十一月卅日(木)快晴。東京よりお越しのN氏。戦前に香港生まれの香港育ちで毎年この時期に来港される。齢78歳で矍鑠としたもので「昨日も27千歩くら
ゐあるいたかな」と、けろり。リッツカールトンホテルにお迎へして
鏞記酒家で
N氏交へ昼食。早晩に中環。


FCC
のバーに憩う。Watson's Wine
Cellarに葡萄酒数本購ひ大陸に渡り尖沙咀、インターコンチネンタルホテルにK氏がY嬢をこのホテルの車寄せでお迎へで私はお二人のお邪魔虫でK氏の
豊田セドリック車に便乗し沙田……のはずが中環のWatson's Wine Cellarの旧址大規模なビルの改装でWatson's Wine
Cellarは移転、とあり。慌ててOliver'sに向ふ途中、明後日が選挙で選挙運動中のレジーナ葉劉淑儀候補に遭遇。晴海のモーターショウの如きオ
ネエチャンたち従ひ自由党党首と中環をお練り。思はず本人からチラシ渡されてしまふ不覚。チラシには“I'll do better than my
best!”とあり。実力よりいひ仕事をする、といふのは中国政府がバックについてゐますから、といふ意味か(嗤)。Oliver'sで葡萄酒四本購つた
が、とてもホテルでの約束の待ち合はせ時間には間に合はず、そのまま地下鉄で九龍塘、KCRに乗り換へ沙田。
龍華酒店。春に深井で焼鵝頬張り葡萄酒四本の面子で、今回は焼鳩を食さ
う、と私とZ嬢含め七名が鳩まる。焼鴿、五蛇羮に羊肉煲と冬らしさ満喫。葡萄酒はK氏差し入れのMoet &
Chandonに始まりOyster Bayの04年、Santa Catolina、Henry JamesのPinot Noir
04年で最後はCh. Haut-Bages Averousの1997年。K氏ご持参のデザートワインまで。K氏のお車で送つていただく。
十一月廿九日(木)昨晩の深酒に不思議と快調なる目覚め。諸事に多忙。その途中で銅鑼湾の
何洪記にて咖喱牛南飯が晩飯。疲弊してゐたがジャスコの旭屋書店に寄る
とカメラ月刊誌入荷あり。帰宅してアサヒカメラ読む。カメラのニューフェイス診断がライカM8で、これを読んでゐる途中に寝てしまふ。
▼香港海洋公園、06/07年度の入場者が492万人と過去最高。前年度比12.3%増。1日平均13,480人の来場者。香港鼠楽園は日に7千人と聞
く。
十一月廿八日(水)朝の気温摂氏十五度。厳寒の季節到来す。巷街にはダウンジャケット、マフラー、暑いコート着込む防寒者多し。早晩に中環。FCCでハイ
ボール二杯。新聞読み。尖沙咀。周凡天氏の「解剖世界名曲進入音樂世界」の早くも第三輯「管弦楽編」の第3回を聴く。終はつて外に出るとS女史より携帯に
電話あり。「第4レースの6番、来たわよ」と。S女史は競馬場より。第4競争の6番とは畏友A君家族の持ち馬ナチュラルエコーのことで、ボトムエンドのク
ラス5でレーティングも確か10幾つまで落ちたが持ち直し前回の2000mで一着。で今回はハッピーバレーの競馬場をぐるぐる回る2200mに出走。今晩
競馬に行くといふS女史にこの馬を紹介し、アタシもご祝儀でそれなりの金額を投入。5.7倍の一番人気の期待に応へ連勝。さつそくA君に祝電。一人で祝賀
とペニンスラホテルのバー。ドライマティーニと目が覚めるやうなレシピのギムレット二杯。帰りがけに銅鑼湾で間違つて地下鉄を降りてしまひ(笑)バーS。
ギムレット再び。T氏とマスターM氏と趣味の話。

▼立法会港島区補欠選挙迄一週間を切り選挙運動白熱。葉劉淑儀は本晩、中環Charter Gardenにて支持者集会。蘋果日報は社主・黎智英氏が「
良
知和你有個約會」と題した文章で「高貴人格捍衞自由」の陳方安生女史に投票呼びかける。日曜日の立会ひ演説会では陳方候補支援する公民党のメン
バーが葉候補の支持者がバスで動員されてゐる現場を携帯で撮影したところ葉派の一人が携帯取り上げる実力行使に出て撮影者が軽い怪我負はす。警察が検挙の
その男は民建聯の21歳の党員で最も若い区議会議員候補だつた姚銘さん。保守派の若い熱血党員でさながらかつての自民党の青嵐会の如し。泛民主派はこの暴
力沙汰を「白色テロ」と恐れ、民建聯は「自作テロ」と否定。いづれにせよ民建聯ら左派の敵は民主党でなく、今ではすつかり公民党にお株奪はれたやう。
▼額賀先生の参議院での証人喚問の実施可決につき自民党の参院国対委員長が「数の横暴」と非難。証人喚問の事の重大さを考へれば全会一致が望ましい、とい
ふ考へ(公明党の国対委員長の弁)もわかるが、「数の横暴」は自民党こそお家芸。それが立場が逆になつた途端、数の横暴非難とは聞いて開いた口が塞がら
ぬ。
▼或る民意調査機関の調査によれば、香港市民に対して「自分が中国人といふ意識向上に影響あるものは何か?」といふ質問に対して、7割強が普通選挙実現、
8割余が大陸との経済関係の密接化と中国の国際的地位を挙げ、逆に共産党による執政の継続と答へたものは2割。この調査ぢたひは驚く結果ではない。が実施
したのが香港大学の民意研究計画グループ、マカオの調査機関、台湾の国立政治大学選挙研究センター、それに琉球大学の国際関係学科ださうな。中国人として
のアイデンティティ調査に琉球大学がどう関はつたのか記事(信報)からはよくわからぬ、が琉大の国際関係学科助教授の林泉忠先生のコメントとして「調査結
果からわかることは、香港人が「共産党による中国統治」を否定してゐるといふものではなく、民主化を促進することが香港市民の大陸に対する帰属意識を高め
ること」とあり。沖縄がかういつた中国人のアイデンティティ調査に加はることがとても興味深い。
十一月廿七日(火)諸事忙殺され晩に到る。夕食は白菜、茄子、鶏レバーに煮豆など。本日一大事あり。ずつと愛用の所謂「大学ノー

