十月卅一日(水)あちこちにハロウインに因む「假裝大會」に騷ぐ者の姿あり。ハロウィンの謂はれも知らず只だ幽靈、妖怪の如き裝束での催しの意味、

我
には
さつぱり理解できず。晚にハッピーヴァレイの
澄にて宴會あり
末席を汚す。鮟鱇鍋。自宅などにをれば近所のガキめらに「ハッピー、ハロウイン〜!」などと押し掛けられ菓子など振る舞はねばならず出街にて家を留守に出
來たは幸ひ。二更に歸宅。田原牧「ほつとけよ」續き讀む。
十月卅日(火)昨日、香港の恒生指数が31586ポイントまで上昇。アタシはここ数年、株とか投資ファンドとか全く無縁。御仏に仕へる身か。来春の香港
藝術節のチケットが届く。

紐
育フィルに倫敦フィル、歌劇はリゴレット、それにAndras
Schiffのピアノリサイタルと、大宰的にあh「これで春までは生きてゐようと思つた」の楽しみ。それはいいのだが、某氏からも紐育フィルと倫敦フィル
のチケット購入請はれ、十七日にアタシ自身の購入から数時間遅れでネットで。それがアタシのは二十日にクレジットカードに料金チャージされたが頼まれた分
はチャージに至らず。気になつて数日前にURBTIXに電話で確認したが、この藝術節についてはチケット発行=予約確定なのでチケット発券前に確認には応
じられぬ、の一点張り。で今日になり先行予約のチケット届いたので電話で確認求めれば案の定「申込みが遅かつた分、手続きも遅くなる」だの「購入希望の席
が取れなかつたのではないか、その場合はその旨お知らせが届く」と不親切。でかういふ時になるとアタシはウソが上手で「申込みは確かに数時間遅かつたがア
タシは予約受付番号が351番で数時間後のこれが831番、で更にその数日後に予約追加した1000番台のチケットも今日届いてゐる」と偽証。「それに1
度目と3度目の予約がA席なのに対して、この取れてゐない2度目の予約はS席なので、S席がない場合はA席で、と第二希望も付いてをり、物理的にチケット
売り切れは考へられない」と指摘。かう言はれてしまふと先方も「何かミスがあつた鴨」と思はざるを得ず、やうやく「それぢや調べる」に至る。官方に何かさ
せるには、ここまでウソも方便で努力せねばならぬ。それでも「831番の予約確認ができない」と電話の主はとても面倒くささうな対応で「名前と電話番号教
へてくれれば調べて電話する」と言ふ。どうも信頼おけず「ファクスでネット予約の確認書のコピー送るから、そこに詳細がぜんぶ明記されてゐるから、それを
参照してくれ」と求めるが、先方は「要らない」と言ふ。先方で予約確認ができないのに何もデータがなくてどうやつて調べるのだ?、とにかくファクスを見て
くれ、と強引にファクス番号聞き、ファクスでデータを送り、さらに心配なのでネットでメールでも事情説明済ます。数時間後に担当者から「メールを見た」と
電話あり(ファクスも他の部署から入手)。「予約は間違ひなくとれてゐる」がクレジットカードでの支払ひのところで何か支障があつたやうで、クレジット
カード番号教へてくれれば即座に発券手続きにはひる、と。つまりは結局、先方にはデータがなく(つまり予約されてをらず)、それでも予約受付番号があるか
ら「予約がない」とは言へず、とにかく現在ある席で(売り切れよりずつとマシだがネット予約の他に十一月のカウンター発売用にある程度、席は確保されて
は、ゐる)発券しよう、だが送られてきたデータのコピーはネット販売のためクレジットカード番号が3763-xxxx-xxxx-xxxxと見えないため
電話で確認してきた、といふところか。結局、アタシの送つたファクスだけが根拠になつたもの。まるで「今、出ました、が念のため注文、教へておいてくれま
すか」の蕎麦屋の出前の如し。だが何でもミスなどあるのは仕方がない。ただこのケースで怖いのは、アタシがウソでもついて強引に確認を求めないかぎり、し
ばらく待て、で等閑にされること。これでネットの先行予約終はつてしまつたら一巻の終はり。早晩に驟雨。ジムで昨日に続き5kmだけ2%の傾斜で走る。帰
宅して牛丼を食す。
▼昨日の朝日新聞で「歴史は生きてゐる」東アジアの150年「第5章満州事変と「満州国」」を読み、歴史的発見に驚く。記者(吉澤龍彦氏)が旧満州での
リットン調査団に関して取材。報告書には日本や傀儡の満州国政府が調査団が直接、民衆から取材することを阻んでゐる中、どうやつて住民がリットン調査団に
