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民主党が善戦、市民が董建華長官体制に反対突き付け 香港区議会選挙 11/23

【香港24日=柏村富】23日に投票、即日開票のあった香港の区議会議員選挙は民主党派候補が善戦し。候補者120人のうち93人が当選した。董建華行政長官を支持する与党・民建連は206人の候補者を立てたが64人の当選しか果たせなかった。市民は明らかに董建華長官主導の政府に対して反対票を突きつけたことになる。
今回の選挙は、国家保安条例立法化反対と董長官に対する不信任による7月1日の50万人デモ以降、初めて実施される香港全域にわたる選挙。そのため各党ともこれまでの区議会選挙では見られない積極的な選挙合戦が繰り広げられた。
香港は18歳以上の成人に選挙権があるが、投票のためには更に選挙人登録が必要。政治に無関心で投票率が低いことがかつての香港の特色でもあった。だが、1997年の香港返還前後から政治に対する関心が高まり、前回の2000年の国会に当る立法議会選挙では投票率が50%を超えた。
今回は7月のデモ以来、民主派は市民への選挙投票人登録を呼びかけ、昨日の区議会選挙の投票率も43%とこれまでの最高を記録し、香港市民の政治への高い関心が示された。
区議会選挙は本来、民生レベルでの関心が高く、小選挙区制で党派よりも地元候補の応援が主であった。だが今回は、国家安全条例の立法化で立法支持していた与党・民建連がどれだけ議席を維持できるか、民主派がどの程度議席を伸すかに焦点が集まった。
民建連にとって、地元利権にからむ区議会は、政策や政府の執政非難をしている民主派を抑え、安定した基盤となっていた。今回も選挙区の9割で候補者を立てるか候補者の推薦にまわり、安定した基盤を有していたのは確か。だが今回は地区の自治、民生問題は棚上げされ、政府支持と、反政府の民主化要求という対立となったことが民建連に災いした。
この民主派の躍進で、このままでは来年実施される立法議会選挙での民主派の躍進にはずみがつくのは間違いない。与党・民建連は立て直しが必至となり、董建華政府も50万人デモに続く市民からの「ノー」の声に更なる妥協、改善が急務となる。
 

「胡錦涛体制は香港を信じるべき」 李柱銘・民主党元党首が民主化推進への期待語る 9/24

【香港24日=柏村富】香港の民主派の象徴である李柱銘(マーチン・リー)民主党元党首は23日、香港大学で開かれた講演会で政局展望について語った。李氏は講演の中で、「来年の立法会選挙で民主派は善戦し、2007年の行政長官選挙と2008年の立法会選挙で“全面民選”の実現に向け改革に取り組む」と決意表明。「胡錦涛体制は民主化を願う香港を信じるべきだ」と訴えた。
李氏ら民主派は、董建華行政長官を頂点とする香港政府の、法治より人治、民主化推進より北京政府を向いた姿勢に反対し、親中派が過半数を占める立法会(定数60)で奮闘してきた。中国政府からは煙たがれる存在だが、7月1日に行われた国家保安条例立法化反対の50万人デモを成功させ、今後の香港の民主化に向け、積極的な動きを続けている。
李氏はこの日の講演で、董建華政府が北京中央政府の意向を受けるのは当然としながら、香港市民の声を聞く姿勢に欠けていると非難。その上で次のように語った。
「この姿勢は対市民ばかりではない。2000年当時は私が民主党党首だったが、親中派の民主建港連盟(民建連)、保守派の自由党の両党首とテレビ番組に揃って出演した後、経済改革について意見交換した。その際、3党党首の意見がまとまり、連名で董長官に提言しようということになったが、董氏と関係の悪い私が入っていては差し支えあると判断、民建連と自由党にこの提言を委任した。両党首から行政長官に緊急の面会を求めたが、董長官はスケジュールが厳しいとの理由をつけ、香港の3党首の緊急提言を受け入れなかった。董氏は北京の中央政府にはへつらうが、香港の政党にはけっして耳をかそうとしない」
その上で李氏は、「(7月1日の50万人デモでは)立法化反対の声以上に、『董建華退陣』を叫ぶ人が多かったことが、董長官に対する市民のわだかまりの高さを象徴している」と指摘。「国家保安条例には条件付きで賛成する人がいても、香港の自由と民主化について反対する人は一人もいない」と述べ、「7月1日のデモは立法化反対のための行動だけでなく、香港の自由と民主主義を守るためのデモだった」と語った。
さらに李氏は、この市民意識は来年の立法会選挙で民主派の議席増につながると予想しているとし、これを機に、今後の香港社会の法律に基づく統治と、行政長官や立法会議員選挙の“全面民選化”を実現するため、今後も活発な運動を続けていくと語った。
また、中国政府について李氏は、「(胡錦涛体制に)楽観してはいないが、けっして悲観的でもない」と改革推進への期待を表明。天安門事件が起きる89年まで香港基本法起草委員だった李氏は、87年に北京で面会した?小平氏が同氏に対し、「中国も民主化が必要なことはわかっている。だが経済発展が先決。中国のGDPが4倍になったら民主改革もできるだろう」と語ったエピソードを紹介した。
その上で李氏は、「これは15年前の話です。当時に比べれば中国のGDPはすでに10倍の伸びを見せている。(?氏が言ったように)改革の時期はもう来ているわけです。胡錦涛体制はそれを実行するために存在するものであり、実際に農村での自由選挙などの小さな改革も始まっている。今後、この改革がゆっくりしたスピードながらも、農村から都市、都市から省、国家レベルまで広がっていくでしょう。香港民主化の動きはけっして反中央政府の動きではなく、香港の発展のための要求であり、それが中国のためになると信じている」と意見表明した。
また、台湾統一については、「香港に法治と民主主義があり、中国も政治改革を続けることが台湾との統一問題の解決につながる」と述べ、「香港民主化の動きは国家転覆とか内乱ではなく、中国のための動きなのだ」と重ねて強調。最後に「中央政府は香港を信じることが大切だ」と述べ、約1時間の講演を締めくくった。
もともと李柱銘が党首を務めた民主党は、89年の天安門事件の際、中国国内の反体制運動への支援団体が母体となり結成された。そのため、中国政府の人権蹂躙や香港の自治への干渉に対しては強い反発を見せるものの、江沢民体制が終わるなか、新体制の胡錦涛中央政府に対してどのような関係を築くか模索中ともいえる。この日の講演は、香港の反目してきた民主派勢力からの、中国政府に対する関係改善へのメッセージとも受け取れた。