ト」
はTSノートのB5版中細罫(40枚綴)だつたのだが既にTSノートが廃業してゐたらしい。

ず
つと愛用といつても実際にはノートを使ふことはかなり少なくノートブック活用の上にタイムシステムのA5版のシステム手帖と携帯用のファイロファクス、そ
れにFCCのメモ帳で十分なはずで大学ノートはもつぱらスクラップ帖兼忘備録、読んだ本からの書き写しに使ふ程度で一年に数冊使ふ程度。何年か前に日本橋
の丸善で(まだ日本橋が本店だつた頃)2打も購へば十年はもつと思つてゐたが残り2冊になつたことに昨晩気づき、そろそろ注文か、と思つて何気に丸善の
ネットショップ覘ゐたが流石に大学ノート程度で通販してをらず東京駅前に移つた本店の文具売り場に電話すると「TSノートは現在当店では扱つてをらずお取
り寄せになります」との事。何冊でも代引きでお送りします、との親切だが、わざはざ仕入れて迄貰はずとも丸善には丸善オリジナルのノートがあるので「そち
らで結構ですよ」と電話で2打の注文済ませ最後に「ところでお値段は?」と尋ねると何と1冊430円でございます、と売り子嬢。ちよつと待つた〜。大学
ノートで430円はないでせう、いくら丸善オリジナルでも……しばらく丸善の大学ノートを日記帳に使つてゐた時期もあつたが確か250円くらいぢやなかつ
た

か。
いくらなんでも大学ノートで、2打となると1万円を越えてしまひ破産したくないので恥づかしながら注文取り消し。それで調べると、どうもTSノートはすで
に製造されてゐない由。で、ふと「
ツバメノート」が気になり
ネットで探ると福井にツバメノートなど選りすぐりの文具通販で売る文具店あり。何十年ぶりか、でツバメノートのB5版8mm27行(A罫、40枚綴)を1
〆(20冊)注文。事無きを得る。それにしてもTS、丸善にツバメといへば日本のノートの三大銘柄だがTSが消え丸善は高価、ホント、浅草橋のツバメノー
トに頑張つていただくしかない。浅草橋のこのへん、今でいへば秋葉原を出た総武線が浅草橋駅の手前で清洲橋通りと交はる辺りが昔は浅草区、下谷区、神田
区、日本橋区のやけに入り組み、大川に近い柳橋の花街と神田を結ぶこの界隈は向柳原町の賑はひ。衛生試験所と泉橋病院の跡地に三井記念病院が建つ、と昔話
はそのくらゐで。

▼楽天トラベルがメーンキャラクターにムーミンのスナフキンさん徴用。けふ日のスナフキンさんぢたひ古へのオリジナルにはほど遠き可愛らしさで呆れるが、
どうであれアタシにとつては幼き頃より憧れのスナフキンさんが新聞の楽天トラベルの広告に登場するとどうしても目がいく。その一コマ広告でいつもスナフキ
ンさんは「どう考へてもスナフキンさんらしくなひ」下手なキャッチフレーズを語らせられてゐるから困つたもの。彼の顔がいつも以上に寂しさう。でつひに今
日(朝日新聞衛星版)は「空港のあの匂ひが好きなんです」と一言。旅行会社らしいキャッチコピーといへばその通りだが「スナフキンさんは飛行場は使はな
い」。不愉快極まりなし。彼ならせめてボート。スナフキンさんは湖畔が似合ふ。で、なんでこんなへんなコピーなのか、と思つたら楽天トラベルがスナフキン
さんに言はせたい
コピー募集してゐた
とは。スナフキンさんなら「ムーミン、いやだね、広告なんてものに躍らされる世の中は」と言ひさうなのに。不憫。
▼いぜん大陸妊婦の香港での出産で公立病院が満杯といふ話、この日剰に綴つたが、今度は香港の私立病院(高級)も大陸妊婦に人気で地元妊婦が私立病院での
出産能はず公立病院へ、と今日のSAMP紙に記事あり。香港で今年9月迄に生まれた新生児の実に4割が大陸妊婦。香港での出生で新生児の香港居住権得ると
いふ策略ばかりか大陸の金満化でどうせなら医療水準高い香港の恵まれた環境での出産を、といふ指向。この煽り受けたのが香港の地場の産婦人科開業医。みづ
からの診療所で妊娠からのケアをして実際の出産は大型の私立病院に妊婦を送り、だつたが大型私立病院が大陸妊婦で溢れ開業医からの依頼状あつても入院でき
ずウェイティングリスト。産気づいて、で数日待ち、とできず公立病院に駆け込むことに。香港の中国への返還で、まさかかういふ事態もあらうとはかつて誰も
想像もできず。
十一月廿六日(月)原田治著『ぼくの美術帖』(みすゞ書房)は手にした瞬間、その装丁の優しい美しさ(勿論、装丁は著者本人)、本の開き具合の柔らかさ
(製本は
誠製本)、そして綺麗な活字は当然のやうに
精興社で、

