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競馬が話題はたかだか香港の地方競馬にかなり密な記述多く香港競馬を愛好する方すら読むに値せぬ記述が続くが
これ富柏村本人の自己への反省とせめてもの忘備録と思い綴りし事にて読むに耐えぬ向はお飛ばし下され候。
ちなみにFvは一番人気、Sfは二番人気、Wは単勝、Pは複勝、Qは連複、QPはワイド……他の専門用語は香港賽馬中心をご参照のほど。

五月三十一日(金)晴。蹴球蹴球蹴球蹴球蹴球蹴球蹴球……世界杯世界杯世界杯世界杯世界杯世界杯……。蘋果日報購えば特製中国必勝の携帯ストラップくれようとし要らぬといえば新聞売りは「なぜだい、みんな蘋果を買わぬ客まで欲しがるというのに?」と怪訝な顔をされ飲み屋は世界杯中継とそれに興奮した客で飲みにも行けず。麥当勞(マクド)からホテルのレストランまでW杯一色……。蹴球は蹴球で結構だが何故に国家別にて対抗戦するのか我には根拠わからず。どうせ国家対抗とするのなら日本は蹴鞠装束、韓国はサムルノリ宜しく打楽器打ち続けながら、パプアニューギニアはペニスケース装ひ、スコットランドはスカート姿とか……いや国家と民族は異なりこれもマズい。蹴球にせよオリムピックにせよ所詮我は興味もなし。▼東証一部上場企業は三月決算にてリストラによる損失や株式評価損など合計で計11兆7千億円の特別損失が計上され当期損益は集計始めし1967年来初の赤字転落、と。膿を出しきりリストラ効果の出る来年3月はV字形の業績回復が見込まれるらしいが、日本の経済はこの特損にて改善される程度のものなのか。実に簡単なことで、借金を帳消しにしたところで次に身軽になって商売を始めても儲ける手立てがなければまた借金ができるだけ。儲ける手段とは悲しいかなグローバル化のなかでグルーバル化の波に乗るかもしくはグルーバル化の余波を一切受けぬ小さくスローな形でも自立するか、いずれしかないのだが、一部のメーカーを除きグローバル化は出来ず自立する思考もなき体質ではまた借金ができるだけだろうに。商社、銀行はまさにこれ。特損を出しても根本的な体質改善手術は断行されておらず、肉体的な疾病の治療がかりに成功しても、精神的になんら心理療法がなされておらず。心理療法どころかハードディスクをきれいに洗ってOSをいったん入れ直す必要はないか。バブルが崩壊し十数年が経っても結局は根本的な自省もなく安易に「小泉さんなら変わる」とか「石原都政くらいの起爆剤が必要」といった淡い期待だけ、結局、Constitutionを憲法と訳すことしかできぬオツムで押し付け憲法から自主憲法への改正といった無知な思考しかできず、本来の国家のformationとしてのConstitutionを、これを司馬遼太郎は十数年前に「読売新聞で」樋口陽一先生(憲法学)との対談で<国のかたち>と言っていたが、その<国のかたち>を作ることができぬまま経済的繁栄だけに浸り今日に至り、バブル崩壊という最後のチャンスを、恐慌は資本主義のformationを更に強固なものにするという、その反発力すら活かすことなく、ただ小泉に80%以上の支持率を供し田中真紀子外相辞任(そういえば昨日より香港滞在中)で一気に不支持といふ全く思慮なき愚挙続き。もう終わってしまっている。終わってしまっているのだからビール飲みながらW杯でも楽しく見物する以外にないわけか。

五月三十日(木)晴。まだ入手して三週間ほどのRolex「キムタクの369です」昨晩硝子卓の角に擦ってしまひ枠に僅かの傷つけたり。ちょうど時間を見た時の傾げにて光で反射して傷目立ち気になり中環・閣麟街の骨董時計屋・古雅集に赴き其処で購入した時計でもなきものを誠に申し訳ないがと差出し研磨を依頼すると主人快く引き受け傷殆ど目立たぬまで丁寧に研磨してくださる。深謝。ちょうど「ちょっとこの日本語を翻訳してくれないか」と見せられたのが主人の友人が平行輸入にて購った日本製テレビにてチューニングなど設定が漢字ならまだ解せるものもカタカナばかり。オートリバース、マニュアル、アジャストなどの言葉甚だ醜悪(本多勝一ではないが言語植民地の卑しさ)にて何故これを自動反復、手動、調整といった漢字を当てぬか、もしくは英語をそのまま表記できぬのか呆れる。漢字と英語に訳し主人に礼を言われ六年前にRolexの骨董時計を一つ購っただけでリペアーだアジャストだと持ち込んではポリッシングまで(と言えばいいのか……笑)やって頂きそのうえ他の時計まで持ち込み恐縮しつつかうして何か手伝えることあれば多少はもちつもたれつかと安堵。近くのカメラ屋にてContaxのG1中古品Planar45mmF2のレンズ付きにてかなり廉価にて見つけ(G2ですら中古品が出回っているのだからG1が価格下ルのは当たり前か……それにしても95年の新品当時は十八万円也)G2ほどの機能は要らずG1の手作業感覚が自分には似あいかと思い一旦カメラより離れ夕方まで「二時間も」熟慮のすえ購ふ。Contaxは散歩写真用にT2を六年ほど前に購い愛用。オジサンといふものはモノに対する愛着が強く(人に愛されないからか)自分の好きなもの机上に並ぶ(ContaxのG2、バカラのグラスにウイスキー、モンブランのペン、BOSEのスピーカー、Mac、セイコーの懐中時計、ロンソンのライターなどなど)をみて悦に浸る寂しきものなり。中環がWellington街は美味いもの横丁にて(この通りは激戦区にて不味ければ半年ほどで店を畳み味見続けずとも様子眺めておれば淘汰されぬ店間違いはなし)黄昏に何か食さんとそぞろ歩き開店して一年近くの餃子縁なる北方風味の食堂。この餃子縁、店の名も不思議だが山東の味覚らしく山東といえば餃子、餃子といえば山東省(日本語のギョーザなる音は北京語がジャオズ、広東語ならガウジーなるをギョウザといふは実は山東訛りでの餃子の発音であると翻訳個体戸のS君にかつて教えられる、台北のリージェントホテル裏のバラックの餃子屋が立ち並ぶ一帯も山東省出身の外省人が店開きしたものなり)にて、店に入れば店員は普通話ながら「まるで喧嘩しているような」会話飛び交いこれはまさに山東訛り。鮮肉白菜餃と炸醤麺。餃子の飴は見事、炸醤麺は広東のあっさりした味に慣れた舌にはかなり濃いがまさに北方風味。電気不安定にて冷房どころか換気扇すらつければブレーカー落ちるようで蒸風呂。汗を流しつつ喧騒とした店員の会話をBGMに客は我ひとり食しておればブレーカー落ちすでに修理依頼しているらしく我が卓上には蝋燭が灯されまさに味も雰囲気も山東省の食堂(笑)。