香港政府が反政府デモへの規制強化を意図か、人権活動家らが一斉に反発 9/22

【香港22日=柏村富】反政府デモが保安要員の増員などを余儀させたとして、デモを指導した3人の被告がその増員経費分の損害賠償を求められている裁判で、香港政府が和解案を示した上で、これをテコに反政府デモへの規制強化に乗り出そうとしていることが明らかになった。香港の人権・民主化活動家・雷玉蓮さんは19日の記者会見でその実態を明らかにするとともに、今回の和解案は実質的な反政府デモ禁止措置で、表現の自由などへの不当弾圧につながると非難、同案に反対し、政府への抗議を続ける姿勢を表明した。
香港の最終裁判所(最高裁)は1999年2月、片親が香港市民で大陸生まれの者に香港の居住権を認める判決を出したが、その後、中国政府は全国人民代表大会(全人代)でこれを否定し、居住権問題は差し戻されてしまった。
これに抗議する同問題の当事者や支援者たちが昨年4月入境事務処にデモを行い、保安要員の制止を振り切り建物内に侵入した。その際、デモの指導者3人が建造物不法侵入で逮捕された。香港政府はこの裁判の中で、不法侵入を防ぐため保安要員の増員などに、総額15万香港ドル(約230万円)の支出を余儀なくされたと主張、同経費を賠償するよう3被告に請求した。
ところが、雷さんによると、政府の司法責任者である梁愛詩・司法官は今年7月、3被告に対し今後入境事務処へのデモを一切行わないことを条件に、損害賠償額を1人当たり1万同ドル(約15万円)に減額し、裁判も取り消すとの内容の和解案を提示した。
これに対し香港の人権団体は20日、政府が損害賠償の減額などと引き換えに、表現の手段であるデモをさせないよう確約させるようとする実質的なデモ禁止措置で、表現の自由と人権への不法弾圧だとの懸念を表明。雷さんも和解案に反対し、政府への抗議を続ける意思を明らかにした。
雷さんら人権・民主化活動家たちはこれまで、民主化などを求めて立法会議事堂での抗議活動や、中国政府首脳の香港訪問に合わせたデモなどを積極的に行ってきた。雷さんらが今回懸念するのは、香港政府が和解案内容を利用し、反政府デモなどへの規制を今後一段と強める危険性だ。
 

国家保安条例立法のナンバー2が昇進 大抜てきで税関長に 9/22

 【香港22日=柏村富】香港政府は今月19日に発表した政府高官の人事異動で、国家保安条例の立法化で香港政府の立法化推進で重要な役割を果たした当時の保安局ナンバー2、湯顯明・前保安局常任秘書長を税関長に任命した。保安条例の立法化といえば、立法化失敗で事実上の辞任に追い込まれた葉劉淑儀・前保安局長ら推進者に対する市民の風当たりは今も強い。湯秘書長は立法化の可否を問う立法会や市民討論会など葉局長の隣腹心ぶりを発揮。「立法化反対は少数」だのといった発言が市民の反発を受け、89年の天安門事件で国務院のスポークスマンとして死者の数など極端に少ない数字を公開し北京の安定ぶりを世界に公言していた袁木氏にたとえられ、湯氏は「香港の袁木」とまで揶揄されているほどだった。
湯氏は葉局長の辞任で局長代理となったが、すぐに7月末より2カ月の長期休暇をとり、今月末から職場復帰としていた。休暇でほとぼりが冷めるのを待っていた形だ。この休暇の最中、葉局長の後任には、葉女史の息もかかっているが穏健派の李少光・入境事務処処長が抜擢されていた。
湯氏の処遇が「左遷」であれば、政府が保安条例立法について猛省したことになり、反対に厚遇であれば政府は保安局の立法化推進を殊勲と見なすとみられてきた。今回の税関長への任命は2階級昇進の大抜てきで、政府の19名の主要官員の一職を担うことになった。しかも董建華行政長官直々の指名であることも発表された。
抜擢は、保安条例立法化の試みを「失敗」とはみなさない政府の姿勢を見せた人事ともいえる。