「な
るほどな」

と
日本の製本技術の最も調和のとれた世界を垣間見た想ひ。でもそのためには2,500円になつてしまふ。かういふ計算はいけないけど1頁あたり10円余。原
田治とかかなりセンスのいい著者、みすゞ書房くらひでしか許されない贅沢。早晩に中環。Colorsix現像店で写真受け取り。
FCCのバーで久々にウヰスキーソーダ2杯。葡萄酒はボジョレーヌ
ヴォーの季節だつたりしてJacques Charletといふのを一杯、まぁ季節の味覚、といふことで。Z嬢と上環で待ち合はせ
生記粥品専家。魚腩及第粥。此処のお粥、お粥ぢたひはほぼ三分粥。究極
やね。今晩は上環のCivic Centreで
Alexander
Korbinなるロシアの若手洋琴家の独奏会あり。開演前にCivic Centre近くの
Grazeなるカフェで珈琲。香港は最近かうしたちよつと洒落たカフェがちらほら。
昔はコーヒーといへばそごふ地下のポッカくらひしかなかつたこと考へればぢつに嬉しいこと。なかなか美味しい珈琲。でAlexander
Korbin君は2005年に第12回
Van Cliburn
International Piano Competitionの金賞授賞ださう。舞台にはヤマハの洋琴。Z嬢曰く上環の此処にはベーゼンドル
ファーもあるのに。パンフレット見ればあちこちのコンクールの授賞歴の一つに浜松国際2位(と書くと
浜松オートの重賞レースのやうだが)とあり、その関係でヤマハな
のかしら、なんて。で演目はモーツァルトのピアノソナタニ長調K.576で、アタシはモーツァルトの、とくにピアノソナタなんて苦手中の苦手、といふか全
くわからな