近づき現実を伝へようとしたのか。そこに鞏天民といふ銀行家の存在あり。鞏はキリスト教青年団の活動通じて学生らに調査団宛に手紙を書かせ、報告書には実
際にこの多くの手紙についての記載もある、といふ。05年7月に瀋陽晩報が当時のこの鞏天民らによる活動の記事を掲載。それによると鞏天民らは「満州」事
変が日本側により計画的に起こされたこと、満州が傀儡政権であることなどを告発しようと考へ、それを証明する資料を収集、で“TRUTH”と題する冊子作
成し、瀋陽在住の英国人牧師に託し、この牧師が自宅にリットンらを夕食会に招いた際に、この冊子をひそかに渡した、といふ(以上が瀋陽晩報の記事)。これ
に吉澤記者は興味もち、瀋陽で九一八事変(満州事変)研究する歴史家に尋ねたが「エピソードは知られてゐるが史実として確認されてゐない」といふ答へ。前
述の瀋陽晩報の取材を受けてゐた鞏国賢氏(鞏天民の孫)にも取材申し込んだが理由もはつきりせぬまま断られ、で吉澤記者は当時の国際連盟の資料有するジュ
ネーブの国連欧州本部図書館に問ひ合はせる。……と関係資料の中から青い布を張つた表紙で閉ぢたアルバムが現れた。同じ青の布袋に入りピンクの糸で
TRUTHと刺繍。そこには満州事変以来、日本の憲兵によつて銃撃された市民の名簿、学校教科書の書き換へや削除のリスト、憲兵により検閲された手紙な
ど……と、事実も凄いが、この吉澤龍彦といふ記者の徹底した検証への執念に驚くばかり。この記者の八月の同連載の「脱亜論」も面白かつたが。それにしても
この“TRUTH”と題する冊子の存在。第一級資料だが、ざくつとネットで漁つてみたが、これまで全く陽の目を浴びてをらぬやう。本当だとしたら、かうい
ふものの発掘こそ、「作る会」的な自虐史観から現実を明らかにするのだ、と思ふ。
▼先週末の朝日新聞の読書欄。アタシの好きな連載「たひせつな本」は俳優の米倉斉加年氏が『長靴の三銃士』を紹介。氏が国民学校三年生の昭和十八年、非適
性書籍として謂わば焚書の中に埋もれてゐた一冊がこれ。米倉氏に言はせれば「異端のにほひ」があり熱中して読んだあと、やはり「怖くなつた」で放り積まれ
た本の中に返した、と云ふ。さすが米倉斉加年、で随筆としても見事。この日の読書欄の巻頭で紹介されてゐるのが愛知大現代中国学部教授の加々美光行『鏡の
中の日本と中国』(日本評論社)。評者は高原明生(東大教授・東アジア政治)。高原教授の見事な書評読んだだけで本書も読んだつもり、にしたいが『逆説と
しての中国革命』は中国研究の書籍の中でも名著の一つ。とくに非常に政治的背景強烈なアヂ研の中国研究者の中で加々美氏は抜きんでた碩学のお一人。読みた
ひ一冊。一つ気になつたのは高原教授が、中国研究をする者が徒に研究成果が現実の政治に何らかの影響与へることへの期待といふ無自覚により「知らずして自
分の目的に合つた因果関係を進めてしまひがちになる」といふ指摘はその通りだが、続けて「また、自分を研究対象に対して優越する位置に置くといふ「オリエ
ンタリズム」的な近代科学の弊害が生じる」としてゐる点については「自分を研究対象に対して優越する位置に置く」=オリエンタリズムとすることには、アタ
シは多少疑問あり。サイード教授の見たオリエンタリズムといふのは、その中に「自分を研究対象に対して優越する位置に置く」やうなケースもあるが、それば
かりではないはず。己の優位もあり偏見もあり必要以上の美化もあり、一言でいへば「西洋が東洋に付与した共同幻想」がオリエンタリズムとアタシは思ふ。
▼九月に大阪で痴漢行為で捕まつた香港の現職警官(32歳)。日本では30万円の罰金刑で帰港。即刻、香港警察の処分受けぬやう辞表提出。勤務暦が10年
に数ヶ月足りず。だが未取得の有給休暇など算入せば10年勤務扱ひとなり55歳になり退職金受け取り可。警察といへば、尖沙咀など両替店三度襲つた強盗が
四度目の仕業で逮捕されてみると香港警察特殊任務部隊「飛虎隊」(Flying
Tigers)の元隊員(警長、53歳、退職済み)。借金返済に窮し強盗したさうだが三度の強盗でたかだか16万ドル=240万円とはセコい。
十月廿九日(月)母よりシャープの電子辞書(
Papyrus
PW-AT760)が郵送で届く。最近、漢字が出てこないことが多く慣用句のど忘れなども気になり、先週、朝日新聞の新製品紹介とかに出てゐたこ
の電子辞書をアマゾン・ジャパンで購入。