SARS基金でコンサート開催に疑問の声 香港で大物招聘イベント 9/22

【香港22日=柏村富】「SARS基金は有名ミュージシャン招へいのためにあったのか」。香港で来月17日から3週間にわたり開催予定の大型フェスティバル「香港ハーバーフィエスタ」に対して、開催を疑問視する声があがっている。本来、市民のために使われるべきSARS対策資金が米英のミュージシャンや関連企業に持ち出されることに首をかしげる人も多い。「本当に開催が必要なのか」という声も出てきている。
このハーバーフィエスタは、新型肺炎(SARS)の影響で萎縮した香港の景気回復を目的として在香港の米国商工会議所が主催、企画したもので、「インベスト香港」(香港政府の公的投資信託基金)が協賛、ビクトリアハーバーに面した特設会場での大物ミュージシャンの来港公演が目玉。17日の開幕はプリンス、その後クレイグ・デイビッド、ジョセ・カレーラス、ウエストライフの公演、最後11月1日の閉幕がサンタナ、と香港ではなかなかお目にかかれない大物スターの出演が目白押しだ。
他にも、まだ未定だが、3月に開催予定がSARSで取消しとなったローリングストーンズの出演の可能性も話題になっている。
SARSでのコンサートといえば地元民にとってはアニタ・ムイが主催し地元ミュージシャンが総出演した5月の「WE SHALL OVERCOME」コンサートが記憶にも新しく「感動的だった」と市民の評判は高かった。
しかし、今回の催しに対しては「今さらこのハーバーフェスタがSARSとどう関係があるのか」との声も聞かれる。
SARSでの様々な悲しみや苦労を「せめて娯楽で忘れてほしい」という催しとは思われるが、大物を招聘したことから、入場料はプリンスの公演の場合でいえば最低でも258香港ドル(3950円)からS席は988香港ドル(15000円)と高い。
主催者側は一連の大型コンサートで来港者が増えることを期待、景気を刺激というが、それもどの程度のものか疑問視されている。
今回の催しの総経費は宣伝まで含めて10億香港ドル(150億円)。世界各地から大物スターが香港救済にとボランティア出演するのではなく、あくまで多額の出演料で大物スターを集めているのだ。しかも、入場料を高くしたうえに、主催団体からの資金拠出、関連企業の寄付などあてにしても、なお「赤字覚悟」という。
香港政府は「インベスト香港」が協賛であることを理由に、この催し物で赤字が出た場合、3000万香港ドル(4億6000万円)から8000万香港ドル(12億2400万円)までの補填を約束した。しかもこの資金の出所はSARS関連という名目で、政府がこの春に創設した総額10億香港ドルの「ポストSARSファンド」からである。
この動きに対して、市民の間から大物スターのギャラがSARS対策のための基金から拠出することには疑問の声があがった。
「本当に開催が必要なのか」「公的資金が導入されるのだから10億香港ドルという経費の内訳も政府に報告されるべき」という意見は、香港の国会にあたる立法会でも巻き起こった。このため「インベスト香港」側の企画責任者はコンサートなどの支出明細を公示するよう求められている。
主催者側は、企画の判断の正しさ、明瞭な運営を主張し、開催の可否については、すでに出演料の半額を支払っており、今さら取消しは被害総額が多い、と弁明している。
チケットは19日に売り出されたが、イベントの開催はなお不確定要素が残っている。
来月、本当に開催されるのか、いったいどれだけの公的資金がこのギャラとなったのか、さらに一番の大物ローリングストーンズの来港があるのか、など、本来の催し物への関心とは違ったレベルの話題を香港市民に提供している。

北京五輪用に現場警察官向けの英語教材 法輪功取材を阻止する具体例など 9/10

【香港10日=富柏村】2008年のオリンピック開催を控えた北京では、200万人の外国人客が見込まれ、治安管理にあたる現場警察官にとっても英会話学習が不可欠になっている。このほど彼らの学習用のハンドブックが作成されたが、中国のお国柄を反映した特色ある内容になっている。
 香港の英字紙サウスチャイナモーニングポスト紙は10日、中国政府の公安局が作製した警官用の英語学習ハンドブック『Olympic Security English』の内容を紹介した。同書は、通常の道案内などの記載に加え、政府弾圧に抗議する宗教団体=法輪功、外国人ジャーナリスト、テロリスト、ウイグル独立運動の活動家など、具体的な取締りを想定した問答集になっている。
 このハンドブックは、第1課から「いかに不法なニュース取材を取り締まるか」の内容。もし記者が法輪功取材をしていた場合、「法輪功はオリンピックと関係ない。この取材はあなたの取材制限を越えている」と取材を阻止するための具体的な会話例を掲載している。その上で、法輪功取材は不法であり、公安局で事実関係を調査する旨を告げている。
 さらに他の課では、アフガニスタン人がホテルの部屋へ侵入を図っている場面を想定。この不審者は、警察官の尋問に対しこう言う。「この部屋に米国人客が宿泊している。俺は復讐したい。米国の空爆で俺の家族は殺された。俺はホームレスになった。米国人を憎んでいるんだ」。それに対する警官の答えも極めて具体的だ。
 「同情するよ。だが、君の行為は、罪のない米国市民を狙ったもので、不法。とくにオリンピック開催期間に社会混乱を招くものだ」
 このほかにも、中国が抱える政治、社会問題のシーンが具体的に想定されている。中には、“心温まる”シーンもある。
 たとえば、財布をタクシーに置き忘れたが、現金を抜かれることもないまま財布が戻ってきた外国人客が、「財布がそのまま戻ってくるなんて信じられない! それが可能なのは北京だけだ!」と感激する場面。また、地震で被害にあったビルから救助された外国人が、感無量の表情で、「私の生命を救ってくれた中国人のことを一生忘れません。本当にありがとう、中国の警察に感謝します」と言う場面などだ。
 北京でのオリンピック開催は中国政府の悲願である。当初2000年開催をシドニーと争い、一度は破れた。89年の天安門事件の記憶が払拭されていなかったからだ。しかし、2008年開催を手に入れたものの、中国政府の人権政策などが、オリンピック開催国として各国が納得できる水準に達していないことが憂慮されてきた。
 オリンピック開催では、中国は国の威信にかけて国家の安定を世界に見せようとするだろう。徹底した治安管理が図られることは確かだが、この英会話集に見られるような具体的場面が、北京で繰り広げられないことを願いたい。