五月二十九日(水)快晴。M君はPCCWのインターネットプロバイダnetvigatorのbroadbandで時間無制限月HK$298なる一年限定の特惠契約を得ていたがそれが切れそうになりPCCWに電話して「これが切れるなら他の会社の同様のサービスに移行する」とゴネたらあっさり一年更新を得た、と。我は昨年この時期つい数日の遅れでこれの加入できず今さら無理かと思ったがM君曰く電話して「契約解除する」と言えば先方が理由を尋ねるので「高い」といえばこの時間無制限HK$298になるとのことで電話してみたらマジにあっさりと手続き完了。携帯電話も同じような料金交渉は可能、と。世の中さういふものか。暑く食欲なく(これが七月くらいになると身体も暑さに慣れるのだが)黄昏時に卑利街・陳成記にて水餃伊麺。馬券。買物に向かうが中環で目的の店潰れており銅鑼灣の同じ類いの店に行くがここも潰れており賃貸がかなり下がりつつも不況小売業に及ぶ現実を知る。ジム。歌手C君と銅鑼灣の郎田日本料理、郎田なる名前から察せらるるやうに日式。芸能関係ご用達か四人用の個室あり。午後九時以降は食事せぬと決めていたので鯛と赤貝の刺身を数切れのみ。四方山話。▼蘋果日報にて蔡瀾また大ポカ。日本通で「料理の鉄人」などでもご活躍ながら、盆栽猫製造は日本人に違いないだの、日本のハヤシライスは醤油を使うから色が濃いだの、相米監督の若死にをエイズかと揶揄したり……とこれまでもいい加減な発言目立つが、今回は京王デパートで売られていた明治屋産業の偽牛肉騒ぎを株式会社明治屋勘違い、勘違いだけならまだしも明治屋の霜降をネタに語る語る……。
『蘋果日報』5月29日蔡瀾「草草不工」の「没問題(問題ない)」の以下翻訳(【】部分)
【人が牛を養い牛を喰う。わかならいでもないことは飼料(餌)には牛骨をいれて、牛に牛を喰わせるのだから、牛はこの仇をとらねばならず、狂牛病をもって人に対抗することも道理。牛の復讐は続き、狂牛病に怯える日本人は牛肉を喰わず生肉業は売り上げ落ちてどうにか儲けないといけなくなる。米国の牛も日本牛と同様に牛。しかし価格はかなり安く日本人は米国牛を日本牛として売りいくらかでも儲けようとする。但し大企業のこんなウソがばれては謝っている。奇怪なのは日本の会社がこうした状況で陳謝すればまるでこれで懲罰を受けずにすむ。消費者も最初は怒っているがあとになるとさっぱり忘れる。こういった騙し商法を見つけるのは警察ではなくマスコミの記者。警察は無能で政府は鈴木宗男の疑惑のように汚職ばかり。(……とここまでは真当、富柏村) 最近のニュースは日本最大の食品小売業の一つである<明治屋>が偽松阪牛を売ったことだ。「なんでこんなにひどいんだ、真相を教えてくれ」と私は日本に行った時にテレビ局の友人に尋ねた。「その真相はあなた(蔡瀾)みたいな食通にかかってるよ」と彼は言う。「食通のグルメとどんな関係があるんだ?」と私。「明治屋が松阪牛だと人を騙しても、使っているのは最高級の日本の牛肉だし霜降で「松阪牛」と書かれれば高く売れる」と彼は言う。「しかしいったん食通が食べれば違うものは違うとわかるだろう、それが俺たちの関心をひいて調査が始る」。「どうやって調べるんだい?」「簡単だよ、松阪牛は牝牛の肉しか食べない。高いものは珍重されて交配も気をつかう。自分たちがニセ松阪牛を検査したら牛のDNA、それが牡牛だとわかって、それじゃ松阪牛じゃないとわかったのさ」。なるほど道理がある。みんなが私に「日本の牛肉はあんなに問題があるのに、なぜ蔡瀾の企画するツアーで食べに行くんですか?」と尋ねるが、私は絶対に自信がある。なぜなら私たちが食べに行く私の友人が経営するレストランは自分の牧場があってそこで薯米(雑穀?)だけ食べている。薯米を喰う牛は問題ないのだ。】
前半の日本への鋭い視線は納得に値するが後半の話(日本のテレビ関係の友人との部分)は事実か創作かもわからず。偽牛肉のDNAまで検査した報道関係者があの明治屋と明治屋産業の区別がつかぬはずあるまい。この話、創作か?。結局最後は自分の企画するグルメツアーの宣伝になってしまうのは最近の蔡瀾、これで香港で最も原稿料が高い随筆家の最近の作風なり。

五月二十八日(火)快晴。高温多湿にて不快極まりなし。遅晩出街にて何も食す気もおきずファーストフードの餌にて空腹を紛らわすは望まず午後九時以降の食事は胃にも過負担かと晩飯を採らず。このようなこと何年ぶりか。今後午後九時以降の食事控えようかと決心。ここ数日『東方日報』頗る読みたき関心抑え難し。朝『朝日新聞』は読み流し『South China Morning Post』『信報』『蘋果日報』と三紙を購う毎日にてこれに『東方日報』まで加えるとかなりの量となり抱えきれず、また『東方日報』は(週刊香港のK氏は朝会うと堂々と東方日報を小脇に抱えているが……笑)多少、周囲から「そういう方ですか」と色眼鏡で見られる個性溢れる新聞にて(淫売の記事などかなり多し)バスの中でも東方日報広げるはむさ苦しきオヤジばかりにて気が引けるものなり。よって朝は購わず、せめて朝と昼で三紙読み終えたご褒美に売れ残りでHK$6がHK$5になって売られている東方日報を買う毎日。東方読む心境はといえばホテルオークラのロビーにて『アサヒ芸能』、新宿パークハイアットのNew York Barにて『ビックコミックスピリッツ』、英国航空のビジネスクラスにて『サン』を読むが如し。クダラナさでは蘋果か東方かといふ目糞鼻糞の争いながらビジュアルも充実しそこそこセンスよき蘋果に比べ人間の業の如きもの露骨なるが東方にて他の紙面には見られぬ興味深き「どーでもいい」記事多し。週刊香港K氏ばかりか某朝日新聞香港支局にて長年助手を務めしC氏も数多くの新聞に目を通すなかでどれか一紙を選べといわれれば東方と答えたことを思いだす。▼幹部警官の黒社会との癒着及び娼妓提供便宜につき廉政公署がこの警官を逮捕し独走せしそのやり口が気に入らぬと警察側が廉政公署に吠えた件、この警官は保釈から休暇をとっていたが警察側は捜査継続中ながらこの警官の職場復帰(ただし麻薬取締科より事務職への異動あり)を認める。疑わしきは罰せずといふ崇高なる理念か(嗤)。また蘋果日報によれば曾政務司司長の実弟にあたる曾警務署署長は何に怒ったかといえば廉政公署の新聞発表がこの警官・姓は洗が「免費招妓」を受けて「通風報信(情報提供)」を行ったとした点で、これは「通風報信」の結果「免費招妓」を受けたということより警察にしてみれば名誉棄損にあたるそうな(笑)。警察の甘え醜悪なりけり。▼芸人・謝霆鋒君、高級高速車での自爆事故自らの為業でなしと警察欺かんとし偽証並びに警官への贈賄にて廉政公署に身柄拘束のうえ取調べを受けて束の間、今度はフェラーリF355 Spiderにて三號幹線美孚のあたりを時速200kmにて快走し覆面パトカーに拿捕される。楽しみ半分かフェラーリにて追従する蝿記者の低速車を愚弄せし為業にて連日の暴走はまるでジェームス=ディーンよろしく若くして事故死すれば永遠に明星か。

五月二十七日(月)快晴。黄昏に某氏に誘われDeep Water BayのHK Golf Clubのバーにて一酌。ゴルフに興味などもなくましてや香港を代表する倶楽部など縁もなし。さすがに格式ある倶楽部にてバーも心地よし。我がウヰスキーのコレクションはさすがにマンダリンオリエンタルホテルのチナリーバーには到底敵わぬがこの倶楽部のバーよりになら品ぞろえ負けず。バーの椅子席、ソファはゆったりしたものが壁側の作りつけの席は腰掛け程度にしか奥行きがなく、寛ぐにはとても窮屈にて、ふとこれは正装のご婦人が壁を背に背筋をしゃんと伸ばして坐りバーを眺める位置と察す。荷風日記昭和六年から七年に読み進む。荷風散人「つゆのあとさき」稿了しお歌の癪が原因で数年に及ぶ関係が破局迎え、散人ふらりふらりと墨東へと足を向ける。名士もおらず豪邸もなきその一帯が隠遁の生活には適しているかと思い墨東に毎日のように足を向け始めこれが墨東奇譚を生むこととなるのだが昭和七年に入ると世の中かなりキナ臭くなり軍部の独走に言論の自由もなくなるかと憂いつつ鮮満からシナへと拡大する帝国の進攻は語らず散人は墨東のうらぶれた娼家へと浸る。政局不安定、不景気、異常気象、歌舞伎座の客席に蛇が投げ入れ銀座で恐喝がありと社会道徳もなく……まさにキョービの如し。▼神奈川県相模原市内の県立高校の校長が卒業式での国旗掲揚と国歌斉唱をめぐり「個人として妨害する」と発言した1人の生徒を県教委への国旗国歌の実施状況報告で「2年生男子生徒に過激な発言をする生徒がおり説得に時間を要した」と県教育委員会に報告。この報告を情報公開で知ったこの元高校生が個人的に行動すると発言しただけで妨害の意思がないことは伝えた。校長の誤解だ」と県教委に訂正を請求したが県教委が拒否したため県個人情報保護審査会へ異議を申し立て同会が「人権上の問題を引き起こす可能性がある。校長の裁量の範囲内として許容される妥当な記載内容とは認め難い」として「削除すべきだ」との答申を出したが県教委の清水進一教育部長は「答申は尊重するが、検討してから結論を出したい」と話している。……校長も校長なら教委も教委。本来生徒を官憲から守るべき立場にある校長がたかだか国旗国歌に異議申し立てした程度の生徒を過激異端児として権力に突きだすとは。この校長も教委も所詮は国旗国歌が滞りなくいかなければ自責となることへの保身のみ。そして平和ボケ、思想ボケ、判断力欠如しているこの校長や教委という「大人たち」にとってこの生徒の本人の考察としての正論、<権力>への反論の存在すら認められぬ了見の狭さよ。これが教育では、もう終わってしまっている。少なくても戦前にあっては治安維持法であるとか国体護持といった大義こそあれ旧制中学、高校にあっては反骨であるとか学問の自由を尊ぶ精神というものがたとへ公には出せぬにしても校長の了見の範疇に存在したのではあるまひか。その精神が自立とした自己としての江戸英雄であるとか(世代の最後でいへば)後藤田正晴といった<個人>を生んでいるはず。キョービのこの思惟なき隷従としての教育体制ではそういった<個人>すら生めないのである。後藤田正晴君ならば建設的意義なき国家転覆を企図したテロなどには徹底して立ち向かうだろうが一学生が本人の思惟にて国旗国家に疑問を呈した程度でその学生をおカミに報告するような野暮なことはすまひ。▼来月の国立劇場は橋之助の「俊寛」に中村芝のぶちゃんが千鳥役に大抜擢、と築地のH君より朗報。橋之助曰く「父の千鳥も好きでしたので、芝のぶには父のやり方をしてもらいます。千鳥もみものになると思いますよ」。芝のぶといへばもう十数年も前に稚魚の会だの若手の勉強会の頃から舞台を見ていた養成所出身の若手にて芝翫、田之助といった古風な女形の芸を継承できる役者。千鳥、乞ご期待。