い
人種なので最初からこれには期待薄だが、それ以上にこのアレックス君の奏法が上手い下手でなく生理的に合はない、と感じる。続くベートーヴェンのソナタ第
4番変ホ長調作品7に多少期待したが、やはり井上直幸先生なら「とんでもない!」と、もつともつと曲に愛情を込めて、と思へてならず。休憩はさみショパン
のエチュード(12の練習曲
Op.10)。第1番ハ長調や第3番ホ長調「別れの曲」あたりは聴けたが、やはり芸風が合はないと、いくら熱演されてもアタシは「だめ」で終はつてしまつ
た。仕方がない。いくら小さん師匠の落語を聴いてもアタシはダメだつた。それと同じ。落語といへば、前述の『ぼくの美術帖』のなかで原田治さんが鏑木清方
について書いてゐるのをFCCで酒を飲みながら読んでゐて、思はず没頭してしまつたのは、原田さんが清方が好きになつたのは、あの有名な三遊亭圓朝像で、
それを竹橋の近代美術館で見た時のからだがぶるぶる震へた時のこと、落語が好きで圓生から圓朝の広大な世界を知つた、といふ記述が書かれてゐたから。私
も、清方を知つたのは圓朝像。小学生の時に家にあつた旺文社の学芸百科事典の各巻末に美術図録があり(三島由紀夫はそんな時に「聖セバスチャンの殉教」を
見つめてゐたのだらうけど、私の場合はフランソワ=リュード(1784~1855)の「亀と遊ぶ少年」といふ世界が好きであつたが)、その図録の中に「な
んで圓生師匠がここにをるねん?」と一瞬、思つたのが清方の圓朝像。圓生は「笑点で圓楽が「名人、円楽です」なんて言つたので叱つた」師匠であり上野鈴本
で実際に高座も見てゐたので知つた顔。で、清方のそれが圓朝像と銘があり、あ、この人が怪談牡丹灯籠のあの不世出のあの名人か、と知つた、といふか清方の
あの湯呑茶碗を手に上目遣ひの圓朝像が三遊亭圓朝として目に焼き付いたのだが、いづれにせよ「圓生は圓朝を目指してゐる」と、子どもだからそこまでは感づ
いてゐないが、少なくても圓生が圓朝に似てゐる、と思つたのは確か。あとになつて圓生師匠が生前、圓朝襲名を真剣に狙つてゐたことなど知り、納得。それに
しても原田さんの筆致が頗る佳い。
江戸から明治にかけての噺家の名人圓朝を、清方は年少の頃の面識か
ら想像して描きました。ここには圓朝という人の姿かたち人格の写実だけでなく、圓朝の芸術に対する写意がはっきりと存在しています。
鏑木清方のあの円朝像が好きな者にとつて、とても短いがこの原田さんの簡潔な言葉以上に何も必要はあるまい。
▼昨日ジャパンカップ制覇のアドマイヤムーン引退、と発表あり。それにしても頭角現した名駒が4歳で勝ちをさらつてさつさと引退、といふのは「ちよつと待
つて」と言ひたいが、これについてはオーナー=ダーレイ・ジャパン(DJF)の高橋氏の決断力とか斉藤さんがきちんとかかれてゐるので(
こ
ちら参照)なるほど、とわかる気もする。武豊騎手の騎乗も、確かに馬友のO氏に聞いた通り、これがアドマイヤムーンが凱旋門賞に出るならロンシャ
ン経験してゐる武といふのはわかる話で、だが、疫病の関係でロンシャンには行けずに、それでも天皇賞(秋)からの乗り代はり。O氏曰く「テイエムオペラ
オーに和田竜二を乗せ続けた岩本市三の気合がほしかつた」と。
有馬記念の2500は先日のレースをみるといっぱいいっぱいで無
理、思うのも十分わかるが、最後にもう一度みたかったなというのが正直な印象。ダイワメジャーとかとの対決だの。土曜日のジャパンCダートもDJF所有の
フリオーソと絞り、この馬は来年のドバイカップを睨んで、の購入だつたはず。で、DFJの動きが俄然、気になる。
とO氏の弁。
▼話は旧聞に属すが今月、智利のサンティアゴにて中南米諸国と西班牙、葡萄牙によるイベロアメリカ首脳会議が開催される。ベネズエラのチャベス大統領が雄
弁通り越しての毒舌で西班牙の前首相を批判したに対し西班牙国王フアン=カルロス1世が「怒りをあらはにし「黙れ」と発言する一幕があつた」(時事通信)
といふ報道あり。記事によれば
10日はスペインのサパテロ首相が「前首相も民主的に選ばれた。敬
意を払ふべきだ」とチャベス大統領に苦言を呈した。大統領が何度も反論のため首相のスピーチを遮らうとしたところ、首相の隣にゐたフアン・カルロス一世が
身を乗り出して大統領を指さし「黙らないか」と発言した。
となつてをり「黙れ」と一喝するのと「黙らないか」ではだいぶ「日本語の」ニュアンスも違ふが、この「日本での」報道は完ぺきに意味がつかめてをらず。唖
然。アタシが香港で読んだ記事によれば、この場面、チャペス君の暴言でかなり会場も緊張し、或いは白けてゐたが、そこはさすが西班牙国王、カルロス1世が
鷹揚に身を乗り出して ¿Por qué no te callas? と一言(
画像)。英語にすれば “Why
you do not shut up yourself?”
だし日本語なら「黙らないか」なのだが、スペイン語で、この“te”が、さすが御大、カルロス1世。本来、このての会議の場であれば“you”はスペイン
語で“usted”であり、これで¿Por qué no usted
callas?とでも宣へば、場はかなり緊張するが、そこを ¿Por qué no te callas?
なら「ほら、君、ちよつと黙らないかね」と威厳ある紳士なお爺さんが若いやんちや坊主を窘める、つてな感じ。しかも王様から、は光栄。このカルロス1世の
大人が話題になつた報道なのだが……。同じやうな会議がもう一つ。ウガンダで開催された
英連邦首脳会議(CHOGM、Commonwealth Heads of
Government Meeting)について。かつての大英帝国の威光か、英国や豪州、カナダからカリブ海のアンティグア&バーブーダ(人口
6.8万人)まで数十カ国が参加。なんか大時代がかつた旧守派の集り、かつての栄光、といふ印象あり。しかも今年はダイアモンド婚をマルタで過ごしたエリ
ザベス女王が、この会議に合はせ53年ぶりにウガンダ訪問で熱狂的歓迎、と
そちらば
かり報道される。が、実はこの会議、英連邦に属す国にはバングラディシュやボツワナなど硝煙キナ臭い国もあるが今年は何といつてもパキスタンのムシャラフ
大統領の戒厳体制が討論され53カ国・地域の代表がパキスタンのムシャラフ大統領に対して“has suspended Pakistan from
councils of the Commonwealth pending restoration of democracy and rule
of
law”と決議。国連安保の決議なら大きく報道されるが、実はラテン系各国や大英帝国などかういつた「縁し同盟」もまたそれなりに動いてをり影響力もあ
る。本来、東アジアなら漢字圏で全員が漢字で筆談会議とか、儒教文化圏賢人会議とか(李光耀先生を名誉議長にしてあげたらさぞや喜ぶでせう)、日韓と華僑
の黒社会・ヤクザサミットとかがあつてもいいはず。
十一月廿五日(日)本日、沙田は吐露ハーバーにて服部時計店主催のハーフマラソンあり応募済みながら体調芳しからずC医師に週末は休養しなはれ、と倦怠な
薬処方され、万事休す、で終日臥床。本日、競馬はジャパンカップ(画像は月本さんから無断借用)。香港もサイマルキャストで中継あり。一番人気は泣く子も
黙るメイショウサムソン。