香港の人気歌手、アニタ・ムイさんへの取材合戦続く ガン公表後もかわらず 9/10

【香港10日=柏村富】先月から重病説が流れていた香港の人気歌手、梅艷芳(アニタ・ムイ)さん(39)は5日、記者会見を開き、病名が子宮ガンであることや、今後も治療を続けながら芸能活動を続けていくことなどを発表したが、マスコミの取材合戦はいまも続いている。
 会見でアニタさんは、マスコミの取材攻勢が凄まじく、病院で診察を受けるため外出するのにも危険を感じるほどで、一部のマスコミは「まるで私が死ぬことを待っているのかのような雰囲気」と発言。マスコミとの会見に堂々と応じることで、マスコミ側に“自制ある取材”を求めたもの。
 9日付けの英字紙サウスチャイナモーニングポスト紙が伝えたところでは、ガン公表の記者会見以降もマスコミによる過剰取材は続いているといい、同紙が8日に確認しただけでもアニタさんの自宅周辺にマスコミ車両7台、十数名の記者、カメラマンが本人の外出を狙い待機していた。
 待機していた星島日報の芸能記者は、同紙の取材に対し、「自分たちも何を求めているのかわからないが、ここにいる」と述べた。
 一方、このような取材合戦から距離を置いた社もあるという。週刊誌『東週刊』の副編集長は、「うちも彼女がガンかどうか知りたかったのは事実。だが(本人が発病を発表したことで)彼女を追いかけることも、毎日の生活ぶりを報道する必要もない。他に記事ネタを得る方法もいろいろある。パパラッチを使うことは一つの、しかも最悪の手段」と述べたという。
 香港でも、知名度の高い芸能人の病状は、その一進一退ぶりがゴシップマスコミの材料になる。アニタ・ムイは子どものころから街頭や遊園地で歌声を披露、ずば抜けた歌唱力を武器に19歳で歌手デビュー。その後、香港ポップスの女王として君臨しつづけ、リサイタルのチケットは常時、発売と同時に完売する。この春、SARS(重症急性呼吸器症候群)対策の慈善コンサートをプロデュースし、1万5000人の観客を集め成功させるなど、香港人であれば知らない人はいない存在だ。歌手だけでなく、女優としても活躍している。

香港の保安立法は無期限延期  不安定化する政治情勢 9/9

 香港の董建華行政長官は今月5日、香港での国家保安条例案の立法化を無期限延期すると発表した。辞任に追い込まれた葉劉淑儀・前保安局長の「タクシー運転手やマクドナルドの店員は(保安条例の)23条に関心などない」、50万人デモに対する「デモは休日のレジャー」といった発言、さらには親中派の政党・民建連の曾党首の「どんなに多くの市民がデモに参加しても(保安条例は)推進する」といった民意を無視した発言が相次ぎ、市民の反発と不信感を招いた末の延期決定だった。香港における言論の自由の危機に立ち上がった人々の「ピープルパワー」に屈指ともいえる。香港政局は当面、董行政長官の今後の去就も含め、不安定化しそうだ。(香港=柏村富
 全人大の李鵬飛・香港代表は7日、香港基本法委員会委員でもある陳弘毅・香港大学法学院教授氏とともに開いた研究会の場で「この政府の不信感はそう簡単に拭えない」と指摘した。
 李代表は同研究会で、2007年の行政長官選挙と翌08年の立法議会選挙を普通直接選挙とすることが、香港の民主化ばかりか台湾統一までを視野にいれた中国の政治的安定に不可欠と強調した。
 これに対し、陳教授は「民主派は、中間勢力や『非民主派』も合意できる柔軟性のある選挙案を民主派が提出することが重要」と強調、民主派にくぎを刺した。
 陳弘毅教授はさらに「政府は法案を大幅改訂し、それが国際人権条約に合致すれば、立法会で9月からの会期中に立法化は可能であったはず。それを無期限延期することは政治的妥協以外の何ものでもない」とも指摘した。
 確かに、今回の法案化延期は、親中派の政府与党各派が今年11月の区議会選挙、来年9月の立法会選挙で議席を減らさないために延期の決断を迫られたとの見方が強い。董長官があと4年の任期を乗り切るためには、条例化延期で民主派を「懐柔」することが不可欠だった。
 現行の選挙法では、行政長官選挙は各界から予め推挙された選挙人による投票で、立法会も民選とは別に業種別議員枠があり、これは親中派団体や保守系が押さえている。このような選挙法では、必然的に中国の親任を受けた行政長官と親中派であり政府与党である立法会が維持できる。
 陳教授は、このままの情勢で民主派が立法会で多数となっても、そこで大胆な民主化を急ぐことは董長官率いる政局を不安定にさせるだけで、中央政府の香港政策が硬直化してしまうことを懸念している。それを防ぐためには、来年の立法会選挙のあと、民主派も「現実的な対応」を見せ、中央政府も合意できる内容で07年行政長官選挙、08年立法会の普通選挙を実施するかが重要との指摘している。
 今回の撤回決定をめぐり、民主派、親中派の双方から薫行政長官は批判を浴びる立場に立たされている。
 民主派は立法化撤回を「香港人民の勝利」として一様に歓迎、勢いづいている。条例反対運動の先頭に立ってきた民主党は「7月1日のデモによる全香港市民の勝利。条例を立法化するのであれば、行政長官と立法会(議会)議員の普通選挙が実現した後に行なえばいい」とし、普通選挙制度の導入を求めていく考えを示した。
 香港記者協会も「条例は新聞界への影響が大きく、撤回を歓迎する」とコメントした。
 国家保安条例は、中国政府の転覆活動を禁止する内容で、扇動的な文書の出版禁止などを明記したものだったが、言論の自由を脅かすなどとして香港市民50万人の反対デモに発展した。「行政長官の敗北」で決着したことで、董長官の権威は大きく失墜、その去就が注目されている。