五月二十六日(日)快晴。日本もダービー日和かと思いつつ新堀クリスSに希望を託し東涌より有志八名で空港を眺めつつかつてZ嬢と歩いた大嶼山北岸を途中休みもせず二時間半にて大澳。海韻海鮮菜館。墨魚餅(烏賊の揚げ蒲鉾)などでビールかなり飲む。我が社(小株主ならこれくらい言ってもよかろう)冠忠巴士の子会社大嶼山巴士に揺られ昼寝しつつ梅窩。船のデッキでのんびりビール飲みつつ戻るつもりがハイドロフォイルでいきなり中環。帰宅して日本ダービーの実況録音聴く。やっぱり一番人気谷野ギムレット、武豊の騎乗がよかっったのだろうが二月末の骨盤骨折から僅か三カ月。Dettoriのセスナ機墜落からの生還にしてもこれも天才は天運にも恵まれし、か。新堀クリスS二着。今宵は満月なり。山頂のVictoria House(政務司司長官邸)の上空に泳ぐ月を眺める。▼ヤマハの川上源一氏九旬にて逝去。小学生の頃にヤマハ音楽教室に通いし少年少女は乱発されし表彰状の類で彼の名を知らぬ者なし。ピアノ、エレクトーンの類を高度経済成長の最中子どものためにと買い与えヤマハに利益供与を続けた家庭少なくなし。あの当時テレビでは笹川良一氏が一日一善とCMに出演し川上源一と笹川良一の区別がつかなかったことを彷彿す。▼航空会社の安全度、澳州(カンタス)、奥太利、維珍の三社が無事故御三家にてそれに意外なものでコンチネンタル航空が続き全日空が七位、香港のキャセイは20位、21位からは新加坡(意外と低位)、タイ、ガルダインドネシア、フィリピン、大韓航空、エアーインディアと続き中華航空は27位、米国の業界紙『航空安全財務』によると中華航空の航空事故比率は90社中ペルー、キューバ、ジンバブエ航空に続くワースト四位なり。(東方日報)中国の航空会社より危険とは台湾の立場なし。

五月二十五日(土)薄曇。競馬は沙田銀瓶(G2)にて競馬にも行きたきものの天気も回復して陽光ちらほら海で読書も捨てきれずトレーニングも不足かと思えば走らねばと思い結局、走って山頂を越え二時間弱で海にたどり着き少し泳ぎラジオ中継ききつつ競馬するというトライアスロン(笑)。競馬の合間で周恩来『十九歳の東京日記』矢吹進編(小学館文庫)読了。R1、R2は新馬戦にてR1のLittle Elephant(馬安東/苗)前晩賭率1.4倍では単勝で買うにも難ありR2の喜一龍(胡活士/方)とDoubleにしたところLittle ElephantはFvながら2.4倍まで下がっており喜一龍も2.7倍で6.48倍を得る◎。焦点は通算54勝の薛順強君本日八場参戦中どのレースにて優勝し55勝を上げ晴れて見習いを卒業するか。R10のCelliniがFvにて薛君騎乗。堅いはずのR4(「1800m)Song Of Praise×、R5(2000m)New Planet×とFv馬が入賞もせずR7(。1200m)もFvのGolden Air×とするがSnippyetyiyea(Size/Dunn)が入りなぜSnippyetyiyeaを無印(ノーマーク)だったのかと反省す。R8(「1400m)は昨季の最終日6/17以来の出走しかも夏厩からSize厩に移ってようやく登場のPrime VainがFvにて満を期してか×、このレースにて薛順強君Me Firstに騎乗にて優勝、見習い卒業す。R9(沙田銀瓶1000m)多勢に惑わされ躊いなくAll Thrills Too(Dye/Hayes)とするが×、なぜFirebolt(馬安東/Allan)を選べなかったのか自省。R10(1800m)あまり強豪馬おらずこの相手ならTurbojetかと思うがCellini(薛/卓)が一番人気にて(馬券購入は薛君優勝のR8前だったので展開予想できず)どっちが来ても不思議じゃないと連複にしたらTurbojetで二着がCelliniと◎。見習騎手が卒業は前回は確か大雨の中での鄭雨填君の優勝を沙田にて傘さして見届けいつもこの祝勝はまことに嬉しきもの。周恩来『十九歳の東京日記』、周恩来君は高等師範、一高と試験に落ちるが時は日本が対華二十一カ条要求を突きつけ在日のシナ人留学生が大挙帰国し五四運動へと時流が向う激動の時期でありとても勉学に集中できる時期でもあるまひ。不合格し夏に里帰りしてからまた日本の土を踏み翌春帰国するまでの七カ月のあいだ日記に本文綴ることなき日々が続きこの時期が周恩来研究の中でも注目浴びる空白なのだが国家を憂いつつ菜食と不婚(独身主義)を願う周恩来君、慧弟の存在がかなり気にかかる。旧知の矢吹先生なのでメール差し上げる。大正の東京で維新號、中華第一樓といった今では老舗中の老舗だが其処に若き周恩来が通っていたとは。日記とは記録として凄いもので周恩来君が「なにごともなし」と綴る1918年7月29日の東京から下関への車中、周と出会った元木省吾なる北海道立函館商業高校国漢科の教員(元木は故郷香川県丸亀での連隊演習に参加のため帰郷の途中)が周恩来との交流を詳細に渡り記録しておりそれが現存する。「台湾の」中華航空機香港に向い台北を飛び立ち墜落?、またも中華航空の事故。夏なのにおでん。水戸の「天狗党」なる日本酒飲むが右翼にはなれず。『噂の真相』読む。香港は25度にて涼しいほどだが衛星放送にて日本の天気予報見ていたら25度は「汗ばむ」そうな。風土の違いか。

五月二十四日(金)薄曇。黄昏に銅鑼湾の恭和堂にて亀苓膏食すがやはりかなり甘くなった気がするのは食べ慣れて甘味が要らなくなった所為ではあるまひ、一般ウケ狙い甘みをつけたのではないか。ジム。Z嬢とH氏の事務所にて打合わせ済ませ銅鑼湾はLeighton Roadにある泰寶なるタイ料理屋、店を構え一年ほどだがいつも賑わっておりいぜんから気になりつつ新参、本当のタイ料理よかかなり香港風味ながら極めてしっかりした味つけにて食が進む。九龍城を除けばイチ推しに出来るかも知れぬ。ドリアン購おうと超級市塲に寄れば生鮮食料品を除きサッカー一色。かろうじて避妊具にはW杯コンドームなくやはりシュート!はマヅいのかとおもふ。帰宅して父より電話あり。明日が古稀となる誕生日にて昼間ファクスにてお祝いのみ伝えておいた返事に、と。あんまり世の中サッカー、サッカーとなり国家対抗蹴鞠は興味もないがついXXXXで応援する必然性もないが仏蘭西筆頭に欧羅巴チームが×××の上位三位を占めているので四位のブラジルを××する。ついでに大リーグも知ってるチームはマリナーズだけなのでマリナーズがヤンキースについで×××なのでこれも××する。

五月二十三日(木)丑三つ時にサリンジャー『ハプワース』読了。若くして自殺を遂げしグラス家の長男シーモアの手紙と言われればシーモアの理知的な遺言と読めなくもないが「こんな書き方してしまったらもう絶筆するしかないよな」といふ内容にて珍紛漢紛。戌の刻ジムにてBodypumpし亥の刻中環はPottinger St(石板街)のChippyなる英国人が営む(といふかそれ以外誰もおらぬが)Fish & Chips屋にて(それ以外に何を食さむといふ感じだが)Fish & Chips喰らふ。狭い店ながら二更に二組六名ものいかにも「Fish & Chipsでずつと生きてきました」風の壮年の英国人男女なにが悲しくて世界に名だたる庸記からわずか100mも離れておらぬこの店で夜な夜なFish & Chipsを喰らふのか判らぬが(Fish & Chipsじたいけして美味いものではないが)この店はけっこう評判にて食してみれば確かに白身魚はホクホク、馬鈴薯もサクサクといい具合に揚げてあり油がひどいと最悪のFish & Chipsもまぁまぁイケてるがやはりけして美味いものにあらず。帰宅してTanquerayでドライマティーニ飲む。▼W杯をまえに香港政府博打法令改定しジョッキークラブ以外のいかなる賭事もノミばかりかマカオの競馬から英国のブックメーカーまで香港よりそういった香港外の賭事への投注もご法度とする。インターネットにて隠れてやれば見つからぬ気もするがクレジットカード会社に対してそういったブックメーカー等へのクレジットカードを使っての支払いすら停止すると政府は宣ふ。つまり今後どうやってブックメーカーを利用するかといえば現在ブックメーカーの口座にある元金を常に勝ち続け送金せずとも済むようにすることか(笑)。