春、秋の天皇賞での勝ちつぷりに文句はない
が、ずつと石橋守が騎乗してきた馬が勝てば「はい、武さん、お待たせしました、どうぞ」なのがアタシは厭だ(秋の天皇賞より)。アドマイヤムーンは昨年の
香港カップで2着(優勝はViva Pataca)、今年のQE II
Cupも2着(優勝はPride)と香港まで来てくれてゐることに恩義といふものあり、半分は御祝儀、半分は宝塚記念でメイショウサムソン破つてゐる実力
と秋の天皇賞は前を塞がれての6着で実力発揮できず、で単勝はアドマイヤムーンなのだ。で香港では馬枠の関係で単勝、複勝と枠連でしか買へぬのでアドマイ
ヤムーン軸にメイショウサムソンとポップロックに流す。ポップロックは昨年のメルボルンカップで2着(優勝はデルタブルース)、今年のドバイシーマにも出
てゐたが(6着)何より「ジャパンカップではペリエ騎手は外せない」ゆゑ。ほかに名前を知つてゐるのは牝馬のウオッカだけ。で昼食後に寝て偶然にちやうど
出走時間直前に目覚めテレビで競馬観戦。アドマイヤムーンは終始4〜6位ぐらゐで内枠でいひ位置取り、ちよつと折り合ひが悪く、それに対してメイショウサ
ムソンが1600mくらゐから外を余裕で上がつてくるのが怖い。だが最終コーナーで外が広がり過ぎたかな?と思ふ瞬間、アドマイヤムーンが最内から仕掛け
メイショウサムソンの必死の追ひ討ちも退け、それよかポップロックが頭差で2着まで刺してきてゐたのだつた。いやはや嬉しい結果。アドマイヤムーンは病床
のアタシを裏切らず。日本では4番人気で10.9倍であつたが香港は2番人気で5.7倍、香港でのアドマイヤムーンへの支持がまた嬉しい。枠連で27.5
倍としつかり配当もいただけた。「もし」三連単があればメイショウサムソン三着でいただけていたし4着がウオッカ、5着にデルタブルースもきちんとマーク
してゐた。勝てば官軍で何でも言へるが、言ひたひだけ嬉しい勝ちであつた。午後遅く萱野稔人『カネと暴力の系譜学』残り半分ほど読了。ごろごろと大澤真幸
『帝国的ナショナリズム』読了。野菜豊富に夕食。デンキブラン少し飲む。寝しなに原田治『ぼくの美術帖』(みすゞ書房)少し読む。
▼萱野稔人『カネと暴力の系譜学』について。著者は、良く言へば戦闘的、否定的に言へば「キヤツチーなフレーズの羅列」で国家と暴力、資本の問題を語る。
国家がどう暴力を独占し、それにより権力を得て強制的にカネを徴収するか、国家の暴力性、など。また、貨幣が<交換>の過程で生まれたことをアタシたちは
文化人類学から学び、資本主義も商人の国家権力からの独立であるとか資本主義的な生産様式が土台にあり近代国家はその上に載つた副次的なものであることを
マルクス主義から学んだのだが、貨幣は国家が民衆の富を吸ひ上げるために生まれたもので、資本主義も中世のシステムが崩壊するなかで地主貴族がどう生産者
からの搾取を維持するか、から生まれたもので、国家は人々の労働による生産を自らのものにするため資本主義のシステムを利用したもの……といつた、この本
に書かれた諸説は興味深い。但し、それの大部分がフーコーやドゥルーズ=ガダリからの引用。フーコーやD&G読んでしまつた者には食傷気味の内容
が続く。さういつた政治社会史的な部分よりも、むしろ近年の国家の暴力のアウトソーシング化(イラクでの米国による民間軍事企業への委託)やテロとの戦ひ
がかつて米国がみづから出ていけぬが故に育んだ当地の政府に対しての敵対勢力を、それの勢力が巨大化するのを恐れ「テロリスト」扱ひすることで敵と見做し
て切り捨てる、その一連の作業が「テロとの戦ひ」である、といつた見方が、どこかテレビの時事評論番組にお誂向き。それに、80年代のニューアカの時代に
浅田彰が語れないとバーでモテない時代ぢやないが(笑)、21世紀の平成の時代に「結局さ、国家つてのは暴力装置ぢやない?、その権力つてのは」と酒場で
蘊蓄を語るには、この一冊でフーコーもD&Gもバツチリ、とコンビニ的でもある。といふかバーどころかこれ一冊の解釈で今どきの大学ならお手軽に
卒論も可。
▼大澤真幸『帝国的ナショナリズム』について。2000年くらゐにアウム、酒鬼薔薇、クリントン醜聞といつたことから社会を語る。クリントンの不倫疑惑も
今にして思へば、あの時にヒラリー女史は大統領の座を射止めた、と思へるが、大澤先生曰く
恥ずかしい性行為が細部まで暴露されても、大統領の権威があまり傷
つかず、高い支持率を維持し得たのは、大統領としての徳や威厳の内に、徳からの最も恥恥ずべき逸脱が、猥雑な欲望の堕落が、はじめから内在していたからな
のである。(法廷で)決して嘘をつかないという宣言を意味する選択が、そこから気の迷いのような逸脱を……偽証や法廷妨害の可能性を……その内的な構成素
として成り立つているからである。