香港の代表的歌手アニタ・ムイが癌を告白 9/6

【香港6日=柏村富】香港を代表する女性歌手の梅艶芳(アニタ・ムイ)(39)が5日、記者会見し、子宮癌に冒されていることを明らかにした。アニタは徹底した治療を行い、今後も歌手としての仕事を続けられるようにしたいと語った。
 4才で遊園地にミカン箱を置いて、それを舞台に歌を歌い始め、大人顔負けの見事な歌唱力で天才少女と呼ばれたアニタは、いわば香港の美空ひばり。82年に正式に歌手としてデビュー、芸能人としての活躍のほか積極的に慈善事業や医療、福祉施設へ建設、寄付などを続け、香港で誰からも愛されるスターとなった。だが先月から、重病説がマスコミに流れていた。
 彼女のファンはアジア各地に広がっており、この日の会見には香港だけでなく韓国、シンガポール、マレーシア、香港の日系メディアなど百を越えるマスコミが取材にかけつけた。アニタの親友である俳優の正龍(ジャッキー・チェン)や劉徳華(アンディ・ラウ)らが同席し、彼女をはげました。アニタは目に涙を浮かべながらも笑顔を絶やさず、取材陣の質問に答えた。
 香港の芸能界では、香港の貧困から成長への軌跡を歌い上げてきた歌手・羅文(ローマン・タム)が肝臓癌で昨年10月に他界、今年は4月に香港を代表するスター・張国栄(レスリー・チャン)が投身自殺するなど、暗いニュースが続いている。

香港長官、国家保安条例を無期延期 9/6

【香港=6日柏村富】香港政府の董建華行政長官は5日、香港特区基本法23条に基づいて反体制活動を取り締まる国家保安条例の制定を無期限延期すると発表した。董長官は延期の理由について、「条例の内容について十分な合意と理解が得られていない」ことをあげ、時間をかけて立法化していきたいとしながらも、当面は「経済復興を最優先課題とする」と述べた。
 同条例をめぐっては報道や信教の自由を侵害するとの批判が続出し、7月1日には50万人が反対デモを展開した。このため、政府不信が続けば、今年11月の区議会選挙と来年の立法会選挙で、立法化を支持した親中派の与党政党に大打撃があることは間違いなく、立法延期は選挙対策という見方が強い。親中派の与党が安定していることが、2007年までの董長官の任期で最も重要な生命線となっている。
 また、昨年発足した胡錦涛・温家宝体制は、国家の経済安定成長を最優先課題としており、政治課題などで世論が政府不支持になり社会が不安定化することを好まない。董長官の再任を強力に推し進めた江沢民前総書記が一線を退き、胡錦涛総書記は董長官の続投に執着を見せておらず、香港の安定と経済回復を優先としている。董長官は同条例の制定によって中央政府の信任を高める意図があったが、その立法化で香港の情勢不安定に陥っては元も子もなく、これを事実上撤回させ、経済復興に専念することで政局の安定を狙う方向に転じたといえる。