五月二十二日(水)夕方某ミッションより依頼あり歴史博物館案内す。観光ではなく視察であるため解説も緻密となり二時間半。終わって九龍城に向い創發にて潮州料理。美味い。店の給仕たちの慇懃さも見事。琵琶蝦、蝦蛄、顆貝、臭豆腐、冬瓜湯など。競馬五レースに間に合う時間ながら競馬場横を九龍城からの隧道巴士で通りながら帰宅。R3(「1650m)にて期待の勇将(Size/Dunn)が外れR4(「1200m)にて雨に強いはずの鄭雨填の恵風(D Cruz)も来らず雨降り始めR5(。1000m)は馬安東騎乗にて115磅と軽い龍覇も期待に応えず連続六レース複勝にも当らず。R7(。1650m)は一番人気となったC'est La Vie(馬偉昌/Allan)は堅いはずが折からの大雨で荒れた馬場でこれも外れ、落雷激しく黄雲警報発令の大雨の下最終R8(1650m)のDanriva(Size/Dunn)が9.6倍とこれは頂戴したも同然とこの日の前七レース分の負けの回収にかかるがゲートイン寸前にて止まぬ落雷と馬場の最悪なるコンディションから馬が一斉に引き上げ始めレース取消しとなりぬ。雷鳴轟くなかサリンジャー『ハプワース』読む。

五月二十一日(火)曇。ここ数日の雨が高温の曇り空に無風でかなり蒸し不快指数120%。市街は夜に入っても摂氏30度近くあらうかじつとしていても脂汗がじんわりと流れる。藪用いくつか済ませ排ガスと汚水が鼻をつく佐敦の人ごみにまみれ食欲も失せるが何か喰わねば身体も疲労困憊、和味粥店の及第粥も彌敦粥麺家の雲呑麺もこの暑さにてはとても食す気になれずやはり猛暑かカレーと亜龍にて蝦カレー食す。やつぱりこの悪条件でもカレーは美味いから素敵だ。呉松街はカレー激戦区にて亜龍に、www.jordancurry.com(開店当初は閑古鳥が啼いていたがかなりの繁盛ぶり)に更に一軒名前失念のカレー屋開業。佐敦カレー合戦、いいことだ。食欲なしなどといいつつ亜龍でカレー食せば痺れた舌に優しきは明記の甘味にて凍紅豆沙。

五月二十日(月)曇。佛誕節。昼に寶雲道走る。中華T嬢よりいただいた日本橋・古樹軒魚翅らーめん食す。夕方ケーブルテレビにて池田大作先生原案の広島の平和をテーマにしたアニメ拝観。ジムにてPump。Louis LatourはBeaujolais Villagesの'00。『優駿』だの雑誌たまったものまとめ読み。『優駿』は創刊700号記念にて昭和12年に11の競馬倶楽部が独自に運営していた競馬が特殊法人日本競馬会と統合され同15年にパルプ輸入不足で競馬誌も廃刊となり翌16年に『優駿』が公認誌として創刊されている。それにしても山口瞳、寺山修司が寄稿し大橋巨泉の巨泉対談(武田文吾調教師の「調教師の定年が70歳、平均寿命が69歳、死んでから辞めろといっているようなもの」とか「騎手を週末の三日閉込めることは人生の七分の三を監獄にいろというのと同じ」など時代を感じさせる名伯楽の名セリフ)、阿佐田哲也が武市好古と対談し、巻頭詩が草野心平、谷川俊太郎、金子光晴とは、60年代とは本当に楽しい時代だった。サリンジャー沈黙に入る直前の最後の作品『ハプワース16、1924』読み始める。▼中華圏にあって冷静に台湾を語ることのできる識者・Frank ChingがSouth China Morning Postの連載で使う有名な(出典は不確かな)話だが、毛沢東曰くもし我が国が中華人民共和国なる国名を用いず中華民国なる名をそのまま継承していれば台湾問題は存在し得なかった、と。事実はそう簡単ではないが、台湾に逃げた蒋介石はもしそうであれば最初から台湾共和国を成立させ台湾はもうとっくに独立していたかもしれない(笑)。▼警察当局は高級司警の逮捕を受けICACの手法、証拠不十分での逮捕捜索、立件の停滞、マスコミへの安易な情報漏洩といったものを非難。ホテルに黒社会から宛てがわれた娼妓と一緒にいるところを現行犯逮捕されて何をか言わん哉。▼昨日のオークスにて四番人気スマイルトゥモローの優勝について朝日新聞「ゼッケンの10はサッカー日本代表で中山がつける番号。勢いのある数字というものが存在するかと思わせるほど最後の伸びは素晴らしかった」と。阿呆か。あっ、さういへばこの記事も衛星版の10面である、これは必然といふものである……とでもいふか? W杯白痴化も極まりたり。▼朝日新聞の世論調査で小泉「単純」一郎(メ佐高信)の支持率は38%となったが小泉君曰く「支持率が変わっても小泉内閣の決意と改革路線は変わらない。小泉内閣は極めて安定している。党内の求心力も高い。見誤らないほうがいい」と唖然とする開き直り。これはマジにバカだ、見誤らないほうがいい(笑)。国民の決意と路線改革への期待あっての支持率だったのが「なにもできない」上にしなくてもいい靖国参拝や有事立法、個人情報法などばかり邁進し「ただの変人」であることが暴露されている今、何をかいわん哉。それにしても小泉君を首相に選んだこと、自民党のような政党しか政治を担えないこと、いずれも国民にその責任があることは事実。▼昨年の香港の自殺率が15.8%。今年は確実にもっと増えている。戦争や本当の貧困、飢えといったものを経験していない若い層がバブル崩壊による負資産といったことが原因で易しく自殺する現状。富柏村の香港の自殺についての考察はこれを参照のほど。▼注目のスポット、瀋陽の日本総領事館、写真で見たら「悲劇の舞台」となった問題の鉄製の扉、新築の総領事館建物に比べかなり錆の目立つ老朽化したゲート。阿南大使的には外部からの侵入者を防ぐためにも、自由を求める市民の側からは侵入を容易にするためにも、開け閉めが楽なゲートに改修すべし。ところで総領事館の建物、新築と見受けられるが正面に向いた側の四機の冷房外付け、あれは醜悪じゃないか。それにしても北朝鮮からの男女、何が悲しくてわが日本国を選んだのか。人道的保護を期待するならそれは誤謬でしかない。

五月十九日(日)大雨。昼前ジムにてBodypump。競馬。雨模様にて香港ではとびきり雨多き沙田で馬場はyieldingよりsoftという悪い足場。それでも丸善の傘に無印の雨套、Dr. Martinの靴とHunting Worldの鞄と雨装備すればしたで楽し。今季の三冠大賽の最後を飾るChater Cup(G1)、これまでの二戦はSteward's Cupが電子麒麟、Gold Cupは實業先鋒。Charter Cupといへば昨年は「すでに気持ちは引退」していたOriental Expressが奇蹟の復活優勝を遂げた。そしてCharter Cupといえば翠河(Reiver Verdon)にて90/91年から連続四年Charter Cupを制し翌年から三年連続でGold Cupも制し93/94年はSteward's Cupも獲り三冠馬の栄誉。このレース、神彩金剛(簡/Mosse)、Cheers HK(Allan/Whyte)、原居民(Allan/Marwing)にHelene Vitality(Hayes/Dunn)が人気。新加坡帰りの原居民、雨も得意だし「これまでの敬意」もあり複勝とするが新加坡と同じく出走から三着につけたものの次第に後方に退き一番人気のCheers HKが一着、Helene Vitality二着で三着には45倍のGreenmore(王/鄭雨填)入る。鄭雨填といえばこの日二勝しており雨の日に強いジンクスは定着。このChater CupSize師の馬は出走しておらずAllanか簡炳犀かと思っていたが軍配はAllanに。やはり重賞となるとAllanだなぁ。ちなみに神彩金剛は鼻血、では勝ちにも絡めまい。Queen's Silver Jubilee Cup(G2)1600mはMeridian Star(Hayes/Williams)がFvながら「知りあいの馬は買う」原則でW氏のGoggles(Moore/Marcus)二番人気。二週間前のレースで初勝利で勢いに乗り大雨が心配だがレース前にパドックでの馬総覧のあと馬券を買うW氏が珍しく笑顔で(いつもレース前は厳しい表情なのだ)「三番、三番」と私に念押し(もう買ってます)明るくかなりの自信、レース展開は最終コーナー回って四番手、一瞬前を閉ざされたかと思ったらさすが馬安東の騎乗でさっとコースを変え最悪の足場で3/4馬身差の一着はお見事◎。W夫人いつも明るいが大雨にて屋内にてモニタ中継を見ていてG2での勝利に近くにいた私とまで抱合うほどの歓喜。R9(1400m)にてCentury Star(Size/Dye)Size厩に移って四連勝果たす◎。沐ヌはちょっとキツくなろうが次は沐ヌだ。ここまで九レース中4つ勝って三つQuinellaで擦っており最終レース(1400m)はSnippedydooda(文)Whyte騎乗になってもダメ、やっぱり班が限界か×。Chater Cupが終わると今季は残すところもう一カ月弱である。サリンジャー『大工たちよ』読了。四十年代を舞台に紐育の裕福なユダヤ人一家、それもボードビリアンだった両親が引退し子どもたちはラジオショウで子役として活躍し、その子たちが成長し……と所謂ファミリーものにはならない「雨模様の日曜日の午後のような」サリンジャーらしい状況設定。