書籍等なら直接遅れるが電子機器につき送り
先は国内のみ。電子辞書はあまり良くない、やはり昔ながらの辞書「本」の頁を捲つて読むべき、がアタシの持論だが咄嗟で漢字や英単語など引くには背に腹は
代へられず。セイコー電子やカシオなどの製品も見てカシオの
XD-GW6900もいいと思つたが
4万円もするのでアタシの場合、紛失や置き忘れなどかなり想定内のため凡そ半額のシャープの同製品にした次第。母に何か送付を請ふと記念切手澤山貼つて寄
越す。切手は使はれてこそ、なのだが常識的には「勿体ない」と思はれるかも。写楽や春信の昭和の切手も額面は60円だかが80円で取引されてゐる。アタシ
も古切手こそスクラップ帖に貼るので無駄にはせぬが。で最近の電子辞書は言葉を引くばかりか漢字検定から難読漢字の読み方テスト、脳年齢判定まで出来て、
これで地下鉄の中で難読漢字の勉強してゐても、それぢや猿の自慰の如く電子ゲームに熱中するガキと他人から見たら何も変はらぬ。……と書いたところで「猿
の自慰」のたとへはサルには失礼な出鱈目。どうであれ、その電子辞書で難読漢字などやつてみたがアタシの読解力はかなり怪しく、しかも「私淑」を「学校と
かオフィシャルでなく個人的に師につくこと」とか「健啖家」を「話上手」と勘違ひしてゐたことなど、かなり恥づかしいが、判明。甚だ慚愧の念一入、であ
る。早晩久々にジム。かなり久々にトレッドミルで2.5%の傾斜で(つて下り坂ぢやなゐよ……笑)5kmだけ走る。今週末は今季初のハーフマラソン。走り
込みせず本番、はアタシの常だし、下手に走り込んで膝でも故障しくしたら大変と嘯く。帰宅して夕食のあと十時前には寝てしまふ。アタシは村上春樹か。
▼防衛省守屋前事務次官の国会での証人喚問。アタシが不思議なのは「なぜゴルフだけ「プレイをする」といふのか」といふこと。野球もサッカーもスポーツの
プレイなのだが「一緒に野球をした」と言へば済むことで「一緒に野球のプレイをする」とはあまり言はない。ゴルフも「一緒にゴルフした」と言へば済むのに
なぜわざはざ「プレイする」と言ふのかしら。他に「プレイする」といふと「SMプレイ」とか「恥辱プレイ」とか、どうもそちらの印象あり。だから守屋証人
の発言を「いかがわしいプレイ」だと思つて聞くと「多い時で月4回、スケジュールが合はなければ月に1回、けんかして半年ぐらゐやらなかつたこともある。
トータルすると年20回以上、5年間に限ると100回を越えてゐた」がやけに可笑しい。

▼カソリックの陳日君枢機卿が昨日の信者集会でマーチン李柱銘議員を擁護(
蘋
果)。寧ろ左派こそ言葉の暴力、と憂ひて見せる。アタシには何だかよくわからない。
▼白花油の貴公子、顔福偉君がタクシー運転手からホモセクハラと訴へられる(
蘋
果)。顔社長は警察に出頭し事情聴取の上、HK$2,000の保釈金で捜査判断待ち。容疑の確定せぬ案件に触れるべ

きではない、と思ひつつつ、この社長、歌謡活
動に熱心で半ば芸人。芸人だからゴシップ話題にされても致し方なし。先日、自分がバイセクシュアルと公言。このセクハラは今月上旬に開催のコンサート成功
での打ち上げで明け方まで銅鑼湾で飲酒後、北角の自宅に戻る際に三人でタクシーに乗り助手席に座つた顔社長は運転手が自分を白花油王子と知つてをり「ファ
ンだ」と言つたものだから有頂天で運転中の運転手の肩に手をまはし太股を愛撫するやうに撫で、怒つた運転手には下車の際にHK$500をお詫び、と渡した
が運転手は帰宅後、妻と相談の結果、警察に通報。日本でなら、地唄舞の家元(吉村雄輝)の息子がピーター、くらいなら許されようが、一部上場の医薬品メー
カーの跡取り社長が業務のかたはら芸能活動、酔つた勢ひでタクシー運転手の大腿撫で撫で、は社会通念上「アウト!」か。しかも、この顔社長、香港民主化運
動にも熱心でデモでは白花油が遊行者や路上の市民に配られる。香港財界では泛民主派支援は御法度のやうでゐて米国で民主党支持の財界人がゐて当然のやうに
香港ではこの顔氏であるとか李嘉誠の次男・リチャード君も香港普選実現に熱心。今回のこのホモセクハラ「事件」のリークも泛民主派潰しの一つだつたり……
まさか。

▼香港に蘇施黄といふ料理評論家?の女性あり。一言でいへば「雑多」な人でこの人が料理作つたり飲食店紹介の番組あり(もう終了?)アタシは個人的に生理
的嫌悪でこの人が苦手。一度、香港空港のCXのラウンジでお見かけしたがテレビの画面のまま雑多な感じ。この人の雰囲気、その番組の奇つ怪さについては
「言ひ得て妙」な「
ヒビノコト」といふブログ
あり。まさにこの方の指摘の通り(
こちら)。
で、その蘇施黄が立法会港島区補選候補者のレジーナ葉劉淑儀を支持表明(
蘋
果)。これつてアタシにとつてはレジーナ葉にはやつぱり投票できない、と思はせる一つの要因かも。
十月廿八日(日)珍しく何も予定なき日曜日。Z嬢と朝遅く地下鉄で坑口。ミニバスで西貢。タクシー雇ひ企嶺下海の最長不倒距離で榕樹澳の集落。戦争ごつこ
に興ずレジャー客少なからず。企嶺下海の海辺に沿ひ深涌。榕樹澳が戦争ごつこなら深涌は湿地帯整備して簡易ゴルフコース造営の様子。湿地帯のままにしとき
やいいのに。この村のかつてのカソリック教会は小学校の施設あつた由。新界の集落、その多くが廃村だが、を歩く途中立ち寄り気づいたことは初等教育の充実
とキリスト教布教。