中華民国は“虚構”「台湾」に改名を、日本で始まった改名運動が台北に上陸 総統選挙にらみ6日に独立派が大デモ 9/3

【3日東京=志村宏忠】台湾島から中国大陸35省を統治する中華民国は存在しないし、国際的にも承認されていない?。台湾の独立と改名を訴える李登輝前総統が先月下旬にしたこの発言が台湾政界で波紋を広げている。中華民国は中国の近代化に奔走した孫文が1912年に建国、南京に臨時政府を置いて臨時大総統に就任した。しかし第二次大戦後は、国共内戦に敗れた国民党の蒋介石・元総統が台湾省に撤退して台北を首都とし、反共と「大陸反攻」を掲げて中国本土の支配を夢見た“虚構”の上に成り立ってきたからだ。その虚構性を前職の総統が公言したため、独立派は拍手喝采し、統一派は苦い思いをしている。
 台湾への改名が年来の持論の李氏は先月23日、独立派の会合で自らが拠って立ってきた「国民党=中華民国」体制の虚構を痛烈に批判し、遂に憲法に定められた国名を否定した。李氏は「陳総統も同じ考えだが、立場上言えないだけだ」と支持率が低迷する陳総統の側面支援に出た。最新の台湾大手紙の世論調査では、野党の国民党・親民党の候補が陳総統を10%リードしている。
 李氏の発言に対して中国との交渉に積極的な国民党、親民党は「中台協調派の票を逃がしたくないから婉曲的な姿勢を取っているだけ」(国民党幹部)、「蒋 経国(元総統、蒋介石の息子)は、台湾独立をもくろむ人物を後継に選んだことをあの世で後悔しているだろう。李登輝は蒋経国を騙し、我々を騙し、神をも騙した」(意孝厳・同党国会議員)と強く批判した。一方、民進党は「李氏の発言は本人の個人的な見解を反映したもので党にとって何ら問題ではない」(李応元・党副秘書長)として静観している。また東京の台湾代表処(大使館)の高官は日刊ベリタに「陳総統は中華民国憲法に宣誓して総統になった。それをくつがえすには憲法を改正しなければならない」と、すでに一民間人とはいえ依然、政界に影響力のある李氏の「行き過ぎた感もある」発言に困惑を隠せない。
 しかし、日本で40年以上、台湾独立を支援している「青年台湾」誌の宗像隆幸・元編集長は「中華民国体制は外来政権による植民地支配体制のようなもので、虚構を捨てて改名するのは台湾の民主化と独立の総仕上げだ」と李氏発言の意義を強調する。
 こうして来年3月の総統選挙に向けて両派の駆け引きが激しくなっている台湾で6日、独立派が台北市内を行進し、「台湾」改名のため気勢を上げる。日本からも李氏個人や台湾独立を支援する約200人が参加する予定だ。「次の総統選挙で台湾の運命が決まると言っても過言ではない」(日本人の独立支援者)ことから、独立派にとって現職で「台湾優先」を掲げる民進党の陳水扁総統の再選は至上課題となっている。
 心臓の手術を終えたばかりの李氏も、集会で再び演説する予定だ。独立派は当初、5月11日にデモ開催を計画していたが、新型肺炎SARSが流行したため延期していた。
 もともと、改名運動は日本で始まった。日本の法務省は台湾出身の人たちが、留学や結婚などで日本に暮らす場合、外国人登録証の国籍の欄に「中国」と書くことを義務付けているため、それに反発した在日台湾人が改名を求めるようになった。
 台湾では2000年、中華圏では史上初めて選挙による政権交代が実現し、台湾の民主化がさらに進んだことを印象付けた。しかし、民進党は議会では少数与党のため「野党と政治的な妥協を繰り返し、支持者の間で失望が広がった」(宗像氏)という。
 「今度の選挙で台湾の運命が決まる。陳総統が再選されれば、日本の自民党のように権力を握っていることだけが存在理由の国民党は野党暮らしに耐えられなくなり分裂し、多くが民進党に加わるか、友党を作ることで台湾独立の基礎固めができる」。宗像氏は台湾人独立派の心情をこう代弁した。
 一方、台湾紙の自由時報によると、日本からはデモに約200人が参加する。先月末、全国の地方議員の有志約70人と「日台地方議員連盟」を設立した和田有一朗・神戸市議らもデモに参加し、呂秀蓮副総統に直接、来日を要請するとしている。

日台地方議員連盟が設立総会、呂台湾副総統に来日を要請へ 8/31

【東京31日=志村宏忠】日本と台湾の交流促進を目的とした「日台地方議連」の設立総会が31日、東京・池袋であり、台湾の呂秀蓮副総統に早期来日を直接要請することと台湾の国連加盟支持を決議した。
 地方議員による全国規模の日台議員連盟の設立は初めてという。
 同議連のメンバーが、9月6日に台北市で行われる台湾独立派による「台湾」改名デモに参加した後、呂副総統を訪問して直接、来日を要請する。
来年3月の総統選挙前に呂副総統の来日が実現すれば、台湾独立派には「日台関係の促進」を訴える格好の機会だ。しかし、中国に対し過激な発言の多い呂副総統の来日には、北京から横やりが入ることが予想される。
 設立総会には関東地方を中心に地方議会議員約50人が集まった。現在参加が決まっている議員は70人以上という。
 先ごろ、心臓病の手術を終えた李登輝前総統と李氏と交流のある石原慎太郎都知事から祝辞が寄せられたほか、駐日台北代表処の羅福全代表(大使)が挨拶した。祝辞で李前総統は「日台地方議連の結成に大きな意義を感じる。日本と台湾の関係が進むことを期待する」と述べた。
 同議連の事務局長の和田有一朗・神戸市議は「日本各地に地方議員の日台議員連盟があるが、相互に訪問して飲み食いするのが主な目的だった。いまのところ、台湾側で連携する相手は決まっていない。まずは勉強会などを通じて議員が台湾に関する知識を深め、認識を共有して行きたい」と話している。