五月十八日(土)曇。朝百年ぶりに寶雲道10km走る。寶雲道に向う途中舊山頂道を渡ればQueen's Garden前に此処に居住せし芸人・謝霆鋒君の出入りをパパラッチしやうと構える蘋果日報の蝿記者。謝霆鋒君は交通事故の偽証並びに警察への贈収賄でICACに留置取調べを受けし容疑者にてマスコミに追われても致し方なき立場か。寶雲道にて軍、警察の類にしては筋骨隆々とはいへぬが精悍といえば精悍なる若者男女走っており何かと思えばICACの制服部隊の持久走訓練。さういへば今朝の蘋果日報にもICACが警察の前O記(マル暴)にて現・麻薬取締部の高級司警(警視といつたところか)が暴力団による売淫取締りに際し捜査情報を暴力団に流し見返りとして無償にて妓女の提供を受けていたことでこの高級司警をICACが逮捕と一面記事。この司警、警察内部ではエリートにて将来が期待されていたが最近の人事移動では上級職への昇進が滞り本人もかなり荒れていたといふがこれも警察内部でこの暴力団との癒着がすでに露見されていた結果か。日本にICACあれば神奈川県警など壊滅か。ランニングから戻りエレベータに乗ると本日よりマンションの游泳池開業との告知あり早速小雨の中泳ぐ。これで自転車乗れば一人トライアスロンかとおもふ。昼に中環卑利街・陳成記にて牛南伊麺。何度食しても極めて美味。日清食品がカップヌードルが目指している味と歯応えはこれなのだろう、と勝手に想像す。午後BodypumpとBodycombat。途中小一時間あり星巴珈琲にてエドワード=サイード先生のAl-Ahramに書かれた論説を読む。イスラエルのパレスチナ占拠は言語道断ながらサイード先生が強調するのは、パレスチナ人が具体的な人間として世界に写らず、ただテロ、暴力、悪魔と狂信がパレスチナ人の印象となっているなかで、パレスチナが蹂躙され続ける中での立ち後れは教育と憲政であり前者はパレスチナの知識性を断ちアラファトに象徴される独立戦線は対イスラエルという前提があってのみ存在し得る組織でしかなくパレスチナが国際社会で確固たる地位を占めるための憲政の確立が急務であること。納得。小腹空きDes Vouex Rdのフィリピン料理屋Joyce & Diana Restaurant(いかにもマニラの響きの店の名……笑)が店頭にて売る牛肉ソテー串立ち食い。横丁のセブンイレブンにて缶麦酒購えばよし。このソテー、肉もいいがたぶんオニオンのソースが格別にて、これを食しては菜食主義者などに間違ってもなれず。先日古いRolexのガラス面を傷つけてしまい閣麟街の骨董時計屋・古雅集にて硝子研摩してもらふ。主人曰く熊川哲也君張國榮がコンサートに客演のおり古雅集を訪れた、と写真見せられる。Z嬢とWellington Stの蓮香樓にて晩飯。梅子蒸肉排、鶏蛋局魚腸。夜七時前といふのに満席。古い茶樓であるが故に店内に掛けられた絵、書の類どれも見事にて「浩歌不覺乾坤小酣飲方知日月長」なる書はことに余の好み。此処では給仕が今度は「酒井法子(じゃうじんふぉーじ)も来たし江口洋介(じゃんはうよんがい)も来た」と自慢気。そう、この店は業界関係者も多い。給仕かたことの日本語も解すらしく誇らしげに隣席の夫婦に日本語で「おはよう」「ありがと」だとと言いながら「なにせ日本人は英語もわからないんだからこっちが日本語を話すしかない」と。大して学もなき給仕にかう言われては……。帰宅してサリンジャー「大工たちよ、屋根の梁を高く上げよ」読む。▼朝日新聞文化欄にネグリ&ハート『帝国』について邦訳出版前から社会科学書としては異例の関心を集めている、と記事あり。すでに原本出版から二年が過ぎ遅きに達した感あれど読まれるべき書。昨年春だかにこの"Empire"を入手した当時は検索かけても日本では翻訳作業に入っていた東外大の浜邦彦氏のサイトくらいしか『帝国』は見当たらず浜氏にメールしたところ遅々として翻訳が進まぬ状況をお知らせいただいたが今日検索してみればGoogleにて百件を越すヒットにてこの著作への注目度高まったことを知る。邦訳は『帝国』七月に以文社より刊行予定だそうな。

五月十七日(金)雨のち薄曇。西尾幹二『国民の歴史』読む。建築も言語も東洋vs西洋ではなく<大陸……これにはシナから欧州までを含むユーラシア>から日本がいかに異なっているか、稲作は縄文時代からあって弥生人(渡来人)が持ち込みしものに非ず、平城京は長安を模したものに非ず、秀吉の朝鮮出兵はフィリップ二世に対抗して(笑)世界帝国形成の野望であり朝鮮侵略の善悪で語るものに非ず、フランス印象派に先だって近代絵画を切り開いた北斎……と、これを読めば「そうか、日本ってそんなに凄い国だったのだ」とどんなに国家として破綻していても何か勇気がもてる、ってわけか(笑)。ガキが隣家のガキ相手に「ウチのトーチャンなんて……」とムキになっている姿に酷使。いずれにしてもこれは歴史教科書としては無理。日本人倶楽部に『国民の歴史』返却に行き橘屋の女将さんに邂逅。倶楽部の「さくら」にてS君と食事しつつ物語す。島根は米子の久米桜の吟醸酒いただく。辛口ながら上品な甘みあり見事。S君は日本語を習得して数年ながら日本語で三言えば十通じるほどの感性にて魯迅の上海・内山書店での物語なるものはこれの更に奥深きものなのかとおもふ。中環まで戻り葉巻屋でCohiba購い星巴珈琲にてエスプレソ飲む。帰宅してCohibaの香りに包まれてMiles Davis "Filles de Kilimanjaro" 聴く。

五月一六日(木)雨。昼に蘭桂坊にある周ママ川菜家宴にて坦々麺、紅油抄手など。最近流行りの飲食店営業登記せぬ二樓餐廰にて四川省は宜賓出身の周ママが地元家庭料理を供す店。夕方に香港歴史博物館、近々団体を率いる某二氏に展示内容の解説。何度見ても上っ面だけの展示に不満。F氏より八月に歌舞伎公演あり橘屋の女将さんが来港中と連絡を受けるが晩に太古城にて薮用あり終わってからは疲労困憊にてお伺いせず。▼江蘇省揚州市は国家主席江沢民君の郷里なりしが揚州といへば揚州炒飯の名を馳せたり。起りは隨朝煬帝の御時に帝が寵臣越国公・楊素まことに砕金飯(つまり玉子炒飯)好み帝楊素従へ江都(現在の揚州)御幸のおりその炒飯揚州に伝わり後来千四百年の長きに渡り揚州にて見事に成たる炒飯の極品なり。具は草鶏蛋(地鶏卵)、干し海鼠、地鶏腿肉、中華ハム、干し貝柱、淡水蝦、椎茸、筍、青豆。これを以て揚州炒飯と云ふ。その揚州の飲食店組合「揚州炒飯」を商標として登記しこのレシピの他が揚州炒飯の名を掲げることを禁ず。目的は「揚州炒飯が正統を守ること」にてこの名を用いる際に使用料徴収するなどは一切なし。いずれの日か「北京」水餃、「上海」炒麺といった名称も登記されるのか。最後は「中華」蕎麦も中国が登記し日本側は石原慎太郎らが対抗し「支那」蕎麦を登記し日中間にて政治問題とならんことを願う。▼ムーディーズの格づけにて伊太利政府発行の外貨建てユーロ建て長期債の格付をAa3からAa2に引き上げ日本は主要国で伊太利と並び最下位だったものが単独最下位となり更に日本国債は格下げの模様にて奈落の底へと転落していっている。伊太利政府といえば経済破綻して倒産し会社更生法適用レベルだが倒産というのはよくよく考えれば会社は倒産しても人はまだ生命力はあるわけで、それより下ということは倒産どころか危篤、死に体といふことである。だが誰もそれを深刻に受け止めていない。もう本当に救われない国家と経済体と化している……南無阿弥。