この指摘は今のブッシュにも言へること。「性行為」を「軍事的征伐」に置き換へればよいだけのこと。もう一つ大澤真幸先生らしい面白さを上げると「エア
ポート論」も面白い。「たかだか」飛行機と空港といふ交通手段とその空間がこのやうになる。
飛行機旅行やエアポートは、言わば、語る身体=主体が、語られた主語の内に掬い取れない「残り滓」として、集積する場所である。
これだけぢや何が何だか「さつぱり」だが
実際、たとえば、普遍的な空間を踏破する全能であるべき主体が、飛
行機の内部で、無能な主体として、つまり何もしえぬ者として扱われる
と具体的に(つてこれでもまだ抽象的だが)説明されて、アタシはつくづく納得。なぜヒトは飛行機の搭乗中と空港のラウンジなどにおいて、あゝも我が儘で文
句ばかり言ふのか、と。あれは、ヒトが飛行機においては単に運ばれるモノと化すことへの健気な反発なのだ、と。そして圧巻はこの本の題名にもなつた「帝国
的ナショナリズム」(書き下ろし)。グローバリズムとナショナリズム、米国に代表される粗野なナショナリズムとネグリ&ハート的な<帝国>の普遍性の象徴
のやうな米国の存在。その矛盾をどう理解すればいいか?を大澤先生は弁証法的に解いてみせる。<帝国>の普遍性がじつはまだ未定=空無であり、それを普遍
性の否定としての特殊な文化や生活様式、民族性の強調が示してゐること。<帝国>といふグローバル・スタンダード=普遍的なXが見えてをらぬ段階で、その
内部に包摂されてゐる文化や民族性といつた様々な個々の執着や没入が、むしろ普遍的なXを確保させてゐる。だが問題は米国がそのX自身になつてしまふこ
と。米国が<帝国>の特権的な代表者であり、且つ特殊なネイションであるといふ二重性、これこそ米国の行動の「首尾一貫性の欠如」であり「地球的な矛盾の
結晶」だ、と指摘。
▼昨日、肥後の殿様の能にまつはる文章引用したが、素人ながら大曲「道成寺」を舞つたことがあると称する者が舞台上で能面に閉ざされた内的世界を滔々と語
るが、実はこれ、能など舞つたことのない詐欺師の弁で美辞麗句に満たされた体験談すべて嘘つぱちだつた、といふオチが三島由紀夫の『美しい星』にあるぢや
ない、と久が原のT君に諭される、がアタシは『美しい星』未読。三島由紀夫が市ケ谷での割腹が今日。毎年十一月の歌舞伎座は廿五日が千穐楽。昭和45年は
鴈治郎の八汐で「先代萩」の通し。竹の間が済んだ幕間に楽屋へ凶報第一報。政岡役の歌右衛門には役が済むまで伏せておかうと周囲の判断。だが腰元姿の役者
のヒソヒソ話を小耳に挟んだのが、既に出の直前で紫袱紗の掛かつた懸盤を捧げ気構へてゐた緋無垢姿の大檀那。「ハツ」と胸を突かれた瞬間、目前の御簾がス
ルスルと上がり、御殿の大芝居。千松の屍骸に取り縋るクドキ「誠に国の礎ぞや」のあたり、その日は普段に増して凄愴の気が漲つた、と聞く。
▼数日前の朝日新聞に岡野弘彦先生が宮中にて和歌指導の宮内庁御用掛より辞職、と記事あり。この夏、靖国がまた問題となるなか先帝が靖国のA級千版合祀に
反対だつたといふ歴史の証言の一つが、
この年のこの日にもまた靖国のみやしろのことにうれひはふかし
といふ御製にまつはる岡野氏の回憶。合祀賛成派よりふしぎと岡野先生に抗議もなかつたのは、やはり宮中で和歌指導といふお立場ゆゑか。この夏、退任決意の
頃、能登一ノ宮の折口家の墓近くに岡野先生の詠んだ歌の碑が建立される。
荒御魂の 二つあひ寄るみ墓山。わがかなしみも ここにうづめむ
折口大人は摂津西成は木津の出。だが養嗣子となつた藤井春洋が能登一ノ宮の人。戦死した春洋追悼がため一ノ宮に墓を建てたは有名な話。春洋さんの生誕百年
で是非、と地元に請はれ、折口大人の最期を看取つた、現存最後の文人がこの「荒御魂の
二つあひ寄るみ墓山……」と詠む。宮中での歌詠みの大役を辞して、もあらうが、この句碑の建立も出来て岡野先生をして「ほつとした」と言はしめる、なんと
もこの言葉の深さ。春洋さん、といふと折口大人の養子で「若い」印象強いが、その春洋さんとて生誕百年。大人のこと知るのももはや岡野先生くらゐ。下世話
ながら柳田折口の「牝鳥問答」の詳細なども、もはや忘却の彼方かしら。
▼豪州の首相待命のケビン=ラッド氏。大学で専攻が中国史と中国語で外交官として北京駐在経験もあり中国語の堪能さはAPECで訪豪の胡錦涛君とサシで話
せるほどだが支那通は本人に留まらず息子二人と娘も中国語学び息子は上海復旦大学に学び娘の亭主は港僑とまぁよくぞここまで、の感あり。
十一月廿四日(土)胃腸風邪。机まわりの雑用済ませ近隣のC医師の診断請ふ。週末でゆつくり休養すべし、と多少眠くなる薬を供される。昼前に饂飩食し昼
寝。午後どうしても休めぬ約束あり味の素の秘薬アミノギア服す。灣仔で長蛇の列あり、一瞬、季節外れだが