香
港といふと小学校でも午前校、午後校あり全日教育も拡充されず教育行政の怠慢の如く思はれるが、かつて新界の各地に小さな村々点在の当時はその多くに初等
教育施す学校あり(今はその殆ど全てが廃校)。我々は今の香港の視点からの眼差ししか持たぬが実は英国統治以前からのこの地に住まふ人々があり学校や集会
所などの廃屋は少なくとも1970年代までは新界のその村々が活きてゐた証左なり。榕樹澳から海と別れ蛇石坳の峠越え(といつても海抜160m程度)。湧
水のせせらぎも心地良し。南山洞。山中に人の住まふ気配こそなけれどもよく手入れのされた一軒の家屋あり。この敷地手前の道沿ひに誌石あり。これを読めば
先祖代々この地に住まひし一族の子弟多くが英国に渡り新界の山深き故郷の母屋への険しき道を整へ橋を架け、せめて一族の年長者に山道の往復易しければ、と
の寄進。それが1963年の事なり。新界の廃村となりし多くの集落の氏族が、その子孫が海外に留学し英国などカナダに住まふ事実。また此処南山洞にも証左
あり。その橋々渡り白沙澳の集落へ。この白沙澳、廃屋を家主氏族より借り受けし西欧人が見事に整備し田舎暮らし楽しむ事いぜんSCMP紙か何かで読みし
が、いざ山道よりこの郷に足踏み入れればまさに桃源郷の如し。見事に花が咲き乱れ蝶が舞ふ。手入れ、手入れ、手入れの見事さ。集落外れの沼地にいかにも英
国人な老人居り。この白沙澳の長老か。網で何か沼

より掬ふらしく何かと思へば老人、煙草(だら
う、probably)一服して曰く「亀がゐてね」と。「だいぶかうしてゐるのだが」と翁。亀の現はれる気配もなし。ブリティッシュな太公望か。山中より
警察隊現れる。どうやら密入境者の捜索。目つき顔つき、その一隊の指示ぶりだの見てゐると、入り込み具合に趣味で「戦争ごつこ」の輩との充実度の違ひがア
タシにはわからない。警察はさつきの老人に遭遇したらどうするのかしら。でも案外、ああいふ新界に定住の隠居者の多くが皇家香港警察のOBなので老人に遇
ふなり一隊敬礼で“Good afternoon, Sir!”かも。しばし歩いて海下路に出る。海下(Hoi
Ha)の海沿ひまで一旦下り、そこで三十分に一本くらゐのミニバス待たうか、と思つたが運良くタクシー来たり。それに乗り西貢まで16kmを飛ばす。

酒
場
Duke of Yorkにてステラアルトワ一飲。
龍記桂林米粉にて牛腩米粉食す。20年以上前に購入し未読の花袋『東京
の三十年』(岩波文庫)山への往復でほんの少し読む。ジムのサウナに一浴し帰宅。ラム酒ライムで割り二杯。心地よくピンクフロイドのOn The
Turning
Awayなど聞きつつアルマニャックブランデーをやる。今日は西貢市街の有機野菜屋に美味さうな韮菜あり収穫。今晩はこれと豚肉、大根おろしで鍋。酒は八
海山の純米酒を少しやる。東京農大の小泉武夫先生的に幸せに美味い。さういへば小泉先生が福島の小野町(郡山に近き中通り、磐越東線小野新町駅が最寄り)
の造り酒屋の倅と今さら知り、それであの発酵食品への執着、と合点。
▼香港の地場政治。香港のイエス?民主党の李柱銘氏、先週訪米。毎回、海外にて香港の民主化宣伝が保守反動右派土共の諸君より「国辱」「漢奸」と罵られる
のは恒例、だが今回は殊にThe Wall Street Journal紙に寄せたる“
China's
Olympic Opportunity”なる

文
章が土共らの集中砲火浴びる。ブッシュ大統領に対して北京でのオリンピック開始の機会に中国の民主化や人権問題につき中国政府と積極的に対話してほしい、
といつた内容の、このMartin
Lee氏の投稿は十月十七日であつたが(発行部数発表虚偽で董建華前行政長官と梁愛詩前司法官の超法規的措置により社主が罪を免れた)星島日報が先週確か
19日?だかにこれを取り上げ話題に。左派はすぐにMartin Lee氏に罵声浴びせるが、Martin
Leeは星島日報の報道で訳文に誤謬あり、と反論。民主党も党として北京オリンピックを政治化するつもりもないしオリンピック成功を願ふ、と新聞広告で発
表し火消しに大はらは。但し本来であれば反土共的な言論人の間からも、今回のMartin
Lee氏の発言に対しては少なからず非難あり。例へばブッシュに対して“He should use the next 10 months to
press for a significant improvement of basic human rights in my
country, including press, assembly and religious
freedoms.”と「我が国への」関与を求め、オリンピックは政治の場ではない、としつつソウルオリンピックが開催されし1988年に韓国はまだまだ
軍政下にあつたが、その後、アジアでも有数の民主国家となつたのはオリンピック開催が一つの要因であり、北京オリンピック開催も、これが中国の民主化や人
権改善の契機となれば、と述べたが、この他力本願が非難の的。今回のこのマーチン=リー批判が、立法会補選でのアンソン陳方安生票を減らすための策略とい
ふ見方もあり。レジーナ葉劉淑儀を表立つて応援できぬ中央が反民主派宣伝に加担、と。さういふ見方も可、だが「香港民主の象徴」たるマーチン=リー氏の政
治感覚に現実性とのズレがあるのは事実で、民主党も昔に比べれば勢ひと市民からの信託にかなり翳りあり。
十月廿七日(土)快晴。昼にかけ山頂に住まはれし某氏邸にてガーデンパーティあり末席を汚す。晩に一人で北角新光戯院。上海青年昆劇團による新人版