五月一五日(水)曇り。朝に市街にて路面電車の珍しき光景あり。一台の電車故障せば客下ろし各電車に備えつけたる組立棹にて電線よりパンタグラフ外し故障車の後背に走ってきた電車も客を下ろし故障車を押して走り去る。日本人倶楽部にて某会合あり図書室にて「買うのはカネがもったいない」西尾幹二『国民の歴史』(産経新聞)借りる。「歴史はこんなに面白くてわかりやすいのか」って帯にあるがここまで日本贔屓に歴史を語ればそりゃ面白いだろう(笑)。少し読んでみてこの西尾って人は単に素直で自分を含む仲間、それが拡大して「単一民族としての」日本人が好きなのだと感じる。素直でない私はこんなに単純に日本を愛せぬ。ふとアイデア浮び『週刊香港』のK氏にアイデア押し売りに参じる。編集部のビルにありながら一度も訪れてなかったY氏経営のひまわり出版(書店)。歴史は無邪気に日本贔屓できぬが日本語の美しさは擁りたひとおもひながら奥山益朗『敬語用法辞典』(東京堂出版)など購ふ。快活谷にて夜馬。R1(「1000m)にて今季未勝(通算二勝のみ)黎家駒君騎乗の永豐泰パドックにて勇姿みせ114磅と軽くひょっとしたらと期待し16倍にて見事一着◎。一番人気Whyteの佳利來とのQで36倍も獲得◎。R2(」1650m)九歳馬・華仁之星Fayd'herbe騎乗での調教の時計よく今季13戦未勝ながら強敵おらず一着◎、二番人気Spectacular Talkとの連複は77倍◎、一番人気hennessy StarとのTは98倍◎。ここまでツキがあればTTも獲れるか(甘い……笑)とかなり期待したがフジヤマ館長との組合わせは九頭中六頭的中にて一頭四着。R6(1650m)Happy Valley Vaseは六戦二冠一亜二季一負の高勝意(Whyte)がFv、Size厩に移舎から近十戦五冠三亜二殿未負の我らが獅子花(Cahill)に目下六連勝して」班から沐ヌに急上昇した魅力小子(Fayd'herbe)といふ好勝負、快活谷の重賞はSizeかと賭ければ進路妨害で抗議があったが獅子花が高勝意を押さえ一着◎、三着に必長勝入り確かに勝利からは遠のいているものの沙田の精英班馬と戦ってきた馬の快活谷初戦に目が届かず無念。R7(1650m)Sizeにて六戦二冠二亜二負と好調のDanrivaで勝負に出たが×、Fvの快蝦王も沈む。黎家駒君はR5でも53倍でBravo Victoryにて一着して二勝は見事。田中康夫チャンと瓜二つの六國ホテル総支配人L氏に邂逅、久しぶりと言われさういわれれば久しく粤軒にて食事してない。見習騎手免許剥奪され調教騎手として更生中の余健雄君がパドックにて働く姿を見る。来季はマカオにて見習騎手と蘋果日報に報道ありといふが如何に。▼歌舞伎座七月興行は沢瀉屋にて沢瀉屋といふと夏の風物詩となりぬ。沢瀉屋の狐忠信最後に見たのはかれこれ十三年ほど前。「暗闇の丑松」の演出も期待。沢瀉屋がやるのだからいっそのこと暗やみの場面など完全なる暗転にしてしまひ観客から見えない中で見えないのにきちんと演じる、といふのは如何か(笑)。暗転といへば普通多少の明かりが残るが完全なる暗転に徹底せしは故・梅幸の藤娘の前曲にて暗転から「梅幸の」藤娘が映る様は眼に焼きつきしほどの「衝撃」なり。

五月十四日(火)曇。ここ数日私事にて薮用続き疲労困憊。▼警察公安当局による監視社会化進み日本でも警視庁が歌舞伎町に監視カメラを設置したら今度は香港も警察が蘭桂坊に監視カメラ設置、と。Easter、大晦日と群衆が集まり死亡事故まで発生した過去もありさういった治安が目的といふがまずは歓楽街から始めて徐々に拡散することは必至。本来必要なのは自民党本部や各代議士の事務所、董建華行政長官室、ワシントンのロビイストの事務所といった巨悪が眠る場所にて権力の構造を監視すべきことではあるまひか。

五月十三日(月)曇。晩に月イチで香港に戻るY氏とZ嬢と天后・利休にて会食。何故飽きぬか知らぬが日本食というと此処ばかり。終わって改修工事中の維多利亞公園抜けてParklane Hotelの樓上のバー。G階の葉巻屋にて勧められしDavidoffの"T"なる葉巻は40%offながら頂けぬ風味。

五月十二日(日)小雨時々晴、夕方驟雨。ランニング倶楽部の三名と金山、針山、草山から大帽山を経て歩く。実に三月の香港トレイル50km以来の本格的なトレイルながら順調。針山頂上にて山道見下ろせば「駆け上がる」一団あり黄色の帽子から馳名港澳のCosmo Boysかと思えばその通りにて香港一のトレイル軍団の鮮かなる「走破」を目の当たりにする。

五月十一日(土)晴。Y君と大嶼山に海水浴す。慌てて競馬予想しつつ携帯にて投注。午後Z嬢のウィンドウショッピングにつきあふ。一旦帰宅。Z嬢のお買い物決まる。Y君投宿せしIsland Shangrilaに松任谷由実のCDなど届けY君と銅鑼湾は農圃にて晩餐。農圃は鮑魚翅燕窩の類も馳名ながら農圃なる名と店内に掲げられた「新興宗教の教祖様の姪が広報係にて描いてしまった田園の絵」のような不気味な風景画に表れる通り「肉」の美味い料理屋にて、他の店なら南京豆だの大根の漬物だの辣韮だのが供されるお通しからして牛肉の甘露煮にて糯米鶏翼だの京考肉だの肉々しき料理を食す。糯米鶏翼は美味いが「ドーピングしてしまった鶏」は不気味(恐はい)。恭和堂にて龜玲膏(亀ゼリー)食すが味は昔に比べかなり大衆に迎合し膏薬口に苦しといふ鉄則捨てて故意に甘めにて商売繁盛ながら媚びた商売に納得いかず。競馬、掛けし8レース中5レースにて的中の好成績。新加坡からの中継ありSQ KrisFlyer Sprint(1200m)には日本よりAir Thule出馬、ふだん日本馬は買わぬが武豊君騎乗にて森秀行氏(日本のJohn Size)が調教とあれば複勝◎、見事三着(一着は豪州North Boy(騎手はChilds)。新加坡国際盃はDettori騎乗にてGodolfinがGranderaお見事なレース展開にて一着ながらDoleuze騎乗する原居民 Indigenousは初盤から三番手といふ珍しい積極的な展開を見せ四コーナー回って当然の如く速度落ちるわけもなくDoleuze内に入らずいい位置を確保して三着◎。

五月十日(金)空港に母と大叔父たちを送迎。一時間後Y君到着し歓迎。Rolexのエクスプローラー入手す。日本ではキムタクでブームだそうで入手困難らしいが昨日母と買い物せし最中に太古廣場の某時計屋にさりげなく一つ展示されており見ればそのシンプルさに魅かれる。Y君と垢擦りに参る。日本橋永頼堂の扇子、手拭いなど頂く。晩にY君Z嬢と松任谷由実のコンサート参観。じつに1981年の「水の中のAsiaへ」以来。四十八歳で精力溢れる舞台、さういへば中村歌右衛門もこの頃がいちばん精気あふれる舞台かと納得。最近の曲は知らず聴いても余り心打たれぬが80年代の、94年の「春よ、来い」までの曲聴けば思いだす若かりし頃の情景過る。二時間半に渡り芸人の素晴らしき心意気に接し終わって佐敦まで歩き呉松街の新兜記にて食す。チップ多めにと強請る給仕も最近珍しいがそれに値するだけの服務かも知れぬ。深夜零時に此処で宵夜食す輩は「金指輪に翡翠指輪に金ブレスレッドにて飲み屋のネーチャン連れ」や「売れぬネーチャン芸人『食事ご馳走するから』と連れ出した今太閤」のやうな者ばかりにて観察に飽きぬ。▼蹴鞠のワールドカップの日本戦及び決勝は民放ラジオ全局(中波、短波、FM)がこの中継の同番組を流れるは電通の策略。東京オリムピックでも先帝崩御でもなかったこの一億総白痴W杯は国策広告代理店がその広告価値を上げるために仕掛けし暴挙にて唖然。かういふ愚挙をする電通も電通ながらそれを受入れる放送局も国民もファシズムを知らぬ平和惚け以外の何物にも非ず。この愚かな催事にて景気回復か……呆れて言葉もなし。

