃に「ヰ」の時に最初に出会ったのは「ニッカヰスキー」にて「ヰ」の字をまさかカナとは思わず漢字の「斗」の崩し字か何かと 信じ「ニッカウィスキー」だがサントリーが寿屋のようにニッカは「ヰ屋」という屋号で(とここでサントリー=寿屋を開高健の若い頃のエッセイで知っていた 小学生は後世、かなり酒呑みだろうが)それで図案的に「ニッカヰスキー」と使っているのだ、と信じていたこと。それにしても西兄には教えられること多し。 このメールにも中国人の患者との話のなかでN兄の「長年の疑問」として「ちんちんもがもが」(チンチンカモカモ、とも)の語源について。今ではあまり使わ れぬ花街言葉で、まるで「男性器がカモになる」とでも思われそうだが、これは、「あんぽんたん」が王八蛋(ワンパータン)を語源とする如く、親親我我チン チンヲォヲォ(いちゃいちゃする)ではないか、と。ただただこのセンスに敬服。ちなみにN兄、エイズ検査で陰性なのに陽性じゃないか、と悩む神経性の中国 人患者にひと言「杞人憂天」と書いて渡すほどの才人。

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