「牡
丹亭」観劇。上海青年昆劇團と聞けば往年の芝居好きなら今の上海昆劇團の前身たる同名の劇團思ひ起こすところ。この上海青年昆劇團は
上海戯劇學院に属す学生の劇団にて設立は昨年七月と
まだ一年余。だが積極的に楊門女將やこの牡丹亭など經典劇公演。今晩の「牡丹亭」ではさすがに後半の「捨画叫画」から「回生婚走」は二十代前半の研究生的
な役者になつたが前半はヒロインの杜麗娘や親友の春香役は十代前半の女優の卵で判官役も十五才の少年。この若い役者がさすがに台詞まわしや謡曲はさすがに
まだまだ修業が足らぬが「好いて冥土の果てまでも」の心境を演じるのも愛らしく少年役者の身体の柔らかや宙返りなどやはり大人には真似出来ぬ軽やかさ。最
たる古典の「牡丹亭」だが「新人版」と名乗るだけあり後半はかなり大胆に軽快な舞踊取り入れる。昆劇「牡丹亭」と言へば白先勇による劇編の青春版牡丹亭、
是非観劇したいところ。上海だの北京での上演続き香港には至らず。白先勇先生が昆劇のヴェテラン女優・華文漪(写真)と昆劇についての語り合ひ(
こ
ちら)。
十月廿六日(金)晩にハッピーヴァレイの
寿司澄。某氏より招
飲の約あり。お嬢様お二方ご一緒。美味い葡萄酒に合ふ日本料理を、と三陸産の生牡蛎、カラス
ミ、フォアグラなど珍味が而もあつさりと少しづつ供される。

鰰(はたはた)も実に新鮮で身が美しく焼き
方も焙つた程度でほくほく、で鹽はさつと振つた程度で甘みが引き立つ。で葡萄酒はボルドーばかりCh. TalbotのCaillou Blanc
02年、Ch. Langoa Barton 01年、Ch. La Tour Haut-Briton
95年……美味くないワケなし。客は香港の地場の、恰もIT系、金融系で儲けてゐる若造多し。カウンターでi-Phoneを使つてみせる客二人居り。タク
シーで、昨晩女性二人連れ込み狂乱パーティしてゐた米国籍男性二人の変死体が今日の午後見つかつた湾仔のグランドハイアットホテルへ(新聞は翌日のも
の)。ディスコティークな場の苦手なアタシは
グランドハイアットホテルの
JJに香港足掛け十八年居て初めて。Veuve Clicquot
PonsardinのBrutを2本。踊れもせぬアタシは葉巻蒸かし時を過ごす。九十年代は入るにも行列できるほどブリブリと言はしめたJJつて意外と良
心的な価格システムと知る。意外とあつさりとした気分で十二時過ぎに帰宅。
十月廿五日(木)老人にとつて早起きで楽しみは新聞の朝刊くらゐ。今朝、誤配で日経が届く。小泉文夫教授相変はらず食欲旺盛で地鶏の唐揚げ。後ほど朝日も
届きテレビ欄で日経と朝日が同じドラマ