五月九日(木)小雨。母たち来宅。銀行の藪用などありバタバタ。Landmarkの弁慶にて昼食。郷里にて両親と暮らす妹にTiffanyのキーホルダ。夕方母と太古廣場。Seibu地下のGrEat訪れれば開店して一年余かハロッズなど英国食品扱う部門に開店から勤務する「いかにも」ロンドンっ子と絵に書いたような青年開店のことは極東の此の地にて勝手わからず心細そうに働いていたものが広東語を自在に扱い客や同僚と話す様は活き活きと溌剌し感心す。母たちと北角の雪園飯店。魚翅多少塩辛く脂っぽく他の料理食しても八割の確信にて料理人変わったのでは?とおもふが如何に。

五月八日(水)快晴。ジム。天気好く朝水泳。ツアーにて市内観光せし母たちが昼に尖沙咀の映月樓にて食事終わった時間見計らひ再会。日本人ツアーの定番の飲茶にて初めて店に入る。母たちと芸術館にて中国を代表する現代画家・呉冠中の特別展参観。創造とはかういふことなのかと唯々敬服するおもひにて一枚一枚の絵に接す。何よりも水の流れの辺の建築物の風景は見事。母投宿せしMandarin Oriental Hotel楼上の室内游泳池にて独り泳ぐ。平泳ぎにて三度水掻けば対岸に着くほどの狭き游泳池ながら深さだけはホテルの楼上にて2.5mと立派にて爽快感極まる。天井からは淡い光溢れ我の泳ぐ水音以外何もなき静寂。銅鑼湾にて先日仕立てた背広縫い目吊っており調整依頼。晩に母たち連れ快活谷競馬場のB801ボックス席にて晩餐競馬。母にいきなりR2にて12倍の単勝と連複当てられる。夜遅く母とZ嬢とホテルの樓上のVongのバー。▼信報『林行止専欄』昨日の警察による旺角淫売産業一斉検挙「火百合Fire Lily」作戦にて二百十三名の売春婦並びに関係者検挙され年間売上げ二億四千萬元に及ぶといふこの産業の八千六百萬元の資産凍結されし事受け林行止社主の健筆冴え渡り曰く、経済学者が淫売業見れば淫売の特徴は「低き技術労力とそれに反比例せし高き収入」にてつまり「娼妓の収入とその技術水準が相反」する事(これは経済学的見地にて娼妓にしてみれば過酷な労働にて秘技おフェラの巧みさなど技術力も並大抵でなしといった反論もあらうが……笑。つまり「道徳観念を除けば」性行為なる本能に基づく生殖行為を生業にするに淫売は誰にでも出来る非専門職といふことか)。淫売には三つの特徴あり、その一つは娼妓の収入がホワイトカラーのそれに勝りながらその工作の技術要求が低かれど収入多く是経済原則に反すること。またこの「低き技術にて高収入」は大抵「リスク高き生業」にて(偽物CD、腕時計売りもこの類か……)これは淫売にも言えることながら(イスラム原理主義の国家は当然のことながら淫売を厳禁し娼妓は石を投げられ毀死するはこれに該当する)しかし淫売合法の国家(つまり淫売にリスクなし)にても娼妓の収入高く、つまり一概に淫売「リスク高き生業」とも言えず。二つ目の特徴は男妓の収入女妓の収入に比べ低きこと。この原因は「女妓には<婚姻市場にて女性が得られる保障>が市場(つまり社会)になきこと」なり。つまり女妓は通常家庭主婦を同時にできず(夫に隠れて三々五々淫売をせし主婦あれどもこれは「夫からの乖離」なるアバンチュールにて生業には非ず、か……笑)言い換えれば専業主婦にはパートなる利権あれど「兼業醜業」には就業できぬこと。それ故に女妓になることにて捨てねばならぬ福利多きがため女妓の見返り(収入)高くなるが当然と。視点中国に移せば一人っ子政策により極端に男性多く女性少なき社会構成たる中国は淫売必盛にてWHOの調査によれば人口千三百万人の北京に娼妓三十万人おりこれは独逸の同比率の二倍。また一夫多妻制と淫売は両立せず社会が倫理として一夫一婦制を維持しようとする限り淫売業がその調整剤として作用したり。お見事な分析に敬服。

五月七日(火)快晴。或る用件あり日本人男性A氏と打ちあわせせし折その同僚挨拶に現れればA氏その同僚を我々に「あ、この女の子、香港人なのですが○○を担当しておりまして」と紹介す。女の子でも中年男性でも香港人でもアゼルバイジャン人でも用件には一切関係なし。仕事相手は日本人男性でなければならぬ意義などないが無意識に沽券見え隠れ、す。日本より母上実に五、六年ぶりに来港、今回は齢八十八となる大叔父とその娘夫婦を同行す。九旬も近き大叔父は長年築地の料亭の料理師を勤め晩年は赤坂にて「海舟」なる江戸流れの料理屋を営みし人、今も矍鑠としたもの。Mandarin Oriental Hotelに投宿。晩に益新飯店にて歓迎の一席設ければ経理C氏に予め母に大叔父来港と告げし献立はいつも以上にC氏の腕の見せ所にて格別。花彫蛋白蒸蝦、鮮蓮蝦冬瓜中皿、百花炸醸蟹拑、清蒸東星斑、金華玉樹鶏、翡翠原只湯鮑、上湯煎粉果、香芋西米露、女β黄巻椰汁羔。東京からの土産に人形町伊波仙の扇子、銀座大野屋の手拭いをいただく。

五月六日(月)曇。▼大手超級市塲百佳と惠康の減価競争今回は豚肉戦争にて煽りを喰いしは街市の猪肉商にて一斤HK$16〜17にて卸されるものが超級市塲にはHK$12.5にて卸されこれが減価競争を可能にするものなり。香港にて食される猪肉は生肉は全て大陸からの輸入にて数年前まで豚を満載した列車がKCRを走る度に大変な思いせしもの(現在は国境近くに食肉処理場あり)この輸入肉の八割扱うのが「五豐行」なる企業にて何故にこの企業が寡占権を有するかといえば五豐行は華潤創業の子会社にてつまり中国政府直下なり。五豐行管下に「中港聯」あり何故に中国政府の香港出先機関が此処にかと思えばこれは中港聯合生猪有限公司の略にて(笑)ここから仲買を通じて街市の肉商に卸されるが筋ながら五豐行最近「成利行」なる付属公司設立し仲買を通さず直接大手超級市塲に卸す仕組みにて廉価可能となり。まさに独占供給元(政府)と大手超級市塲(大手資本)が癒着し弱小小売を「肉迫」するものにて香港超級市塲の寡占化進める百佳が李嘉誠資本と思えば「さもありなむ」といふ話なりけり。

五月五日(日)快晴。藪用ありトレイルは馬鞍山に参加できず。沙田の競馬、馬券のみ購入しておくがR10(1800m)この距離ではDr More(Size/Dye)ちょっと厳しいかと思いつつ選んだがW氏のGoggles(摩/馬安東)これまで五戦二亜のところついに初勝利、W氏持ち馬の久々の冠軍を選べず立ちあえず無念。茸、茄子を前菜、トマトのパスタ、Barton&Guestier'95なぜかマカオにて調達せし葡萄酒ながら(泥酔していたのか)95年のボジョレー風味にていただけず。サリンジャー短編読み続ける。

五月四日(土)快晴。海にてサリンジャー短編集『倒錯の森』読了、選集「『九つの物語/大工たちよ棟の梁を高く上げよ』(荒地出版社)読み始める。『倒錯の森』なる題はまるで三島由紀夫ちゃん(笑)だが内容は到って倒錯に非ず。Quarry Bayに夕方藪用あり終わってZ嬢と砲台山・虫江春(虫の字は門かまへに虫)にて潮州料理。至極。鶏巻、密汁排骨、海鮮鹵麺、蜊貼、雑菜……いずれも素材判るが素人には味付け皆目わからず温かいうちに食いたいから食もすすみ酒にも合う微妙な塩辛さ格別にて青島麦酒、孔府米酒。この味あればこそ二度、三度と詣でるが料理屋と痛感す。