「施
し米」か、と思つたが施し米なら老人ばかりのはずなのに若者もゐれば鬼佬(gwai
lo)も少なからず、何事か、狂信的聖書原理主義者の集会か、と思つたら、列の先頭は豪州総領事館の入るビルに達してをり、この行列が豪州下院選挙の投
票、と合点。豪州は国政選挙は選挙人登録と投票義務づけられてをり海外にあつても滞在が二年を超し六年以内に豪州に帰国の意志ある者は在外でも投票が義
務。香港の場合、豪州の居住権維持のためには投票は必須。香港は英国倫敦に続き豪州籍の者多し。総領事館入り口での選挙運動見ても圧倒的に野党労働党が優
勢。帰宅しておでん。服薬し早々に臥床。
▼先週日曜日の香港区議会選挙。学者の分析に拠ると中国からの新移民多き九龍・新界の青葵、深水埗、観塘、元朗などで泛民主派が議席失ひ親中派御用政党民
建聯が議席奪回。新移民は保守的、か。で次週日曜の立法会港島区補選は泛民主派は政府の選挙宣伝が低調、と非難。投票率が五割を下回ると組織票の強さで保
守派の葉劉淑儀が有利となる由。

明晩二回目の候補者討論会開催されるが二時
間の実況中継はケーブルテレビ系ばかりで「普通のテレビ」では翡翠台が前半一時間だけ中継(後半が自由討論)。選挙ムード高まると反政府票伸び陳方安生が
有利になるのを政府が懸念といふ非難だが、立法会の地方区補選、といへばこの程度の選挙宣伝のやうな気もするが。ところで葉劉淑儀を支援の左派陣営、北京
政府の香港出向機関・中聯辧は民建聯系の民権組織通じ、大陸生まれ子女の香港居留権を求める市民に対して「葉劉淑儀支援すれば、これまでの政府に対する抗
議歴など抹消し子女の居留権取得を有利にするから」と、居留権求める父母らの集会で葉劉淑儀支持を主張するやう働きかけ(蘋果日報)。葉劉淑儀といへば大
陸生まれ子女に香港居留権ないと全人代常委が法解釈した際の責任者。その父母らにとつて憎き仇だが左派陣営は「葉劉淑儀は当時、実務担当官に過ぎず、実際
の決定権者は陳方安生だつた」と悪評流布もあり、とか。この反政府系候補に対する強権的な、謂わばシンガポール化は民主党元老の司徒華先生にも及ぶ。司徒
氏のもとに司法当局より一通の書状。開けてびつくり、半年前に民主戦線のラジオ放送に出演し中国民主化について語つた時の放送が、このラジオ放送が当局の
批准受けてない非合法のものであるため、出演した者も控訴される、といふもの。同じ番組に出演の他の者は起訴対象になつてをらず明らかに「当て擦り」。ま
さにあらゆる「合法的な」手段使つて反政府派を疲労困憊にさせる、シンガポール現象が、これ。
十一月廿三日(金)安部公房の描く<記憶>の世界か、ピンクフロイドの夢か、今日はとても驚く事象あり。デジカメ(リコーのGR
Digital)でSDメモリ外したままで撮影してしまひ「写つてをらぬ」と思つたがモニタに映像残る。一瞬「なぜ?」と思つたがカメラ本来にハードメモ
リあることに今になつて思ひ出す。でモニタには子どもの頃の雑誌付録にあつた絵巻物の紙芝居のやうに隣の画像


映るのだが、そこに知らぬ男の顔。そして接写
の手首。なぜアタシのカメラに?と一瞬、背筋が寒い。その見知らぬ男だがよくよく見ると背景は電気屋の店頭。どうやら客の試し撮り。このカメラ購入の際に
展示品ではなかつたが、どうやらこの客が新品を開けさせ、手にした上で購入断念だつたのかしら。新品のはずが実は手垢がついた品だつたか、この客の接写で
手首の背広とシャツがかなり上等な品だ、と見入つてしまつた。早晩に鰂魚涌。北京より来港の海淀車輌工場の工場長O氏と再会。偶然、近くのTaikoo
Placeにて香港微型藝術會の