「台湾の前途は台湾人民が決めるべき」と述べた香港議員を警察が基本法違反で調査 8/30

【深セン30日=竹田誠一】今月中旬に台湾で開催された「一国二制度下の香港国際討論会」に参加した劉慧卿・香港立法会議員が「台湾独立は台湾の前途に関わることであり、台湾人民が自ら決めるべきである」と述べたことに対して、警察当局は「中華人民共和国香港特別行政区基本法」違反の疑いで調査を始めた。深センの日刊紙、南方都市報が29日、伝えた。
 劉議員は民主派の少数党派「前線」に属し、香港の言論や報道の自由を侵すとして問題になった「基本法23条」や董建華行政長官の再任に反対する運動を中心的に担ってきた。
同紙によると、劉議員は香港に戻った後、「会議に参加したことは必ずしも台湾独立を支持していることを意味しない」と弁明する一方、「台湾人民のの前途は台湾人が自ら決めるべきだ」「(発言を)少しも後悔していない」「今後もこのような主張を続ける」と自らの主張の堅持を表明した。
 これに対して香港の親中派メディアや議員、学者らは劉議員の発言を激しく批判し始めた。親中派の香港民建聯の陳雲生区議会議員は「劉議員の発言は台湾独立を鼓吹している疑いがあり、立法議員の身分にふさわしくない。全ての立法会議院は就任時に中華人民共和国香港特別行政区基本法に従うことを宣誓している。基本法の序言では『国家の統一と領土の保全を守る』ことがはっきりと記されている。劉議員が今回『台湾独立分子』の集会に参加し、このような発言をしたことは、立法議員就任時の宣誓に違反しており、『虚偽の宣誓』の犯罪の疑いがある」として、警察当局に調査を要求。当局は調査を進めることを約束したという。
 台湾での討論会には民主党のト勤申議員も参加しており、中国政府系の英字紙、チャイナデイリーは劉、涂の両議員を「公然と台湾独立を支持した」と非難した。これに対しト議員は「(討論会への参加をもって)台湾独立を支持したと言うのは侮辱であり、かえって台湾民衆の『一国二制度』に対する自信を弱める」と反論し、劉議員と同様、討論会への参加が必ずしも台湾独立を支持することを意味しないことを強調した。しかし、大陸メディアの矛先はいまのところ劉議員だけに向けられている。
 香港の民主党派には大政党の民主党と、少数政党の前線がある。両党とも親中派の政府や基本法23条の制定に反対しているが、民主党は台湾独立には基本的に反対の立場をとっている。しかし、今回の劉発言に対する民主党のコメントは大陸メディアは報じていない。

李前総統が「中華民国は存在せず」と初めて公言、「台湾」への改名を主張 8/25

【深セン25日=竹田誠一】シンガポールの中国語新聞・聯合早報(電子版)の24日の報道によると、台湾の李登輝前総統は「中華民国は存在しない」と初めて公の場で主張した。李氏は今年3月にも「中華民国」から「台湾」への改名を主張したが、中華民国の存在自体を否定したのはこれが初めて。
 李氏は23日に開かれた「511台湾改名運動連盟」の集会に出席し、「中華民国は憲法上は35省を統治していることになっているが、そのような中華民国など事実上全く存在していない。台湾は『中華民国』という正常でない国家から、正常な国家に変わらなければならない。そのためには国名を『台湾』としなければならない」と主張した。
 また、李氏は「一つの中国」の原則を受け入れている国民党の連戦党首と親民党の宋楚瑜党首を「中国と結託して『台湾意識』を押さえつけようとしている」と厳しく批判した。
 一方、同紙が台湾筋からの情報として報じたところによると、台湾の陳水扁総統は24日夜に行なわれたグアテマラ大統領と会談した際、「台湾は主権独立であり、中華民国も主権独立国家である」とし、李登輝氏の主張には呼応しなかったものの、台湾が独立国家であるという見解をあらためて示した。
 これらの主張に対し、国民党の馬英九・台北市長は24日、「中華民国が間違いなく存在していおり、これは客観的事実である」との主張を繰り返した。来年の総統選挙に向け、李登輝氏と陳水扁総統は「独立」問題に焦点を当てたい考えだが、馬市長の今回の反応にはそれをかわす狙いがあるとみられる。

台湾:「1国2制度が香港の自主性をむしばむ」、李登輝前総統が懸念と警告表明 8/17

【深セン17日=竹田誠一】台湾の中央通信社(電子版)によると、台湾の李登輝前総統は17日、「1国2制度下の香港」と題した国際討論会に出席、「(中国返還後の)香港は過去6年間、政治・経済発展に苦しんでいる。これは同制度が香港の自主性と主体性をむしばんでいる証拠」と警告した上で、「台湾人民に1国2制度の偽りと危険性を明らかにした」と、同制度によって台湾との統一を目指す中国政府を批判した。
 李氏の発言は、香港の最近の経済不振、反乱罪や政府転覆罪などを規定した特別行政区基本法23条の問題に見られる政治的混乱などを根拠に、1国2制度の弊害を強調することで、来年の総統選を「独立派」に有利に導こうとする狙いがあるとみられる。
 それによると、李氏は最近の香港経済について「中国(大陸)経済への過度な依存と不確定さが顕著になっている」とし、その最大の原因を「1国2制度の下で、経済の自主運営に向けた姿勢と方針を失っているため」と指摘した。
 また、政治面について李氏は「中国(中央政府)体制の影響下で動かざるを得ないため、元来の自主性が失われているだけでなく、中国の専制的政治制度が香港に及ぶ可能性がある」と懸念を示した。
 一方、基本法23条に対する香港人の大規模な抗議行動に対しては「香港が民主の道を歩む契機になる」と評価した。
 台湾の今後について李氏は「台湾人民が現在の自由・民主・繁栄を保障する制度の成果を積極的に守ろうとしなければ、(台湾の)旧勢力と中国の同様な勢力が再度復活し、台湾を再び中国の影響下に置こうとするだろう。これが今後1年で直面する最大の危機であり、台湾人民は選択を迫られる」と述べ、来年の総統選挙で再び「統一派」が政権を握ることへの危機感を明らかにした。