「お
いしいごはん」(テレ朝)紹介コラムあり。リストラで失業中の春日井新平、朝日(画像左)では(徳重聡=写真左から2人目)とあり、徳重聡が若いのになか
なか味のある老け役ぶり、で「その父親で春日井米店社長・良平」は(渡哲也=同3人目)。米屋の社長・良平はどうやらトランスジェンダー、渡哲也さんが女
装役に挑戦か、と。それに比べ日経は写真の下に役者名を置いて実に見やすい、「なんだ渡哲也さんが女装ぢやなくて藤原紀香か」合点したが、よくよく見ると
写真の左下に心霊写真の如く子役がゐて確かに朝日の言ふ通り徳重聡は左から2人目で渡哲也は同3人目。
▼今春に全国一斉で文科省が一大事業と実施の全国学力テストの結果公表。あれだけ大々的にやつて「この程度の成果か」と嗤はれる。小学校も中学校も秋田と
福井の好成績が目立ち青森、岩手、山形、富山など東北、北陸が善戦。東京に比べ大阪の成績悪しく沖縄は最下位。いろいろな分析あらうが偏見込み、で見ると
・アタシの印象では秋田と福井の人が他に比べ頭が良い、とはとくに印象がない。ただし両県とも「吹奏楽でも全国トップクラス」……ともう数十年前の話で秋
田市立山王中学が今、吹奏楽で全国のどのレベルか知らないが、吹奏楽とか学校コーラスとか。音楽的才能が学習能力に関係がある、のではない。もしかすると
「上位狙ひ」が組織的に好き、上手、慣れてゐる、といつたことがないかしら。スポーツ成績とかも見ると面白いかも。今回の学力テストも「インチキをした」
のではなく「全国トップクラスを狙はう」といふ集団心理が子どもから教師にまであつた成果、として。
・東北と北陸。寒いし冬は勉強でもせねば、やることねぇ……ではなくて民度の高さは推して知るべし。田舎と一言で片づけられやすいが「都会から」引つ越し
てみると初めてわかること。
・四国四県での香川の独走。先日、山を歩いてゐてN氏が減量のため炭水化物摂取を控へたら太らないが頭の回転がかなり遅くなり炭水化物の摂取が「脳の体
力」に大切、と、まるで「ためしてガッテン」のやうなことをおつしやつてゐたが、香川県といへば讃岐うどん。うどんを食べることで炭水化物摂取が充分で脳
の発育に影響してゐる。……四国で香川の高学力を説明できる理由はこれ。ところで高知県、とくに中学の低スコアが目立つ。中学になると勉強しなくなる理由
は……などと考へると、だいたい「みんな漁に出るからか」などと云ふとセンスのない偏見を考へる人も少なくなからうが、アタシの印象では高知の人といふの
は(勝手な印象だが)高校、大学といはゆるエリートコースで進学する人といふのは極端で(それがビジネスであれ学界であれ出世できる大物が多い)その極端
に勉強のできる人(実際、ガリ勉タイプでなくても)とそれ以外の人の「たかだか数字に現れる格差」は大きいのではないか、と思ふ。それにこんな「全国学力
テスト」など「おまんさん、このどだいあやかしゐテストぢやか」といふやうな感覚とかね。
・沖縄の全国最下位。学力が低いのに非ず。学力テストなどどうでもいい。沖縄に続くブービーの北海道も然り。数十年前の話だが沖縄返還後に英検も沖縄の合
格率圧倒的に低く「米軍基地もあんなにあつてなぜ?」とヤマトンチューは勝手に訝しがつたが、実際に英語が自然に使へる点では沖縄はダントツ。「国語」な
ど「話し言葉、書き言葉としての日本語」とは異なるもの。どうでもよい。大阪も北海道とどつこいどつこい。商売で読み書き算盤ができればよろしおますが
な。こんな学力テストで成績の良い大阪、なんてむしろつまらない。
▼数日前の朝日新聞に「都市への思ひ共有を」と題し建築家安藤忠雄氏提唱の東京駅周辺に「歴史の回廊」案あり。東京駅が辰野金吾設計の原型に複され日本橋
覆ふ高速道路が地下に潜らされ八重洲口の三菱一号館も再建されるなら中央郵便局も保存するなどで都市の歴史的建築を保存し「歴史の回廊」を持たうぢやない
か、と。ご指摘ご尤も。だが<近代の帝都>が例へば伯林のやうに残存してゐたならまだしも敢へて再建といふのは些か胡散臭くないかしら。日本橋も高速道路
が跨ぐ姿は無惨。だが東京オリンピック前夜、あの計画が実行されたのは「日本橋の美観より都市交通網の充実」といふ政策が支持されたから、で日本橋を(そ
れもお江戸日本橋の木造橋ぢやなくて明治の近代橋)高速道路に跨がせてしまつたのは、それはそれで高度経済成長のエネルギーであり、それが「歴史的モニュ
メント」であり「美しい」と指摘してゐたのは荒木経惟氏だつたか……。
▼一党独裁国家シンガポールで昨日、国会で「異性相手のフェラチオとアナルセックスの合法化」可決。今どき「なによ、これ?」のさすが七十年代にはジュ
リーこと沢田研二も入国できなかつた長髪禁止、の国家。「異性相手のフェラチオとアナルセックスの合法化」は、つまり「同性愛性交は已然、非合法」といふ
こと。人民行動党が国会の圧倒的大多数占め国会審議では常に政府提案が必ず賛成多数となる(さういふ意味では反対票もそこそこある中国以上にひどい)シン
ガポールだが、さすがに「同性愛の非刑事化」の可否は与党議員からも非刑事化求める声が少なからず採決の際に不満の声も声上げる議員ゐた由。「李光耀の息
子」首相は「シンガポールは「男婚女嫁、生兒育女」が社会通念の保守的な社会で同性愛が主流とはならぬ。もちろん同性愛者にとつてシンガポールでも同志
ネットやゲイバーなど彼らが社会生活を行ふ上での個人の自由は尊重されてゐる。ただしある程度それが制限されてゐるだけ」と宣ふ。それでゐて同性愛者の消
費力の旺盛さにはちやんと着目しシドニーやバンコクに続け、と環太平洋州のゲイの集会をシンガポールで開催するなどの
Pink Dollar獲得には躍起。こ
のへんがシンガポール政府の強かさなり。
農暦九月十四。霜降。雲一つなき快晴。本日、香港戦史探訪の会あり。招かれて1941年12月の太平洋戦争勃発後、広東より香港侵攻の日本軍の戦跡を見よ
う、と香港島は黄泥涌峡谷(Wong Nai Chung Gap)