五月三日(金)快晴。ふとしたことにて香港日本人倶楽部創立50周年に向けての記念誌編纂に携り日本人墓地墓誌台帳の整備だのする中で明治に出来た本願寺系の日本人学校を調べるのにお東さんか西さんかもわからず日本が香港占領せし当時の香港国民学校の卒業生I氏(長崎県在住)に電話にてお話伺ふ。いろいろ貴重な情報を得たばかりか昭和生まれのI氏の伯母にあたる女性が明治34年に香港にて没くなりその墓が日本人墓地にあると言われI氏自らが生まれる二十年以上前に他界せし伯母の苗字は知るが名すら覚え知らぬところここ数年の日本人倶楽部の墓地整備にて台帳もととのひこの伯母の名、また昭和十九年にわずか生後十日ほどにて香港にて没くなりしI氏の弟戦時中にてこの伯母の墓に合祀されしことなどまで知らされる。I氏の知古に戦前の本願寺の住職の娘なる女性あり。いろいろ調べるにつれ山口昌男ワールドが如き知のネットワークに接す。九十一年予がフリーポスト『中華人類学』を連載せし時の編集長にてその後朝日新聞香港衛星版にても編輯をせしY嬢とZ嬢と銅鑼湾の琉球料理屋『えん』。アパレル系小売店の如き可愛らしき店員愛嬌よく振るまい好感。客はカタカナ業界モードの日本人若者男女かなり多く80年代末のバブルに踊る「システム手帳片手にブランド系スーツ」よろしき東京の麻布や広尾、恵比寿を彷彿する光景。料理はけして唸るほどの味でもなく素人にもレシピわかり隠し味とまではいわぬものの味にパンチ乏しき。店にとっては嬉し悲しの繁忙時間には厨房注文に間に合わず開店から数カ月にて献立かなり絞らざるを得ず。久米島産の泡盛・久米仙古酒(五年)飲む。料理屋でも焼酎並にHK$230が限界。久米仙には久米島酒造と久米島の久米仙あり後者の小売価格2,030円の「たかだか泡盛」をHK$530(9,000円)で供するは論外。一度目は物珍しさ、二度目は他人を誘い三度は惰性、問題は四度目に行くかどうかの、そこがこの料理屋の極みか。この界隈、魚屋一丁始めレシピ単純な日本料理屋少なからず。ふとZ嬢と香港にて果たして十回以上暖簾潜りし日本料理屋ありやなしやと思い返せば(八年ほど前に飲み友達多く集い頻繁に通った居酒屋一番除けば)天后の利休、尖沙咀東の五味鳥、その程度か、と。閉店間際のCitysuperにてZ嬢見立てし群馬県南牧村の炭枕購ふ。▼『喜宴』や『飲食男女』に出演せし台湾の俳優・郎雄(Lang Hsiung)逝去72歳。かなり伊丹十三の影響を受けたのではないかと思った『飲食男女』は台北の有名な料理屋の総料理長(郎雄)を主人公に家族と食にまつわる物語が展開するがこれの邦題が驚く勿れ『恋人たちの食卓』(笑)と最低。邦題つけし映画配給会社のセンスの悪さの極み。

五月二日(木)。『週刊香港』の記事にて最後の最後にてKennedy Townについて述べた箇所あり読者謝先生よりの指摘にて堅尼地域と綴られている誤記あり、と。恥ずかしながら香港に住んで十二年今日の今日まで堅尼地城と誤解続けし事実発覚す。不思議なことにタクシーに乗れば運転手に広東語では「ぎんねいでいしん」と堅尼地城と伝えており漢字の意匠として十二年否恐らく初めて香港を訪れトラムに乗りし二十年前にトラム行き先表示を堅尼地域と読みそれ以来の誤解か含羞痛み入る。恐らくTownが城であるものを地域をTownと捉えたのか。三月二日に参加せし緑色力量環島行五十公里慈善行山比賽の記録届き六時間五十七分の時計にて成人男子七百五十名参加六百三十名完歩中五十八位といふ成績であったことを知る。上位一割に入るとは幼きおり郷里の持久走にて水戸泉君(勿論当時はまだ小学六年にて水戸泉関は水戸泉なる名前ではなかったが……笑)よりも遅かった運動苦手ぶりをおもえば我ながらこの成績は感涙のおもひ。晩に太古城にて藪用あり太古城に食処なく閉口しておったところ先週土曜日にK氏の車にてWestlands Rd華蘭道を通りQuarry Bayも海光街まで行かずともこの界隈に食処並ぶこと知りふとその一軒、九記なる快餐飯店が眼中に入り今晩此処を訪れる。惠安苑が地下に七、八軒ある食処のうち直感にて三軒除けばおそらく不味くはなきところ殊に九記は粗呆地区は伊利近街の貴如、すでに廃業せし堅道は海燕飯店と同じ環境漂わせ例しに滑豆腐(蒸し玉子)食せば味つけ忘れたのかと誤解するほど淡い味付けに椎茸、豚といった食材の香り蒸豆腐に沁み入り誠に結構なお味。見事。太古城にて今後飢死することなし。▼昨日淺水湾にてやけに大陸からの旅行団周遊せし観光巴士多しと思えば労働節の大型連休にて香港訪れし旅行団実に二百組四万人が昨日羅湖より香港入りしHK$二億消費、と。一人当りHK$5,000の消費とはかつての日本人の如し。しかも日本人尖沙咀に数ある悪徳「免税」店にて日本製家電カメラなど購わぬところ大陸からの客は家電貴金属よきカモとか。▼カソリック教会が対少年のお戯れ香港もご他聞に漏れず南華早報伝えるところに依れば過去二十七年に三件の醜聞をば教会側把握したりて香港大司教も認めたるはお戯れせし神父官憲への通報もなきまま教会法に則り罷免或は少年に携らぬ部署への転出などの措置がなされたり。最も聖なるべき領域が性の而も教会に係わる少年への性「犯罪」の温床とは「聖なるものこそ最も穢るる」真理を物語る。▼政治は言うに及ばず宗教がこれなら財界も財界にてマスコミも芸人の醜聞では今更読者も喜ばぬからか財界にその食指動き今度は東亜銀行社主にて頭取の李國寶が六旬にて同業廖創興銀行の社主廖家の娘某と不倫と報ず。この不倫可笑しきは李某の本妻は藩家の出にて、李家が東亜銀行の社主にて李某の弟は香港中文大学の学長、親戚筋には香港司法の大法官もおり香港賽馬會の首席も一族。藩氏も当主は香港小売業にてRolexからPolo、香港西武まで牛耳るDickson Poon氏にてこの某女は彼が妹。李某は立法會議員でありながらその議会を抜け出し廖某の待つホテルに「行宮」し巴里での密会旅行までマスコミに曝される。李家、廖家、藩家と香港財界の華麗なる一族私怨絡まりたる醜聞は(李嘉誠はたかだか一代の新興財閥にて余波及ばず)係わらぬはマカノ博打王Stanley何氏の何家くらいのものなりしが何家といえば何家一族内での数十年前の従兄妹恋愛も半年ほど前に暴露されており一族内にて財産争いにまで絡む始末。宗教、政治、経済、芸能……いつの世もまさに狂ふばかりなりけり。

五月初一(水)労働節。快晴。海でラジオ中継聴きつつ競馬。R2(」1400m)Inca Rose、Chuk Wayといったかつてかなり応援した馬を入れずWishesなどオッズに惑わされ賭けて両馬で二、三着。R3(。1600m)Flying Bishop、R6(。1400m)Self Flitいずれも二、三番人気を単勝で勝って一着◎、こういうのは嬉し。R9(1650m Dirt)Size/DyeのDarwin、今季」班で始まりSize厩舎に移って412121112とあれよあれよといふ間にClass-1、Size魔術の典型ながらついに四着。それでも四着といふべきか。R10(2000m)Come See You(Allan/Marwing)ここ三戦快活谷の中距離にて221と調子いいが初の2000mにてしかも133磅背負っては酷かろうと115磅背負っただけの長距離馬Monza  King(何/Whyte)にしたらあっさりCome See You、Class-1でも中、長距離イケそうな予感。洋書古本屋で仕入れしAndy Quanなるカナダの中国人若手作家の"Calendar Boy"なる自伝(小説といふよりエッセイか)読む。自らのゲイとしてのセクシュアリティを自然に書いているといえば書いているがインターネットで公開すればいい程度の習作にすぎず。出版して読ませるほどのものでなし。サリンジャーの短編読む。ホールデン・コールフィールドが現れるまでの作品は習作ばかり、その習作が数年で『ライ麦畑の捕まえ手』(『ライ麦畑でつかまえて』は絶対に容せぬ邦題なり)になってしまうのだから作家がブレイクするのは不思議なもの。それにしても大日本帝国が必死の覚悟で米国と戦っている最中、米国でこんな若者小説書かれていたとは。なぜか昼間から「エスカルゴが食いたい」とおもひお好み焼きするのにCitysuperに山芋を調達しに行きエスカルゴも仕入れるが冷凍は致し方ないにせよ出来合の味付け塩辛くていただけず。球磨焼酎で枝豆、エスカルゴ、舞茸。烏賊と豚のお好み焼き。▼ふと仏蘭西の極右Le Pen(ルペン)と中国の極左Li Peng(李鵬)、発音殆ど同じだがどちらのほうがマシかと思ふ。▼信報(29日)に網祉の域名並びに注册について興味深き記事あり。米国の或る企業hongkongairport.comの名義押さえ此を香港国際空港(hkairport.com) を営む香港機場管理局に百萬弗にて譲渡を誘い機場管理局側これを不服として瑞西は日内瓦(ジュネーブ)の世界知識産権組織(WIPO)に訴え管理局側が勝訴しhongkongairport.comは注册せし会社に非ず香港機場に属すとの判決。それに対して香港の英系財閥Swire Group(太古集団)中文の太古.comを押さえむとしたところ既に太古.comは深セン市民のLily Ehuなる者が注册しておりこれもWIPOに投訴したところこのEhuは古代恐竜愛好家にてwww.dinosaurclass.comの会員であり当初に恐竜.comを注册試みたところ既にこれも押さえられており故に漢語にて古代意味する太古.comを押さえたるは意図的にSwire Groupの利権を妨害するものに非ずとSwire Groupの訴え却ける。