香港:董長官が施政の誤りを「反省」、市民対話重視の政治姿勢を表明 7/30

 【香港30日=富柏村】香港特別行政区の董建華行政長官は30日、マスコミ代表者と会談した後、実質的に今後の施政方針に当る声明を発表した。その中で董長官は、政府のこれまでの施政に間違いがあり、自らのやり方も市民との対話が足りず不満感を引き起こしたと述べ、「反省」とも受け取れる姿勢を示した。今月1日の50万人市民デモで“不信任”を突きつけられた董長官が初めて、失策を公に認めた形だ。
 今後、同デモから得た教訓を生かしながら、当面は社会と政治の安定化を優先させるとともに、董長官自らが率先して市民の意見を聞き、それを施政に取り入れることを表明した。市民デモ以降、1カ月に及んだ政治的混乱は、この日の董長官声明によりひとまず収拾に向かい、今後は施政がどのように展開されるかに関心が集まる。
 今後の具体的な施政について董長官は、中国の温家宝首相が先月末に香港を訪問した際に締結された「香港と中国との自由貿易協定(CEPA)」の推進、中国からの個人での香港旅行自由化の拡大、香港と珠江デルタのマカオ、珠海市を結ぶ海門橋の建設実現などを通じて中国と関係緊密化を図り、その上で、不況と新型肺炎(SARS)のダブルパンチを受けた香港経済を、その打撃から立ち直らせたい、と表明した。
 だが、CEPA、中国からの旅行自由化や海門橋の建設などは、香港政府がいくら景気回復への起爆剤にしたいとしても、その進捗が中国側の手腕に依存していることは明らかだ。董長官が政治の建て直しを強調しても、その裏には、中国の支援なしには政治・経済が動かない香港の厳しい現実がある。

香港:董建華行政長官が民主派議員らと会談、市民からの支持回復が狙い 7/28

【香港28日=富柏村】董建華・香港特区行政長官は28日午後、反董勢力となっている民主派の立法会議員らと会談し、国家保安立法問題などについて意見交換、関係改善の姿勢を示した。7月1日に国家保安立法反対と董建華行政長官らの辞任を求める50万人デモがあり、董長官の支持率は3割台にまで下落、親中派の有力者や新聞の中にも行政長官の更迭を示唆する意見、論調も目立っていた。このため、あと3年の任期を持ちこたえたい董長官には、50万人デモを組織した民主派と協調することで、市民の支持を回復しようとの狙いがある。
 国家保安立法の立法化責任者であった保安局長の葉劉淑儀女史が辞任し、香港政府は国家保安立法の今会期中の立法化を断念、董長官は19日に北京を訪問、胡錦濤国家主席らからひとまず支持の意向も取りつけ、ひとまず危機的状況を乗り切った。
 28日の会合で董長官は、政府には国家保安立法で決められた時間表はなく、時間をかけて市民の意見を聞き内容を検討する必要があると述べ、これまで意思の疎通が乏しかったことを反省し、多くの意見を聞き入れたい、と発言した。
 これに対し民主派は、董長官との会談について「支持率改善のための表面的な動きにすぎない」「今後の施政が具体的にどう変わるのかを見る必要がある」と慎重な姿勢を崩していないが、「これまでよりはまし」(マーガレット・ン議員)と評価の声も出た。
 この国家保安立法化については、先月末まで政府は強硬姿勢をとり続け、草案発表後わずかな日数で形式的に市民に内容を諮ったとし、立法化反対に対してはこれは香港基本法23条で義務づけられた立法化であり、遅延は認められないと譲らぬ構えだった。
 この強気の背景には、中国政府の支援と親中派で政府支持の政党・民建聯、それに財界を基盤とする政党・自由党が多数派与党であることがあった。
 しかし、中国政府は立法化も具体的な日程表がないとして一国二制度で香港の内政事務については干渉しない姿勢を見せ、また、政府を一貫して支持していた多数派の連立与党も、50万人デモの結果、このまま政府支持を続けては今後の選挙での大敗は間違いなく、“御用政党”の印象を払拭することに躍起となっている。
 支持基盤を失った董長官が民主派に歩み寄り、関係改善を目指す姿を見て、そのあまりの変節ぶりを揶揄することは容易だ。しかし、世論が大きな力となり、中国政府も無視できぬほどの市民の積極的な政治参加が生まれ、与党の姿勢を変えさせ、董長官の路線を修正させたと思えば、市民の政治参加のかなり大きな成果といえよう。

香港:親中派政党が行政長官の「普通選挙」を提案 非民主的な選出システムに異議 7/23

【深セン23日=竹田誠一】華僑向けの新聞『アジア新聞』(電子版)がチャイナ・デイリーの情報として報じたところによると、親中派と見られている民主建港連盟(民建連)の曽?成主席は同紙の取材に対し、「2007年に選出される第3期目となる香港行政長官を普通選挙で選出することは、基本法(香港の憲法に当たる)の規定に完全に合致する」と述べ、行政長官の普通選挙実施を提案した。
 親中派の党首からこのような発言が出てきことは、中国指導部内でも同様の考えが出てきたことを示すものだ。現在の董建華行政長官は2002年、無投票で再選された経緯がある。行政長官の任期は5年だが、立候補には行政長官を選ぶ選挙委員800人のうち100人以上の推薦が必要になる。前回は董氏が一人で706人の推薦を集めたため、結果的に対立候補者の出る余地がなくなった。
 曽氏は、「普通選挙で行政長官を選出することは、明らかに7月1日の50万人街頭デモをおこなった市民の願い」であり、「もし特別行政区政府と中央政府が普通選挙に抵抗する態度をとるなら、反対派がさらに多くの市民を動員して(普通選挙実施を)訴えることを助ける結果になるだろう。広範な香港市民は皆、行政長官の普通選挙で行政長官を選ぶことを支持しているからだ」と述べた。
 民建連はこの間、一貫として董建華行政長官を支持してきており、親中派と見なされている政党。学者らからは、国家分裂や中央政府転覆行為などの禁止を定めた基本法23条をめぐる論争の中で、同党が23条の制定を支持したため、最大の「負け組」になったと指摘する声もある。50万人デモの影響で、親中派の立場も動揺し始めたといえよう。