の
日本軍通称「五叉路」の激戦地にて戦史語る。……といつても和仁廉夫氏のまとめた文章や高添勉氏の写真など参照ばかりなのだが。早晩に中環。久々に退勤時
間に市街地に出ると人の多さに驚くばかり。Z嬢とFCCで夕食。バーの新メニューにマティーニでGibsonとありドライ好きのアタシとしてはカクテルオ
ニオンも「あら珍しい」と注文するとオリーブ入りの普通のマティーニ。しかもこのバーの悪いところはスティアせずにシェイクしちまふから(客にジェームス
=ボンド気取りが多いのか)マティーニが水つぽいくていけない。神経質ぢやないどころか知識のないバーほど貧しいものなし。智利のSanta
Carolina(Cab Sau
05年)飲みながら、今月下旬はFCCのダインはドイツ祭ださうで、グリエールチーズとラディッシュのサラダ、それに牛肉を煮込んだEintopf(アイ
ントプフ)食す。Z嬢はスペイン人の若手ピアニスト(名前失念)の演奏会あり。アタシは疲れたので按摩して帰宅。田原牧「ほつとけよ」続き読む。久々に読
み応へ充分な一冊。
▼加藤周一の夕陽妄語(朝日新聞)。旧約聖書から一節を用ゐる。
空の空 空の空なる哉 都て空なり
周一さんが思ひだしたるは堀田善衞が書いた話で善衞さんが驚いたのは或る知的な雑誌の編集者が「空の空」を「ソラのソラ」と読んだこと。聖書も読んだこと
がない。周一さんはこれを引いて
しかし「ソラのソラ」が日本語として意味をなさないのはそれと別の
ことである。「空の空」は日本語として十分に明瞭である。敢えて「ソラのソラ」と読むのは、日本語の知識の貧しさと、そのことに対する注意不足を示す。そ
れはもちろん程度問題である。しかし堀田が経験した例はまさに驚くべき程度の無知と不注意であった。小学校からの英語教育に力を入れる日本政府にも、幼児
からの日本語教育に努力を集中していただきたいと思う。(略)我々は敗戦の後六〇年間いくらか努力した……。「堀田よ」と私は呟く。「我々はいくらか努力
して、『空の空』を理解する入り口まで来た、もう少しつづけよう、そしてもう一度『空の空」と言おう」と。
久々に岩波新書『羊の歌』読んだやうな周一翁らしさ。だが知的な朝日新聞の読者でも「空の空」が珍紛漢紛な者多からうし、それどころかキリスト者とてこの
意味の理解できぬ者少なからず、ぢやないかしら。おそらく朝日新聞の文化部では「ちよつと、これ、読者に通じるかなぁ、冒頭の「ソラのソラ?」から」と若
い記者が呟き、デスクが「でも加藤さんにダメ出しできないぞ。まぁわからない人は知的教養がない、つてことで」と。この「空の空」の引用からの周一さんの
思考、それはそれでいいのだが、何が問題か、といへば善衞さんが驚き周一さんが嘆く「空の空」は「聖書の有名な文句」とは言へ、これは文語訳聖書の話。い
ま普及せし口語訳聖書では「伝導之書」は「コヘレトの言葉」で
傳導者曰く 空の空 空の空なる哉 都てなり
は
コヘレトは言う。なんという空しさ/なんという空しさ、すべては空
しい。
と、これなら誰も「なんというソラしさ」なんて読まず「むなしさ」と読め意味も解す。それだけ、のこと。それを善衞さんの数十年前の旧制高校的教養の時代
ならマダしも「ブッシュが米国総統になるやうな時代」に文語訳聖書の「空の空」を「ソラのソラ」と読むのが無知と嘆くのもどうかしら。ましてや周一さんと
もあらう人が「小学校からの英語教育に力を入れる日本政府にも、幼児からの日本語教育に努力を集中していただきたいと思ふ」なんてコト宣はれるのにはアタ
シは驚いた。いづれにせよ周一さんが用ゐた、この伝導之書の「空の空」だが文語訳聖書なんて手許にあるのはよつぽどの数寄者だらうしネットですら口語訳・
共同訳聖書がやうやくネット上で全文検索できるやうになつた程度で文語訳を読むことすら能はず。さういふ時代に「空の空、が読めない」と嘆いても、まして
や「我々はいくらか努力して、『空の空』を理解する入り口まで来た、もう少しつづけよう、そしてもう一度『空の空」と言おう」と羊の歌されても、大変恐縮
であるが若輩者にこれは通じ難し。それでも、アタシは文語訳聖書が好き。文語といひ漢語といひゾクゾクと鳥肌が立つほど美しい。而もこの伝道之書の「空の
空」は般若心経であるとか鴨長明に通じるところある達観。ゆゑにいつまでも読み続かれる価値あり。でわざはざワープロ打ちしてルビを振つたものを此処に挙
げよう。暇だねぇアタシも。
▼今日の蘋果日報に陳方安生女史が立法会港島区補選への正式な立候補登録で「我參選的信念」といふ手紙を寄し掲載あり(
こ
ちら)。書いてあることは実に真つ当。だが「中国の地方都市としての香港」だと思ふと難しいところ多し。
十月廿三日(火)北京にて Les délégués au 17ème
Congrès du Parti communiste chinois
閉幕。第17期中央委員会第1回全体会議(1中全会)開催。Coquinteau総書記筆頭にComité permanent du
Bureau politique du Comité central du Parti communiste
chinois(中国共産党中央委員会政治局常務委員)の9名が雛壇に並ぶ。よく見ると顔の表情も違うのだが、どうも