香港本土風情 微型藝術展覧なる香港の都市風景のミニチュア展示ありO
氏をお連れして参観。思はず溜め息、の精巧さ。
East Endで
エール二杯。O氏、今回は鉄道旅行愉しみ(酔狂にもほどがあるが)北京より海南島の三亜経由で香港に至れる。北京発三亜行きの列車は三十時間の旅。広州で
ほとんどの客降りてしまひ三亜までの客など少ない。広東省の西南端、徐聞で列車運行止めてよからうところ十八輛編成の列車をわざはざ四分割にしてフェリー
に、その船のバランスが傾かぬゑふわざはざ左右二列づつ船体に列車導入し、海南島に渡り海口から三亜まで走るのだ、といふ。毎日この面倒な作業を上下線で
してゐるとは……。北京から三亜までの列車など採算合はぬのは当然。あくまでも首都から地続きで南の果てまで列車が通じてゐることの国家的意義。まさに天
涯までをも我が国土、と。O氏とは香港の競馬が縁だが鉄道の話も尽きず。競馬ファンに鉄道や乗り物好きが多い。夕食は
炳記飯店。もう何年も一度ここで食さうと思ひつつ一更に通りかかれば外
で待つ客も少なからず逸しつつ今晩はO氏と六時半すぎに訪れ流石にまだ閑散。Z嬢来る。夙に名高き三杯鶏。栗子排骨煲など美味秀逸。まだ話したりず、であ
つたが風邪で体調悪しく九時すぎに帰宅して即、臥床。
▼昨日の朝日新聞(衛星版)のアート欄・美の履歴書34回で紹介されてゐるのが「青花 蓮池魚藻文
壺」。アタシにはまつたくもつて目利きの眼力といふものがないが、或る茶人が有したこの壺、

出入りの
茶道具商が業者の競りに出したところ出だしの数十倍となる9千万円で落札され、それを後日、さらに倍以上の価格で購入した、その御仁が安宅英一。1973
年の話。この壺は後に国の重要文化財に指定された、安宅英一といふ人の目利き。この記事は
三井記念美術館で開催中の安
宅コレクションに絡むもの。安宅英一は安宅財閥の創始者安宅弥吉の長男。弥吉は高等商業学校(現・一橋大学)卒業後、日下部商店の香港支店(日森洋行)に
赴任。手広く貿易の商売広げ日森洋行の共同経営者になるが日露戦争の頃に日下部商店経営破綻の煽り受け香港支店=日森洋行も閉鎖。で弥吉は安宅商会を創
業。英一はその長男だが次男の重雄が安宅商会を継ぎ芸術肌の英一は神戸高商卒業後、安宅商会の倫敦支店長や名誉職的な会長職の傍ら(つてじつは商売のはう
が傍ら、で)音楽パトロンやや古陶磁の蒐集家として殊のほか著名。さういふ香港に縁りある人。名家のぼん、といへば細川護熙公。この安宅の壺の記事の下に
護熙公が「面に宿る孤高の姿」といふ随筆を寄稿。護熙公、岡本綺堂の『修禅寺物語』から話を起し白州正子との能の鑑賞など語り、
舞台で面をつけるということは、耳も目も全く不自由になることで、
催眠術にかかったような状態になるのだそうだ。精神を集中させるために、なるべく外は見えないにかぎる。目でなく胸で見るのだというような話をなるほどと
思いながら面白く聞いた。
と能の蘊蓄を語り、最後は自分が彫つて漆を重ねて仕上がつた神楽面の話。その神楽面はさすが技巧は素人離れ、数寄者なる肥後の殿様らしさ。だが能に詳しい
久が原のT君に言はせれば「視界が極度に狭められはしても、見える範囲への視野は却つて鋭敏」であり、謡と型さへ十分身体に入つてゐれば、「あそこにゐる
観客某がどこからどこまで眠つてゐた」が簡単によくよく見えるほど、だといふ。寧ろ、催眠術に掛かつたやうに思ふのは稽古不足の上がり性の者の言ふこと
で、むしろ反対に「覚醒する」と。「胸で見る」なんて言葉は「なるほど」と素人を納得させさうだが。あの日本新党の躍進から首相職を放り投げ出して、の辞
任も、きつと能面つけて耳も目も不自由になりトランス状態だつたのかしら。ちなみにこの随筆の肩書きは元内閣総理大臣ではなく永青文庫理事長。
▼新聞広告によれば千葉八千代の秀明大学が来春「
学校教
師学部」開設の由。「めざせ、実力派教師」とあり開設学部のサイトみれば
今、学校現場で求められてゐるのは、単なる『知識の伝達者』として
の教員ではなく、「人生の良き先輩」として生徒から信頼され敬愛される「真の教師」です。「優れた教師」を養成するといふ学部の目的を明示するため、日本
で初めて「学校教師学部」といふ名称にしました。
とあり。優れた教師とは大学の学部でさう易々と養成できるものぢやない、とアタシは思ふ。べつに教育学部でも法学部でも理学部でもよく、その人の人格であ
るとか経験、知識などさまざまなものから結果として学生にとつて人生のよき先達としての師があるにすぎず。
十一月廿二日(木)蹴球で日本が昨晚のサウジアラビア戰を引き分け北京五輪出場權得た由、今朝の新聞一面記事で知る。今日は誰かに「いや〜昨夜の」とか
「ひやひやしたねぇ」言はれたら、

す
ぐに「勝てば尙好し、反町監督は戰術が地味と非難もありますが、」と答へられるだけの知識を新聞で俄か勉强する……が誰とも蹴球の話題にならず。諸事忙殺
され一日が終る。ウヰスキー飲み干し、ふとグラスの底からの眺めに、まるで万華鏡の如く見惚れる。

▼バレエのモーリス=ベジャール振付師逝去。享年八十歲。一昨年、香港でベジャール・バレエ・ローザンヌの公演あり。「火の鳥」で那須野圭右なる日本人の
踊り手が印象に殘る。當然のやうに香港の演藝學院での&