「お
そ松くん」的。ネクタイから背広まで同じにしなくても……。中国の最高意思決定機関といわれる、この中共中央政治局常務委員会は1928年7月の第6期1
中全会で設立され(当時は中央書記処)創設メンバーには周恩来先生あり。その後、李立三、瞿秋白といった革命黎明期の懐かしい名があり、劉少奇先生が選出
され(1931年)、で1935年の中央政治局拡大会議(遵義会議)で毛沢東がメンバーとなり全権掌握……うーん、大時代的。今回の顔ぶれが「おそ松く
ん」的なのは、例えば第8期1中全会(1956年9月)などの印象があるからで、この時は毛沢東(中央主席)筆頭に劉少奇、周恩来、朱德、陳雲、林彪に鄧
小平……と多少中国現代史に詳しければ「大看板揃い踏み」で「待ってました〜っ!」と声かけたくなる名優が揃う。その後も劉少奇の失脚、林彪の死亡などド
ラマがあり、文革を経て、今の中国が1977年7月の第10期3中全会で鄧小平復活から始まったのは多言を要すまい。当時からのこの政治局常務委員のメン
ツを一瞥すれば、華国鋒、葉剣英、陳雲、胡耀邦、趙紫陽、李先念、李鵬、喬石、胡啓立、李瑞環、朱鎔基、胡錦濤……と、もちろんアトになってメジャーに
なった人が多いから、なのだが、それでも政治局常務委員となるとズラリと「知った顔」が並ぶもの。それが今回は世代交代もあろうが胡錦涛(国家主席)、呉
邦国(全人代)、温家宝(首相)以外、香港で中国政治をそれなりに報道で見ているアタシですら「あの役者、誰だっけ?」の「大部屋から名代昇進」クラスに
しか見えないのだから。だから「おそ松くん」。
▼演舞場の
中村
屋の奮闘公演。ふだん歌舞伎にはちょっと甘いブラック師匠が山田洋次演出の「文七元結」を「一幕目の長兵衛は限りなく落語に近く好感がもてたが、
大川端からがいけない。作り過ぎ、リアリティのカケラもない。」とバッサリ(
こちら)。
いつも中村屋の芝居を見た後は才能の違いに打ちのめされるが、今回
初めて余裕で見下すことが出来た。「文七」の長兵衛はあっしの方がはるかに巧い。中村屋より巧いということは日本一といっていいかもしれない。
とブラック師匠。いいねぇ。いくら文七のブザマをお久に「お前さん、なんで見ず知らずの他人に五十両もあげたんだい」「うーん、あれが俺の人生一番の博奕
だったかもしれない」と言わせたところで師匠にしてみりゃ「博奕で地獄を見ていない人間が作る机上の空論」。この文七元結で芸術祭大賞狙う、と師匠。その
心意気。夜の部の森光子との芝居。波乃久里子がアタシは見たい。で師匠が名優、と褒めるのは米倉斉加年。そりゃ確かに。師匠は帰宅して考える、どうして今
日の文七元結がつまらないか、と。筋書きで中村屋と山田洋次の対談読んだ師匠曰く「が二人共に長兵衛をどうしようもない困った奴ではあるが愛すべき存在
で、こういう奴を排除する社会はギスギスして面白くないという。要するに長兵衛を見下しているのだ」。寅さん論にも通じるところありかも。師匠なら、この
演出を森崎東監督!に頼もうか、と言う。卓見。そして師匠は言い放つ。
いや、森崎監督に頼むまでもない。あっしの長兵衛はあっし自身なの
だから。長兵衛を否定するということは自己否定になって、生きていけなくなっちゃうから、命懸けで長兵衛を演じなければならないのだ。
と。いいねぇ、この見栄。これぞ見栄。そして山田洋次と中村屋の悪口になってしまったが、としつつ
「困った奴だが同じ社会にいてもいい」という思想は、「困った奴は
排除してしまえ、もう顔も見たくない」という大作家先生と、その尻馬に乗った家元よりはずっとマシであることは言うまでもない。
と一言添える。なんという素晴らしさ。ただただ敬服。
▼森崎東監督といえば最新作の「
ニワトリはハダシだ」で元気なところ見せたがアタシは
何といっても山田洋次の「男はつらいよ」で森崎東が監督した第三作「フーテンの寅さん」が好き。寅がまだヒールな役柄でおいちゃんは森川信。マドンナが新
珠三千代で香山美子もいい。でワキを固めるのが花沢徳衛、左卜全に悠木千帆(樹木希林)。温ૠ